ウルトラマンジード ベリアルの子ら   作:ヨアンゴ

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 本日はこどもの日。ちょうど連載開始から2年となりました。

 ここまで進めることができたのは、原作の魅力やその後の展開、お読みくださる皆様の応援のおかげです。改めてありがとうございます。







第二十二話「リ・ボーン」Cパート

 

 

 

「……ゾグとやらが、私の光を奪おうとしていた」

 

 戦闘用不連続時空間、メタフィールド。

 

 ウルトラマンジードを筆頭とするベリアルの子らと、謎の敵スフィアペンドラゴンが残したゼルガノイドの軍勢が争う亜空間。

 

 地球からは位相を隔てたその戦場に、突如として乱入した宇宙恐魔人アーマードゼットは、ジードの妹の漏らした疑問へ、改めて丁寧に応じ始めていた。

 

「どうせ、おまえにはもう通じぬ力だ」

 

 傍らで回復に務める、ジードの妹――培養合成獣スカルゴモラに対し。自らの胸に宿ったリトルスターを輝かせながら、恐魔人ゼットが言う。

 

「くれてやっても良かったが、顔でも拝もうと来てみれば、おまえたちと争うのを見た」

 

 彼が、悠長に話す間に。同胞を倒されたゼルガノイドたちが、報復とばかりに攻撃を繰り出す。

 

 何十体ものゼルガノイドが放つ光線技を、アクロスマッシャーとなったジードや傷ついた培養合成獣スカルゴモラたちの前に立ち、ゼットン種の光線吸収能力で防いだ魔人は、そのまま敵全体に撃ち返して、その動きを牽制していた。

 

「しかし、この空間への飛び入りが間に合わなかったのでな。AIBなる者たちに、扉を開いて貰ったわけだ」

 

 扉とはすなわち、先程のデジタル魔法陣――喪われたキングギャラクトロンMK2(マークツー)の予備パーツにある、時空移動用の装置のことだろう。

 

 昨日の戦いで、異次元に飛んだ彼の分身(ゼッパンドン)と戦ったゼガン。その顛末からの閃きで、別次元への移動能力を持たない魔人はこうして、閉ざされたメタフィールドにも参戦できたということらしい。

 

 語り終えた宇宙恐魔人ゼットは、反撃を越えて攻め込んで来たゼルガノイドたちに向かって、自らも歩み始めた。

 

「(……いや。えっと。そうじゃなくて)」

 

 微妙に、求めた核心に答えなかった魔人に対し、スカルゴモラが戸惑った様子で呼びかけた。

 

「約束は覚えている。だが……いや、だからこそ。今こいつらを力で除くことを、無意味だとは誰にも言わせん」

 

 対して、歩みを止めることなく。背中越しに、ゼットはスカルゴモラに答えた。

 

 一瞬だけ、安心させるような穏やかな声音の後に。強い決意を感じさせる、闘志を燃やして。

 

「たとえ――おまえ自身にも、だ」

〈――安心して、みんな!〉

 

 話は終わった、とばかり様子で戦いに臨む彼と代わって。

 

 先程、恐魔人ゼットの話に挙がったAIB――そのエージェントであり、ベリアルの子らにとっても姉のような存在である愛崎モアが、通信を飛ばしてきた。

 

〈彼はもう絶っっ対に味方よ! 私が保証するわ!〉

 

 妙に確信に満ちた声で、モアが力強く断言する間にも。

 

 ウルトラ戦士の天敵、その筆頭に挙げられるゼットン種の頂点を名乗る魔人は、ウルトラ戦士の偽物も当然のように蹴散らしていた。

 

「……数が多いな」

 

 だが、そんな彼をしても。未だ五十体を越すゼルガノイド全てから、追い詰められたベリアルの子らを単身守り切るのは手を焼くようだ。

 

「こちらも数で応じるか」

 

 故に彼は、孤軍奮闘をやめた。

 

 今の宇宙恐魔人ゼットが纏うのは、暗黒魔鎧装アーマードダークネス――を、かつて身に纏った経験から再現したものだ。

 

 暗黒の鎧には、滅びても闇の力で何度でも蘇る不滅の性質が備わっている。それは、闇の化身である自分自身の再創造。

 

 つまるところ。アーマードダークネスの闇には、創造の力が秘められている。その特性を学習したからこそ、ゼットという魔人は自力で同様の装備を拵え。

 

 そして――怪獣の影法師を生み出すという、アーマードダークネスの一際強大な力をも物にしていた。

 

 宇宙恐魔人ゼットが、鎧を介して放出した彼の闇の力が、実体化し。

 

 意のままに動く手駒として、宇宙恐竜ゼットンの軍勢を、メタフィールドに顕現させていた。

 

「行け」

 

 現れたゼットンたちは、合計十体。残存するゼルガノイドよりも圧倒的に少ない兵力ながらも、自身を壁にするようにしてゼルガノイドたちの侵攻を食い止める。

 

 いや、壁役どころか。本体であるゼットのみならず、分身であるゼットンたちもまた、次々とゼルガノイドを圧倒し、押し返し始めていた。

 

 予備動作のないテレポート。

 

 大容量の光線吸収能力。

 

 さらに隙を補う頑健なバリア。

 

 遠距離は強力な火球と波状光線に、近距離は硬い外皮と強靭なパワー。

 

 宇宙恐竜ゼットンという種は、基本としてウルトラ戦士に有利な能力を備えている。

 

 それでも歴史上、数々のゼットンがウルトラ戦士に敗れてきたのは、個体差や戦闘に至った状況等、様々な要因が考えられるが――何より、ゼットンに心がなかったからだと言われている。

 

 なら――ウルトラ戦士の心を持たず、能力だけを身に着けた偽物などに、ゼットンは負けないとも言い換えられるのだろう。

 

 そう思わされるだけの、圧倒的な進撃を、ゼットンたちは繰り広げていた。

 

 ……ただし。かつてレムが言ったように、この世に絶対はない。

 

 初代ウルトラマンが、心のないゼットンに倒されたように――どんな原則にも、例外は存在し得る。

 

 その証左として。ゼットンの壁の一角が、袈裟斬りに刻まれて霧散した。

 

「ほう……やるようだな」

 

 同じくゼルガノイドたちを斬り捨てた魔人が振り返った、その先に居たのは。

 

 皮肉にも、戦線がゼットンたちに押し広げられたことで進路を確保でき。これまで最前線に直行できなかった遊兵の状態を脱した、敵側の最高戦力。

 

 暗黒超邪ウルトラダークキラーが、戦場を掻き乱す宇宙恐魔人ゼットと視線を結んだ。

 

 そして。ウルトラ戦士の力と技を上回るべく、ウルトラマン型になった怨念怪獣(タイラントの亜種)と。

 

 ウルトラ戦士の心の強さを手に入れるために、ウルトラマン型になった宇宙恐竜(ゼットン)とが、遂に激突を開始した。

 

 

 

 

 

 

 突如参戦した宇宙恐魔人ゼットが、敵を食い止めてくれている間に。

 

 持ち前の再生能力を発揮する余裕ができたおかげで、培養合成獣スカルゴモラは、戦う力を取り戻していた。

 

「(……お兄ちゃん、サラをお願い)」

 

 そして、なおも危険な状態にある末妹に治癒光線を浴びせる兄へ……今は妹の力になってあげることのできないスカルゴモラは、家族としての祈りを託した。

 

「ルカ……?」

「(私は……このまま、あいつだけに任せるわけにはいかないから)」

 

 ここまでの戦いを通して、スカルゴモラはそう判断した。

 

 ――今度は一対一で、という、再戦の約束。

 

 そのための条件を覚えていると語る魔人が、モアの保証通り味方であることを今更疑うつもりはない。

 

 だからこそ――このまま、彼だけに任せてはいけないと。

 

 スカルゴモラは、激突するウルトラマン型の二大怪獣を見据えた。

 

 突撃の最中。ウルトラダークキラーが、自身を構成するキラープラズマを切り離し変化させた、自在に動くエネルギー弾・キラークラスターを連射する。

 

 それを宇宙恐魔人ゼットは広範囲に展開した光線吸収能力で防ぎ、収束。さらに自らのエネルギーを上乗せして撃ち返す。

 

 迎撃に対し。ダークキラーは腕に備えたデススラッガーで魔人が上乗せしたエネルギーを切り裂き、斬撃を飛ばしながら、解放されたキラープラズマを回収する。

 

 飛来した斬撃を、ダークネストライデントを一閃させて弾いた恐魔人ゼットだったが、その時にはもう、ダークキラーも彼を攻撃の間合いに捉えていた。

 

 その体から、既に……黒い炎を昇らせながら。

 

「はぁああああああっ!」

 

 裂帛の叫びを発するアーマードゼットと、あくまでも言葉なき操り人形である今のウルトラダークキラーが無言のまま、近距離で長槍と篭手による変則的な剣戟を演じる。

 

 取り回しに優れた双つのデススラッガーを得物とするダークキラーの連撃を、双刃の三叉槍を巧みに操り弾いた恐魔人ゼットは、そのまま穂先でダークキラーの胴体を薙ぐ――が。

 

「――むっ」

 

 腹を切り裂かれたことに、些かの痛痒も示さないダークキラーがそのまま、魔人の装甲された両腕を上向きに斬り払い――開いた胴に、抱きついた。

 

 その瞬間、ダークキラーダイナマイトが再び炸裂し。近場で戦っていたゼットンやゼルガノイドの姿勢を崩すほどの大爆発が、メタフィールドを揺るがした。

 

「(ゼット!)」

 

 自らを一時戦線離脱させたあの大技。その再びの炸裂で魔人を心配し、スカルゴモラが吠えた時。

 

「余計な不安を与えたのなら、詫びよう」

 

 何事もなかったかのように。

 

 爆発する瞬間までダークキラーに密着されていたアーマードゼットは、テレポート能力で爆発を躱し、スカルゴモラの隣に出現していた。

 

 ゼットンという種は、ウルトラ戦士に対して優位な能力のレパートリーを持つ。

 

 禁断の大技であるウルトラダイナマイトも、テレポートするゼットンの前では、ただの自傷行為にしかならないのだ。

 

「(あなた、その腕……!?)」

 

 しかし、そこに至る直前の攻防。決着のはずの薙ぎ払いが無力化され、晒した隙をデススラッガーで斬りつけられた結果、ゼットの体表を覆うアーマードダークネスの装甲が一部剥落し。

 

 その下に隠されていた、今の彼の状態が、スカルゴモラの目に映っていた。

 

「私はおまえたちや――奴と比べると、傷の治りが遅いのでな」

 

 既に復活したウルトラダークキラーを油断なく睨みながら、恐魔人ゼットがスカルゴモラに答える。

 

 昨日。宇宙恐魔人ゼットは全力の戦いの結果、カラータイマー状の器官を備えた胸から下の肉体を、喪っていた。

 

 どうやってそれを癒やしたのか。あるいはアーマードダークネスによる、外側だけのハリボテなのか……などと、スカルゴモラは予想していたが。

 

「失くした体の代わりに、AIBから頂戴した。愛崎モアには借りができるばかりだな」

 

 妙にモアを評価する彼は、胸から下の胴体と、両腕と、両足とを。元通り再生する選択肢を捨てて来ていた。

 

 アーマードダークネスの装甲の下。魔人の体は、キングギャラクトロンMK2の予備パーツを継ぎ足した、サイボーグ状態になっていたのだ。

 

〈デビルスプリンターの力で、ペダニウムと残った生体部分を融合させたようです〉

 

 星雲荘から、レムが報告する。

 

 レイオニクスの力は、有機物と無機物の垣根すら越える。かつてゼットに切り落とされたスカルゴモラの尾がギルバリスが機体を再構成する際の一部となり、さらにはデビルスプリンターで再度復活する可能性が考えられているのも、生体資源であるデビルスプリンターが金属で構成された機械怪獣であるギルバリスとさえ融合する可能性があるからだ。

 

 宇宙恐魔人ゼットは自らを復活させたデビルスプリンターの力を制御し、ペダニウムで構成されたロボット用の機体を自らと融合させることで、肉体の不足を補ったのだ。

 

「(ペダニウムゼット……ってこと?)」

「好きに呼べば良い」

 

 ベリアル融合獣キングギャラクトロンの片割れであった宇宙ロボット・キングジョーを素材とした、もう一つの組み合わせ――ウルトラマンジードを最も苦しめたベリアル融合獣、ペダニウムゼットンを連想したスカルゴモラに対し。魔人は端的に答えた。

 

「来るぞ」

 

 告げたペダニウムゼットは、迫るダークキラーに対し――まるでスカルゴモラを援護するように、前へ出た。

 

 ダークキラーの攻撃を、ペダニウムゼットがダークネストライデントを用いて逸らし。開いた顔面に、スカルゴモラが拳を叩き込み、勢いよく殴り飛ばす。

 

 ……先程までは、圧倒されていたが。培養合成獣の、より強くなろうとする遺伝子が働いて、肉体は短期間に成長していた。

 

 そんなスカルゴモラと同様の性質を捨ててまで。今、この戦場に間に合う力だけを求めた宇宙恐魔人ペダニウムゼットが、打ち上げられたダークキラーを迎え撃つ位置までテレポートする。

 

「まだだ!」

 

 水平の手刀打ちで、ダークキラーを撃墜しながら。ペダニウムゼットは胸を光らせ、リトルスターの能力を行使する。

 

 三体に増えたペダニウムゼットが、自身の攻撃で吹き飛ばしたダークキラーをテレポートで追いかけて。蹴り、殴り、ジードたちから遠ざけるように動かしていく。

 

 流石にダークキラーもやられっぱなしでは終わらず、飛ばされた先のペダニウムゼットの一体を逆に殴り飛ばす反撃を見せた。しかし抵抗も虚しく、残るペダニウムゼットが二体同時にダークネストライデントを構え、二重のレゾリューム光線にウルトラダークキラーを呑み込み、削り飛ばしてみせた。

 

 ……だが。

 

 やはり、いくら体を灼かれても。実体のない怨念(キラープラズマ)が再集結することで、ダークキラーは即座に復活を果たしていた。

 

「こちらの攻撃で全身を消し飛ばしても、即再生するか」

「(あいつ、怨念の塊で、ほとんど不死身なんだ)」

 

 ダークキラーの放つ闇の波動により、光の力(リトルスター)で生み出した分身を強制的に掻き消され。様子見のために一旦距離を取ったペダニウムゼットに、追いついたスカルゴモラが告げる。

 

「(しかも、闇の力で復活するらしいから――あなたの強さを疑ってるわけじゃないけど、あなたじゃ倒しきるのは難しい……かも)」

「私相手だというのに、気遣いに満ちた言葉選びだな」

 

 距離感を掴みかねるスカルゴモラの言い回しに、責めるでもなく。

 

 どこか感情を抑え込もうとする淡々とした調子で、ペダニウムゼットが感想を漏らした。

 

「普段なら、奴を倒し切るだけの……今より上の力が手に入るまで、再生し続けてくれる敵など歓迎するところだが」

 

 続けて、敵への感想を述べながら。闇の力の結晶であるアーマードダークネスを霧散させ、ペダニウムゼットとしての全容を白日の下に晒しながら、魔人は向かって来たダークキラーを素手で迎撃する。

 

「爆弾染みた相手が何度も蘇るというのは、今だけは厭わしく思う!」

「(それは普段から思いなさいよ!?)」

 

 バトルジャンキー全開の発言をする男に、思わずツッコミを入れてしまいながら。

 

 そんな魔人の感性が、この場では何故、変化したのかを察して。

 

 培養合成獣スカルゴモラは、自分でも理解できない感慨を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

〈我々がウルトラダークキラーを攻略する方法は、二つ考えられます〉

 

 かつて、一度はウルトラマンジードを死に追いやった、恐るべき強敵――宇宙恐魔人ゼットの参戦で、盛り返した戦線。

 

 それが、どうしても逆転にまでは至らぬ原因。

 

 不死身の暗黒超邪について、情報を整理したレムの報告が開始された。

 

〈一つは、真のレイオニクスバトルを利用して、シャイニングミスティックの能力を有効にすることです〉

「……どういうこと?」

 

 今も、重傷の妹に治癒光線(スマッシュムーンヒーリング)を浴びせながら。

 

 アクロマスマッシャーとなったウルトラマンジードは、レムの案に問い返していた。

 

〈真のレイオニクスバトルとは、一定以上の力を持つレイオニクス同士の戦いで発生する、怪獣に与えたダメージがレイオニクスにも届く現象です〉

 

 まず、馴染みのなかったキーワードを、レムが解説する。

 

〈先程、ジードがダークキラーを撃破した際。一時的に、真のレイオニクスバトルが発生していました〉

「えっ……?」

 

 怪獣を操ったことのないジードは、自身を例に挙げられて。困惑の声を漏らしていた。

 

「でも」

 

 そして、その混乱を呑み込んだ後。ジードは異議を唱えた。

 

 ジードの力が枯渇する寸前までの攻撃を浴びせても、ウルトラダークキラーは何事もなく再生した。

 

 それはむしろ、真のレイオニクスバトルとやらでは、攻略に繋がらなかったという実績ではないのか。

 

〈ダークキラーは再生できても、怪獣を操っているレイオニクス自身がフィードバックに耐えられるとは限りません〉

 

 目に見えないからこそ――文字通りの盲点となっていた突破口を、前線以外で戦う仲間として見抜いたレムが提示してくれた。

 

〈おそらくは耐えられないからこそ、ダークキラーがジードに倒される前後、あの時だけリンクが切られていました〉

 

 ダークキラーがあの復活の直後だけ、自意識を取り戻した様子だったのは、そういう理由だったのかと――ジードは納得した。

 

 そして、ジードが真のレイオニクスバトルを行えたのは、一時的な物だとしても……

 

〈今のスカルゴモラならば安定して、真のレイオニクスバトルを行えるだけの力があります〉

 

 レイオニクスの遺伝子を継ぐ怪獣として産み出された妹は、怪獣使いの力による自己強化こそを主目的としているから。

 

 数々の戦いを通し成長してきた培養合成獣スカルゴモラならば、充分。能動的にその現象を起こせると、レムが言う。

 

 しかし。

 

〈でも、それって黒幕の倒し方であって、ダークキラーは結局再生するんじゃ……?〉

〈はい。それにこれまでも、黒幕が怪獣を操りぶつけて来ていたことを考えると――まず間違いなく、一時的にリンクを切られるだけで躱されます〉

〈それじゃあイタチごっこになる〉

 

 ここまでの説明で、疑問に思ったことを。星雲荘に残ったペガとライハが、レムに応答を求める。

 

〈そのとおりです。それだけでは、復活した後にまた支配されるだけの繰り返し。そのため、今回黒幕を倒すことはできないでしょうが――敵がリンクを再び結ぶまでの間、ダークキラーはギガバトルナイザーの所有者とは無関係になります〉

 

 そこで、レムはまだ説明できていなかった二つ目のキーワードを、口にした。

 

〈その時なら、シャイニングの力がダークキラーに通用する――時間ごと再生能力を停止させてしまえば、完全消滅に追い込むのも難しくはないでしょう〉

 

 この戦いの最初、相手の対策で完全に無力化され、事態を悪化させてしまったジードの切札。

 

 逆を言えば、対策が必要な力であり――それを通すことが逆転の鍵になるのだと、レムは告げた。

 

 しかし――

 

「でも、ゼルガノイドたちは、ギガバトルナイザーに守られているままだ」

〈はい。先にゼルガノイドを全滅させることが、必要条件になるでしょう〉

 

 ウルトラダークキラーは、レイオニックバーストした今のスカルゴモラと同等のパワーと、彼女を明確に越えるスピードを併せ持つ。

 

 スカルゴモラとペダニウムゼットの二体が組むことで、戦力が完全に上回っている今だからこそ抑え込めている。しかし不死身のダークキラーが相手では、その状態を維持するのが精一杯だ。

 

 究極融合超獣サンダーキラー(ザウルス)は重傷、ジードはエネルギーが残り少ない。

 

 いくら、ゼットン軍団が味方してくれているとはいえ、数は大きく劣る。

 

 現在の戦力で、先にゼルガノイド軍団を殲滅し――その後、ダークキラーと戦うというのは、困難を極める。

 

「……レム、もう一つの方法は?」

〈コスモミラクルフラッシャーで、一気に撃破することです〉

 

 それはかつて、ロイヤルメガマスターがウルトラダークキラーに敗れた時には、なかった力だ。

 

 地球人も宇宙人も、怪獣だって、一緒に生きる――そんな未来を託してくれた、サイコキノ星人の祈りが形となったもの。

 

 そのメビウスカプセルと、ウルトラ六兄弟のカプセルを組み合わせることで発動可能となる、宇宙最強の光線の再現だ。

 

〈複数のウルトラ戦士の力を集めた光――これまでに記録されたダークキラーの討伐は、いずれもその力で成されています〉

 

 自身もその一員を担ったジードは、その瞬間の光景を思い返していた。

 

〈しかし、懸念すべき点があります。コスモミラクルフラッシャーはあくまでも、カプセルによる再現技であり、本物に劣るということです〉

 

 そう――ジードが扱えるのは、所詮はちっぽけなカプセルの力だけ。

 

 故に、虚空怪獣グリーザも、単独では倒し切れたのかが疑わしく。

 

 暗黒破壊神ダークザギには、相手が不完全体だったにも関わらず、ダークフィールドの中だったこともあって完全に力負けした。

 

 幸い、今回はメタフィールドというウルトラダークキラーにとっては不利な空間だが、それでも確実とは言えない。

 

〈そもそも、シャイニングにせよ、コスモミラクルにせよ。ジードに残ったエネルギーで、それを満足に発動できるかも保証はできません〉

 

 ウルトラダークキラーを攻略するための、突破口は見えた。

 

 だが、その突破口を明らかにするために費やした力の分。いざ攻略を実行するのが、危ぶまれるようになってしまった。

 

〈けど、どっちにしても――ジード抜きでは、ルカたちでもあいつを倒せないってことね〉

 

 かつてのグリーザと同じ。単に力で上回るだけでは、怨念の塊である暗黒超邪は攻略できない。

 

「……行って、お兄さま」

 

 その報告を聞いて、ジードの治療を受けていた末妹――究極融合超獣サンダーキラーSが、声を発した。

 

「わたしはもう、だいじょうぶだから。お姉さまを、たすけてあげて」

「サラ……」

 

 まだ、傷の塞がり切っていないサンダーキラーSが、決意を込めて訴えるのに。

 

「……わかった」

 

 その覚悟を無碍にはできないと、ジードは頷いた。

 

「でも――サラのことも、放っては置かないよ」

 

 健気な末妹に、そう続けたところで。ジードはアクロスマッシャーから再び、基本形態となるプリミティブに戻り、心の裡に呼びかけた。

 

 ――ウルトラマンが欲しい、と。

 

 その願いは、メタフィールドを通じて、朝倉リク以外の心にも繋がり。その結果が、ジードの背後に四つの光として現れる。

 

 ジードマルチレイヤーで出現したのは、ジードのフュージョンライズ形態の内の四体。

 

 その内の一体として再出現したトリィの祈りを含む姿(アクロスマッシャー)が、サンダーキラーSの治療を再開した。

 

「お兄さま……!?」

「大丈夫。僕は君たちのお兄ちゃんで……ウルトラマンだから。こんなの全然へっちゃらだ」

 

 優しく告げた言葉は、嘘だった。

 

 ウルトラマンに味方するメタフィールドの中だというのに、既に限界が近かったジードのカラータイマーの明滅は、さらに早まり。その限界が近づいていることを、雄弁に物語っていた。

 

 だが――やっと見つけた、大切な家族(もの)を守るためなら。

 

 ギガファイナライザーがない今は、命を削ることになる奮起でも。(リク)は、躊躇うことはなかった。

 

「行って来る」

 

 アクロスマッシャーとサンダーキラーSの護衛として、ノアクティブサクシードとフォトンナイトを残し。

 

 コスモミラクルの力を使うための形態であるロイヤルメガマスターとともに、本体であるジード・プリミティブは、暗黒超邪に向けて駆け出した。

 

 道中に立ち塞がる、ゼルガノイドの一体を、プリミティブ自身が蹴り飛ばし。そうして開いた道を、ロイヤルメガマスターがひた走る。

 

〈ダークキラーを撃破し得る、スカルゴモラの攻撃に合わせてください。フィードバックを恐れたレイオニクスがリンクを切れば、時間操作への耐性がなくなるだけではなく、敵の戦力が著しく低下するはずです〉

 

 消耗した状態から、確実に成果を挙げるためには――真のレイオニクスバトルが作る敵の隙、そこを狙えと、レムが言う。

 

 そんな思惑を、阻もうとするように。

 

 ダークキラーが大量展開したキラークラスターから、無数のレーザーが発射されて、眼前のスカルゴモラを牽制。続けて、その射線がロイヤルメガマスターに向けられ――

 

「――はっ!」

 

 ロイヤルメガマスターの眼前にテレポートしたペダニウムゼットが、ゼットシャッターを展開して、無数の光刃を跳ね返した。

 

「話は聞かせて貰った。後に続け」

 

 さらに、短く指示を残したペダニウムゼットは、そのままダークキラーの背後に再転移して。再びの白兵戦で、素手のままダークキラーと渡り合う。

 

「(お兄ちゃんは準備してて!)」

 

 そうしてペダニウムゼットが相手を惹きつけた隙に、スカルゴモラも再びダークキラーに肉薄し。同等の格闘能力を持つ二体――しかも、二度に渡る全力の戦いで、互いの呼吸を知悉した同士の連携により、ダークキラーを圧倒する。

 

 それでも、不死身のダークキラーを削りきれず、ロイヤルメガマスターのカラータイマーが(いたずら)に鳴り続ける。

 

 ロイヤルメガマスターが、限界を前に焦らされていると――不意に、ペダニウムゼットの足が止まった。

 

 ――強引に融合した、機械の体が起こした不具合か。

 

 致命的な隙を見逃さず、ダークキラーが強烈な右の拳(アトミックパンチ)で、ペダニウム製のゼットの胴体を貫いた。

 

「(ゼット!)」

「――今だ!」

 

 スカルゴモラの心配の声へ、短く答えて。まんまと敵を罠にハメたペダニウムゼットは、自らを貫通するダークキラーの腕を立ったままの関節技(ハンマーロック)で極めながら、その防御を抉じ開けた。

 

 そして、空いた隙間に魔人が直撃させたのは、ペダニウム機関を利用してさらに効率的なエネルギー運用を可能とした一兆度の大型火球、ペダニウムメテオ。

 

 強大な熱エネルギーを秘めた一撃は、ダークキラーの胴体を丸呑みにするも、撃破には至らない。

 

 しかしそれは、テレポートで撃ち逃げした魔人の、狙い通りだった。

 

「(スカル超振動波ぁっ!)」

 

 その超高熱火球を通り道に、スカルゴモラが全身の角を音叉として放つ波動で、ウルトラダークキラーを追撃した。

 

 音の伝達は、高温環境下であるほどに効率化され、加速する――一兆度などという、恒星でも及ばぬ天文学的な高温であれば、いわんや。

 

 ペダニウムメテオの火球が弾けたところに叩き込まれたスカル超振動波は、ダークキラーの強固な怨念の外骨格を粉砕し。さらには超微細な振動の連続で、その動作を封殺する。

 

〈今です、リク〉

「コスモミラクル……フラッシャー!!」

 

 ダークキラーが防御力と回避力とを喪失したところに、ロイヤルメガマスターは要となる一撃を繰り出した。

 

 超絶撃王剣キングソードの全体から放たれた虹色の光の雨は、崩壊寸前だったダークキラーの全身を穿ち、解かす。集合実体(ダークキラー)から、その源たる怨念・キラープラズマという蒸気状に拡散した後の闇すら、その影も残さず消し飛ばして行く。

 

「ガッ……ぐぁあああああああっ!!」

 

 彼らを操っていたレイオニクスの支配から、解放されたことを示すように。

 

 言葉を取り戻したダークキラーは、哀れにも苦痛を訴える叫びだけを発していた。

 

 ――ウルトラ戦士を憎む、怪獣たちの怨念。

 

 無理やり蘇生され、戦いの道具にされた彼らを憐れに思いながらも――ちっぽけな力しか持たない今の自分にできることは、これしかないのだと。

 

 ……亡き父と同じように。せめて、彼らがこれ以上、苦しむことがないように、と。

 

 亡者を再び、あるべき場所に送ろうと、ジードは怨念たちの悲鳴を無視し、光を放つことに努めた。

 

 ――そして、その声が聞こえなくなって。

 

 キラープラズマの残滓も、見えなくなったところで。既に限界だったコスモミラクルの照射を止めたロイヤルメガマスターもまた、その瞬間に霧散した。

 

 

 

 

 

 

「(やった……っ!)」

 

 ロイヤルメガマスターによる、ダークキラーの撃破を見届けて。

 

 満足に発動できるかも危ぶまれていたコスモミラクルフラッシャーの一撃が、遂にダークキラーを浄化したのを……少しだけ、後ろ髪を引かれる想いを懐きながら。

 

 スカルゴモラは兄の勝利を讃え、喜びに吠えた。

 

 代償として。コスモミラクルフラッシャーの照射が終わると同時、ジードはいよいよ力を使い切ったらしく。ジードマルチレイヤーで顕現していた分身たちが一斉に消滅し、後方のプリミティブ――本体だけが残っていた。

 

 その本体も、ここが地球上であったなら。とっくに巨人体を維持できないほど消耗しきった様子で、倒れ伏した。

 

 限界だったジードによる、ダークキラーの撃破が間に合うよう。敢えて特攻し貫かれたペダニウムゼットもまた、機体の歩行機能へ本当に障害を来したのか、膝を折る。

 

 だが――まだ敵は、残っている。残された脅威から、彼らを守らなければならない以上、一息吐くのはまだ先だと、スカルゴモラは悟った。

 

「(後は、こいつらだけ――っ!)」

 

 そう決意して、振り返ったその時。

 

 視線の先で――七体のゼルガノイドが、列を為していた。

 

 横並びになっているのは、ゾフィーからタロウまでの六体を模したウルトラ六兄弟型のゼルガノイド。

 

 彼らの中心で、一歩前に立っているのは、メビウス型のゼルガノイド。

 

 その組み合わせは――ジードが今しがた使用したカプセルと、同じ並びだった。

 

「(まさか……!)」

 

 呻いた、その時には。

 

 後列の六体のゼルガノイドは、スフィアソルジャーに戻りながら。ウルトラカプセルとともに、残る一体と再融合していた。

 

 ――ゼルガノイド・メビウスに、ゾフィーからタロウまでのウルトラ六兄弟型が融合した、合体ゼルガノイド。

 

 それこそは。かつてウルトラダークキラーを倒した(スーパー)ウルトラマンタロウの、さらなる上位形態――メビウスインフィニティーを再現した姿。

 

 あの虚空怪獣グリーザの撃破を始め、つい先程もウルトラダークキラー攻略の要となるなど、幾度もベリアルの子らを助けてくれた力の大元。

 

 今、その力だけを模倣した悪意が、ダークザギにも次ぐ脅威となって、メタフィールドに出現していた。

 

「(サラッ! お兄ちゃん!)」

 

 よりにもよって。消耗から回復しきれないまま、その脅威の前に残された兄妹の名を、スカルゴモラが叫ぶ。

 

「ゼットーン……!」

 

 スカルゴモラの狼狽を、晴らそうとするように。散り散りでゼルガノイド軍団と争っていた複製ゼットンたちが、サンダーキラーSとゼルガノイド・インフィニティーの間に立ちはだかるべくテレポートし、一斉に一兆度の火球を発射する。

 

「シェアッ!」

 

 対して。ゼルガノイド・インフィニティーは、左の前腕に装備したブレスに右手を当てて、掛け声とともに横滑りさせた。

 

 その掌の動きに合わせて巨大な光刃が出現し、迫る火球と、その発生源であった九体のゼットンを、一刀の下に消滅させた。

 

 インフィニットエッジ。それはウルトラ戦士がよく使う、牽制用の光線技と、同系統の一撃。

 

 牽制用の技だけで、宇宙恐竜ゼットンの群れが、一掃されたのだ。

 

 本物には遠く及ばないゼルガノイドだというのに、それでこの威力。スカルゴモラも思わず息を呑む。

 

 さらに。ゼルガノイド・インフィニティーの全身が、一度炎に――ブレイブバーストのオーラに包まれたかと思うと。

 

 続いて、虹色に輝き、崩壊し始めた。

 

「――ルカ、ダークフィールドを!」

 

 その様子を目にした途端、倒れ伏したまま、顔だけを起こしたウルトラマンジードが声を張り上げた。

 

「奴は、コスモミラクル光線を撃つつもりだ!」

 

 虹色に輝くゼルガノイド・インフィニティー。自らの発光で体内から穴が開き、崩れ、融け落ちていく。

 

 ブレイブバーストで補強しても。ウルトラカプセルという紛い物でもなお強大な、メビウスインフィニティーの力の真価は、ゼルガノイドという器に余る。

 

 その不足を、スフィアソルジャーに再分離した周囲のゼルガノイドたちが続々と追加融合して、肉体が崩れるそばから補い、強引に発射シークエンスを進めて行くのは……先程、こちらの切札として放たれた、宇宙最強の光線だった。

 

「その前に!」

 

 同じ、カプセルを基にした紛い物でも。ブレイブバーストしたゼルガノイド・インフィニティー自体の出力は確実に、先程のウルトラマンジードを上回る。

 

 この様子では、一度しか撃てないとしても。宇宙の歪みすら消し去るコスモミラクル光線の威力は、その一度でこちらを全滅させて余りあるはずだ。

 

 その威力を削ぐには。ウルトラマンの力を増幅するメタフィールドから、ウルトラマンの光を奪うダークフィールドに相転移するのが確実……だが。

 

「(でも、お兄ちゃんは……っ!)」

 

 そうなれば、ただでさえ限界のウルトラマンジードは。兄は、確実に巨人体を維持できない。

 

 この戦場で、地球人と同等の生身を晒せば、余波だけで死ぬ――その事実が、スカルゴモラの決心を阻んでいると。

 

「私に任せろ」

 

 膝を着いたままのペダニウムゼットが、倒れたままのジードの前に転移して。そこでバリアを展開していた。

 

 かつて、自らの手で命を奪ったこともある、光の巨人を――今度は、その手で守り抜くために。

 

「(――っ!)」

 

 言葉にできない感情が込み上げるのを、自覚しながら。

 

 スカルゴモラは、背の角からダークシフトウェーブを放射して、メタフィールドを闇に塗り替え――ウルトラマンの光を奪った。

 

 兄であるジードは、その巨人としての状態を維持できなくなって、ペダニウムゼットの展開するバリアの中に朝倉リクの生身を晒し。

 

 ゼルガノイド・インフィニティーも、臨界寸前だったコスモミラクルの力の一部を削がれ、発射までの猶予が生まれていた。

 

 だが、ゼルガノイド・インフィニティーを崩壊寸前に追い込んでいる膨大な出力は、ダークフィールドでもとても無力化しきれない。迂闊に突くだけでも、昨日のゼット以上の爆発を起こすことだろう。異次元の回廊も、コスモミラクル光線ならば貫通し得る。ダークフィールドの中で完全に止めなければ、地球が危険だ。

 

「――ここは、わたしが!」

 

 そこで、ウルトラマンジードの献身によって傷を完治し――ダークフィールドに切り替わったことで、全能力を発揮できる状態になったサンダーキラーSが、滅亡の邪神としての第二(ギガント)形態に変貌して、最前列に立った。

 

「(ううん――二人で行くよ、サラ!)」

 

 その妹と、レイオニクスの力でリンクを結び。自らの力で強化して、敵と同じく強化現象(ブレイブバースト)を起こさせながら。

 

「(生きて、勝つんだ……皆で!)」

 

 怪獣と超獣の姉妹が、対峙したその瞬間。

 

 ゼルガノイド・インフィニティーから、遂にコスモミラクル光線が発射された。

 

 ……スカルゴモラたちの前に、黒い靄が結集して。究極融合巨大超獣をも上回る、巨大な人型を形成したのは、それと時を同じくしてのことだった。

 

 

 

 

 

 

 巻き戻される前の時間の中、一度は己を殺した魔人の展開した安全圏(バリア)の中で。

 

 リクは、思わぬ乱入者の名を叫んだ。

 

「ウルトラ……ダークキラー!?」

 

 再出現したのは、リクが力を使い果たしてまで、撃破したはずの怨念の化身だった。

 

 コスモミラクルでなければ倒せない、と――ペダニウムゼットが、捨て身になってまで繋いだチャンスでも、リクは失敗していたということらしい。

 

 ブレイブバーストによる強化はなくなったが。サンダーキラーSと同じく、周囲がダークフィールドに変わったおかげで万全以上の力を取り戻した暗黒超邪は、かつてニュージェネレーションたちとの最終決戦で見せた超巨大形態で復活し。

 

 再出現と同時、その全エネルギーを注ぎ込んだダークキラーシュートで、コスモミラクル光線を迎撃した。

 

 おそらくは。消滅したと思われたダークキラーの代わりに、ゼルガノイド・インフィニティーを切札に据え、レイオニクスの力を割いた結果。スフィアペンドラゴンに潜む黒幕は、ダークキラーに対する注意力が足りなくなった。

 

 おかげで、自由を取り戻した怨念の化身は――どういった意図であれ、自らの意志で最強のウルトラ戦士を模したゼルガノイド・インフィニティーに挑んでいた。

 

「――ぬぅおあああああああああっ!」

 

 まるで……今まさに、ウルトラ戦士の形をした暴力に晒される怪獣たちを、その巨体で守るように。

 

 だが――ダークキラーは過去、合体したウルトラ兄弟を前に消滅している。

 

 劣化再現体とはいえ、それ以上の合体戦士を基にしたゼルガノイド・インフィニティー相手では、いくらなんでも分が悪過ぎる。

 

 超巨大ウルトラダークキラーの放つ全力のダークキラーシュートは、あっという間にコスモミラクル光線に押し切られ――本体への直撃を、許していた。

 

 ダークフィールドの助けが何より大きいが……ダークキラーがジードのコスモミラクルフラッシャーから復活できたのは、所詮はカプセルの力に過ぎなかったからと。それさえ満足に扱えないほど、ジードが消耗し切っていたためだ。

 

 同じくカプセル由来でも、自己崩壊も厭わず放つゼルガノイド・インフィニティー全力のコスモミラクル光線を続けて受ければ――今度こそ、ダークキラーも耐えられない。

 

 ……その時。

 

 逃れられない消滅の間際――ウルトラダークキラーが、微かに。背後を振り返ったように、リクには見えていた。

 

 そして。ウルトラダークキラーの巨体を、今度こそ完全消滅に追いやった恐るべき光線が、続いてリクの妹たちへ迫り――サンダーキラーS・ネオを直撃した。

 

「う……くっ、ぎぎ……っ!」

 

 ウルトラダークキラーが、威力を減殺して。サンダーキラーS・ネオが吸収能力を全開にして、なお。

 

 再現されたコスモミラクル光線は、ブレイブバーストを果たしたサンダーキラーS・ネオを傷つけ、彼女に力を授けるスカルゴモラをも、真のレイオニクスバトルの反動で苛む。

 

「負けるな、サラ! ルカ!」

 

 聞いたこともないような悲鳴を漏らす妹たちに、思わず身を乗り出したリクが、叫んだその時。遂に限界を迎えたサンダーキラーS・ネオの肉体が、崩壊し始め――

 

 その欠損を、補うように。究極融合巨大超獣の全身から、黒い靄が溢れ出していた。

 

 

 

 

 

 

「どうして、たすけてくれるの?」

「……我が怨念を、晴らすため」

 

 真っ白な世界で。怨念の化身である悪魔の落とし子が、怨念の化身である暗黒超邪に、問いかけていた。

 

「でも。あれは――」

「わかってくれたから、だよね」

 

 その、サンダーキラーSの精神世界に。

 

 妹と繋がった、レイオニクスとしてのリンクを通じて。

 

 培養合成獣スカルゴモラも、自らの心を踏み入らせていた。

 

 サンダーキラーSの裡に取り込まれた……コスモミラクル光線の中に融けた、ウルトラダークキラーの残留思念との、対話のために。

 

「……あなたたちは、ウルトラ戦士が怖かった」

 

 ウルトラダークキラーと戦っていた、スカルゴモラは。彼を構成する、殺された怪獣たちの怨念に含まれた、その恐怖を感じ取っていた。

 

「自分たちの命を理不尽に奪う、悪魔にしか見えなかったから。その理不尽な暴力を、恐れ、憎んだ」

 

 ウルトラマンを悪魔のように歪めたウルトラダークキラーとしての姿は、その意趣返しだと。

 

 同じように、ウルトラマンを悪鬼の如く恐れた合成怪獣は、彼らの気持ちが痛いほど理解できていた。

 

「でも。私たちのために必死だったお兄ちゃん……怪獣のために、理不尽に立ち向かうウルトラマンジードを見たから。そうじゃないって、わかってくれた」

 

 ダークキラーと同じ恐怖に苛まれていたスカルゴモラを抱き締めてくれた、ウルトラマンジードは言っていた。

 

 確かに、ウルトラマンは怪獣を攻撃するかもしれない。だけど、それだけがウルトラマンの役目じゃない――

 

 ウルトラマンも、本当は。自分たちの大切なものを守るため、他に手段がないからと言って。やむを得ず怪獣を倒すことを、いつも悩んでいた。

 

 その上で。怪獣たちと戦わざるを得ないという理不尽に、いつもその命を懸けて、挑んでいた。

 

 怪獣との共存を望む、大空大地とエックスだけでなく。アサヒたち湊兄妹や、タイガたちトライスクワッドもそうだった。

 

 サイコキノ星人カコの孤独に寄り添い、違う星の人同士で、兄妹のような関係を築いたという――今、ゼルガノイドに姿を騙られているメビウスのように、ベリアルの子らが出会ったことのないウルトラマンたちも、きっと同じ。

 

 ウルトラマンは、好んで暴力を揮う理不尽ではなく。

 

 ウルトラマンたちもまた、彼らなりの事情で、理不尽に立ち向かっているだけなのだと――ダークキラーの中に、気づきが芽生えた。

 

「……今ここにある以外の、次の怨念(我ら)がどう思うかは、わからんがな」

 

 スカルゴモラと、サンダーキラーS――ウルトラマンの血を引く怪獣の姉妹に背を向けたまま、ダークキラーという形を取った怪獣たちの魂は、そう述懐した。

 

「今の我らが恨むべき、理不尽な暴力の権化は……奴だ」

 

 彼は、眼前の――誰かを傷つけるために、ウルトラ戦士の力だけを模した悪意を、強く睨んだ後。

 

 そこでようやく、姉妹を振り返り、告げた。

 

生者(貴様ら)が、我らの無念を晴らせ」

 

 その時の彼の目は、妄執が晴れたことを表すように――毒々しい赤紫から、ジードのような澄んだ青空の色へと、その瞳の輝きを変えていた。

 

 

 

 

 

 

 ……そして。本物に遥かに劣るコスモミラクル光線は、本物よりも短い時間で照射を終えて。

 

 キラープラズマの助けを受けたサンダーキラーS・ネオは、全身から蒸気を発しながらも健在のまま、スカルゴモラや朝倉リクたちを守り切っていた。

 

「……こすもみらくる」

 

 光線を撃ち終えて、消耗し切ったゼルガノイド・インフィニティーに対し。

 

 光線を吸収し終えて、消化しきれぬ膨大なエネルギーを持て余し、未だ苦しみながらも。エネルギー総量で逆転したサンダーキラーS・ネオは、眼前の敵を見据え。

 

 その光線の中に融けた亡霊たちの望みに応えるように、攻撃の号令を発した。

 

「きらーりばーす!」

 

 光線を吸収する力など持たない、ウルトラ戦士を模しただけのゼルガノイドは――サンダーキラーS・ネオが自らのエネルギーの一部と混合して放出した、コスモミラクル光線に呑み込まれ。呆気なく光の中に解けて、消滅していた。

 

 そして、今度こそ全ての敵が滅び去ったのを見て。

 

 スカルゴモラは、ダークフィールドを解除した。

 

 

 

 

 

 

 壮絶な戦いを終えたベリアルの子らは、星山市に戻るなり――この星の環境に適した、地球人へ擬態した姿を取った。

 

 戦いに疲れた体を休めるため……そして、自分たちの巨体で、うっかり街を壊してしまうことがないように。

 

「お疲れ様、皆」

「……うん。ありがとう、お兄ちゃん」

 

 一足先に、地球人の姿になっていたリクに駆け寄って。ルカは、いつものように――そして、改めて。心からの、言葉を告げた。

 

 ……もしも、(リク)と出会えていなかったら。自分も、(ダーク)(キラー)の一部になるしかなかっただろう。

 

 リクが居なければ、ダークキラーの――ほんの一部とも、わかり合うこともできなかった。きっとここで、自分も妹も死んでしまっていた。

 

「ちょ、ルカ?」

 

 幸福な出会いに、その運命に。もう何度目かもわからない、心からの感謝を、兄に抱きついた腕に込めて。ほんの少しでも伝わって欲しいと、願っていた。

 

「皆!」

 

 そのリクとの出会いが繋いでくれた縁……血の繋がらない、しかし互いを慈しみ合える家族や、仲間たち。

 

 星雲荘に残っていたライハやペガが、レムの意識を伝達するユートムとともに、転送されたエレベーターから飛び出して、同じように駆け寄ってきていた。

 

「大丈夫、全員無事!」

 

 心配した様子で駆け寄る仲間たちに、力強く握り拳を示しながら。ふと不安になって、ルカは周囲を見回した。

 

「街も、守りきれたよね……?」

「ええ」

「よかった……」

 

 ライハの肯定に、ルカは安心して溜息を吐いた。

 

 彼らと暮らすこの街、この星、この宇宙。この世界を、今日も何とか守り抜くことができた。

 

「お兄ちゃんと、サラと、ライハたち……」

 

 彼らと生きる幸せを、彼らとともに守ることができた――その事実を、噛み締める。

 

「それに……」

 

 そしてーーそれを叶えたのは、自分たちの力だけではなかったことも、忘れてはならない。

 

「……ゆうれいさん」

「うん、そうだね」

 

 ぽつりと、己が胸に手を当てる(サラ)と、視線を合わせ頷いて。

 

 今を生きる自分たちのために、苦しみを肩代わりしてくれた、怪獣たちの魂(ウルトラダークキラー)

 

 その優しさにも、改めて感謝を捧げながら……ルカは、共にダークフィールドから帰還した、一人の巨人を見上げた。

 

「それから、あなたのおかげだね。ゼット」

「……礼を言われる筋合いはない」

 

 膝を着いたままだった姿勢を、強引に起こしながら。

 

 ペダニウムゼットは、ルカの呼びかけに首を振り、感情を押し殺した声で答えた。

 

「私は私の、好きにしただけだ」

「それが、僕らを助けること?」

 

 ルカが何と返したものか悩んでいると――代わりに、リクが。またも立ち去ろうとする魔人を呼び止めるように、尋ねていた。

 

「……そういうことになる」

「なら、やっぱりお礼は言わせてよ。君にその筋合いがなくても、僕らにはあるから」

 

 やや、返事に窮した後のペダニウムゼットの回答へ、リクはきっぱりと言う。

 

 ルカの感謝を、きちんと受け取って欲しいと。

 

 ルカの兄として、その恩人へ。

 

「ゼロやアサヒには、またちゃんと謝って欲しいけど……僕らはもう、家族を助けてくれた恩人を、恨んではない」

 

 そんなリクの訴えに、流石にペダニウムゼットも呆気に取られた様子で、耳を傾けていた。

 

「……許す、というのか。その家族を傷つけた、この私を?」

「だって君も――今はもう、ルカの笑顔を願ってくれているんだろ?」

 

 心あるゼットンが抱いたそれは、ウルトラマンジードが戦う理由とも重なっていたから。

 

 宇宙恐魔人ゼットは、身勝手な悪意に満ちていたが――今の彼は心を改め。彼なりの贖罪に身を投じていることは、ベリアルの子らの目には明らかだった。

 

「……これからも、ルカとの約束を守ってくれるなら。これからは、一緒に戦って貰えないかな」

「お兄ちゃん……」

 

 一度は生命を奪われた、当人だというのに。

 

 憎むべき相手だったはずの魔人すら、その改心を受け入れ、更生を信じ――共に生きようと訴えかける、リクの優しさに。隣で聞くルカもまた、感じ入っていた。

 

 それから、ルカもまた。己の同類である魔人を見上げて、肩を竦めた。

 

「お兄ちゃんがこう言ってるんだもん。私ももう、許すしかないよ」

 

 そう、ルカも続けば。

 

「……そう、か」

 

 一言、呆けたように相槌を打った後。

 

 どこか、安心したように。彼らしくもなく、ペダニウムゼットは笑っていた。

 

 そんな彼に、ルカは改めて、謝罪とお礼を重ねて告げた。

 

「私こそ……一度、あなたの命を奪った側だからね。なのに助けてくれて、ありがとう」

「気にするな。命のやり取りを持ちかけたのは私だった。おまえたちには何の咎もない」

 

 優しい声音で、かつて怨敵だった魔人はゆっくりと首を横へ振って――戦いの中で出会った者同士としての因縁は、ここで一度清算された。

 

「だが、そうだな。一度目の命のことはどうでも良いが……私の心を奪ったことだけは、どうかこれから、気に留めておいてくれないか」

「うん」

 

 頷いた後。ルカたちは、ペダニウムゼットの妙に嬉しそうな様子と、その台詞に、引っ掛かりを覚えた。

 

「……うん?」

「一緒に戦おうと――共に生きることへの、許しは得た。ならばもう、我が愛を伝えることに迷いはない」

「……え?」

 

 魔人の口から出るには、あまりにも不似合いな単語があって。

 

「――朝倉留花(ルカ)

 

 脳が追いつかなくなって、混乱するルカたちが見上げていると――宇宙恐魔人ゼットは、初めて。同類である生命が、自己を定義する名で呼びかけて。

 

 そして、厳かに告げた。

 

「私はおまえに、恋をしている」

「……はぁああああああああああああああっ!?」

 

 困惑を極めた絶叫が、星山市の空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「――えぇええええええええええええええっ!?」

 

 宇宙人捜査局AIBの地球分署・極東支部にて、愛崎モアも驚愕の叫びを上げていた。

 

 原因はもちろん、リアルタイムで様子を伺っていた、星雲荘の一行と宇宙恐魔人ゼットのやり取りにあった。

 

〈ルカ――ああ、良い響きだ。初めて私に祝福をくれた、我が愛よ。おまえと出会えて、私は生まれ変わった心地だ〉

「じ、ジーッとしてなさ過ぎる!」

 

 暴力と闘争に凝り固まっていた魔人が、突如として愛を語り出したのは……実はというか、だいたい全部モアのせいだった。

 

 

 

 ……メタフィールドに突入するため。宇宙恐魔人ゼットがAIBに接触して来た、ほんの少し前のことを、愛崎モアは回想する。

 

 

 

「ルカちゃんを、助けに行きたくて……AIBの力を借りたい、ってこと?」

「ああ。どの面を下げて、とは思うだろうが。どうか、聞き入れて貰えないだろうか」

 

 そのように。彼からすれば、胸から下がない瀕死の状態でも、なお力で劣るはずのAIBに。宇宙恐魔人ゼットは、あくまでも助力を請う姿勢で、頭を下げていた。

 

 無頼に振る舞う戦闘狂だった魔人の、その変わり様を見て。宇宙恐魔人ゼットはモアの中で、一度はリクを殺した憎むべき敵から、全く別のカテゴリーへ移行した。

 

「悪いが、我々には貴様を信用する理由が――」

「待ってください、ゼナ先輩」

 

 この危機に、喉から手が出るほど欲しい戦力ながら、当然警戒するしかない上級エージェント・シャドー星人ゼナを制し。モアは上司と代わって、交渉の最前線に出た。

 

「あなた、好きなのね。ルカちゃんのこと」

「好き? ……ああ、そうか。これが、好敵手というものか」

「違う違う! あなたのそれは、恋よ!」

 

 勝手に納得しかけた朴念仁を叱り飛ばし、モアは指摘する。

 

「恋?」

「あなたはルカちゃんに恋をして……愛のために、自分を変えられるぐらい強くなった! そのためにまだ生きたい、って思えるぐらいに!」

 

 胸から下がないまま、意志の力だけで強引に命を繋いでいる――そんな状態で、他の誰かを助けに行きたいという宇宙恐魔人ゼットを指差して、モアは言い切った。

 

「私が……強くなった?」

「そうよ。これまでのあなたなら、きっと私たちに頭なんか下げられない――それで、ルカちゃんのところに行けないまま、絶っっ対に後悔してた」

 

 復活に伴い、弱体化して。取り戻した肉体までも喪った瀕死の敗北者。

 

 そんな状態の恐魔人ゼットを、強くなったと断じたモアは――これまでの彼なら残したであろう悔いを、指摘した後。そうはならなかったと、今の彼に訴える。

 

「でもあなたは、愛を知ったから。私たち人間や、他の命と同じように、恋をして強くなった。そして愛があれば、もっと強くなれる」

「恋をして……愛で、強くなる……っ!?」

 

 最強の生命体となるため、自律した心を与えられたゼットンは。恋を知る乙女の胆力で堂々と自分と対峙するモアの説得に、衝撃を受けた様子で復唱していた。

 

「そうか……これがジョーニアスの言っていた、心の強さ」

 

 そして。かつて戦ったという、惑星U40(ユーフォーティー)の賢者の名を挙げながら、魔人が何事かを回顧した。

 

 しかし。新たな気づきに感じ入り、精神状態と結びついたリトルスターを激しく輝かせていた恐魔人ゼットは、その光量を落とすことで内省を示した。

 

「だが……今更私に、彼女を愛する資格など」

「……好きな人の近くに居ると、幸せだって思えるの。そんな人と出会えるなんて、すごいことなんだよ。だから、勝手に諦めちゃ駄目」

 

 かつて、失恋したと思い込み、地球に逃れただだっ子怪獣ザンドリアスにもぶつけた己の信念を、モアは迷える宇宙恐魔人ゼットへ伝えた。

 

「それに……愛して欲しいからじゃなくて。そもそもはただ、大切だから。これからも、生きていて欲しいから。ルカちゃんたちを、助けに行きたいんでしょ?」

「……ああ」

 

 その問いには、迷いなく頷いた魔人を見て。モアもまた、力強く頷きを返した。

 

「じゃあ、そんなところでジーッとしてても、ドーにもならないんだから。私たちの代わりに、あなたの強さで、ルカちゃんたちを助けてきて」

 

 ……などとして。モアは宇宙恐魔人ゼットとの和解に成功し、ゼナを始めとするAIBの仲間たちも納得させることができた。

 

 後は、発進直前にペダニウム製のボディを見つけて欲しがったゼットの代わりにゼナたちを説き伏せ、万全の状態で最強の援軍を送り出すことができたという次第であったが――

 

〈共に生き、愛を育み、戦いを重ね……二人で、どこまでも強くなろう〉

 

 ――そのモアをして、ゼットの思い切りの良さは、想像の域を越えていた。

 

〈な、な、何言ってんのあんたー!?〉

〈お姉さま、もてもて~!〉

〈こいつ……ぶっ飛ばしてやる!〉

〈だ、駄目だよリク! また殺されちゃうよ!?〉

〈何を言っている。私がこの先、兄上を害することなどあるものか〉

〈その口で僕のことを、兄上って呼ぶな!〉

〈……私も認めないわよ〉

〈どちらにせよ、リクは今フュージョンライズできません〉

 

 喧々諤々。爆弾発言を重ねる宇宙恐魔人ペダニウムゼットと、星雲荘の面々のやり取りを、通信で拾いながら。

 

 遠からず――ゼットを唆した元凶として、彼らに質問責めされてしまうのだろうと。

 

 遂に姿を見せ、また行方を晦ました黒幕・スフィアペンドラゴンのことよりも。

 

 AIBの問題児こと愛崎モアは、そんな卑近なことを気にしていた。

 

 

 

 

 




Cパートあとがき


 宇宙恐魔人ゼット。グランデ枠かと思ったら、ダーゴンさん枠だったの巻。

 ……ということで、一年以上前から「今後の展開が『ウルトラマントリガー』とネタ被り」と度々言っていたの、「武人系の闇の巨人が恋に堕ちて味方化」という展開でした。むしろ寄せに行った部分もありますが、こちらの更新が滞った間にかなり昔の話になってしまいました。

 そして同時に、こいつがペダニウムゼットン枠でした。そもそもが胸にカラータイマー付いている唯一のゼットンですからね。
 実はアーマードダークネスも、「ゼットンではない大怪獣バトルのラスボス」としてはキングジョーと共通点があると言えるので、アーマードゼットの方が先に強化形態として出てきていた格好でした。キングギルバリス戦はゼットンVSキングジョーと同時にペダニウムゼットンVSキングギャラクトロンというネタでもあったわけです、と今更のネタバラシ。

 バーニング・ベムストラは行間退場になってしまいましたが、これでベリアル融合獣ではないとされるアトロシアスを除いたベリアル融合獣もコンプリート。黒幕の登場と合わせていよいよ終盤らしくなって来ましたように、残り3話で完結の予定です。どうか引き続き、お付き合いくださると幸いです。



 以下はいつもの言い訳解説。

・真のレイオニクスバトルと自爆技
 公式に存在する要素。一定以上のレベルに達したレイオニクス同士が戦う時、使役怪獣が受けたダメージをレイオニクスも味わうという現象です。
「じゃあダークキラーダイナマイトした時点で黒幕もリンク切ってなきゃ爆死しない?」という疑問が生まれそうなので、本作ではただ「受ける」ではなく「相手に届く」と、敵対者の行動によるダメージのみフィードバックされる扱いとしました。
 正史では自爆技持ち(あるいは不死身)の怪獣の使い手が真のレイオニクスバトルの反動で死んだ例がない(原典では不死身に近いガルベロスを従えていたナックル星人はダイレクトアタックで爆死した)ため公式設定ではありません。


・青い目のダークキラー
 これはウルトラダークキラーというキャラクターが初登場した『CRぱちんこウルトラマンタロウ』で描かれた要素になります。ダークキラーは己の生命を削ってでも正義を守ろうとするタロウたちウルトラ兄弟の姿を見て、自分の心に憎しみ以外の感情が芽生えるのを感じ、戦意を喪失。その際、目の色が青く変わっていた――と、実は初登場時点で改心の布石が打たれたキャラクターだったのですね。
 その後の展開では特に改心していませんが、上記の初登場時のエピソードは似た出来事があったとして正史に組み込まれているので、「ダークキラーには改心の余地があり、その象徴が青い目」として今回採用した形です。
 この改心要素と、タイガフォトンアースに似たシルエットをした怪獣の怨念の集合体であること、恐魔人ゼットとは『ギャラファイ』シリーズで映像作品に初登場し、実質同作のラスボスを務めた同士の対戦カードになること、怪獣でありながらウルトラ戦士と同じ技を使える存在であり、黒幕が「ウルトラ戦士との戦いに備えてベリアルの子らを鍛えたい」等々の理由も相まって、当初ボス枠で考えていたゾグを押し退けて今回のメイン怪獣になりました。
 今回のダークキラーが改心しても新しい怨念は集まるし、新しい怨念怪獣も出現するので、公式との矛盾にはならないはず……!

 なお、見た目が恐怖の対象であるウルトラ戦士への意趣返しというのは公式設定ではなく、本作の独自解釈になります。世界を闇に包もうとするのもエンペラ星人は自分たちの苦しみを他者にも知らしめたいから、ベリアルはエンペラフォロワーだから、なのに対して、ウルトラダークキラーは「光の戦士に脅かされない安息の地が欲しかったから」かな、などと本作では考えております。
「ぱちんこウルトラバトル烈伝 戦えゼロ! 若き最強戦士」のダークキラーは現状正史ではないようですが、上記の解釈を踏まえると「己の生まれた理由は妄執だったと悟ったダークキラーという人格の一部が、自らの存在意義としてウルトラの戦士との戦いを選んで復活した」ルートなのかなと考えております。


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