バカな超人と悪い精霊   作:海鳴り

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特訓するよ!

「狂三」

 

「なんですの?またいつものように結婚のお誘いですか?いささかワンパターンすぎませんこと?」

 

「今回は真面目な話なんだ。聞いてくれ。狂三」

 

「?」

 

 ああ、これはいつの頃の記憶だろうか。そうだ、確か会ってから三カ月ほどたって彼の結婚してくれ攻撃にあきが来ていたころだ。今までのへらへらした様子が嘘のようなまじめな顔で彼は切り出したのだ。

 

「俺は今から戦いに行かなくちゃならない。友の仇なんだ」

 

「そうですか。それではまた明日」

 

 そう言って彼の元から去ろうとした時に彼が苦笑いをしていることに気がついた。

 

「俺はもう帰ってこないかもしれない」

 

「はい?」

 

 それはあり得ないといってもいい答えだった。彼の戦闘能力は人間にしては異常。だからそう簡単に死ぬとは思えない。

 

「どういうことですの?」

 

「相手はあり得ない攻撃を繰り出す武器と、尋常じゃない防御力を持ってるドレスを着た女だ」

 

 その二つを持っている者たちには覚えがあった。精霊だ。なるほど。確かに精霊になら負けるかもしれない。

 

「それでわざわざフラグを立てにいらしたんですか?生きて帰ってきたら結婚してくれとか」

 

 私の問いかけに彼は真顔で首肯した。

 

「今の俺はさっき言った強い女に狙われている。お前を巻き込みたくない。だから俺があいつらを全員殺してなにも障害がなくなったら」

 

 彼はそこで一度言葉を切り、こちらの目をまっすぐに見てきた。

 

「恋人から始めてくれないか?」

 

「・・・」

 

 彼のこちらを一番に考えていることを嬉しく思った。

 そのあまりにも真剣な表情をかっこいいと思った。

 彼が友達のために私をいったん置いておくことに嫉妬を覚えた。

 そして、

 彼に恋をしている自分がいることに嫌気がさした。

 

 

「いいですわよ。その代わり・・・」

 

 

 なのに私は彼を選択した。

 

 

「死んだら嫌いになりますわよ?」

 

 

 だから始めよう。彼の戦い(ふくしゅう)が終わったそのときに。

 

 私だけの戦い(れんあい)を。

 

 

<鬼鉄side>

 

「ギャルゲー?これで訓練するのか?」

 

 えー、ただいま私鬼鉄は異形な物理研究準備室にいます。機械とモニターだらけだ。

 

「そうよ。とにかく士道はこれクリアしなさい。鬼鉄もやる?」

 

「おお、やってみるか」

 

 何事も挑戦だぜ!俺いいこと言った。

 

「あ、そうだ零音ー」

 

「ん?なにかね?」

 

 俺と士道がリモコンを構えてレッツプレイしようとしているのを後ろで見ていた零音に話しかける。

 

「お前さー。【ピエロ】と【ドラゴン】って知ってる?」

 

「ああ、一時期【クリエイター】と三人で暴れていた精霊か。無論知っているとも」

 

 なんだ知ってたのかー。じゃあ頼めるかな?

 

「そいつらが近くに出たら教えてくれる?」

 

「なぜだね?」

 

「ラタトスクで働いている身で申し訳ないんだけど、殺す」

 

 さすがにそれは予想外だったようで零音がしばらく黙る。

 

「な!なんでだ!?」

 

「おー。それは簡単だよ士道ちゃん。俺は人間も精霊も自分の損になるやつは消すって決めてんだ。あとは純粋に友達の仇打ちだな」

 

「仇打ち・・・」

 

「そ。精霊も人間と同じで感情もあるし、境遇はかわいそうだ。だから俺は人間と精霊が争ってしまうのはある意味しょうがないと思っている」

 

 士道の言い分は8割納得できる。が、それだけだ。

 

「でも人間同士や精霊同士は別だ。それはやってはいけないこと、禁忌だ。人間も人間を殺したら犯罪だけど、精霊を殺したらほめられるだろ?そういうことだ。俺は殺された精霊の友達の仇打ちをしたいんだよ」

 

 それが俺の持論。無論人間と精霊が争うのもいけないことだけだ。しかし同族で争うことはそれをはるかに上回る。俺はそれだけは許しておけないんだ。特に精霊同士の殺し合いは狂三にも被害が及ぶ。え?それが主な理由ですが何か文句がございますか?はいなーい!

 

「と言うわけで、狂三とその二人には手を出すな。俺がやる」

 

「これはもう仕方ないね。狂三のことを激愛している彼がここまで精霊を悪く言うんだ。彼女らも相当末期なのだろう。ここは彼にまかした方がいい」

 

「悪いね。その代わりと言っちゃあ何だが、俺は本当に他の精霊には幸せになってほしいと思ってるから」

 

「・・・妥協案よ。一度士道が接触して話す。決めるのはその後」

 

「だーめ。士道死ぬぞ?これはほぼ確実だ。あいつらは殺しを楽しむからな」

 

「そう・・・」

 

「そうだ。ほらギャルゲーやるぞ」

 

 画面に表示されたのはベッドで寝ている主人公をパンツ丸見えのまま踏んでいる妹キャラの姿だった。

 

『おはよう、お兄ちゃん! 今日もいい天気だね!』

 

「ねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーよ!!」

 

「そうか?妹いないからよくわからんがあるんじゃねえの?」

 

「そんなわけ・・・」

 

 そこまで言って士道はリモコンを拾った。

 

「あったのか?」

 

「まあ、うん」

 

 あったらしい。琴里の奴もお転婆だな。あ、選択肢だ。

 

 ①「おはよう。愛しているよリリコ」愛をこめて妹を抱きしめる。

 ②「起きたよ。ていうか思わずおっきしちゃったよ」妹をベッドに引きずり込む。

 ③「かかったな、アホが!」踏んでいる妹の足を取り、アキレス腱固めをかける。

 

「俺なら②だな」

 

「アホだろお前!」

 

「いや案外いけるかも」

 

『もしもし警察ですか?』

 

 ゲームの中でも通報されると悲しいな。  

 

「だめだったね」

 

「そりゃあな」

 

「全く愛が足りない妹だ。そこは『もうしょうがないなあ。私が静めてあげるよ。ほらナニだして!』ぐらいやれよ」

 

「いやこれ18禁じゃないから」

 

 そこで後ろから軽蔑するような口調で琴里が俺をからかう。

 

「うわぁ、へんた~い」

 

「うん」

 

「認めたっ!?」 

 

「俺は狂三とにゃんにゃんしたいね」

 

「ぶれねえなお前」

 

「当然」

 

 

 

 放課後。俺が家に帰った時、この一部始終を見ていたらしい狂三が家で顔を赤くしていたのは・・・素晴らしかったです。狂三かわええええええええええええええ!!! 

 

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