補佐役ヴィランの日常   作:もちお(もす)

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治崎との過去編のような


2.治崎廻の出逢い

 

 

 

少年は思う。

自分の居るこの孤児院の者は“汚い“と。

 

だから周りの人間が自分に近づかない事もいいことだと考えるようにした。

 

なぜなら、汚い人に触られると触られた場所がゾワッとしてぶつぶつが出るのだ。

 

施設の人間は汚いから触られたくない。

 

 

周りの人間は“バケモノ“と少年を恐れ嫌悪する

 

それが本当に少年を“化け物“に変えようとしている事に何故気がつけなかったのか

 

 

 

 

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孤児院の子どもたちと職員はピクニックに出掛けた事を後悔していた。

 

 

 

燃える木々、血塗れで倒れている子ども。

 

愉しそうに笑う声。

 

誰も皆、目前の死に震えていた。

 

 

 

しかし、ヒーローが現れた。

 

子どもも大人も涙を流し喜んだ。

 

 

治崎もヒーローなら“助けてくれる“と思っていた。

 

孤児院にいる人間とはきっと違うハズだ。

 

だって、“ヒーロー“は人を助ける凄い人なはずなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ヒーローは勝てなかった。

 

 

ヒーローを宙吊りにして二人の男は嗤う。

無様な男は泣いて命を乞う。

 

 

待ってくれ 殺さないでくれ 俺には妻がいる

 

 

哀れな男が乞えば乞うほど、二人の男は愉しそうに元ヒーローの男を痛め付けていく。

 

しばらくすると、飽きたのか男二人はまた孤児院の人々へと歩み寄る。

 

1人の男は幼い女の子の腹を裂き、内臓を身体に巻き踊っている。

もう1人の男は泣き叫ぶ10代前半の男児の首を切り離し、断面に腰を沈めている。

 

まさに地獄絵図と言うに相応しい光景だ

 

誰1人動けずにいる中、片方の男がこちらへ話しかけてくる。

 

 

「あきた、飽きたな~

お前、そう。そこのお前だよ。

大人だよな?責任ある存在だよナ?

だから、お前、選べよ。1人。

1人選んだら帰ってイイ」

 

もう1人が不満げな声をだす

 

 

「だめだめだめだめ……1人じゃダメだよ。

二人じゃないト、ひとり1つないとケンカになるよ。」

 

 

それにもう1人の男はうんうんと頷く。

 

「その通りだ、1人じゃ駄目だ。二人、ふたりだよ。

おい、お前はやく選べよ。オレらにくれるヤツ二人えらべ」

 

 

迫られた職員はガクガクと震えながら口を開く

 

 

「あ、あ、あそこ、の。

く、黒い子と、…そこのしょ、職員。」

 

ガチガチと歯の当たる音を発てながらも職員は指名する。

 

 

「ま、まってよ!なんでなんで、わたし、私が!!」

 

指名された女職員は身体中の穴から水分を出しながら喚き散らす。

 

 

治崎は思う。

あぁ、ほらやっぱりきたない。

施設のひとも、あの男のひとたちも、ヒーローだったひとも。

 

ぼけっと暴れ出した女職員を眺める治崎。

 

2人の男は不快になるような甲高い笑い声で嗤いつづける。

 

そして、ふと静かになると女職員と治崎以外の人間を殺した。

 

 

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女の顔は酷く腫れ上がり、口に歯はなかった。

 

生きているのか死んでいるのかわからない

その女を二人の男が弄んでいる。

 

ただ、それを眺める治崎に1人の男の手が伸びてきた。

 

 

「……さわるな、きたない…!」

 

と叫ぶび手を叩くと同時に男の指が4本消えた。

 

 

男は突然の痛みに吠える。

 

それを聞いたもう1人が走りより、治崎を蹴り飛ばした。

 

幼い治崎の脇腹はその衝撃を耐えられない。

肋骨は臓器に刺さっていた。

 

 

苦しむ治崎の下へ場違いに落ち着いた声が届く。

 

 

「ほう? 一瞬で…

触れるモノを消す個性か……いや、転移に近い個性と言う可能性もあるか。」

 

 

フードを深く被った黒尽くめの男は興味深そうに治崎の方を見ている。

 

一方少し離れた場所に居る男二人組は突然現れた男を気にするでもなく指が失くなった男は騒ぎ散らし、片割れは治そうと四苦八苦していた。

 

もうずっと現実とは思えない状態に置かれ続けている治崎だが、脇腹の激痛がこれが現実であると突き付けてくる。

 

 

「イタい……!!いたい!!

あの、ガキだ。あのガキがオレのゆ、指を!」

 

「ちくしょう、アイボウ!おれじゃナオセねぇよ!?

どうすンだ!餓鬼殺ればいいカ?

そうすればスッキリするよな!うんうんそうだ。」

 

「アア早くしてくれ、アイツばけもんだ!

アイ棒オレの指、取り返してくれよぉ……!!」

 

 

薄れる意識の中で治崎はこのままでは殺られると確信した

だが、起き上がることが出来ない。

 

しかし、近付いて来た片割れを見て治崎は手を地面につけ

 

「ゥ…グゥ……あんな、きたないのに……さわられるなんて……イヤだ…!!」

 

と、血を吐きながら叫んだ。

 

すると片割れと治崎の間に低いが壁が出来た。

 

二人は大いに狼狽えた。

この餓鬼の個性がわからない!

それが二人を焦らせ、注意力を散らした。

 

 

 

結果、二人はミイラになったのだ。

 

 

治崎は呆然とそれを見ていた。

 

フードを被った黒が油断した二人の首根っこを掴み、そのままコンクリートに押し付けたかと思うと

どんどん二人の男の姿が変わっていったのだ。

 

最初は騒ぎ暴れていた二人だったが直ぐに声が小さくなり始め、最終的にはしわくちゃなミイラになっていた。

 

汚い男二人の成れの果ては治崎にとっては消毒されたバイ菌の様に思えた。

 

それに二人を押し倒す時に取れたフードの下にはキラキラと輝く綺麗な白い人がいたのだ。

口や手に無数のキズがあるその男の見た目は異様だったが、治崎には汚れを消してくれる神さまの様にも見えたのだ。

 

 

ミイラを足で退けると白髪(はくはつ)の男は考える様に腕を組む。

 

 

「簡単な仕事のハズだったが、この現場の惨事はいただけないな………まぁ、代表なら上手く利用してくれるだろう

ところで、そこの少年……生きたいか?」

 

 

突然の問いかけだったが、直ぐに治崎は答えた。

 

 

「こんな、きたないところでは…死にたくない」

 

 

白髪の男が目を開く。

 

「……綺麗な所なら死んでも良いとも聞こえるが…

まぁ良い、なら怪我を治してやる…“女神(ディーア)”」

 

 

倒れ込んだ治崎の前で男が何か呟くと、身体を支配していた痛みが消え起き上がれる様になった。

 

 

驚きに目をぱちくりさせる治崎を見て男が声をかける。

 

「……もう、痛くないか?」

 

「…いたく、ない」

 

「そうか、人の怪我を治すのは久々だったが上手くいってなによりだ」

 

「……ありが、とう」

 

 

ペコリと頭を下げる治崎を不思議そうな顔で白髪(はくはつ)の男は見下ろす。

 

 

「……お前は随分と…図太い神経があるようだな。

周りの惨状(さんじょう)や、俺に何も思わないのか…?

…それとも感情が表に出ない性分(しょうぶん)なのか?

気になるな、何を考えてる?

それにあの個性もだ。消す能力かとも思ったが壁を作っていたな……とても興味深い!」

 

 

捲し立てるように突然饒舌(じょうぜつ)になった男に治崎は面食らったが、何か答えなければと声を紡ぐ。

 

 

「……このげんじょうは、しょうがない

どうしようもない。あと、アンタは治してくれたから…

……それに なにを考えてると言われても、こまる

個性はよくわからないけど…ものを消せる?」

 

 

治崎の纏まらない言葉たちを特に気にするでもなく、男はそうか。と頷く

 

 

「確かに何を考えてるか聞かれても困るな

…すまない、珍しいモノが好きでな…少し不躾(ぶしつけ)だった

個性については良くわからない様だが、検査してないのか?

消す個性ではないハズだ、事実お前は壁を作っている……いや、出現させたのだろうか?」

 

 

「……けんさ?」

 

「……その歳では知らないか?

保護者と共に行ったりしなかったのか」

 

「親はいない…」

 

「……ほう、なら孤児か?」

 

「こじ……」

 

「…親も保護者も居ないのか、と言う意味だ」

 

「いない」

 

「そうか、じゃあ施設暮らしか」

 

「うん」

 

「…………1つ聞くが、この周りの死体がお前の施設の人間だったりするのか?」

 

「……うん、しせつの人だ」

 

 

 

 

白髪(はくはつ)の男は頭を抱えた。

 

この子どもをどうするか……

目撃者だ。

……殺す? いや、もう既に多方面に顔はわれてるのだ

無理に目撃者を消す必要はない。

 

 

 

…なによりモノ珍しい。

 

白髪(はくはつ)の男にとって仕事、休日、また仕事のルーティンに現れた異物はなかなか魅力的であった。

 

会話もできるのだ、仕事で得たモノは最初に指示がなかった場合は自由にして良いと代表(だいひょう)から言われている。

 

 

白髪(はくはつ)の男は数分考え、治崎に提案をした。

 

 

「お前……俺と来るか、新しい施設に行くか選べ」

 

 

「……おにいさんと行く…?

それは、おにいさんがおれの家族になってくれるってことなのか?」

 

 

「家族……なるほど…家族か

フフフ…突拍子も無いような発想だな

……だが良い、凄く良い案だ。採用しよう。

そうだ、俺と家族になるか別の施設に行くか、だ。

施設ならばしっかりとした所に連れていってやる。

……俺と来ると犯罪者のレッテルを貼られる事にはなるが衣食住は保証しよう」

 

 

「かぞく……

…おれ、おにいさんと行く」

 

 

治崎の答えを聞くと白髪(はくはつ)の男は不気味な黒い目を細め面白いモノを見るような顔で満足そうに微笑んだ。

 

 

 

「なら、お前は俺の家族……身内になるワケだ

…そうだった、名前をまだ聞いてなかったな

 お前の名前は? いや、そもそも名前はあるのか?」

 

 

「ある、ちさき……ちさき かい。」

 

「治崎廻…ほう、良い名前だ

俺は歳月(さいづき)だ……好きに呼んでくれ」

 

「わかった、さいづきさん」

 

「フフ……よろしくな治崎。」

 

 

 

 

 

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世の中汚いモノでいっぱいだ。

生きるにも汚い空気を吸わなきゃならないし、汚いモノにも触らなきゃならない

けど、歳月さんだけは平気だった。

あの人には触られても蕁麻疹はでない

……何故かはわからないけど、きっと歳月さんは汚くないからだろう。

 

 

 

この人の側は落ち着く。

 

落ち着くことは大切だ。

……と歳月さんも言っていた

冷静な判断を出来る大人になれと。

 

歳月さんが望むなら俺は冷静な判断を下せる様にならなきゃいけない。

 

 

 

 

 

 

 

歳月さんと家族になってから3年が経った。

あの人は表情が少し乏しいが、思いの外良く喋る。

声の調子などで感情がわかる様になったから意志疎通は問題ない。

 

最近では勉強も教えてくれる。

 

俺はこの人の所に来て良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

しかし、普段は慌てることなど一切ない歳月さんが今日はドタバタと慌ただしい。

 

 

「歳月さん……なんで慌ててる?」

 

「治崎、今日は代表(だいひょう)が来る事になったんだ

…………絶対に失礼なことはするなよ?」

 

「…わかったよ。おれは部屋にいる」

 

「いや……代表がお前を見たがってる…

…悪いが同席してもらうぞ。」

 

「代表……えらい人じゃないのか?」

 

「偉い人……語弊(ごへい)があるが、まぁ(おおむ)ねそうだ。

俺が(つか)えてる人だ、(おもて)の人じゃない

…せっかくの家族を失いたくないんだ、良い子にできるな?」

 

「うん、いい子にできる」

 

 

そう返事をすると歳月さんは優しく俺の頭を撫でてくれる、これを俺は結構気に入っている。

 

本来俺にとって触れると言う行為は喜ばしい事ではないが、歳月さんだけは別だ。

 

 

"代表"という奴の訪問に向け忙しなく準備を進めているところを眺めながら、俺はソファーで大人しくすることにした。

 

 

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俺の"代表"への感想は

気持ち悪い、だ。

 

 

歳月さんも普通とは違う雰囲気だが、代表のソレは本当に形容しがたいモノだ。

 

今も目の前で二人が話しているが冷や汗が止まらない。

俺はそっと歳月さんの方へ寄った。

 

 

 

「……で、任された件については首尾良く…」

 

「うん、やっぱり君に頼んで良かったよ

…それで彼が君の拾った子なのかい?」

 

「はい、3年ほど前に」

 

「そっか。彼は学校には通わせないの?」

 

「学校……?」

 

「子どもは学校に行くべきだろう?

……あぁ、君は学校とか行ってないんだったっけ」

 

「一度も行ったことはないですが…

……この仕事をしている俺にこの子を学舎(まなびや)に通わせるのは無理だと思います…」

 

「ふふ、僕なら通わせてあげられるよ」

 

代表の言葉に歳月さんの空気が悪くなる

俺もつい睨むような真似をしてしまった。

 

 

「………………代表……もう治崎は、俺の家族になったんだ」

 

 

「おっと、勘違いだよ歳月。

僕は(かり)の戸籍をあげるから通わせたら?って言いたかっただけさ!

協調性を学ぶのに学校は良い場所だろ?

……君もそう思うよね、歳月?」

 

「………はぁ、わかりました。

治崎、学校に通う事になるが……良いか?」

 

気遣う様に覗き込んでくる歳月さんを心配させまいと俺は直ぐに返事をした。

 

 

「うん、学校……楽しみだ」

 

「そうか、なら良い」

 

俺と歳月さんのやり取りを見て、代表は愉しそうだ。

 

 

「うんうん、本当の家族のようだね

君のように、とても賢い子みたいだ

君の指導が良いのかな?

まさか教育も上手いとは思わなかったよ

……今度、毛色の違う仕事を任せようかな」

 

「……もともと賢い子だっただけです

仕事ならどんな内容でも全力を尽くすだけですので…」

 

「ふふ…本当真面目だねぇ

じゃあ、仮の戸籍についてなんだけど……」

 

 

その後も長々と二人は話していた

俺も必死に内容を理解しようと頑張ったが、難しい話しばかりで(ほとん)ど分からなかった。

 

 

そして、気付いたら俺は歳月さんに運ばれていた。

 

 

「……ぅん…さいづき、さん?」

 

「…起こしたか

途中で眠ってしまったお前をベッドに運ぼうと思っただけだから、寝てて良いぞ」

 

「ねて…た?

……ごめんなさい…さいづきさん俺、寝ちゃってた」

 

「いや、深夜まで話し込んでいた俺が悪い。謝らなくて良い

成長のためにも寝ろ、このまま運んでやるから」

 

 

歳月さんの優しい声にそのまま俺は瞼を閉じた。

 

 

 

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その後、俺は小学校に通い

次に中学校へと進学した。

 

高校に行く気はなかったが、歳月さんがせっかく受かったのだから行けと言うので卒業まで通った。

 

 

正直、学校なんて言う大多数が英雄に憧れる病人の巣窟のような価値のない場所に5、6時間も拘束されるなら、家で2時間ほど勉強をして今後の為に鍛練を積む方が有意義だ。

 

なにより学校で学ぶ事を今後の役に立てるのは難しい

 

あの人は裏の人間だ

俺が表の事を勉強したって歳月さんの為にならねぇ。

 

 

だが、もう学校は卒業してる

 

これからは今まで以上に……俺はあの人の役に立つ必要がある

 

珍しいモノや出かけるのが好きなあの人が大手を降って出歩けないなんておかしい世の中だ。

なにより、こんな病人だらけの汚い世界はあの人には釣り合わねぇ。

 

 

……俺の恩人、そして家族

 

絶対に俺があの人の"全て"を叶えるんだ。

 

俺が英雄を消せばきっと歳月さんはいつもみたいに微笑みながら俺を褒めてくれるだろ……?

 

 

 

 

 




治崎は純粋に親愛から役に立とうとするけどネジがぶっ飛んでるので斜め上になってしまう所がある。

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