俺は代表から新しい仕事を引き受けた。
代表からの依頼は3つだ。
1つ、彼の自由意思を育ててほしい
2つ、閉まっている感情の蓋を開けてほしい
3つ、彼が死なないように護ってほしい
……3つ目の護るというのは簡単な仕事だが
自由意思を育てる、感情の蓋を開けるとかいうのは絶対に代表の方が簡単に出来るはずだ。
それに自分で言うのもなんだが俺は決して子どもに好かれるタイプではない。
すっかり色の抜けた髪に本来白い筈の白目は黒く、瞳は赤い。
さらには生気のない肌の色に加え身体中に繋ぎ目の様な傷がある。
そう、俺はお世辞にも親しみやすい容姿ではないのだ。
だから俺は今回の仕事に少し困惑していた。
目の前では虚ろな瞳をした少年がボリボリと首を掻いている。
「………名前は?」
「…………」
駄目だ、会話さえ儘ならない。
治崎なら最初のころでも、もう少し会話が成立したと言うのに……
いや、治崎は普通ではなかったからか…
…なにせ、変わっていたから欲しかった訳だしな……
だがこの少年も普通ではないだろう
他でもないあの代表のお眼鏡にかなったのだ。
その日から、チラリとたまに此方をみるだけで殆ど喋らない少年に会い続ける日々始まった。
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あれから数年の間、俺は死柄木の世話役を任されている。
正直、俺の教育方針が良いのか悪いのか分からないでいるのだが…
……否、きっと世間的には悪い教育方針なのだろう。
なにせ用済みになった者たちの処理作業をあんなに笑顔で見ているのだ、健全とは程遠い。
だが、弁明させて欲しい。
代表に見初められた時点でこの子ども……死柄木は表の世界には戻れないだろう。
ならば、あまり綺麗ではない実状も少しは見た方が良いと俺は考えたのだ。
俺とてまさか死柄木がこんなに笑顔で処理作業を眺める子どもになるとは思ってなかった。
………まぁ…代表がなにも言ってこないという事はこの方針には否定的ではないのだろう、と自分を落ち着ける事にした訳だが、ニコニコと話しかけてくる死柄木に俺は溜め息をつく他なかった。
「ねぇ、歳月もっとゆっくりやってくれよ…!」
「……死柄木、これは仕事だから速く終わらせるのが大切なんだ」
「…なんだよ、いいじゃん……
…んー、じゃあ…命令!」
命令だからな!と指を指してくる死柄木に俺は仕方ないと眉を下げた。
死柄木は前に代表から
『歳月がお願いを聞いてくれない時がある?
うん、そうだね……ならその時は“命令”と言ってごらん
そうしたら歳月はきっとお願いを聞いてくれるさ
…………ねぇ、歳月。そうだろう?』
と言われた事をしっかりと覚えているらしく
意見が通らないと"命令"と言う言葉を良く使う様になった。
その教育はどうなんだ?と思わなくもないが
我が儘もなにも言わない頃と比べれば
まぁ良い事なのかもしれない。
…将来の人間関係に不安は残るが……
そんな事を考えながらも俺は死柄木の要望を叶えるべく、檻から男を1人取り出した。
「いやだ!離せ、離してくれっ……!!」
泣きわめく男の足の腱を斬り、背の上に馬乗りになる。
「なぁなぁ、なんで足いつも おなじ所切るんだ?」
「人間の足のここには、アキレス腱と言うものがある
これを切ると上手く歩けなくなるんだ」
「へぇ~……けど歳月の個性ならわざわざ切らなくてもよくね?」
「逃げられない様に、念には念をだ」
「ねんにはねん……」
「……ゲームもボス戦前に準備するだろ?」
「あぁ…そっか!
やっぱりゲームは絶対にクリアしたいもんな!」
「そうだ。
だから、下準備で腱を切ってるんだ」
「歳月はこうりゃくサイト見るタイプだ…!」
「……そうだな、俺は攻略サイト見るタイプの人間だろうな」
無邪気にはしゃいでいる死柄木
…こう見ると可愛らしい子どもに見えなくもないな?
「歳月! じゅんび終わったなら早く…!
ゆっくりだぞ? ゆっくりミイラになるところが見たい」
……前言撤回だ。
少なくとも可愛らしい子どもが要求する内容じゃあない…
だが、要望を叶えない訳にはいかない。
俺は下敷きにしている男のうなじに触れる。
「あ、ゥゥ……頼むっ…もう卑しいことは考えねぇから…!み、見逃してくれ…っ…」
弱々しく呟く男を無視して俺は個性を使い続ける
男の瞳に恐怖が色濃く宿るのに比例して死柄木の笑みが深くなる
かまわず男の人生をどんどん進めていく。
「やだ、やだっ……体が、へんだ……重い!あつい!」
速すぎる変化に脳がついていけなくなった様だ
思考回路が退行している。
若々しかった男の肌からハリが消える
紺色の髪の色は薄くなり、はらはらと抜け落ちていく
男が呻き声を上げる度に歯がコロリと床へ転がる
木の枝の様になった手で歯を拾って口へ運ぶ様は売れない人形のようで哀愁が漂っていた。
そして、最期には男は物言わぬミイラになっていた。
「ははは…やっぱ、ゆっくりのが良いじゃん!
歳月ィ…つぎ、あのオバサンな!」
ミイラになった男にはもう興味を失ったのか次のオモチャを指定する死柄木に、また溜め息が漏れる。
正直、時間をかけてゆっくりミイラにするのは好きじゃない
普通に汚い上に、気持ちが悪い。
早く風呂に入りたいと言う気持ちを抑え、俺は死柄木の要望を檻が空になるまで続けた。
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俺の家が代わってから暫く経った時に先生に"
初めて会ったときは退屈な奴だと思った
だって全ッ然しゃべらねぇし、表情筋死んでるし…
けど、それは間違ってた
そりゃそうだ
だって先生が連れてきた奴なんだ、つまらない奴なワケない!
先生は
『弔、面白いのが居るんだ…きっと気に入るよ
彼は君に色々なことを教えてくれるし、してくれる
……好きなように使ってごらん』
って言ってたから
色んなことを歳月にお願いした。
歳月は俺のお願いぜんぶ叶えてくれた。
それに話しかけたら結構しゃべるし、顔も良くみたら動いてるっぽいし
なにより個性が面白かった。
俺の個性で壊れなかったのは少しイラついたけど
今考えればアレで歳月を壊してたら勿体なかったし結果オーライ!
あと、前にお願いを歳月が聞いてくれなかった事を先生に話したら、命令すれば良いって教えてくれたんだ。
歳月はお願いは断る事あるけど、命令はマジで断らない
頭が固い……真面目?な歳月は仕事にアソビがないから
この命令ってヤツはマジ便利!
ミイラつくって遊んだり、腕とったり付けたり……!
お願いじゃやってくれないけど、命令すりゃやってくれる!
ただ、ダメなのは冗談が下手なとこかな
…あ、あと夜になると帰っちゃうとこもダメ
此処に住めって言っても断るし
先生もそれを許してんのがなァ……
ま、そのウチちゃんと言うこと聞かせれば良いや
歳月はせっかく先生がくれた強キャラだし大切に使わないとな!