規格外たちの間接介入『ML編』   作:獅狼

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主人公は出てきました。

 

 

少年…白銀(しろがね)武(たける)は混乱していた。

自分は確かに我が家で寝た筈だ。しかし…今いる場所は見知った我が家なんかではない。

まるで地獄を体現するかのような黒い空に荒れた荒野、視界には奇妙な色の天に届くほど……天辺がまったく持って想像できないほど高い並んだ四つの山、その根元には真っ赤な、遥か遠くにあるはずなのに見て解るくらいに赤いモノの流れる川……と言うよりもまるで堀に溶岩を流しているようなもの……が見える。

他には、テレビやその他の情報誌などでも見たことの無いくらい奇妙な色の沼地におかしなくらい広大な森。

そして自分の居る場所だ。

岩の上。これだけ聞けば何の問題も無いだろう。この岩が見るからに直径km単位で、宙に浮いていなければ……

うろたえて、喚いた。年相応…ともいえないがまるで子供のように。

一般人である彼がこのような状態で冷静でいられるはずが無い。

彼は精々やんちゃな悪ガキ程度でしかない。確固とした覚悟もなければ、彼の友人のように、唐突に簀巻きにされて何処かへ放り出されたのに自力で帰ってくるような技術や経験も激運もない。

これは夢だと現実逃避を試みるが容易くその思いは打ち砕かれ、今いる場所から孤独を感じ、そして死を覚悟した。

空腹で死ぬより落ちて死んだ方が楽かもしれない。だけどそれだけの度胸は無い。

あまりに広大な地面と、周囲の風景からここがどんな高さであるのかなんて理解も出来ないし、知りたくもない。

混乱が一回りして逆に冷静に成った頃、影が差した。元々暗かったが更に暗くなったのだ。

武は上を仰ぎ見て、後悔し、絶叫しそうになり、何とか飲み込んだ。

足場の岩よりは小さいそれでも自分の見たことの有るどんな建物よりも大きく見えて…とてつもない風格。自分でも解るほどの異常な力を持っているだろう黒い、ドラゴンが居た。

武は口に手を当て声が出ないように。恐怖に涙を流しながら息を潜めた。

あんなものに食われたら腹の足しにもならないだろう。

ドラゴンが高度を下げ、目の前に下りてきて、乾いた笑いしか出せなくなったところに予想もできない声が掛かった。

「あれ?ファフ、もしかして保護対象(ターゲット)起きてる?」

若い、透き通るような女性の声だ。

「うむ、下降に入った際に気付いたが近付かん事にはどうしようもないので、な。すまないが我に怯えているようなので説明は任せた。」

低く大きな、威厳の有る声。と言うか、明らかにドラゴンが喋っている。

「仕方ねえなぁ。シャル、保護対象(ターゲット)はの状況は?俺が見ても問題ないか?」

少しヤンキーのような感じだが確りとした青年の声。

「大丈夫よ、リオ。対象は少年……人間で大体……十代後半…二十の手前あたりかしら。ちゃんとした服を着ているわ。防御力は皆無に等しそうだけど。」

「オッケ、じゃあ説得して連れ帰りますか」

「うむ、では我は少し此処から離れるとしよう。怯えていては話どころじゃないからな」

「ごめんなさいね、ファフ」

「仕方ないさ。王様の話じゃあ、ドラゴンの居ないどころか魔法もない世界の住人の可能性が大だからな。まったく、あの人達はとことん規格外だな、ここまでの航路も割り出したって話じゃないか、規則があっても数が多すぎてどうしようもないからこその《龍落とし》だってのに……」

青年の台詞に女性はうふふ、と笑みをこぼし、

「今更ね、でも今はあのお方たちのことよりも彼よ」

「ああ、そうだな。

お~い、キミ保護しに来たぞ。安心してくれ、安全な場所に連れて行ってやる。詳しい説明はその後だ」

 

こうして白銀武は回収された。

 

このあと待ち受ける過酷な、今までのだらけきった生活と180°魔逆な四神一王による主人公チート化計画の被検体としての生活を知らず、緊張の糸の切れた彼は何時もどおりのラッキースケベを起こしながら龍の背中の上で眠りに付いた。

 

 

少しして……

 

 

目が覚めたら異様に豪華な天井付きのベッドに寝ていた。

ここはどこだ?確か自分は……

そこまで考えて飛び起きる。

気絶す(ねる)る前にあったことを少しだが思い出して直ぐの行動だ。

そして、目に入った窓から外を見ると……

日本では……いや、地球上で見ることのできない世界が広がっていた。

混沌としていながらも美しいと思える異様な風景。

火山と森林、果ては浮遊大陸がものの見事に調和せずに一枚の絵に成っている。

何なんだここは……俺が最後に見たのは……綺麗なお姉さんとワイルドなお兄さん、そしてジャイアントなドラゴン……

 

あああああーーーー!?

 

完全に思い出して絶叫する。

そうだ、そうだったよここは完全な異世界。あれは夢じゃなかったのか……

「起きましたか、では少年。名前を教えて頂けますか?」

いつの間にか、扉の開く音すらなく、一人の青年が部屋の中に居た。

「何時から其処にって表情ですね。たった今来ましたよ、どんな奇行を取っていたか知りませんがご安心を」

「奇行なんかしてねえよ!!」

思わず叫ぶ武。

しかし、青年は気にも留めず。再び問う

「それで?あなたの、お名前は?」

静かで優しい声だが逆らえない感じのする一言だ。

と言うよりもなんだか首に刃物を当てられた状態で聞かれている様に思えた。

なので、素直に答えるしかない白銀武。

そして、ここからが……彼の地獄の始まりだった。

 

 

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