ホロ学園ライフ   作:ハモリヤ

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2-3 はあちゃま惨状

視点:るしあ

 

 

「みんな~アローナー、それでは今日の家庭科の授業を始めたいと思います」

 

家庭科教師のアキ・ローゼンタール先生が授業の説明を始める。

 

アキ先生は、いつも包丁さばきや、フライパンでの炒め方など手本を見せてくれるけれど手際が良くて見惚れてしまう。

私も兄においしい料理を食べてもらいたいと思い日々勉強している身。

ぜひアキ先生の技術を習得したいと力を入れて授業に取り組んでいる。

 

「今日は、創作料理になります。創作料理が得意ということで、今日は赤いはあと先生にも参加していただきますね」

「はあちゃまっちゃま~、創作料理ならはあちゃまにおまかせよ!!」

今日の家庭科の授業には、はあちゃまも参加するようだ。

 

大型の冷蔵庫から、目的の食材を取り出してテーブルに並べる。

兄が好きな、鶏のぼんじりと野菜を使った炒め物にする予定だ。

パプリカの赤・黄色・緑を使い彩りを鮮やかに仕上げたいと思う。

 

始めにお肉のぼんじりを下ごしらえしてから、野菜を刻み始める。

すぐ隣で、生徒を見て回っていたアキ先生が自分の調理を始めるのが見えた。

リズミカルに、包丁がまな板と触れるきれいな音がする。

かなりのボリュームの食材がどんどん刻まれていく。

その後に、冷蔵庫から取り出してきた生地を伸ばし始めた。

 

「アキ先生、それは何の生地ですか?」

「ピザの生地ね。皆の様子を見ながらだとあまり時間は取れないから、生地だけは先にこねて寝かせておいたのよ」

「ピザですか。アキ先生が作るならとてもおいしそうですね。でも、なんだか分量が多いように見えますけど」

「前回の家庭科の授業で作った料理を先生方に少し御裾分けしたんだけど、ココ先生が特においしいって喜んでくれて♪」

 

アキ先生は楽しそうに話しをしてくれる。

 

「せっかくだからリクエストがあれば作りますよって話をしたらピザがいいっていうからね。かなた先生もよければ僕の分もお願いしたいって言ってくれたから、ちょっと多めにつくってるの」

「おいしいって言ってもらえるのは嬉しいですよね」

「そうなのよ~、おいしいって言ってくれる人がいるのは料理が上達したいと思う一番の調味料よね~」

 

「なるほどなのです。アキ先生の料理は本当においしそうですからね。その花は食用のお花ですか?」

「そう、エディブルフラワーね。彩を添えるのにはとても便利よ~。でも、るしあちゃんのように、緑黄色野菜で見た目をきれいに仕上げることができるなら、それが栄養面も考えられた素晴らしい選択よね」

「ありがとうございます」

 

アキ先生が私の調理中の食材を見て褒めてくれた。

 

周囲の様子を見てみる。

 

手際よく食材を切っている人がいる一方で、何も考えていなさそうに食材を適当にフライパンに放り込んでいる人もいる。

 

あれは、パンケーキだろうか。少なくとも3枚は焼けそうな分量の生地を全部一気にフライパンに流し込んでいる……ひっくり返せないし、中まで焼けないだろう。

表面が焦げて中が生焼けになるのが目に見えるようだった。

でも、アキ先生が気づいたようで、すぐに多すぎる分をお玉で回収して、フライパンの生地も上手くまとめていた。

 

全員同じ料理を作るなら注意点も説明できるが、個々人で好きな料理をつくる創作料理となると先生は見て回るのが大変そうだ。

 

だからこそ、アシスタントとして呼ばれたのであろう、はあちゃまを探すと、見つけた……が、どうしたのだろう?

腕を組んで首をかしげて悩んでいるようだった。

 

「うーん、あたしが創作料理をするにふさわしい食材がないわね」

「はあちゃま先生は、何を作りたいあるか?」

「そうね、アヒルの丸焼きとか!!」

「それは豪快あるね」

 

パリーン。

食器の割れる音がしたので見ると、スバルちゃんが手を滑らせてお皿を割ってしまったようだった。

「スバルちゃん、大丈夫なのです?」

「ああ、大丈夫っす、アヒルを丸焼きにするとか聞いてちょっとびっくりしたっす」

 

鳥の丸焼きはわかるが、カモならともかく、アヒルと表現されたことに驚いたらしかった。

カモというと食用で、アヒルと言われると愛玩のイメージがあるのでわかる気はした。

 

「でも、アヒルもカモの一種で食用なのですよ。むしろマガモを食用に家畜化したのがアヒルなのです。それに、北京ダックとか普通にアヒルの丸焼きなので別に珍しくはないのですよ」

「そうなんっすか、アヒルの丸焼き……」

 

スバルちゃんには、どこかが引っかかるようだった。

 

「食材にもこだわった新しい料理を作りたいわね」

「それは楽しそうある!」

「出来たら、ねねにも分けてあげるから期待していなさい」

「楽しみだな~。でも食材はどうするあるか?」

「いいわ、私の創作料理にふさわしい食材を学園内に捜索に行ってくるわ!!」

 

そういうと、はあちゃまはさっそうと家庭科教室を出ていった。

いったい、家庭科教室以外のどこに食材を求めに行ったのだろうか?

 

不思議に思うが、ひとまず自分の料理に集中する。

フライパンで下味をつけたお肉に火を通し、野菜と和える。

野菜は火をしっかり通しながら、パリッとした食感と見た目のツヤも残すように仕上げた。

お皿に盛りつけて完成する。

 

「るしあちゃんは、とても料理が上手ね」

「あ、いえ、アキ先生に比べるとまだまだなのです。でも、兄に食事の時間も楽しく、健康にいてもらえるようにと思って勉強しています」

「るしあちゃんは、お兄さんが大好きなのね」

「はい、兄は世界で一番素敵な人です」

「ふふっ、やっぱり食べてくれる人の事を思って作っている人の料理は一目で違いがわかるわね~」

 

褒めてもらえるのは嬉しい。

毎日、少しでもおいしい料理が作れるようにと心配りをしている成果が出ているといいのだけれど。

 

「アキ先生も焼きあがったんですね。すごくいい匂いで、おいしそうですね」

「うふふ、ありがとう」

「あれ、そっちのは何ですか」

「これはおまけで作ったリクエスト品で、ダブルパイナップルバーガーね」

「はい?」

 

アキ先生はちょっと困ったような顔をしていた。

 

「ダブルパイナップルバーガーよ。パイナップルピザがあるのだからバーガーがあってもいいのではということで、食べてみたいと言われたから試しに1個だけ作ったの」

 

ハンバーガーの本来ならチーズが挟まっていそうなところに、パイナップルが挟まっている……缶詰の物だろうかリング状なので収まりは良さそうだけど。

パンとお肉、パイナップルは焦げ目がつくくらい香ばしそうな焼き色がついていた。レタスは生の様なので、個別に焼いて後で合わせたのだろう。おいしそうかと言われると……

 

「まぁ、話のネタだからw 今度、結果を教えてあげるわね♪」

 

先生方もフレンドリーに学園での生活を送っているようだった。

 

もう、完成する人も出てきていて授業も終盤だ。

すると、先ほど出ていったはあちゃまが箱のようなものを持って戻ってきた。

 

「さぁ、食材もそろったし料理を始めるわよ!」

「はあちゃま、もうあまり時間がないのですよ。間に合うのですか?」

 

はあちゃまに聞いてみる。

 

「大丈夫よ。素材が独創的だから、調理自体は素材を活かしてシンプルに仕上げるわ!」

「何を調達してきたのですか?」

「ふっふっふっ。中央に大きな体があって、そこから左右に立派な脚が4本に触覚が伸びている生物なーんだ♪」

「え……そうですね……カニですか?でもハサミじゃなく触覚ですか?」

「あー、惜しいわね~。近いけど不正解。正解はこれよ!」

 

はあちゃまが箱の中からこぶし大の何かを取り出した。

 

!!!?

ズザザーッ!!!

 

何者かをはっきり理解する前から、体が拒否反応を示してその場から離脱する。

他にも一斉に距離をとる生徒が多数。

 

「な、なんなのですか!?」

「正解は、蜘蛛でした~、おっきいし、見た感じカニみたいな物よね」

「ぜんっっっ全違うんですけど!」

「そう?カニは脚8本に爪2本。この子は、足8本に触覚2本。まぁ、似たようなものよ!!」

 

全っ然違う!

冗談ですよね。蜘蛛!?しかもでかすぎ。何で普通に扱ってるのだろう。

 

「どこから持ってきたのです?」

「虫食研究会にいったら、食用タランチュラが増え過ぎて食べきれないというからもらってきたわ」

 

「アキ先生……今の話って?」

「あはは、あるのよねぇ実は。他にも昆虫食研究会、爬虫類食研究会とかあるわね。そういった調理をする部屋はこの家庭科教室とは別に用意しているからそこは安心してね」

 

どんなカオスな光景が広がっているのだろうか……。

絶対に教室を間違えないようにしなければ。

 

「さて、蜘蛛をアルミホイルのうつわに入れます。そして中に、各運動部から分けてもらってきた、おすすめエナジードリンクの数々を注いでいきます」

 

はあちゃまは、タランチュラを入れたアルミ箔のうつわに、色とりどりの液体を注いでいく。

 

「さらに隠し味として、化学実験室に厳重に保管されていたこの刺激的な香りのする液体を注ぎます。あれ?なんかぐつぐついってるわね。まあいいわ。いい感じにエネルギーを凝縮した料理ができそうね!」

 

そう言うと、はあちゃまは、そのアルミ箔のうつわにアルミホイルで蓋をすると電子レンジに放り込んだ。

 

「それじゃ、ボイル焼きにするわよ」

 

といって、電子レンジに入れ、温めボタンを押した。

後は、待つだけね!!と、はあちゃまは言って出来上がりを待っている。

 

……え。待って、ツッコミどころが多すぎて、どうしていいかわからない。

化学実験室の刺激物って絶対ダメなやつでしょう。それに、

 

「はあちゃま先生、電子レンジから火花が散っているように見えるけど、大丈夫あるか?」

「心配ないわ!きっと化学反応によって素材が新しいものに生まれ変わっているのよ」

 

いや、アルミ箔を電子レンジに入れて[温め機能]使っちゃだめですから!!

マイクロ波の影響で普通に火花がちりますよ。レンジ壊れるし危険だから絶対やるなって教わらなかったんですか!?

 

気にした様子もなく、既にやり切ったような顔をしているはーちゃまにツッコミたいが、あまりの状況に言葉が出なかった。

代りにねねちゃんが頑張ってくれていた。

 

「そ、そうあるか?えっと、でもなんか煙が出始めたあるよ?」

「順調ね」

「えっと、なんか振動し始めたあるよ……って、あっ!」

 

次の瞬間、どぉーーーん。電子レンジが火を噴いた。

 

教室がどよめくなか、電子レンジの扉が、力尽きたように煙を吐き出しながら開いた。

 

やけに黒々とした煙が天井へと立ち上るにつれて、電子レンジの中の煙が徐々に晴れていった。

中を見ると、真っ黒く焦げたアルミ箔の残骸が見える。

電子レンジの温め機能でなぜモノを焦がすことができるのか……。

はあちゃまが、その残骸をレンジから取り出す。

焦げ焦げのアルミ箔を開くと、何がどう化学反応を起こしたのか、元の姿を保ったままで真っ黒に染まった蜘蛛が包まれていた。しげしげとその真っ黒い蜘蛛を眺めていたはあちゃまは一つ頷いた。

 

「これは、究極の姿焼きが完成したわね!!」

「まぁ、はあちゃまとっても独創的な創作料理をつくりましたね~」

「そうなのよ、あたしの才能が怖いわ」

「じゃあ、味見をしてもらえるかしら~」

「えっ、そうね。それじゃ……」

 

アキ先生が料理と言い張るはあちゃまに困ったような表情でつっ込んだ。

だが、はあちゃまには効果がなかったようで、ためらわずに脚の一本を口に含んでいた。

ただ、どうやら硬くて歯が立たない様で、包丁や肉たたき棒で折ろうとしていたが無理な様子だ。一通り試した後に、はあちゃまが一つ頷く。

 

「どうやら、このはあちゃまの才能は料理に収まらず、新たな超硬度素材の合成に成功してしまったようね」

 

食べることは諦めたようだ。

それから、近くにいたねねちゃんに約束通りプレゼントと言って手渡そうとしている。

 

「いや、呪われそうだからいらないある」

「えっ、そんな。ねねにプレゼントしたいという一心でつくったのよ!!受け取ってくれなかったらきっと……夜中にねねの部屋に「なんでボクを拒絶したんだい。捨てないで、ボクを捨てないで~ドンドンドンッ」って、会いに行ってしまうんじゃないかしら。」

「すでに呪われてるある!!?」

 

結局、ねねちゃんは受け取ったほうがましと判断したようで、厳重に袋に包んで受け取ったようだった。

 

※ねねは、装備解除できない呪われたアイテム【タランチュラの姿焼き】を手に入れた。

 

 

ちなみに授業の後、電子レンジを爆破して授業を盛大に脱線させたため、はあちゃまは家庭科教室を出禁となった。

 

 

そのことが、【裏】家庭科教室の闇をさらに濃くしてゆくことを、この時は誰も予想できていなかった。

 




お読みいただきましてありがとうございます。

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