ホロ学園ライフ   作:ハモリヤ

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4-3名探偵の好奇心

視点:あくあ

 

 

教室には緊迫した空気が漂っていた。

そこには、2人の生徒が向かい合っていた。

 

一人はフブキ。ホロ学園3年生の男子生徒だ。

そして、もうひとりはあくあ。一年生A組の生徒でフブキの妹、つまりあたしだ。

 

 

「またなの、兄さん。今度はなに? あたしは何もしてないけど?」

「いや、今回は証拠がある。問題は、いつ、どうやってとったのかだ」

 

 

兄さんは前回のおにぎり紛失事件の時とは違い怒っている様子ではなく、どうも焦っているようだ。

今日は3年生のクラスに顔を出していないので、おにぎりどころかお菓子だって取ってないのだけど。

何をそんなに焦っているのだろうか?

 

 

 

今は放課後だ。

ここは、教室は教室でも移動教室で使う部屋だ。放課後の今は空き教室になっている。

あたしが帰ろうとしていたら、血相を変えて現れた兄さんに強引に手を引かれ、この空き教室に連れ込まれていた。

 

 

「今回はあくあ、お前意外には考えられないんだ。正直に話してもらうぞ」

 

 

そういってなぜか人目を嫌うように教室の隅にあたしを追い込んで壁ドンした状態で兄さんは言う。

 

壁ドンと言えば、以前気色悪い動きをする蜘蛛に迫られた嫌な記憶がよみがえる。

けれど今、目の前にいるのはしょせん兄さんである。

 

迫られたところで、じゃまだなぁとしか思わない。兄さんの胸を押して遠ざけようとしたけど、さすがに体格差があって動かない。しょうがないので暑苦しいと声をかけようとしたのだけど――。

 

 

 

「きゃぁああああーーー、放課後の人気のない教室。壁際に妹を追い詰めたお兄さん、「あくあ、お前意外には考えられないんだ」そして、一切抵抗することなくお兄さんの思いを受け止めた妹は、そっとお兄さんの胸に手を当てて見上げると、その瞳を静かに閉じて――きゃぁああああああ、リアル兄妹きちゃーーー」

 

 

「げぇ、まつりちゃん」

 

 

気がつくとまつりちゃんが近くの机の陰に身をひそめるようにして、こちらをガン見していた。

両手で目を隠しつつ――両手の指の隙間全開でガン見している。

 

 

その隣にはシオンがいてスマホを構えていた。ちょっと変なところ撮らないでよね!?

 

 

兄さんはどうでもよかったけど、はためからどう見えるか考えるのを忘れていた。

あと目を閉じたりしてないから、捏造だからっ! 

 

 

興味津々のまつりちゃんの他にも、教室の入り口にはスバル、ポルカ先輩、それにあやめ先輩の顔まで、縦に3つ並んでこちらを覗き込んでいた。

 

 

「あ、どうぞどうぞ、私たちの事はいないものと思って続けてもろて」

「シオン!違うから。もう兄さん早く離れてよね」

 

 

流石に兄さんも状況の悪さに気がついたのか距離を離す。

なんでみんなが来たのかと思ったけど、シオンとは一緒に帰る予定だったし、いきなり教室に駆けこんできた兄に拉致されるのを見ていたら、対象が妹でも誰かしら様子を見に来るのは当然だった。

 

ポルカさんは、兄さんにスマホを盗られたらしく追いかけてきたらしい。

 

あやめ先輩は、もめ事の気配を感じて様子を見に来たようだけど。

 

 

「それで、フブキよ。一体何が、『いつ、どうやってとったのか』なのだ? 事件の真相究明であれば余も協力できると思うぞ?」

 

 

あやめ先輩の瞳が輝いている。

あやめ先輩は実は謎解きがしたくて事件に首をつっ込んでいるんじゃないだろうか……それにしても、そんな最初から覗いていたんですね。

 

 

興奮したまつりちゃんを落ち着かさせてから仕切り直す。

 

 

「で、兄さん結局何なのよ」

「くっ、やむを得ないか」

 

 

周囲を見渡して、あまり人がいることを歓迎しない雰囲気をしているけど、今更人払いをするのは無理と諦めたようだ。

 

 

「……あくあ、お前はフィギュアをたくさん持っているな?」

「持ってるわよ」

「部屋からあふれるほどに持っているな?」

「まぁ、自慢じゃないけど、あれだけ持ってる子はそうはいないでしょうねっ」

 

 

フィギュアは本来購入すると結構高い。

しかし、そこはやりよう。

ゲームの大会でポイントを獲得してフィギュアと交換したり、UFOキャチャーのチケットと交換してフィギュアを落としたり。

格闘ゲームの大会では、キャラクターのフィギュアが景品だったりする。

言ってしまえば、部屋のフィギュアの数こそが、あたしのゲームの実力を示すトロフィーだ。

 

 

「でだ、当然このフィギュアを知っているな?」

 

そういうと兄さんはスマホの画面をあたしに見せた。

 

 

「えっ、もちろん知ってるけど?」

「なぜ、この写真がここにある?お前はいつ、この写真を撮った。撮影はさせて……いや、してないはずだろう」

「あたしは写真を撮ったりしてないけど」

「!?……嘘つけ、これはうちにしかないフィギュアなんだぞ。そして、このスマホがなんだかわかるか」

 

「見慣れないスマホだけど、ポルカ先輩のですか?」

「おう、フブキに盗られた俺っちのスマホだぜぃ」

「兄貴、また変なアニメでも見たっすね。直ぐ影響されるんだから」

 

俺っちって、どこかで聞いたことある気もするけどどこだったか。

まぁ、とにかくポルカ先輩のスマホにフィギュアの写真が入っている。

 

「よく撮れてるわね」

「やっぱりしらばっくれるのか、あくあ」

 

兄さんの目は完全に疑いの色を宿していた。

 

「おや、フブキよ、また鬼が寄ってきておるぞ? 鬼が関わる以上、ここから先は余の役目だな。そうだよな? よし、撮られた記憶のない写真の謎を解いてみせようではないか」

 

 

また兄さんに鬼が寄ってきたらしい。鬼を引き寄せる体質でもあるのだろうか?

それよりも、好奇心に瞳を輝かせているあやめ先輩だけど、目が赤く光っていないだろうか? 実はあやめ先輩こそ鬼に憑かれているのではないかと心配になる。

好奇心とか、謎解きの鬼なんていただろうか。

 

 

「よっ、お嬢。待ってました!!」

「え? ポルカ先輩、なんでお嬢なんですか?」

「お? それは、あやめお嬢様が、歴史ある剣術道場の一人娘で次期当主だからさ」

「ポルカ、お嬢様は止めよ」

 

 

どうやら高貴なお嬢様だったようだ。

あやめ先輩が時々まとう迫力は、剣術を身に着けているからだと思っていたけれど、当主になるべく教育を受けているためでもあったのか。

 

 

以前、おかゆ先輩が付き人役をしていたけど、その様子はとても自然に思えた。

今はポルカ先輩が同様に付き人の様なことをしているけど、妙にしっくりくるのはあやめ先輩の慣れもあるのだろう。けっして、付き人がいないと小さなあやめ先輩が迷子になりそうだからではないはずだ。

 

 

写真が気になったようで、まつりちゃんが、兄さんのもつスマホの画面をのぞき込む。

 

 

「うわぁ、フブちゃんだ!!これ本当にフィギュアなの!?本物を映したみたいな精度だよ。どんな技法でつくってるのか隅々まで調べたい。しかもアイドル衣装バージョン。ああ、先週のライブもかわいかったなぁ~。大ファンなの、ちょうだい!!」

「ダメだ、やらん。いや、やれん。これはあくあが一番大切にしているフィギュアだからな」

 

「えっ、兄さんこれ――んんんn」

 

兄さんの手が首の後ろに回り、そのまま抱きかかえるようにして口を手で塞がれた。

むうう、何すんのよ。

 

 

「事情もあるんだ、やることは出来ないな」

「えー、欲しいなぁ、でもしょうがないか。こんなに完成度の高いフィギュア見たことないもん。とんでもないレアものだよ。せめて見に行かせてほしいなぁ、いいでしょ? いいよね! あと、まつりにもこの写真ちょうだい!!」

 

 

まつりちゃんは、アイドルのファンだったようでフィギュアが気に入ったようだ。

熱の入りようから確実に近々うちに遊びにくるだろう。

 

 

話が脱線してしまったが、あやめ先輩が中心となって謎解きの続きを再開する。

あたしは兄さんに首をロックされたまま口をふさがれていて会話に参加できないけれど……

 

「ではまずは聞き込みだな。ポルカ、そなたのスマホの写真はどうやって入手したのだ?」

「お、あの写真はスバルから送られてきたものだな。俺っちがちょっと凹んでいたら、これ見て心を癒してよ兄貴って送られてきたんだよ。くぅー、泣ける兄弟愛だよなぁ」

「何きれいにまとめてるっすか! ソシャゲのガチャでピックアップのSSRキャラが出ないよぉおお、なんでだぁ、俺の嫁はツンデレしかいないのかぁってウザがらみしてくるから、それでも見て落ち着けと送ったっすよ」

 

 

最近活躍しているネットアイドルグループがコラボしているソーシャルゲーム(通称ソシャゲ)がある。

元々、ソシャゲのできがよかったところに、人気ネットアイドルとのコラボで人気急騰中のゲームだ。もちろんあたしは、以前からプレイしている。

 

ネットアイドルグループは、正式に年齢は公開されていないけど、高校を卒業したばかりの人や、中には現役女子高生も混じっていると噂されている。

 

なんでもポルカ先輩は、学園での顔の広さを利用して友達紹介キャンペーンをフル活用することで、ガチャに使えるポイントを大量獲得したらしい。

妹のスバルも当然紹介されている。

ちょくちょくプレイしているので、あたしとも休憩時間中にこのゲームの話をすることがあった。

 

 

そんなポルカさんはガチャで爆死していて、チャットでスバルに絡んでいたようだ。

学校の授業を終えた――つい先ほどだけど――にもチャットが来ていたらしい。

 

スバルは、アイドルグループメンバーの一人の映りがいいフィギュア写真、それも一般に出回っていないレア写真が手元にあったので、これをやるから落ち着けと送り付けたらしい。

 

しかし、これはどこで手に入れたんだぁ~~、とさらに怒涛の着信があり、面倒になって「あくあの家にあるフィギュアらしいよ」と伝えたところ……あたしの兄であるフブキのところにポルカ先輩が突撃することになったらしい。

 

そして、ポルカ先輩に突撃されてフィギュア写真を見せられた兄さんは、あたしのところに突撃してきたという流れだ。

 

 

 

 

 

あやめ先輩が情報を整理する。

 

「うむ、つまり写真の出どころはスバル殿ということだな?」

「たしかに、兄貴に写真を送ったのはスバルっすねぇ」

「もちろん、スバル殿が撮ったわけではないと」

「違うっすよ。そもそもスバルのスマホじゃあんな画質のいい写真取れないっすよ」

 

 

スバルが自分のスマホをポケットから取り出して見せながら言う。

スバルのスマホをみる。

なるほど、写真の画質にこだわった機種ではないので確かにあの写真は撮れないだろう。

 

 

「いや、妹よ。この写真を撮るには、スマホのスペックより重要なものがお前には欠けているぞ。それは、エモを理解する心だ!!わかるか、この脇から胸のラインを美しく見せる角度。そして、スカートのひらひらの隙間から見えそうで見えない絶妙のアングル。光の影まで上手く利用したこのぎりぎりの攻め具合はプロの仕事だぞ!!」

 

「やめろ、兄貴ぃ。家ならともかく人の友達の前でヤバい発言するんじゃない!!」

 

「わかる。わかるよお兄さん。つい画面を下から覗き込んでしまう臨場感あふれる距離感とアングル。投稿が許されるギリギリの攻め具合。これはエロス有識者の仕事ね!!」

 

「わかるかい、まつりちゃんっ」

 

「はい、ポルカ先輩っ」

 

「ぐあぁーー、こっちにもいたっす」

 

エモの話が、エロスに変わっているけどいいのだろうか?

ガシッと、手を握ってわかりあっているようなので、どちらでもいいのだろう。

妙なところで新たな友情が芽生えたようだった。

 

 

たしかに写真の映りはいいなぁと思う。

なかなか、見る人のツボを押さえた撮影だ。

 

ふっふっふ。もっとも、いつでも実物を見れるあたしは、写真だけでは表現できない良さがあることを知っているけどね!!

 

「まぁ、待つのだ。話を戻そう。スバル殿はその写真を誰にもらったんだ?」

「写真はさっき、ねねちからもらったすよ。あくあが持ってるフィギュアの写真で、めっちゃかわいいから今度一緒に見せてもらいに行こうって誘われたっす」

 

そうなのか。

それなら、お菓子を補充して置かないといけないな。

部屋もちゃんと片付けておく必要があるだろう、兄さんが。

 

 

「ねねちゃんか、あくあ、お前はどこまで写真をばらまいたんだ……」

「ぷはぁ、あたしじゃないって言っているでしょ」

 

 

兄さんの脇に抱えられたまま、口を覆っていた手のひらだけ外して答えた。

 

「ふむ、先ほどの話なら、ねね殿は直接フィギュアを見たわけではないと」

「そうっすね、見てはいないようだったっすよ」

「俺っちがねねちゃんを呼んで来ようかい?」

 

「いや、待つのだ。今の話が全て本当だとすると……あくあ殿が撮影していないのに広まっている写真。撮影にこだわる人が所持しているカメラかスマホで撮られたと思われる高画質写真。かなりぎりぎりのセンシティブを攻めるセンスの持ち主による写真。一見情報が足りないように見えるが、その経緯と手口を考えれば……なるほど、謎は全て解けたぞ」

 

 

えぇええええ、その情報で謎が解けたんですかあやめ先輩!?

 

 

「本当なのか、あやめ!!」

 

「うむ、犯人はこの中にいる」

 

 

あやめ先輩が、全員を見渡たして厳かに告げた。

 

そして人差し指をぴっと立てると、その指が――その場に立つ一人一人の上をなぞるように移動していき――。

 

 

「犯人はお主だ」

 

「おい、まさか俺が自分でばらまいたと言いたいのか!?」

 

 

その指は、兄さんを指して止まったように見えた。

 

「いや、お主ではない、その奥だよ」

 

そう言われて、兄さんが振り返る。

兄さんの脇に首をロックされて抱えられているあたしも必然的に振り返った。

 

すると、そこにはスマホを構えて撮影している女子生徒が立っていた。

 

 

 

 

……シオンだった。

 

 

推理小説の探偵が犯人を指名する名場面。

犯人として探偵が指名したのは、カメラに写っていない人物。

そう、つまりはカメラマンであったのだ。

 

 

「あ、あやめ先輩、その決めポーズいいですね~最高です。それとフブキ先輩のその振り返って愕然とした表情もそそるものがあってナイスですね。あ、ついでにお尻ふりふりしてたあくあも、いい感じのアングルで撮っておいたから」

 

 

探偵役のあやめ先輩を正面からのアングルで撮影していたらしいシオン。

最新の――状況に合わせて使い分けができる複数の高画質カメラを備えた――スマホを構えながら言う。

 

兄さんに首を抱えられていたせいでお尻を突き出していたあたしを後ろから撮影していたらしい。

いい感じのアングルってなによ! スカートのなか映ってないでしょうね!!消しなさい!!

 

 

「シオン……君がこの写真を撮影したのか?」

「えー、どの写真ですかぁ? あ~、その写真ならこの前遊びに行ったときに撮りましたねー」

 

「鍵のついたケースに入っていたはずだが……」

「鍵ならあくあちゃんが開けてくれましたけど?」

 

「あくあ、なんでお前が鍵の場所を知っている……」

「なんであたしが知らないと思ってたの?」

「……」

 

兄さんの物は、うちの物。うちの物は、あたしの物である。

フィギュアであればなおさらだ。

兄さんは普段から飾っておいてくれればいいのに仕舞い込んでいて、頼んだ時しか出してくれない。

しかし、兄さんが居ない時に見たくなったなら、自分で引っ張りだすのは仕方がないことだろう。

フィギュアケースの鍵の場所はとっくの昔に確認済みである。

 

「……あぁ、はははっ、まあそうだよな。部屋に入り切らないからって、あくあから預かったものなんだから、あくあが知らないはずはなかったな」

 

「あれぇ? あくあちゃんから、何度頼んでも譲ってくれないお兄さんのお気に入りなんだって聞いてたんですけどー?」

 

「……」

 

兄さんの体から力が抜けた。

試しに抜け出そうとすると、特に何の抵抗もなく抜け出ることができた。

 

「おおーっと、フブキ選手!!妹の友達にアイドルのフィギュア趣味がばれてしまっていたー、これは恥ずかしいー。年頃の男子の胸をえぐる大ダメージだぁー」

 

ポルカ先輩が格闘技のアナウンサーのように、マイクを持って実況を始めた。

どこからマイクを出したのだろう?

いつもマイクを持ち歩いているのだろうか。

 

あのフィギュアは本当に良いものだ。誇りに思うことはあっても、恥じる必要はどこにもないと思うんだけど?

 

 

「まぁ、フブキよ、憑代を大切にするのは何も悪いことではないぞ。自分が見ているところでしか触らせないほどに憑代を大切にしているなら誇るべきことだろう」

 

 

うんうん、その通りである。

すると兄さんは、魂が抜けたかのように棒立ちとなり、そのまま後ろにひっくり返った。

 

 

「ああーー、フブキ選手!!同級生の女の子にフィギュアに対する独占欲を慰められたーー。これはクリティカルダメージだ!!1,2,3,カンカンカン。これは立てな~い!!」

 

 

ポルカ先輩が、兄さんの横の床を叩いてカウントをとる。どうやら、KO負けになったようだ。

 

それにしても、今のはなんだろう?

 

受け身もとらずに倒れた兄さんは、音もたてずに静かに床に着地したように見えたのだけど……

 

それに、魂が抜けたように倒れていくとき、黒髪のはずの兄さんの髪が、まるで銀パツのように白く輝いて見えた気がしたのだけど……気のせいかな?

 

ひょっとして、生気の抜けた兄さんが真っ白に燃え尽きたように見えたのだろうか?

 

 

 

「ふむ、まさか余の一言で気を失うと思っとらんかった。少し焦ったけど守ってくれたんだね。写真を憑代にしても少しは憑けるようだ……宿主思いだね」

 

「えっ、あやめ先輩何か言いましたか?」

 

「ん? いや何でもないよ」

 

何か兄さんに話しかけていた気がするけど、何だったのだろう?

 

 

「それにしても、シオンあの写真いつの間に撮ったのよ?」

 

「あのフィギュアを見せてもらった時に、あくあに『お兄さんの方がフィギュアのセンスがいいんじゃない』って言ったら、あたしも負けてないしって言って自分の部屋に取りにいったでしょ。その後しばらく戻ってこないから撮影会をしてたのよ」

 

「あー、あの時ね。しょうがないでしょ、見せたいのがいっぱいあって選ぶのに時間がかかったんだから」

 

なるほどあの時に撮ったのなら納得だ。

 

 

 

 

 

 

あやめ先輩が今回の事件の結末を告げる。

 

 

「いつ、どうやってとったのか。フブキの留守中にフブキの部屋で、あくあ殿が鍵を開け、シオン殿が撮影したということだな」

 

「だからあたしは撮影してないって言ったのよ。兄さんはあたしの言葉を信じなさすぎよ」

 

これで、疑いは晴れたと思ったのだけど。

 

「いやいやあくあ、これは流石にお前の犯行だろう」

 

スバルからつっ込まれた。ちなみに[これは]というのは倒れふした兄さんを指しての言葉だ。

 

「うむ、実行犯シオン殿。共犯者、いや主犯あくあ殿というところだろうな」

 

あやめ先輩も、あたしの犯行と言う。なんで!?

 

 

「俺っちは嬉しいぞフブキ。お前と熱く語れる共通の趣味が見つかったんだからな。男ならもっとオープンで行こうぜ」

 

「兄貴はもう少し隠せよなぁ。あくあが羨ましいよ、鍵付きのケースから出てくるのがアイドルのフィギュアだろ? うちの兄貴なんか、ベットの下覗いたらさぁ」

 

「ちょおおおっと、兄貴の威厳を大切にしような!!」

 

「そんなもの、もうとっくに品切れっすよ」

 

兄さんが気絶している横で、割とみんな好き勝手に話ていた。

 

 

 

「ふぅ、謎を解くことによって事件は解決したが、今回の鬼は厳しい相手であったな」

「あれ、兄さんは本当に鬼に憑かれていたんですか?」

 

「うむ。それもフブキは前回に続き二度目であったからな、鬼は鬼でもただの鬼ではなかった。一度目に比べて、再び宿る鬼はパワーアップするのだ」

 

 

鬼に体が馴染んでしまったりするのだろうか?

 

 

「今回宿った鬼は、フブキの疑う心に再び宿りし鬼、その名も、猜疑心(再鬼神)だ」

 

「よっ、名探偵。日本一!!」

 

「うむ、それほどでもある。だが、ほめても何も出んぞ」

 

ポルカ先輩の合いの手に、素直にうなずくあやめ先輩。

事件の謎を解いて、上機嫌なようだ。

 

 

でも、猜疑心(さいぎしん)は鬼に関係ないよね。

今回は、封鬼委員としてではなく近くを通りかかっただけなのだろう。

 

事件現場の近くを通りかかるのも名探偵の資質かもしれない。

 

 

 

 

封鬼委員の百鬼あやめ先輩。

 

剣術を習い、小さな体からは想像できない抜群の運動神経。

事件となれば冷静に犯人を追い詰める考察力と、名探偵の好奇心。

大きな瞳が印象的な、ちょっとお茶目で、カッコかわいい先輩だ。

 

 

あやめ先輩が学園の平和を守ってくれていると思うと、安心して学園生活を送ることができそうだ。

 

 

 

なお、途中から意識を失っていた兄さんは、ポルカ先輩が保健室に連れて行ってくれた。

 

兄さんいわく、フィギュアを見せてやると約束するまで、ずっと付き添ってくれたそうだ。

 

 

 

 

 

 

                        ~ 封鬼委員のお仕事 end ~

 




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