ホロ学園ライフ   作:ハモリヤ

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1-2学園デビューは突然に

視点:あくあ

 

「はい、皆さん始めまして。

この1年A組を担任することになりました天音かなたです。

天音先生でも、かなた先生でも、かなたんでも呼びやすい呼び方で呼んで下さいね~」

 

体育館での入学式を終えて、教室の席に着く。

オリエンテーションの時間となり、先生が教壇にたって挨拶を始めた。

チョークのようなものを持って黒板のようなものに名前を書いていく。

[ような]と表現したのは、実際にはデジタルのディスプレイだからだ。

 

手に持っているチョーク型のものはおそらくペンツールで、黒板はディスプレイに映像として表示されていた。

雰囲気づくりなのだろう。

 

この学園は、比較的最近に新設されていて、デジタル社会に適応できるようIT関係の先端設備が配備されている。

各自の席にもタッチパネルのディスプレイなど、デジタルツールが用意されていた。

 

 

先生がこれからの学園生活について簡単に解説してくれた後、各自の自己紹介を促された。

 

「あくあです。趣味は、読書や、ネットサーフィンです。ライブ配信などの音楽を聴くことも好きです。……よろしくお願いします」

 

恥ずかしい……。

もっと話すべきだと思い色々考えていたのにいざ自分の番が回ってきたら頭が真っ白になって結局何を言うべきかわからなくなってしまった。

 

回りの反応を見ることも出来ず、目を上げることができないまま小さくお辞儀をして席に座る。

唯一考えていたことで実施できたのは、アニメ、ネットゲーム、アイドルといったワードは自己紹介で使うのは避けようということくらいだろうか。

 

短いセリフだったのに、心臓がバクバク言う音がする。

 

「はい、ありがとう。これからよろしくお願いしますね♪ それじゃ次は、紫咲シオンさんお願いします」

 

先生が何も触れずにスムーズに次の人に流してくれたのがありがたい。

前の席の生徒が立ち上がる。

 

「紫咲シオンです。趣味はお料理で、ネットやYouTobeでレシピを検索しながらよりおいしく調理するための方法を模索しています。休日には料理の味を覚えるために料理人の方に作っていただいたりもしています。

他には美術鑑賞も好きで、画集を購入したり、時々ですが展示されている美術品を鑑賞にいっています。学園では皆さんと共に学び成長していきたいと考えています。どうぞよろしくお願い致します。」

 

うつ向いていた顔を少し上げ前の女の子の後ろ姿を盗み見る。

緩くカールを巻いた長い髪に細身の身体。真っすぐに背筋の伸びた姿勢で自己紹介の言葉をよどみなく述べている。

お料理とか美術鑑賞が趣味なんて、ひょっとしてどこかのお嬢様だろうか?

自信なさげにおどおどと話した自分と比べてしまい、恥ずかしさが増してしまった。

 

 

 

 

数日後の休憩時間。

 

クラスで浮いてしまっている。焦りが募った。

 

自己紹介を終えた後、何人か私に話しかけてくれた子がいた。

でも、満足に返事ができなかった。

 

自己紹介で満足に話せなかった恥ずかしさ。

自分のことで頭がいっぱいで、その子達の自己紹介を聞いていなかった気まずさ。

漠然とした後ろめたさに喉がつまって満足に声がでなかったのだ。

 

ちゃんと聞いておけば話題を広げたり、趣味の似た子を見つけたりできたかもしれないのにチャンスを逃してしまった。

 

SNSでリアルを知らない相手とコミュニケーションをとるのは大好きだ。

話題もすらすらと浮かぶ。

フォロワー数も割と多いのではないだろうか。

 

リアルの自分は知られない。

だからこそ、本当の自分を見せられる。

 

大好きなゲームの話題でも、アニメで好きなキャラクターについても、好きなアイドル(女性)についても思ったことを語れる。

 

でも、リアルで趣味をさらせば浮いてしまうのではないか?

中学校の思い出がよみがえる。

また、自分の席で顔をうつ向かせて休憩時間を過ごす日々が始まってしまうのかもしれない……。

 

折角の新しい顔ぶれで始まる学園生活。

期待していなかったと言ったらうそになる。

少しずつでいい。素直な自分を見せて受け入れてもらえるようになりたい。

その思いが、かえって声を詰まらせていた。

 

……何か切っ掛けを作る方法はないだろうか?

 

「兄さんの教室にでも相談にいってみようかな?」

 

ふと兄のフブキの顔が浮かび呟いた時、

 

「あれ、あくあちゃんって、兄貴が学園にいるっすか?」

「!!?」

 

左隣の席から声をかけられた。

 

「あ、スバルさん?」

「ああ、スバルって呼び捨てでいいっすよ」

「えぇ、えっとじゃあ……スバルちゃん」

「うん、それでもOKっす」

 

隣の席のスバルちゃんに声をかけられた。

名前はこの数日間で全員暗記している。

とても活発で明るくて、内容までは聞き取れないが、色々な人に声をかけて話をしている様子は見かけていた。

さっきまで席を離れて話をしていたと思ったけど、戻ってきたらしい。

 

「スバルも3年に兄貴がいるから、ちょっと気になってー」

「えっ、そうなんだ。あたしも3年に兄さんがいるよ」

「やっぱりそうなんだー、3年生ににーちゃんを持つのが最近のトレンドなのかなぁ~」

「兄ってトレンドで持つものなの!?」

 

脳内で[お兄ちゃんガチャ]を皆が引いている映像が浮かんだ。

……誰得イベントだろうか?

 

話を聞くとクラスに何人か3年生に兄がいるらしい。

まぁ、1学年離れた兄弟はよくあるケースだ。

それに、兄姉が入学しているなら、勉強のノウハウがある家庭だろう。

弟妹が入学しやすい環境ではあると思う。

実際、あたしは勉強に行き詰ると兄さんの部屋に押しかけていた身だ。

 

スバルの兄はポルカさんと言うらしい。

[兄話デッキ]は予想外だが、結構話しやすい話題かもしれない。

 

「予定があっても朝全然起きなくて、起こすのが大変なんっすよねぇ」

「スバルちゃんは面倒見がいいんだね。うちの兄さんは、予定があれば起きるかな。土日はネットゲーム遅くまでやってると朝起きてこないから、朝食の時間に起こしに行くけど」

 

「あくあちゃんが、朝食作ってるんだ~」

「うん、料理担当なんだ。土日だけだけどね」

「偉いな~。それにしてもやっぱりネットゲームやってるんだね~。クラスのみんなも、にーちゃん達もネットゲームやってるのが当たり前みたいでびっくりっすよ」

「えっ、ネットゲームの民ばっかり!!?……その女の子も?」

「そうっすね、聞いて回った限りみんなやってるっすねぇ。さすがIT系の強い学園。

みんなPCいじってるし、あのゲームやるならスペックは、なんちゃらかんちゃら以上必要って呪文唱えてたっす」

 

まさか、ひょっとするとネットゲームの話題とか普通にしてもいいのだろうか?

 

「スバルはPCもってなくて、やったことなかったからこれから覚えようかと思ってるっす。郷に入っては郷に従えっていうっすからね~」

 

うちの学園は、PCを持っていない人には貸し出しをしてくれる。

オンライン講座があり、家でも学生はアクセスして学習ができるのだ。

むしろ、動画をみてわからなかったところを先生に質問することで理解を深めるのが授業の時間といった進め方だ。

他の生徒の疑問は、自分になかった視点からの見方があって新しい気づきに繋がるので、ためになる仕組みだと思う。

ついでに、借りたPCはアプリなど好きにダウンロードして使ってよい。

まぁつまり、ゲームをプレイしてもよいということになっていた。

 

学園の教育方針は、[好きこそものの上手なれ]だ。

IT技術は今後必須なので、ゲームでもなんでも興味を持ったことを通じて身に着けていくようにとうことだろう。

だからと言って、ゲームをやっている、やろうと思ってる女子生徒がそんなにいるとは思わなかった。

 

「そ、そうなんだ。あ、もしよかったら簡単なことなら、お、教えてあげられるかも?」

「おー、ホントにー、それは助かるっす」

よかった、自然と話をするきっかけが作れた。

 

「なにか特に興味があることとかある?」

「そうっすねー、オンラインの対戦格闘ゲームとかやってみたいっすねー」

 

オンラインの対戦格闘ゲームなら幾つか教えられる。

受験の合格発表前日にも大会に参加して、優勝しているタイトルもあるくらいだ。

あまりやり込んでると思われない程度に上手く教えていくのが良いだろう。

 

「対戦格闘ゲームなら、兄さんに誘われて始めたゲームがあるから、よかったら紹介するよ? 課金しなくても無料でプレイは出来るから。自分で言うのもなんだけど、割とセンスがあるみたいで上手い方みたいだからコツとか教えられると思う」

 

「あ、無料でプレイできるのは助かるっす。格闘ゲームだとやっぱり大会とかあったりするっすか?」

「うん、定期的に行われてるね。[フードファイター]っていうタイトルで大食いじゃなくて格ゲーなんだけど、でてみたい?」

「でたいっす!そんでもって超必殺技をこう、ずばばばばばぁーんて、かましてやりたいっす!」

「ふふ、狙ったタイミングで超必殺技決められると気持ちいいよ!」

 

通常技からのコンボでラストまで決められると達成感があるのだ。

 

「ただ、本当はこの技を出したら勝確みないな、超々必殺技みたいなのもあるんだけど」

「おお、あんぱ〇まんの[新しい顔よ~]みたいなやつっすね」

 

いや、あれは必殺技だろうか?確かにあの演出がでたら勝確だけども。

 

「まぁそうかな?そこからの[あーんパーンチ]みたいなものだけど、スキが大きすぎて使えないのよね」

「そうなんすか?でも使えたら勝確なら上級者は使いそうっすけど?」

 

「うーん、そうもいかなくて、色んな技を一定回数発動させることが条件なんだけど、初心者同士ならその前に勝負がつくし、上級者同士だと途中のスキをお互いに見逃さないから結局使えないのよね」

 

難度が高いくせに、達成する技術がある者同士では通用しない……使い道がなさすぎる。

 

「ほら、[新しい顔よ~]で顔が飛んでくるとわかっていれば、飛んでる途中でキャッチしちゃえばいいでしょ?大会みたいな本気の対戦なら見逃さないから、格下相手に見せプレイで発動させる人くらい。だから二流プレイヤーの代名詞みたいになってるのよ」

 

「ちょっと、待ちなさいよあなた」

「!!?」

 

スバルちゃんに説明していたら、急に横から声をかけられた。

横というか、横の席のスバルちゃんと話していたので、実際には正面の席からシオンさんが振り向いて声をかけてきていた。

 

「さっきから、黙って聞いていれば、[ハイパーフルカウントバスター]が二流プレイヤーの舐めプですって?」

 

黙って聞いていればって、シオンさんに話してたわけではないんですけど!

というかなぜ、技の名称を知っているのか。

[ハイパーフルカウントバスター]が超々必殺技の名称だ。

なんかすごそうだけど意味がまったくわからない、よくあるネーミングのやつである。

 

「大会っていうのは、たくさんの視聴者がいる魅せる為の場所でしょう。そこで、ハイパーフルカウントバスターが発動できるほどに白熱した試合展開になったら、むしろ発動させずに終わる方が失礼ってもんじゃない」

 

「いやいや、大会は死力を尽くして最高のパフォーマンスを魅せる場所でしょう? そこで、勝つための最善手を選ばないなんて、その方が失礼でしょう」

 

お互いが真剣に勝ちを目指すからこそ見るものに熱が伝わるのだ。

 

「わかってないわね、いいわスバル…は経験がないのよね。ならあなたっ、格ゲーはやるのかしら」

「えっ、私あるか。やるあるよ」

 

シオンさんが、ねねちゃんに急に話を振った。

 

「決勝戦の舞台!!白熱した展開でお互いにあと一歩でハイパーフルカウントバスターの条件を満たす。最後に、この大会に幕を引く決め技を発動するのははたしてどちらか!? この状況だったら、あなたは決め技で勝負を決めるべきだと思わないかしら」

 

「たしかに、ねねならハイパーフルカウントバスターを絶対使うある」

「でしょう!? それなのに、決め技を狙ったプレイヤーに対して、相手はスキをついて壁際で通常攻撃のはめ技に入って、そのままちまちま削り切ったのよ? まじありえなくない!? 観客皆がっかりよ」

 

シオンさんが続ける。

 

「そもそも、ハメる方と、ハメられる方。どっちが悪いと思うかしら?」

「えっと、それはハメる方が悪いある」

「でしょう。つまりそういうことよ」

 

ドヤ顔で話を締めくくる。

なぁ~にが、そういうことよ、なのか。

議論のすり替えもいいとこだ。

 

「だったら――、ぼたんさん。格ゲーやりますか?」

「えっ、あたし? んーやるよ。FPSほどガチではやらんけども」

 

ぼたんさんに声をかける。

スラっと背が高くてカッコいい女子生徒だが、声を聴いていると、のほほーんとした柔らかな印象を感じる。

でも、あたしの直感が言っている。

彼女は勝負事に対してはストイックなタイプだ。

 

「決勝戦の舞台!! 大技を発動したいからって、ちょっとスキを見せても見逃して欲しいなんて甘えたプレイをした相手が目の前にいたらどうしますか? しかも、スキが大きいからって距離をとろうとして壁際でチャージスキルを発動するとか、ハメてくれと言わんばかりの初心者プレイですよ? ルールに則って勝てる手段があるのに使わないのは真剣勝負にふさわしくないと思いませんか?」

 

「あー、確かにね。スキがあるなら狙うのは当然だし、相手のお目こぼしを期待するのはちょっと違うかな」

 

「そうなんですよ。大体観客ががっかりしたのは、ド素人みたいなスキをみせてハメ殺しにされた残念二流プレイヤーが決勝戦まで上がってしまったことであって、ハメ殺したこと自体にがっかりしたわけじゃないわよ」

 

あんな初歩ミスしておいて文句を言うとか図々しいにもほどがあるのだ。

 

「それに、あんな試合を見せておいて、景品の武闘家衣装は私のもののはずだったのに~とか文句言っててさすがにないわ~てなったわよ」

 

「何よ、あのちまちまハメさえなければ、武闘家衣装は私のものだったのよ!!!」

「そんなわけないでしょ、あれはあ・た・し・の・ものよ!!!」

 

 

 

「「……」」

 

「――あんたが魔女っ子パープルか!!!」

「――あんたね大天使アークエンジェル!!!」

 

あのちょくちょく大会で顔を合わせて、毎回負けてはチャットを送り付けてくる相手はこいつか!!

 

「よくも、試合後に延々と文句を送り付けてくれたわね。おかげで合格発表を見いくのに寝坊するところだったじゃない!!」

「なにいってんのよ、合格発表の紙は日が暮れてからも張り出してあったわよ!!時間なんて関係ないでしょうが!!」

 

えっ、翌日まで貼ってあったのだろうか?

いやいやそういう話じゃない。

 

「大体、料理が趣味ってなによ? あんた、頼んでた出前が来なかったせいで力が出なかったんだとかいってたでしょ? 絶対料理なんかするタイプじゃないし、料理人に料理作ってもらってるとかいう設定、どこいったのよ?」

「出前だって料理人の料理でしょう。3つ星料理店のシェフとか言ってないし。出前だって料理を作って売ってる人の料理なんだから、料理人の料理でいいじゃない」

 

何だその、すもももももももものうちみたいな理屈は、ややこしく言ってはぐらかそうとしてるだけでしょうが。

 

「じゃ、じゃあ料理をしてるっていうのは?」

「カップ麺とか作るし?」

「カップ麺は料理じゃないわよ! お湯沸かすだけでしょうが!」

「だったら聞くけど~」

 

今度は何を言うつもりなのだろう。

 

「なすと玉ねぎを炒めてトマトソーススパゲッティを作ったら料理じゃないの?」

「それは料理でしょう」

「でしょう。じゃあ、そこからなすと玉ねぎを抜いたら料理じゃないわけ?」

……具なしになるのだろうか?でも、

「まぁ、スパゲティではあるし料理にはなるかな?」

「そうでしょ?でもそれって要は、鍋に沸かしたお湯に麺をぶち込んで茹でてトマトソースかけただだけじゃない。だったら沸かしたお湯を麺にぶち込んで最後にソースかけてカップ麺作っても料理でいいじゃない。何が違うのよ?」

 

鍋のお湯に麺を入れるか、沸かしたお湯を面に注ぐかの違い。

そう考えると大して変わらない気がする。

 

「カップ麺が料理と言われると否定できるのに、そう言われると違いが説明できないぃ」

「あくあ、あんたは考えが古いのよ!今時、電子レンジでチンして完成の料理ブックも当たり前の時代なんだからもっと柔軟に考えなさいよ」

「シオンの場合、どうせ冷凍食品チンして終わりでしょう!!電子レンジレシピに謝りなさいよ」

「いやよ!!あくあこそ、冷凍食品は料理じゃないとか冷凍食品に謝りなさいよ」

「いやよ!!そもそもそれは議論のすり替えでしょう!!!」

 

……視線を近距離でぶつけ合い睨み合う。

なぜか、こいつに言い負かされるわけにはいかないという使命感が湧いていた。

 

どう料理してやろうかと目と目でバチバチにやり合っていると、

 

「えー、あくあさん、シオンさん。チャイムの音が聞こえなかったのかな~」

 

え? ふと隣を見ると、さっきまでスバルちゃんの顔が見えていたところにスーツのお腹……ではなく胸元が見える。

顔を上げると、そこには困ったように小首をかしげた天音かなた先生が立っていた。

 

教室は静まり返っている……

そのことに気がついた瞬間、さぁーと背中から血の気が引いていった。

やってしまった、自分は何を言っていた!!

頭が真っ白になり、体が固まる。

今度は冷たい汗が吹き出し始めているのがわかる。

 

終わった。どうしよう違うのに。こんなことを話すつもりはなくて

もっと少しずつ仲良くなって打ち明けていったりするイメージを入園前から思い描いていたのに。

理想の学園生活にひびが入り一瞬にして砕け散った。

 

「す、すみ「せ~んせ~~い!!!」

 

私が慌てて謝って、違うんだって。自分でも何がかわからないけど違うと説明しようと思った時、それに被せるようにシオンがおおきな声で先生を呼んだ。

 

「なんですか、シオンさん?」

「やり直しを要求します!」

「え?」

 

そのセリフに先生はぽかんとしてる。

 

「先生、私チャイムの音が聞こえませんでした!チャイムを鳴らす所からやり直しを要求します」

 

いやいや、あたしたちはおしゃべりしていて聞いてなかったんでしょ!?

 

「休憩時間はおしゃべりしていていいはずです。それがチャイムがなって授業が始まったと気がつくからおしゃべりをやめるんです。なのにおしゃべりしていたからってチャイムが聞こえないのはチャイムの、つまり学校側の問題だと思います。なので、やり直しを要求しま~す」

 

正々堂々と、背筋を伸ばしてとんでもないことを言いきった。

 

「いえ、さすがに先生でも時間を巻き戻すのはむりがあるかな~と」

「じゃあノーカンで。今のは不幸な事故だったということで聞かなかったことにして下さい。そこのあなたもいいですね?」

「ええっ、あたしあるか、いや聞かなかったは無理あるよ。わざわざ話まで振られて聞かされていたのに」

 

ねねさんの意見は当然だった。

 

 

「……」

 

一瞬の沈黙。そして、

 

「ねぇぇええええええええ゙え゙え゙え゙え゙~~」

 

シオンの叫び声が響く

 

「チャイム聞こえなかったのー、いーまのなしー、ねぇえええええ。折角セレブなレディーとしての学園デビューを飾るはずだったのに~、やぁだぁ、聞かなかったことにして~~。」

 

その後も、元気に叫んでいる。

その様子をみていたら、心の中にあった恐怖心がいつの間にか消えていた。

 

なんでだろう、あたし以上にダメージを受けたはずなのに元気にわめいている目の前の女の子には悲壮感が全く感じられなかった。

まるでちょっとしたいたずらが見つかって駄々をこねる子供みたいだ。

普通だったら、ぶりっ子をしていた子の化けの皮が剥がれたと、笑われそうなところだ。

 

周りをみる。見るまでもなくわかっていたけれど、みんなが笑っていた。

でも違う、その笑いには嫌な雰囲気はなくて、純粋に可笑しくてみんな笑っていた。

お腹を抱えて笑っている子もいる。

大きな音がする方を見ると、るしあちゃんが机に突っ伏して片手でお腹を抱えながら、もう一方の手で机をバンバン叩いていた。……机の耐久力は大丈夫だろうか?

 

目の前で駄々をこねる女の子には……嫌味な感じが全くしないのだ。

自分が発言した言葉を「ま゙っで~~」と否定するように見せかけて、むしろもっととんでもない考えでいたことをポンポン暴露していく。この不思議で明け透けな女の子をみていると、なぜか楽しくなってしまいほほが緩みそうになる。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙~、いやだ~、逮捕~、聞いた人全員逮捕~~!!」

 

「逮捕されるのはシオンさんあなたですよもう。そろそろ席に座ってくださいね。あくあさん、あなたもですよ?」

 

「あ、はい、すみません!」

 

自分が立ちっぱなしでいたことにかなた先生に声をかけられて気がついた。

慌てて席に着く。

かなた先生は、その後クラスのみんなも落ち着かせて授業を開始した。

 

あたしだけだったら、どうなっていただろう。

同じような状況に置かれながら、なんだかんだと皆から好意的な笑顔を引き出してしまった目の前の女の子を見る視線に、憧れと少しの感謝が混じった。

 

本当に不思議だと思う……そもそもの諸悪の根源は目の前の魔女っ子だというのに。

 

そして授業が終わる。

 

ちょっと緊張するが、心配したような嫌な視線は飛んでこなかった。

ただ、スバルちゃんの言葉が胸に刺さった。

 

「あくあちゃん、とっても面白かったっす!シオンちゃんとの漫才!!」

 

違うの!漫才じゃないから!!

……どうやら、クラスメイトの認識では、あたしも一緒に笑われていたようだった。。。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その日の放課後

 

「私の高校デビュー計画をダメにしたんだから、あんた責任取んなさいよねー」

 

という、どの口で言うのかというシオンの言葉に、やむを得ずゲーム強つよタッグというポジションで学園生活を過ごすことになった。

 

ゲームをしながら計画を練ろうという話で今はあたしの家にシオンが来ている。

ゲームタイトルを見せながら話をしていると、カチャっとドアが開く音がする。

 

「ああ、あくあ……と、えっとお友達かな?」

「兄さん、お帰り。まぁ、そうかな。クラスメイトのシオンちゃんね。シオン、こっちはあたしの兄のフブキ兄さんよ」

「あ、シオンです。お邪魔してま~す」

「いらっしゃい、妹と仲良くしてやってな」

 

兄さんとシオンが挨拶を交わす

 

「あ、私は人がいても気にしない方なんで、お構いなく~」

「そうなんだ、ありがとう」

 

その後、兄は奥椅子に座ってパソコンの画面を開いている。

シオンは本当に兄がいても気にしないようで、普通にあたしとどのタイトルでクラスのマウントをとっていくかと計画を話していた。

 

こうして、趣味を前面に押し出していく想定外の学園生活がスタートを切ったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

視点:フブキ

 

ガチャ。

家に帰り着いて玄関をみると、見慣れない靴が置かれていた。

靴のサイズから、ひょっとすると妹が誰か連れてきたのかもしれない。

 

そう思いながら、簡単に手を洗い、飲み物をもって自分の部屋に向かう。

カチャっと、部屋の扉を開ける。

 

すると、妹のあくあが座り込んでいるのが見えた。

 

「ああ、あくあ……と、えっとお友達かな?」

 

さらには、もう一人同じ年頃の女の子が隣に座っていた。

 

「兄さん。まぁ、そうかな。クラスメイトのシオンちゃんね。シオン、こっちはあたしの兄のフブキ兄さんよ」

「あ、シオンです。お邪魔してま~す」

「いらっしゃい、妹と仲良くしてやってな」

 

シオンちゃんに声をかける。

どうやらコタツにノートPCを置いてゲームタイトルを表示して何をやるかを話し合っているようだった。

 

「あ、私は人がいても気にしない方なんで、お構いなく~」

「そうなんだ、ありがとう」

 

……普通に答えてしまってから気がついた「いや俺の部屋だからな!!」

 

妹の部屋は隣だ。

友達連れ込んでいるかもとは思ったがなぜ俺の部屋にいるのか!?

妹自体はちょくちょく人の部屋に入り込んでは、人の菓子を盗み食いしていったり、勉強を教えるまで唸り続けたりして無言の圧力をかけていくのでわかる。

 

けど、友達まで勝手に連れ込むんじゃありません。

 

と言いたいところだが、理由は大体わかる。

妹の部屋は狭い。

間取りは俺の部屋と一緒だが、フィギュアなりなんなり置きすぎなのだ。スペースがなさすぎる。ということで、こっちに来たのだろうが普通はやらんぞ?

 

声をかけようしたが、2人でやいやいと話し始めたのを見てやめることにして、奥にある自分の椅子に腰かける。

 

あくあは、引きこもり気質で友達とか作れるのか不安だったけど、家にまで呼んで好きなゲームを一緒にやれる子が見つかったなら、兄としては一安心ではあった。

 

はぁ、まあ今日ぐらいいいか。

 

口論しながらも口元がほころんでいる妹の様子をみて、好きにさせてやろうと思う。

 

 

今日ぐらい、で済まないという当然の結末に気がつくのは、

まだもう少し先の話であった。

 

 

                  ~ ホロ学園入学 ~ end

 




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