ホロ学園ライフ   作:ハモリヤ

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化学実験室でのアルコールに科学者として興味の尽きないラミィさんのお話です。

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5-4試練は避けない

視点:ラミィ

 

 

 

塩酸と水酸化ナトリウムがこぼれることで、あわやケガ人が出そうになったところをロボ子さんが防いでくれたあと、化学実験の授業が再開された。

 

 

かなた先生が次に取り上げた薬品の試薬ビンを見て、ラミィの興味関心は否が応でも高まった。

 

 

かなた先生が薬品の説明を始めた。

 

「では、次にアルコールについて説明しますね。アルコールは消毒に使われたり、そこにあるアルコールランプの燃料に使われたり、お酒に含まれていたりします」

 

 

次はアルコールについてだ。

 

 

「目の前のラベルに95%エタノールと書かれているのがアルコールの一つですね。95%エタノールは、いわゆるお酒に含まれるエタノールを可能な限り濃縮したものです。本来は、お酒に使われると困るので混ぜ物をするんですが、学校の実験用ということで混ぜ物をしていないものを取り寄せています」

 

 

普通は、飲むためのお酒でなくても、エタノールは酒税がかかる。

アルコール度数を上げるためにお酒に加えたりする者がいるための決まりです。

しかし、化学実験に使用するということで特別に酒税無しで取り寄せできるらしい……なんてうらやまし、いえ贅沢なんでしょうか。

 

 

「かなた先生、ちょっとだけ、飲んでみててもいいあるか?」

 

 

ねねちゃんが興味をひかれたらしい、良い傾向ですね。

 

 

「えーと、95%エタノールは飲むのは危険ですよー。まぁ、本校には優秀な保険医もいますし、なめるくらいなら構いませんけど」

 

 

どうせクラスで一人は勝手に飲む生徒が出ますしねー、というかなた先生のセリフがボソッと聞こえた。

勝手に飲まれるくらいなら、見ているところでやってくれというところでしょうか。

 

 

「ホントあるか! なめるだけ、そうなめるだけある」

 

そう言って、ねねちゃんは試験管になみなみと95%エタノールを注ぐ。

なめるだけでなんでそんなに入れる必要ないよね。

 

うきうきと試験管を持つ。

隣にいるししろんが、止めるのかと思いきや、おもむろにアルコールランプにさっとマッチで火をつけた……?

 

 

ねねちゃんが、景気よく試験管を煽る。試験官が空になった。

ただ、いきなり飲み込んだりはしていない様で口の中に貯めている。

あれも舐めているうちに入るのかな?

 

 

実は、ねねちゃん何気にいける口なのかなと思ったのだけど、

 

 

……ねねちゃんの動きが止まってる?

 

 

と、思ったら、ねねちゃんの顔が赤くなり目を見開くと、

 

「ぶぅうううううううう」

 

口に含んでいたアルコールを盛大いに噴き出した。

 

 

タイミングを見計らって、ししろんが口の前にアルコールランプを持っていく。

 

 

ブゥフォオオオーーーー

 

 

おー、炎が吹き上がる。まるでサーカスの火吹きショーの様な光景に観客が盛り上がる。

 

 

ししろんも、自分でやっておいてツボったのか楽しそうげらげら笑っていた。

 

 

「ごほぉ、ごほぉ、の゛どが焼け゛るぅーーー」

 

 

「それはそうですよ、だいたいアルコール度数95%なんですよ? ねねさんは、よくそんなためらいなく口に入れますねー。その挑戦心は素晴らしいです。けど、時には慎重さも大切ですよ。あと、ぼたんさんは楽しそうですね。準備万端でしたし」

 

 

「いえいえ、かなた先生。あたしは教室が汚れないようにと、自分にできることをしたまでであります、サー」

「確かに、燃えたおかげで床は濡れずに済みましたか……色々と機転が利きますね。あっ、本当に必要な時には止めてあげて下さいね」

「それはもちろんです。任せて下さい」

 

ししろんは、いつも周りをよく見てますよね。

さすがラミィのししろん、頼もしい。

 

 

ねねちゃんを見ていて他の人も少し興味をひかれたようだ。

 

 

「あんな風に火がつくほどすごいんだ」

「あくあ、あんたも飲んでみたら?」

 

 

シオンちゃんがあくあちゃんに声をかけている。

 

「いやいや、あたしは無理だから。匂いだけちょっと嗅いでみようかな?」

 

 

そう言って、瓶のふたを開けて匂いを嗅ぐと

 

 

「あ、あれぇ、あちしろうしたんらろ、しかいがまわりゅ?」

 

 

そう言って、ばたっと実験台につぷっした。

 

 

「せんせーい、あくあさんが匂いで酔っ払って倒れましたー」

 

 

「あー、あくあちゃんはお酒は飲めなそうですね。 皆さん、化学実験で使用する薬品には毒性の強いものもあります。そういう時は、瓶の口に顔を近づけて匂いを嗅ぐのではなくて、手で仰いでうっすら漂ってきた匂いを嗅ぐようにして下さいねー」

 

 

「はーい」

 

 

ねねちゃんが何だかんだと元気そうなので油断していた生徒の気持ちがちょっと引き締まった。あくあちゃんの犠牲はクラスのみんなの勉強になったようだ。

 

 

ねねちゃんの火吹き芸から、なんだかんだと化学実験室が盛り上がっていると、入り口のドアが勢いよく開いた。

 

 

「はあちゃまっちゃまー、なんだか楽しそうね。あたしも混ぜなさい!!」

 

 

はあと先生が賑やかさに引き寄せられて現れた。

今の時間は、アシスタントティーチャーの授業はなくて空き時間なのかな?

……授業中でも何かしら理由をつけて抜け出してきそうだけど。

 

入ってきたはあと先生は、机の上に並ぶ薬品を見て目を輝かせる。

 

 

「面白そうな薬品がいっぱいあるわね。どれを混ぜたらいいのかしら」

 

 

何故、混ぜることが前提なんですかね?

事故が起きそうな気しかしないと思っていると、かなた先生がはあと先生に近づくき、頭に何かを張り付けた。

 

「ん? これは何かしら」

「赤いはあと先生にお似合いのものですよ」

 

頭に紙を貼り付けたその姿は……

 

「なんか、キョンシーみたいですね」

「ぴょーん、ぴょーん。似合うかしら」

 

 

かなた先生が貼り付けたのはお札の様だった。

はあと先生は、両手を前に出してぴょんぴょんしている。

お札に書かれた文字を読むと、『爆発物につき取り扱い注意』と書かれていた。

 

 

「……そうですね、とってもお似合いです」

 

 

お似合い過ぎでしょ。

 

 

「それでは、ロボ子さんよろしくお願いします」

「了解だよー」

「ん? どうしたのロボ子さん? あれ、どこに連れてくのかしらちょっとロボ子さん、ねぇってばちょっとー」

 

 

教室を出て行った声が遠ざかっていった。

ロボ子さんは、はあと先生を担ぎ上げるとそのまま有無を言わさずに教室から連れだしていった。

 

 

「かなた先生、今のはなんだったのですか?」

「はあと先生は、以前に実験室の危険な薬品を勝手に持ち出したので出禁です」

 

 

……たしか家庭科教室も出禁でしたね。

家庭科教室も実験室も出禁って、それで教育実習生が務まるのでしょうか。

もはや教師をさせてもらえる場所がなくなるのでは?

 

 

「さて、それでは授業を再開しましょう」

「ロボ子さんは、大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ、ロボ子さんは爆発物処理の資格を持っていますからねー。安全に処理してくれますよ」

 

 

 

どぉおおおおおおん

 

 

 

……どこかで、何かが爆発する音がした。

 

 

「……ロボ子さんは、大丈夫なんですか?」

「……大丈夫ですよ、ロボ子さんは高性能ですから、最小限の被害で処理してくれたでしょう」

 

化学薬品で傷つかないロボ子さんなら、大丈夫だと信じることにしましょうか。

 

 

 

 

 

 

さて、クラスの皆は爆発に気を取られていますが、今のうちにラミィは自分の試練に向き合うことにしましょう。

 

 

一人真剣に目の前の薬品と向かい合う。

 

 

ビーカーを手元に置き、とくとくと薬品を流し込む。

少し、匂いを嗅いでからこくこくと喉を鳴らす。

 

目を閉じて味わいを確認する。

そして、改めてビーカーに口をつけた。

 

 

「いやいや、ラミィ何をやっているっすか」

「薬品の喉越しと味わいを確認しています」

 

 

スバルちゃんからの問いに答える。

 

「……ねねちは口に含んだだけで大変だったのに、ラミィはまるで、水のように飲むっすね」

「それは違います。これは、水よりはるかに飲みにくいです。水にはしっかりとミネラル成分も含まれていて味があります。けれど、これは本当に何の味もない。正直言ってまずい」

 

飲んでみてわかったけれど、何の旨味もない。やはり、”お酒”ではなく薬品ですね。

 

「ならなんで飲んでるっすか?」

「もちろん、科学者としての探求心です。新しい”もの”を生み出すことを志す科学者の一人として、原点を知ることは大切ですから。ふむ、これは、酔うことはできても幸福は得られませんね」

 

目の前にある純粋に蒸留できる最高濃度のアルコールを見る。

大半の人の喉と肝臓を破壊して、意識を奪う薬品です。

しかし、今、ラミィの前に現れたのは、酒職人を目指すための試練なのでしょう。

 

 

改めて、ビーカーに注ぎ口をつける。

 

 

「これが、お酒をお酒たらしめている本質ですか。飲んで楽しいものではありませんが、酒造りの道を究めようとするものとして、新たな味を開発する科学者の端くれとして、この味は知っておくことには価値があるでしょう。であるならば、危険だと言われて避けて通ることができるでしょうか!! いいえ、できはしません!!」

 

 

「ひょっとして、ラミィ酔ってるっすか?」

「まさか、この程度で酔うなんてありえません。それに、これならアルコール濃度は下がってもまだジンや、ウォッカのようなスピリッツの方が味わいもあって気分が高揚するというものです」

「ラミィ、お酒の味に詳しすぎじゃないっすか。その、ひょっとして……」

 

スバルちゃんがいいよどむ。

しかし、その疑問は想定内です。

言葉を繋げられる前に割り込む。

 

 

「前世です」

「えっ?」

「ラミィは、前世で酒造り職人だったのです。その記憶があるからこそ、お酒の味については一通り熟知しています」

 

 

何度も何度も、イメージした世界線を呼び起こす。

 

 

「ラミィは酒造りの道を究め、世界に通用するお酒を、飲んだ人の人生を豊かにするお酒を作り出すことを志していました。ですが、道半ばにして……。しかし、しかしです!! ラミィはこうして生まれ変わることができました。しかも、今の時代は、女性でも職人になることが一般に認められる時代です。しかもしかも、人生100年時代。これほどに、道を究める為に素晴らしい時代はないでしょう」

 

 

語っているうちに、言葉に熱がこもる。

 

 

「しかし、しかしです。一つだけ、どうしても言わずにはいられません。なぜ、以前に比べて圧倒的に健康的で長い気が出来る時代に、成人が二十歳なんですか!? 以前は、人によっては12には元服し大人と認められていたものです。その頃よりはるかに食生活が改善し、健康的になったというのになぜ二十歳で成人なのか。いや、成人がどうとかではない、なぜ二十歳までお酒が飲めないのか」

 

 

ここで、語っている間に実験室に戻っていたらしいロボ子さんから声がかかった。

 

 

「ラミィさんには熱い思いがあるんだねー。ただ、お酒を飲んだ影響であきらかに酔ってるよねー? 絡み酒みたいになってるよ?」

 

 

「ロボ子さん、それは違います。いいですか、これは断じてお酒ではありません。お酒とは、高い税金を納め懐を痛めながらも、なお心を豊かにしてくれるそんな素晴らしいものなのです。酒は百薬の長と言います。本来なら医薬品として保険が利いて3割負担でもいいはずなのにです。ですから、税金を逃れたこのようなものは断じてお酒ではないのです」

 

 

ふぅ、言いたいことを言って少し胸がスッとしましたね。

ビーカーの残りを口にしようとすると、スッとビーカーが手から抜き取られた。

 

 

「あ」

「ダメだよー、これはお酒じゃなくて薬品だから飲まないでね」

 

 

そういって、取り上げたビーカーの中身をロボ子さんが飲み干した。

 

 

「あー、ロボ子さんお酒飲めるんですか!?」

「ボクはまだ生まれて間もないけど、人造人間だからねー。年齢制限はないよ」

「何てうらやましい、じゃなくて飲めるんですね」

「ロボ子はアルコールを活動エネルギーに変換できるからねー。さっきのはあちゃまに爆破されたダメージ回復に使わせてもらうよー」

 

 

あ、あの爆発でダメージ受けてたんですね。

 

 

それにしても、人造人間ですか。その世界線は考えていませんでした……

 

 

「確かに、その手がありましたか。……ラミィは実は幼少のころに謎の組織にさらわれたのです。そして、改造人間にされてしまいました。えっ、どんな改造をされたのかですか? それは、顔が肝臓の肝臓人間にされてしまったのです。そのため、酒を飲んでも飲まれない体質となりました。ロボ子さんと一緒ですね。人造人間も改造人間も親戚のようなもの。で、あるならば。ラミィもお酒を飲むことに問題はないはずです。……これならば、年齢の牢獄から脱獄することもできるのではないでしょうか……」

 

 

新たな設定について考察をしていると、かなた先生に声をかけられた。

 

 

「ラミィさんちょっと息を吐いてもらえますか」

「え、はい、こうですか?」

 

 

はー、と息を吐くとピーピーピーと音がした。

 

 

「えっと、それは?」

「アルコール検知器です。お巡りさんに見つかったら補導されてしまいますね」

「なぜ、化学実験室にアルコール検知器が準備されているんでしょうか」

「もちろん、勝手に薬品を飲む生徒がたまーにいるからですね」

 

 

肩にぽんっと手が置かれる。

 

 

「ラミィさん、このまま帰宅してもらうわけにはいきませんので、アルコールが抜けるまで水分を取りながらランニングでもしてもらいましょうか。肝臓人間のラミィさんならアルコールを飲んで運動しても大丈夫でしょう」

「あ、あのラミィは運動はちょっと苦手なのですがー」

「大丈夫ですよ、親戚のロボ子さんがつきっきりで指導してくれますからねー。ということで、ロボ子さんあとはよろしくお願いしますね」

「了解だよー」

「あ、ちょ、待ってください。ランニングはいやー」

 

 

問答無用でロボ子さんに担がれ、教室から連れ出されました。

……そして、高濃度アルコールが体から抜けるまでマンツーマンでランニングをさせられる。

 

やっぱり、度数の高いアルコールはちゃんと割って飲もうと心に誓うのでした。

 

 

 

 

                 『好き』に生きる ~ end

 

 




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