補佐役ヴィランの日常   作:もちお(もす)

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 過去編
プロローグ的な


1.巨悪との出会い。

俺が“個性“に目覚めたのは5歳の時だった。

 

 

狭くて汚い部屋に唯一吊るしてあった電球が切れて照らしてくれる光がなくなり、暫くたって俺はおかしくなりかけてた。

 

“あの部屋“には窓はなく、出入口用の扉が1つあるだけだった。

 

地下にあった“あの部屋“で明かりもなく独りだった俺はどれくらい時間が過ぎたかは覚えていないが

突然ナニかが切れたように大声で叫び腕を掻き毟った。

 

 

その時、消えたハズの電球がついた。

 

と、同時に頭の中に記憶がフラッシュバックする。

 

あの瞬間から俺は何も出来ない餓鬼から歳月(さいづき) 寿壱郞(じゅいちろう)に成った。

 

 

 

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俺の前世は伊の国(い くに)に仕える軍人だった。

 

 

12で軍に入り機動隊に。

17で機動隊隊長に。

24で親衛隊隊長へ。

 

俺が26の時に仕えていた人が公爵から国王になり

俺の仕事も変化した。

 

ただ敵を消すのではなく、内政や敵国への牽制の為にあらゆるモノを作り出した。

 

そして、45で補佐官兼研究所責任者になり

60で仕えていた“あの人“は亡くなり、反乱軍と国軍の戦闘で俺は戦死した。

 

 

これが簡単にまとめた俺の前世だ。

 

 

正直これが本当に俺の前世なのか疑問もあるが

5歳だった俺がこんな妄想を一瞬で思い付くとは思えない。

なにより研究所での記憶は今の人生では知ることが出来ない内容ばかりだ。

 

斯くして、俺はこの記憶と個性で“あの部屋“から出ることに成功し。

 

今世での肉親を殺した。

 

 

 

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あれからは苦労はしたが目から鱗の毎日だった。

 

“あの部屋“では満足にものも食べられず、何も出来ない日々だったが

外に出てからはある程度飲み食いは出来たし

なにより知らないことばかりだった。

 

そして一番驚いたのが“個性”についてだ

この世界では異能力者の割合が約8割ほどだと言う。

 

俺の元居た世界にこんな力はなかった。

 

 

だからこそ、俺は能力を鍛えた。

はじめは触れているモノの(とき)をゆっくりと進めることしか出来なかったが、次第に(とき)を戻すことも出きるようになった。

 

同時に身体の鍛練も欠かさなかった。

より速く動ければ相手に触れていられる時間が伸び勝率が上がるからだ。

 

そうやって社会の日陰で過ごしているうちに

俺は企画屋となった。

 

 

 

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企画屋として仕事をしていた俺はある男と出会った。

 

その男は突然俺の前に現れ

 

 

「やぁ、君が企画屋…だね?」

 

と耳通りのよい声で話しかけてきた。

 

 

俺はその男と対峙した時、体が動かなかった。

恐ろしい……勝てないと一瞬で理解できた。

 

返事をしなければ…!

その一心で渇いた口から必死に声を絞り出した

 

 

「……あぁ。俺で…間違いない。」

 

俺の返事を聞いた男はにっこりと笑い此方へゆっくりと歩いて来る

 

 

「突然悪いね。

…少し話をしたいんだけど、良いかな?」

 

その男の言葉は上辺は疑問系をとっていたが

否定を許さない絶対の雰囲気を纏っていた。

 

 

「…了解した。

そこのソファーにでも腰掛けてくれ…

……茶でも入れてこよう。」

 

「ありがとう。

あ、あと お茶なら冷たい物が良いな。」

 

「……わかった。」

 

 

男がソファーに座るのを確認し俺は冷たい茶を入れるべく部屋を後にした。

 

 

お湯を沸かし、コップを冷やしている間ずっと俺は逃げたかった。

だが、逃げられないと解ってしまっていた。

 

なにをしに来たのか。

 

依頼か? あれほどの男が? 

俺などに頼まずとも全てこなせそうな男に見える。

 

 

ぐるぐると茶っ葉が回るのを眺めながら考えても答えは出なかった。

 

 

 

茶を入れ、元の部屋に戻る。

 

ソファーに深く腰掛けた男が労ってくる。

 

「わざわざ すまないね。」

 

「いや、こちらこそ

茶だけで申し訳ない。」

 

俺は男の前と自分の前に冷えた茶を起き、ソファーに浅く腰掛けた。

 

 

「君は随分と礼儀正しいというか…

……若いのにしっかりしているね。」

 

「……なにぶん親離れの時期が早くてな。」

 

「ふふふふ、面白いね。

それだけ僕に怯えていても悟らせまいと軽口をたたけるのは凄いよ。」

 

「ッ……!」

 

 

息を飲んだ。見通されていた事に。

そして、それをなんでもない事の様に話す男に。

 

 

俺が感じている以上にこの男はヤバい…!!

 

だが、本能が今ここで下手な動きは不味いと警告を鳴らす。

 

俺は軽く深呼吸をし、渇いた口から声を出す。

 

 

「……からかうのは止してくれ…」

 

相変わらず男は笑みを絶やさぬ顔でこちらを見ている

 

 

「…要件を……聞きたい。」

 

「そんなに警戒しないで欲しいな。

ただ、君の”相手の要望に合わせ最善の策を出し望みを叶える”と言う素晴らしい仕事ぶりを耳にしてね…」

 

俺は声を出す為、冷たい茶を口に運んだ。  

 

 

「それは…仕事の依頼と言うことで良い、のか?」

 

「そうなるね。

最近、英雄気取りの若者の集団が出来たらしくてね

僕としてはそういう芽は早めに摘んで起きたいんだ。」

 

「……弱者救済を掲げて人助けを推進しているグループのことか?」

 

男は少し目を見開くいたがすぐに腹の読めない笑みを浮かべる

 

 

「そう、その集団だよ。

君が情報通っていう話しも本当みたいだ。」

 

「良くも悪くもそのグループは最近噂が絶えないからな。」

 

「僕にとってはあまり嬉しい話しじゃなくてね。

……で、どうかな。この依頼…受けてくれるかい?」

 

「それはそのグループの壊滅ということか?」

 

「あぁ。ただ1人は生け捕りにして欲しいんだけど」

 

 

生け捕り……俺は1人でこの仕事をやっている。

複数を相手に無傷だと無理があるな……

 

 

「生け捕りか……おおまかな個性は把握しているが…

 ……その生け捕りは”生きてさえ”いれば状態は問わないか?それとも完全に無傷でか?」

 

「生きていれば状態は問わないよ。」

 

生きてさえいれば良いならやり方はいくらでもある。

……なによりこれほどヤバいオーラを纏う男からの依頼を断る様な馬鹿じゃあない。

 

「…了解した。その依頼を受けよう。」

 

「ありがとう、良い返事が聞けて嬉しいよ。

名乗るのが遅れて悪いね。

僕はオール・フォー・ワンよろしく」

 

 

オール・フォー・ワン……!?

この裏の世界の支配者の名前……

 

ハッタリ……いや、実力者が他を語る必要はない…

 なら……この男は本物…!?

 

 

「ッ……オール・フォー・ワン……敬称をつけるべきでしたか。」

 

俺の考えなどきっと見通しているだろう彼は

にこにこと茶をすする。

 

「ふふ、構わないよ。

さっきの様に接してくれ。

お互いやりやすい方が良いだろう?」

 

「……承知した。」

 

 

聞くべきか? なぜ俺に依頼するのか。

確かに最近力をつけてきたグループでは あるが彼なら赤子の手をひねる程度の事じゃないのか?

 

背中に伝う汗に不快感を感じていると

彼は俺の眼を見て柔らかく笑う。

 

 

「聞きたい事があるなら聞いて欲しいな。

お互いに相違があったりしたら困るだろう?

……それに君とは仲良くしたいんだ 」

 

あぁ……目眩がする。

柔らかく笑うその顔は絶対に仮面だとわかるのに、同時にとても安らぐ。

丁寧で優しそうな言葉遣いも、俺の気持ちを読み的確に先制してくるのも

絶対にヤバい相手だとわかるのに

今、俺は彼への嫌悪感がない。

 

 

俺は思考を放棄した。

 

 

「……この依頼は何故俺に…?」

 

「うん、君が考えていることは解るよ。

ただ、僕も忙しくてね。この集団に使う時間を別の事に回したいんだ。」

 

……違う。俺が聞きたいのは何故貴方がやらないのかじゃあない

何故 ”俺に依頼してきた” のかだ。

それを聞くべく口を開こうとした時、

 

 

「…君に興味があったからだよ。」

 

「……は?」

 

「色んな話を聞いたけど、君の元依頼者たちは揃って君を讃えてた。

だから興味が湧いたんだ。

……それに優秀な人材なら欲しくてね。」

 

噂を確かめるついでに使える人間が見に来たと…?

わざわざ王である男が出向く…ものなのか?

 

 

「……それは……いや、…

…じゃあ、これは試験なのか?」

 

「いや、試験なんて偉ぶるつもりはないよ。

僕は君の実力が見たいんだ。」

 

「了解した。

……失望されないよう勤めることにする…」

 

「ふふふ、本当にその若さでその思考を持ってる君は面白いね。

……じゃあ、結果を楽しみにしているよ。」

 

彼、オール・フォー・ワンが去ったあと暫く俺はソファーに腰掛けていたが

キリキリと痛む胃を休める為、白湯(さゆ)を作るべく動き出した。

 

 

 

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彼……“代表“(だいひょう)との出会いから数年。

 

俺がオール・フォー・ワンのことを代表と呼んでいるのにはワケがある。

 

何度か取引をした後に雇われたのだ。

俺にとって彼は仕えるべき人であり、絶対に裏切ることは出来ない人となったのだが……

 

案外、悪くない毎日を送っている。

 

 

もともとフリーでやっていた時は、俺の仕事が増えると同業者のような奴らからの嫌がらせがあったり

 

はたまた、逆に仕事がなかったりと安定しない生活だったが

代表に仕えてからは仕事はちょうど良い案配(あんばい)だ。

ある程度働いたら休みの時間を貰える

なにより給金が良い。

 

……まぁ、代表は俺のこの性格を見越した上で程よく“飴“をくれているだけだろうな…

 

 

代表に微笑まれながら

『君の個性はとても魅力的だね。』

 

と言われた時は死を覚悟したが…

 

俺の覚悟を知ってか知らずか……

いや、前者だろう。

代表はくすくすと笑うと

 

『そんな顔しないでくれよ、褒めてるだけさ。

君は大切な部下なんだ。個性を“無理やり“奪ったりはしないよ。』

 

と優しく俺の覚悟を和らげてきた。

 

使える人間である間は殺されないだろう……と思いたいものだ…

 

その後も俺は代表のため、あらゆる仕事をこなしていると呼び出しを受けた。

 

そして、実験に協力することとなる。

 

結果俺は“2つ目の個性“を手に入れた。

個性の内容は “転移“(てんい)

触れている物質を任意の“ポータル“に飛ばす個性だ。

自分自身も飛ばせるので使い勝手がいい。

 

我ながら代表には良い個性を“付けられた“と思う。

……もう二度とあの実験に協力するのは御免だが

 

 

兎に角、俺は新しい個性のお陰で仕事の処理スピードも上がり自由な時間が増えた。

 

それは喜ばしいことだ。 

だが、いかんせん暇である。

俺が今、会話を交わせるのは代表とたまに個人で俺に取引を持ってくる者だけだ。

 

……人間とは孤独に弱いらしい。

俺は少し……ほんの少しだが休日に不満を持ち始めた。

 

 

そんな時だった、あの子を引き取ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 




オール・フォー・ワンの実験によって与えられた第2の個性。
【移植個性:転移】
自身に触れている物質を任意の“ポータル“へ転移させる。(服の上からでも可能)

【個性詳細】
・任意の場所をポータルにする場合、そこに10~30分自身の身体が触れていなければならない。

・[時間操作]の個性と併用すればポータルの作成時間を短縮可能。

・ポータルは最大10箇所まで。
新しいポータルを作る場合は1つ消さなければならない。(消すのは意識下で可能)
           
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