ウマ娘 超光速の粒子   作:3148

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「強い、強すぎる! 圧倒的な差をつけて、今ゴールイン!」
メイクデビュー戦を圧倒したアグネスタキオン、観客どころか、走っているウマ娘達の目を奪うほど鮮烈なデビューを果たす。
「まだ、まだ先がある」
二着とは三馬身差。それがどれだけの大きな隔たりがあるのかは、走っている者達にしか理解出来ないかも知れない。だが、それでも健闘した者達への賞賛すらもかき消してしまう程の、輝きを持つ走りだった。
「お疲れ様です、アグネスタキオンさん」
トレーナーのタオルを受け取り、これから始まるライブに向かうアグネスタキオンはそれほど喜んでいるとは言い難かった。研究に取られる時間が減ることを惜しんでいるのかも知れない。
「終われば直ぐに出られるようにしましょう。今回は報道陣はいないでしょうが、今後の対応も考えなければいけませんね」
彼女が自由に出来る時間をできる限り増やす、それが彼の仕事の一つになっていた。

クラシック級、弥生賞。
春の木漏れ日が差し、朝夕の寒さは残っていても心地よい気温が外に誘う季節。多くの観客と報道陣が中山競バ場に集まる。その中でも一人のウマ娘の輝きに目を奪われ、或いは絶望に膝をつくものもいる。
「圧倒的です! 着差以上の強さを見せつけたアグネスタキオン! 後続は彼女の陰すら踏むことができませんでした!」
待合室で、彼女の走りを見る。結果など、走る前から分かっているのだ、自分の仕事はこれからだ、と関係各所への手回しを手抜かり無く行う。

「……速い」
最後の直線での勝負では、離されていく距離が詰まるどころかさらに開いていく。顔を上げ、天を仰いだのは、レースの疲労か、はたまた強敵への絶望からか。
「……次は負けません」
頬を伝う水は、汗か涙か。それでもなお、マンハッタンカフェは足を止めることはない。

忙しなく訪れる報道陣に嫌な顔ひとつせずに淡々と答えていく。そうして、最後の質問に答えている間にアグネスタキオンはトレセン学園へと戻る準備を終える。
「次は皐月賞です。今日よりも良いレースになると思っています」
そう答えるとトレーナーは足早にアグネスタキオンと合流し、帰路へとつく。

同年、四月。桜が咲き、春が訪れる。この時期は、多くのウマ娘にとって、重要な季節だ。栄光を手にし、更なる成長を期待される者。確かな手応えと共に、次のチャンスを貪欲に手を伸ばす者。その影に堕ち、破れ、目を眩ませ、閉じる者。
「さぁ、モルモット君。実験を始めよう」
皐月賞が始まる。


(本編とは関係のない文章になります)


超光速の粒子 その軌跡

 その衝撃的な初対面の為に、ダイワスカーレットはトレーナーに対して、良い印象を持っているとは言い難かった。

「あの人、本当に大丈夫なのかな」

周囲から流れてくる噂も、トレーナーに対して変人だのモルモットだのと、まともな話を聞かない。実際はアグネスタキオンの対応が原因なのだが。初等部の授業が移動教室で、たまたま運動場の横を通り過ぎると、視界の端にトレーナーがいるのが見えた。

「一人で何してるんだろう」

走っているウマ娘の中に、アグネスタキオンの姿はなかった。

 

 授業が終わり、各々が寮に戻る準備を始める。まだ外は明るく初等部が遅い時間まで拘束されることもないので、中には外出許可をとって街に繰り出すウマ娘も少なくない。そんな中、ダイワスカーレットは自主トレをするために運動場に向かうと。

「……何してるんですか?」

怪訝そうな視線のその先に、トレーナーが居た。

「あ、ダイワスカーレットちゃんか。待ってるのさ」

誰を、とは聞かない。まだ幼いとはいえ、トレーナーが待つ相手など考えるまでもないからだ。トレーナーの横に、撮影道具や昼食のゴミが置いてあるのをみて、朝からずっとそこにいたことが容易に想像できる。

「……」

なんとなく、居心地が悪いのか、それともトレーナーを単に避けているだけなのか、ダイワスカーレットは自主トレに励みだす。

 

 それから幾度となく待ち続けるトレーナーを見るが、ダイワスカーレットは無視する様になった。幸いにも、トレーナーから話しかける事も無かったので、噂が立つことも無く、ただただ時間だけが過ぎていった。

「ねぇ、あのトレーナーまたいるよ?」

「ホントだ、気持ち悪いね」

あのトレーナーと知り合いだという噂が立たなくて良かったと、胸をなでおろしていると、その内日が暮れ始める。

「……はぁ」

ため息を一つだけ落として立ち上がるトレーナー、無意味な時間をまた繰り返すのかと思うと少し可哀想かと考えた時、彼を引き留める声が現れる。

「待ち給えトレーナー君! 今日はトレーニングをしようじゃないか!」

そう言って現れたのは、他の誰でも無いアグネスタキオンだった。まるで子供の様に驚き、喜んで準備をするトレーナー。日が暮れているので、最早グラウンドにいるのはトレーナーとアグネスタキオンだけだ、ダイワスカーレットも帰る準備をすませてしまっていて、出て行くタイミングを逃してしまっていた。

「はっはっは、いいぞ!」

楽しげに走るアグネスタキオンは、まさに別次元の走りと言って良いほどの速さだった。その姿に見とれ、言葉を失うダイワスカーレット。

「凄い! 凄いぞ、アグネスタキオン!」

アグネスタキオンの走りとトレーナーが歓喜している声が、ダイワスカーレットの脳裏に焼き付いていた。

 

 その翌日、一晩思い悩んでいたのだろうか、寝不足の目でタキオンとトレーナーの前にダイワスカーレットが現れる。

「私のトレーニングを見せて欲しい?」

アグネスタキオンがダイワスカーレットの願いを聞き返した。その言葉に頷くダイワスカーレット。

「私は別に構わないが……そういったことは、トレーナー君に聞いてくれないかな」

アグネスタキオンは否定こそしなかったが、直ぐさまトレーナーが否定する。

「駄目ですね」

何一つとして口をはさむ余地も無い程、きっぱりと告げる。驚きの余り、ダイワスカーレットが困惑していると、トレーナーがダイワスカーレットの視線に会わせる様にかがみ、丁寧に言葉を紡ぐ。

「いいですか、ウマ娘のトレーニングは危険なんです。時速五十キロを越えるスピードは、近くにいるだけで吹き飛ばされる危険があります。また、走っている時は非情に視野が狭くなります。もし仮に進行方向にあなたが歩いていても、気付かない可能性があるくらいに」

何かの拍子で巻き込みでもすれば、両者とも怪我で済まない可能性もあると言う。その言葉に驚き、助けを求める様にアグネスタキオンに視線を向けるが、気まずそうに視線を逸らす。

「傍から見ると分かりにくいかも知れませんが、僕たちトレーナーはそういったトレーニングの安全確保についても、しっかりとした知識を身につけた上でなければなることの出来ない仕事です。安易にダイワスカーレットさんに同行を許可すれば、貴女は勿論、アグネスタキオンさんも危険に晒すことになるのです」

理解して欲しい、と真摯に訴えかけるトレーナー。普段は考えられない強い言葉にダイワスカーレットは俯き、涙を堪えている様だ。

「おっ、おい、トレーナー君。相手は子供だぞ? そこまで言わなくても……いや、間違ったことは言ってないのだが」

それでもトレーナーは頑として首を縦に振らない。

「子供相手だからこそ、です。相手の安全を保証できないのであれば、安易な発言は危険を招く」

トレーナーという、ウマ娘の選手生命を預かっているからこそ、妥協は出来ない。気休めの様な事を言うこともしない、真面目とも言えるし、要領はあまり良くないとも取れる。ダイワスカーレットは依然として言葉を発さず、スカートの裾を握りしめ、俯いているだけだ。

「それは……そうだが。うん、まぁ、トレーナー君の言うとおり、だな」

トレーナーとしてもダイワスカーレットに思うところがないわけではない。幼心ながらに迷惑を掛けまいと我慢しているところをみると、心苦しいというところもある。だが、それを含めても二人の安全には変えられない、はずだった。

「あぁ、だから、その……トレーナー君!」

普段見られないほど動揺するアグネスタキオンに、助け船を出さなければ、物事は落ち着かなさそうだった。

「分かりました、トレーニングの際には僕の側を離れないで下さい。私の指示にはしっかりと従う事、そうしないとトレーニング場に入れることが出来なくなりますので」

溜息をついて、ダイワスカーレットに妥協案をだす。アグネスタキオンのトレーニングを見れるとなると嬉しそうにするダイワスカーレットを見ると、アグネスタキオンも嬉しそうにダイワスカーレットを撫でる。

「……まぁ、仕方ありませんか」

二人の嬉しそうな表情を見ると、作業が増えたことによる心配事よりも、歓びが勝っているように見えた。

 

 アグネスタキオンがまだ授業中で、トレーナーは準備室で料理をしている。どうやら初等部の授業を終えたらしく、準備室に来たダイワスカーレットが興味深そうにトレーナーの姿を見つめる。

「どうかしましたか?」

手を止めること無く尋ねると、ダイワスカーレットは正直に答える。

「美味しそうな料理! お弁当?」

その言葉に、笑顔で答えるトレーナー。

「はい、タキオンさんのお弁当ですね」

じー、と眺めるダイワスカーレットの口にはよだれが垂れてきそうな程集中していた。

「駄目ですよ」

トレーナーの言葉に、まだ何も言っていない、とダイワスカーレットが抗議する。

「タキオンさんにはタキオンさんの栄養バランスがあります。同じ様にダイワスカーレットさんには、ダイワスカーレットさんの栄誉バランスが、特に成長期ですので、同じ物を食べていれば良い、とはなりませんので」

トレーナーの言葉を聞いて、複雑そうな表情をするダイワスカーレット。まだ彼女には難しかったのかも知れません。

「これからダイワスカーレットさんの分も作ります、手伝って貰えますか?」

トレーナーの言葉に、元気いっぱいに頷くダイワスカーレット。慣れない調理にも興味津々の様だ。

 

 




読了ありがとうございました。

トレセン学園に謎の初等部が生えてしまった……


これは作者の知識不足であり、原作の設定とは異なる部分になります

だが、私は謝らない(鋼の意思)

賢さが20?上がった
スキルPtが20?上がった

モンハンのアプデと艦これとウマ娘のイベントで忙しいので、更新遅れます(駄目人間

いやまじでウマ娘のイベントガチガチに育成せなあかんのに、ネタが出てくる暇がにゃいです(笑)

あ、マヤノちゃん糞可愛いんだけど、ヤバくない(語彙力喪失

それでは全国のモルモットの皆様方に、光差す道が照らされている事を願いましてココまでに致します。
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