もうすぐ冬になるのだろう。だんだんとうすら寒くなってきた今日この頃。私はある人物に対し、イライラを隠しきれません。
「あ、あの。そろそろ離していただけませんか?」
「や」
私の仕事は精霊を殺すこと。その中でも特に【ナイトメア】と呼ばれる、好んで人を殺す残虐な精霊がターゲットでいやがります。その最悪といってもいい精霊に抱きつき、離れようともしないこの男。
「お前らいい加減にまじめにやりやがれです!」
「ならこの人を離してくださいませんか!?」
私
<三人称side>
「もうまとめて死にやがれです!」
「あ?なめんな『壁』」
真那のCR-ユニットから放出された10もの白い光線を透明な文字のようなもので防ぐ鬼鉄。それはまるで『壁』のように狂三と鬼鉄を守った。
「くっ!本当にやっかいですね!具現化の超人野郎!」
「邪魔だっつーの。『移』」
鬼鉄の手の平の直線状にいた真那はそのままどこかに消えてしまった。瞬間『移』動したかのように。
「さあ狂三!ラブラブするぞ!」
「もういいかげんにしてくださいませ!」
鬼鉄はある意味ASTなんかよりも精霊を追い詰めていた。
「日本?」
「そ。そろそろ帰るんだ。狂三に会えないのはさびしいなあ。ああもういっそのこと上司全部殺して仕事辞めようかなー」
「別に会いたいなら私もそっちに拠点を移しますが?」
あ、まずい。言葉を言いきってから狂三はそう思った。
「え!?ついてきてくれるの!!??」
「ぐぅ。ま、まあ私も日本に用事がございますし」
「わーい!ちょっと結婚届け取ってくるね!」
「はい!?」
そのまま市役所にダッシュしそうになってる鬼鉄をあわてて止める。いくらなんでも発想が飛躍しすぎだろう。
「私は精霊ですからすぐに日本に行けますよ。次の現界のときに日本に行けばいいですし」
「あはは。確かに狂三は精霊みたいにかわいいもんね!」
「・・・何回説明したら精霊について理解するんですの?」
「狂三まじプリティー!」
「はいはい」
何回説明しても精霊についてもASTについても理解しないアホの発言は適当に流す。最近なれてきた自分にも少し嫌気がさす。
「じゃあ次は日本で会えるんだね!いやあ日本に帰るなんて何年振りだろ?最近は傭兵としての仕事ばっかだったからなあ」
「・・・」
そう。この男ただのバカに見えるがそうではない。そのバカみたいな筋肉から引き出される身体能力と、気持ち悪いの域に達した再生能力を駆使して傭兵をやっているのだ。遠距離よりも近距離での戦いを得意としている。武術、ナイフ、拳銃、狙撃が彼の基本戦闘で
過去形である。しかし別に今この戦闘方を使っていないわけではない。精霊やASTといった連中にだけ『精霊文字術』というものを使っているのだ。どうやら昔自分の体一つで殺した精霊の
「日本には一緒に帰れないんでしょ?まったく。アメリカのあほ大統領を脅してジャンボジェット機貰おうかなー」
「おやめなさい」
なんで最悪の精霊とまで呼ばれた自分が人間に突っ込みを入れているんだろうと思いながら、彼女はため息をついた。自分に恐怖心を持たなくてもいいからせめて精霊であることぐらいは知っておいてほしい。彼女は純粋にそう思った。
数週間が立ち、日本に帰る日がやってきた。鬼鉄は朝からウキウキと狂三を抱きしめていた。
「なんでですの?」
「日本って本当に久しぶりだなあ」
「・・・」
もうこれ何を言っても無駄だ。遺憾ながら長い付き合いになる狂三はすぐにそれを察し、今日の朝。いや、毎日の朝について思いをはせる。朝どこにいても本体を絶対に探し出して捕まえられ、一緒に鬼鉄が作った朝ごはんを食べる。ここからしてもう意味がわからないがもう諦めた。そのあと三十分ほど自分に抱きつき、「狂三成分補充~」とか言って絶対に離さない。そのあと「いってきます」と言ってから仕事に向かい、帰りはまた必ず自分のところに来て一緒に帰る。もはや日常の域に達していた。恐ろしい男だ。
しかし狂三は自分が今の生活をあまり嫌っていないことを理解していた。それゆえに危機感を覚えていたのだ。しかしながら数週間前に彼の前で自分も日本に行くと言ってしまった手前、行かないわけにもいかない。日本には精霊の力をその身に封印するという少年に会いに行く予定なのだが。
「狂三」
「なんですの?」
「俺以外の男に恋心を抱いたら」
その時彼女は彼に会って初めて彼の危険度を正確に理解した。自分よりも強い。純粋にそう思った。
「その男殺すからね?」
「私はあなたの男ではないですわよ」
せめてもの意地で強がって見せたが、本当はすぐに逃げ出したかった。
「ふふん。はい結婚届け!もう俺の分は全部書いてあるから、後は狂三のとこだけだよ!」
今までのシリアスを返せと結婚届けをひったくり、腹いせに丸めて捨ててやった。
狂三とのラブラブが書きたかったのですよ。後悔はしてない!