花音ちゃん、誕生日おめでとう。
そしてこれまで読んでくれた皆さん、ありがとうございます。
今回は『バンドリ小説』……厳密には『月の少年とRoselia』の本当の最終回になります。
ゲーム等で例えるなら、全トロフィーも獲得した真の完全クリア、更に言うなら、100%ならぬ『102%』と言うやつです。
※隠しトロフィー称号:『繋ぎし月の音色、響く時』:
前半ちょいシリアスですが、自分なりに頑張ってみました。
それではどうぞ。
そして、
「ふう、いっぱい買ったね」
「この通りにはスーパーもあるし雑貨屋さんもあって、とっても便利ね」
大学生になった花音と千聖は、買い物を終えて、大学近くのメインストリートを歩いていた。
現在2人は、ルームシェアをしているのである。
「……」
「花音?」
「えっ? な、なあに? 千聖ちゃん」
「……悠里の事、考えてたでしょ?」
ほんの少しだけ寂しそうな表情をしてた花音。その理由を知ってる千聖が声を掛ける。
「…………うん」
誤魔化す事を止めた花音は小さく頷いた。
「私ね? 今でも思うんだ……本当にこれで良かったのかなって……」
「…そうね。いくら悠里が選んだ事とはいえ、正直なところ、私も納得はしてないわ」
賑やかな人の声に自分達の声が掻き消されるかのように、ポツリと呟く2人。
卒業式を終えた次の日、
…そう。彼が手伝いをしてたバンド、
彼の事を憶えていたのは花音と千聖だけという、ありえなく、そして残酷極まりない現実だったのだ。それでも彼の手掛かりを捜し続けた2人。それこそ
最終的に花音が悠里を見つけ出したのだが、彼の口からは『…悪いけど考えさせて。だけど絶対に期待しないで』と告げられただけ。
そして今に至る。
「正直、今も怖いんだ。大学で紗夜ちゃんに悠里くんの事を訊こうかなって思ったんだけど……その先の答えを聞くのが怖くて……」
「……」
その気持ちは分かる。
彼を見つけた時に『僕の事なんか忘れていいから』と千聖にも言ったのだ。それを聞いた千聖は怒鳴ったのだが、悠里は『ごめん』と諦めたかのように答えるだけ。
千聖も同じ大学に通ってる
もう1人……幼馴染みの
しかし彩からは『ちょっと違うけど……私は信じてるから』の言葉だけが聞けたのだ。
「(きっと……彩ちゃんも悩んでたのね……)」
今なら分かる。彩が言ってたのは、高校3年生の夏休みに海に行った際に見せた
「あ、見て千聖ちゃん、あの雑貨屋さん、可愛い家具がたくさん並んでる」
すると少しでも話題を変えるかのように、花音が雑貨屋にある家具を指さす。その店に置いてあるお花の形のクッション、すっごく可愛い!と言いながら。
「ふふ、花音が好きそうな色合いね。ただそれよりも前に玄関マットがあった方がいいと思うわ」
「あ、そっか」
「あと、もう1枚くらいフライパンがあってもいいかもしれないわね」
「確かに。今あるやつだけだと、ちょっと小さいかも……」
そう言われると、今まで意識してなかったが、生活必需品って結構たくさんあるんだねと言う花音。
「実家を出てみて初めて分かった、という感じね。ただ、これでもう大体揃った気がするわ」
「……あっ」
「どうしたの、花音?」
何かを思い出したかのような表情をする花音。
「……もしも、ほんとーーにもしもだよ?」
「もしも……何?」
すると彼女は千聖にこう言った。
「部屋に……虫とか出ちゃったら、どうする……?」
「っ!?」
「「…………」」
もしも自分達が生活してる空間に虫が出てきた事を想像してしまう2人。
「ご、ごめんねっ、今のなし! 考えるの止めよっか……っ」
「そ、そうねっ。建物は新築って言っていたから、きっと出ないわ。うん、出ない……出ない、わよね?」
そう言い切りたい千聖だが、不意に悠里が呆れた表情をしながら『新築の建物イコール虫が絶対に出ないとは限らないでしょ……』と言うのが頭によぎった。何故だろう……?
「フフ、何が出ないって?」
「きゃっ!」
不意に後ろから声を掛けられ、思わず驚きの声を上げる花音と千聖。
「薫さんっ!?」
「ど、どうしたのこんなところで……?」
その正体は、なんと薫だったのだ。しかも何故か
「新たな生活を始める、お姫様達にお祝いをしようと思ってね。2人に
「必要な物……?」
「気持ちはありがたいけれど、必要な物はもう大体揃ってるわ」
薫の気持ちはありがたいのだが、生活必需品等はもう大体だが揃ってるのだ。
「私から、2人にこれを贈らせてもらうよ」
「え? これは……」
「花束……?」
予想とは異なり、薫から渡されたのは花束だった。
「フフ……可憐な2人の姫が暮らす部屋に、花がなくては絵にならないだろう?」
「薫さん……」
「ふふ、薫ったら、相変わらずなんだから……」
花音と千聖の嬉しそうな反応を見た薫。すると今度はわざとらしい表情をしながら……
「フフ……
「「え……」」
「…薫ちゃん、話が違うし……」
2人に聞こえるようにありえない言葉を放ったのだ。そして返答するかのように聞き覚えのある声が。すると薫の後ろにある電柱から、ミントグリーン色のショートヘアの人物が。
「「う、嘘……っ」」
「……」
これは現実なのだろうか? その人物は花音と千聖を見るなり、ちょっとだけ気まずそうな表情をしていた。
「…ど、どうも……」
「「悠里(くん)っ!!」」
その声を聞くなり、花音と千聖は彼……悠里の元に泣きながら駆け寄り抱きついた。
「悠里。これでも君は自分の事を忘れてもいいとでも言うつもりかい?」
「……正直、薫ちゃんが花束を渡す直前まではそう思ってた」
「ほう? と言う事は、心境の変化でもあったのかい?」
いつもの調子は崩さないが、悠里の胸元でわんわん泣いている花音と千聖を真面目な表情で見ながら問いかける薫。彼女も少し怒ってるのだ。
「ほんとに……ほんとに直前になって、僕個人も納得のいく別の答えが出たんだ……」
「それならいいさ。ほら。先ずは2人に言うべき事があるだろう?」
「……うん。花音ちゃん、千聖ちゃん」
名前を呼ばれた花音と千聖は悠里の顔を見上げる。よく見ると、今までの彼と違う箇所が1箇所だけあった……
それは彼の瞳の色。
右目は自分達がよく知る薄い青紫色に対して、
それ以外にも、花音と千聖しか判らない雰囲気も変わっていなかった……
「…えっと……その、ただいま……」
「「お帰りなさい!」」
悠里が絞りだした言葉を聞いた花音と千聖は、とびっきりの笑顔で彼を迎えるのであった。
読んでいただきありがとうございます。
これにて、バンドリ小説作品は本当の本当に完結になります。
……まあ高校生編がって意味ですが(苦笑)。
来週までに、半分ネタバレにならない程度に活動報告で詳細を書こうかなと思いますので、もし更新されていたら是非。
本日はありがとうございました。