七夕なんて知りませんということで普通にお話は進みます。
二人のデートをご覧ください。
-CHUUSYOKUHA-
何故かプロポーズする日に過去へ戻されてしまった俺は今、めぐみんとデート中である。
めぐみんはちょむすけに夢中。というよりちょむすけに逃げている。
機嫌取りには成功したけど、これは失敗な気がする。
「お昼そろそろ食べるか?」
「ちょうどお腹が減ってきた所です」
「おすすめの店あるからそこに行かないか?」
伊達にアクアとグルメ周りしてない。
アクセルの高級料理店で美味い店は知ってるし、めぐみんが好きな料理も知ってる。
ここで、失敗するはずはない。
昨日練りに練って考えたコースの一つだ。
「おすすめのお店ですか。楽しみです」
「今すぐ行こうって言いたいんだが、ちょっとトイレ行ってきていいか?」
「どうぞ。そこのアクセサリー店で待ってます」
トイレと言うのは嘘で一足先にレストランへと向かう俺であった。
「いらっしゃいませ」
「今日予約してたサトウですけど、質問いいですか?」
「はい。サトウ様。ご要件はなんでしょうか」
「猫を連れて来ても大丈夫ですか?」
ちょむすけがいた方がめぐみんも落ち着くだろうから確認を取った。
「少々お待ちください。サトウ様のご予約はVIPルームですね。はい。問題ありません。ご質問は以上ですか?」
「はい。ありがとうございます。また来ますね」
「本日の御来店お待ちしております」
よし、これで準備完了。
ちょむすけを置いて来ることなく昼食が取れる。
あの言い方だと、通常席だったらペット不可だったかもしれない。
ちょっと値は張ったけれど、VIPにしておいて良かった。
「お待たせ」
「やっと来ましたか。随分大きかったようですね」
「女の子がそういう話するんじゃありません」
これから品位を問われる店に行くというのに、これでは困る。
まあ、いつも通りと言えばいつも通りなのだが。
「パンツ盗るような人に言われたくないです」
「・・・それは事故だって話したろ?悪かったって、頼むから嫌いにならないでくれ」
「いや、別にそこまで言ってませんよ?」
そんなこと分かってはいるが、確認せずにはいられない。
にしても、パンツ盗られてなお、パーティーに残ってるし、ベルディア倒した後には、俺について来て魔王を倒すとか言ってた気がする。
・・・やっぱりめぐみんは大物なのかもしれない。
「分かってるって、よし、着いたぞ」
「・・・ちょっ、ちょっと待ってください。本当にここなんですか?」
店の前でそんなこと言い出した。
この店は貴族御用達の高級料理店で、ベルディア討伐後のアクセルの冒険者も少し通っていたお店だ。
恐ろしいほどに額が高いわけではないし、今の所持金で言うと大した出費でもない。
固まるめぐみんの手を引きながら俺は言った。
「中入るぞ」
手を引かれためぐみんは不安そうな面持ちでついてきた。
馬小屋暮らししてるやつがこんな店来れるはずないとか思って会計の心配をしているのだろうが、いらぬ心配だ。
「いらっしゃいませ、サトウ様。こちらへどうぞ」
「今日はよろしくお願いします」
「・・・」
案内されて、VIPルームに入るとちゃんとちょむすけ用のご飯皿まで用意してあった。
さすが、先払いのVIPルームは違うな。
めぐみんは何が起きてるのか理解出来ておらず、無言のまま、席に着いた。
「料理が出来上がるまで、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
スタッフが出ていくと同時にめぐみんが口を開いた。
「か、カズマ。お金は大丈夫なのですか?それと予約してたんですか?」
「初デートだからな。ちゃんと計画したし奮発もした。お金のことは気にするな。もう払ってあるから」
まさか予約してあるとは思いもしなかったのだろう。
この驚く顔が見たかった。
「あの、こう言う店初めてですし、食事作法なんて知りませんよ?」
「大丈夫。その為に個室にして貰ったんだからさ」
恥をかかせることがないように配慮している。
普段のめぐみんの食べ方を見ているとガツガツ食べる時は野生児みたいな食べ方になっているものの、落ち着いて食べてたらそれなりに整った食べ方をしているから心配はしていない。
「・・・何だか、それはそれで馬鹿にされてる気がして嫌ですね」
「俺だって作法をちょっと齧った程度にしか知らないからな。お互いに恥をかかないようにしただけだ」
「ならいいです。でもこんなお店どうして知ってるのですか?」
昨日からめぐみんの疑問は増えるばかりだろうと思う。
その原因である俺が自覚しているのだから本人は凄く悩んでいるだろうが答えは単純。
未来から来た。
こっちの俺はどうなったのかとか気になる所ではあるが、デート中に面倒なことは考えないでおこう。
「それは、昨日調べて選んだんだ。ここで食べるのは初めてだし」
「そ、そうなのですか?名前を覚えて貰ってましたよね?」
「昨日飛び入りで来た冒険者なのにVIPルーム頼んだ客ってのは印象に残ると思う」
初めに入った時、間違って冒険者が入って来たなみたいなノリで、軽く退店させられ、予約したいと言ったがそれでも追い出そうとするので金を見せて黙らせた。
こんな事を言うとめぐみんが店員に何するか分かったもんじゃないから言わない。
「えっ!?ここVIPルームなんですか!?本当に大丈夫なんですか?大丈夫以前に私が気が気じゃないですよ」
「大丈夫だって、この前賭けに勝って、誰にも言ってないけど数百万持ってるから」
「そ、そうだったのですか。安心しました。カズマが全財産をここに注ぎ込んだのかと思ってました」
流石にそこまでバカじゃないし、好きだからと言ってそんな無茶しないぞ俺は。
だって、めぐみん家に仕送りもしなきゃいけないのに。
「そっちの方が嬉しかったか?」
「嬉しいとかそういう話ではなくてですね。私はカズマが心配なんです」
「心配?」
何の心配か分からないけど、めぐみんに心配されるのは嬉しい。
嬉しいの水準が下がってる気がするけど、過去に飛ばされた今はそうせざるを得ない。
「その、カズマは昨日からおかしいと言うとあれですけど、私への態度が変わりましたよね?」
「そうなるな」
「その原因も分かってませんし、こうやっていつもとは違う行動ばかりだと、心配になります」
ふむふむ。
めぐみんは俺の身に起こってることを解明しようとしているのか。
是非とも答えを見つけて欲しいものだ。
でも普段と違うと言われても、デート中とか、プロポーズとかって、いつも通りなはずがないと俺は主張する。
「うーん、いつもとは違うって言うけど、デートを平時と一緒にされると困るぞ」
「・・・それはそうかもしれませんね。でも心配なのはスキルを覚えていたとかそういった現象も含めて全部です」
そこは間違いなく俺が未来の俺だからだろう。
これに関してはそこまで心配してなかったが、確かに、めぐみんからすれば、数多のスキルを覚えて急に自分のことが好きだと言い出したってなるのか。
客観的に見るとおかしくなってるのは間違いないな。
「心配してくれるのは嬉しいけど、多分大丈夫。もし、俺がめぐみんの言う元の俺に戻ったらめぐみんのこと、妹分くらいにしか思ってないから」
正しくは出来の悪い妹ではあるが、めぐみんを怒らせる必要も無いので、言わないでおく。
とは言え、めぐみんと二歳差と気付いてからは出来の悪い後輩に認識が変わって妹枠ではなくなったのだが、混浴してないからこれであってる。
「・・・何故断言出来るのか分かりませんが、分かりました。こうなる前は私のことそう思ってたのですね」
「まあな。そろそろ出来るだろうから一応それっぽい動きとかで頼むぞ。分からなかったら俺の動き見て真似てくれ」
「分かりました」
沈黙が数分続いた後、ノックの音が聞こえる。
「お待たせしました。こちら、霜降り赤蟹と霜降り赤蟹を使ったグラタンになります」
思ってたよりもデカい霜降り赤蟹に少し驚いている。
前来た時よりも大きいし、VIPと通常で差別化を図ってるのかもしれない。
「そして、こちらは長期熟成させたシャトーブリアンになります」
匂いだけで分かる。
絶対に美味いやつだ。
蟹と肉って組み合わせ中々ないだろうけど、敢えてこの注文にした。
この方がめぐみんは喜ぶだろうから。
「ありがとうございます」
特に紹介はされていないが、野菜もみずみずしい物が多く、お米も日本のお米に近いふっくらしたもので、グラタンについているクロワッサンもまた美味そうだ。
そして、忘れては行けないのはちょむすけに出されている料理だが、何と、フカヒレである。
VIPってすごいな。
猫がフカヒレ食べられるんだから。
「はわわわ。霜降り赤蟹に熟成ステーキ!一生食べることはないと思ってた物が目の前に!いただきます」
「味わって食べろよ。ギルドみたいな食い方はなしだからな」
言ったしりからステーキをフォークで刺し、そのまま食らいつこうとしていた。
ギルドでもちゃんと肉は切って食べてたろうに。
「あと、乾杯しようぜ。これ、ジュースだけど」
「そ、そうですね」
「初デートを記念して乾杯!」
「乾杯!」
めぐみんとしては、もう料理に夢中でデートとか気にしてないかもしれない。
でも、幸せそうな顔が見られるし、俺は満足だ。
それに蟹もお肉も美味いし、最高だ。
ただ一つ悔やまれるのは、蟹を食べてる時って話さなくなるってことだ。
ひたすら黙々と食べ続けて、旨いとか美味しいとかの感想しか言ってなかった。
二人とも食べ終わり、あとはデザートが来るのを待つのみ。
「どうだった?」
「凄く美味しかったです。アクアやダクネスにも食べさせたかったですね」
こんな時に仲間のことを出すとは何事だとめぐみんなら言ってそう。
まあ、状況が状況だから仕方ないけれど。
「それじゃあデートじゃなくなるだろうが」
「それもそうですけど、それ程に美味しかったという事です」
「何にせよ満足して貰えて良かった」
と話しているとまたノックされた。
遂にデザートがやってきた。
「こちら食後のデザートになります」
テーブルに置かれたのはティラミスとプリン。
めぐみんの目が紅く輝き、スタッフは少し怯えながら出ていった。
違うんです。
この子、喜んでるんです。
「カズマカズマ!デザート二個ですよ!二個!」
子供みたいに喜ぶな。
めぐみんからすれば相当貴重な体験か。
まあ、斯く言う俺も日本にいた時に家族旅行で一回あったくらいのレベルだし、大して変わらないけど。
「とろけるような舌触りが最高ですよ!カズマも食べてみてください!」
「そんなに美味いのか?」
これぞレストランデートって感じの会話ができてる気がする。
めぐみんの言う通り、口の中でプリンがとろけていく。
濃厚で、口溶けがいいとか最強だろ。
「こっちのも、甘くて美味しいです」
全部めぐみんの口に合ってよかった。
デザートだけはどうなるか分からないからな。
ショートケーキ嫌いな人とか偶に見るし、なんだかんだで難しい所だと思う。
デザートはおまかせにしたから不安要素ではあったが、並べられた時にめぐみんが好きな物だったから安心した。
「ご馳走様でした。カズマ、今日はありがとうございました」
「どういたしまして。でも、デートはまだまだ続くから期待してろよ」
「・・・その、もう、高級なものが出てくるとかはないですよね?」
敢えて何も答えずに店を出た。
やはり額のことを気にしているようだ。
この後の予定は大してお金は使わないから気を遣わせることにはならないと思う。
何も答えないでいるとめぐみんは諦めたのか手を握って来た。
少しでも俺を喜ばせようとしてくれてるのが分かる。
・・・もっと自然な形でイチャイチャしたいな。
「めぐみんの好みのタイプってどんな人なんだ?」
「えっと、私の好みですか?」
「そう。イケメンがいいとかそういう話」
何気にめぐみんの好みを聞くのは初めてだ。
恋愛に興味がなかったと聞いてたし、気にしてなかった。
「うーん、里で友人と話したことありますけど、正直に言って恋愛に興味なかったですからね」
「その友達に話した内容でいいから教えてくれよ」
恐らく、ゆんゆんが恋バナしようと誘ったのだろう。
じゃないと出会った頃のツンケンしてるめぐみんが恋バナするとは思えない。
「ざっくり言うと誠実な人ですね。甲斐性があって、借金なんてしない、向上思考で、勤勉で、気が多くなくて浮気なんてしない人でしょうか」
「・・・そんな奴存在するのか?」
イケメンって単語が出なかっただけマシだけども、全部当てはまらないぞこれ。
いや、借金と甲斐性に関しては、俺から借金したことないし、商才もあったから大丈夫なはず・・・
それに浮気はしたことないしな。
誰だ今嘘つけって言ったやつ!
「じゃあカズマのタイプは何ですか?」
「俺の好みはめぐみんに決まってるだろ?」
言わずとも分かるだろうに。
昔の好みは違うけど、それとこれとは話が別だ。
「聞いた私が馬鹿でしたよ。はぁ、じゃあさっきみたいにこうなる前ならどうですか?」
「それはロングのストレートで、巨乳な俺を甘やかしてくれる優しいお姉さんだな」
「・・・そんな人存在するんですか?」
さっきの俺と同じ返しだった。
まあ、そうなるよな。
「いや、見たことない」
「って、そんな理想像でどうして私なんですか?自分で言うのも何ですけど真逆ですよ?」
それ言ったらお前も真逆なやつに惚れてたろうがって、今のめぐみんに言ってもしょうがないか。
それに、一般論的な回答だし、本気でこう言う人が好みって訳じゃなさそうだし。
「いいか?人を好きになるってのはな。タイプかどうかじゃないんだ。その人その者が好きになるんだ」
「すごくいいこと言ってる筈なのに、カズマが言うとしっくり来ませんね」
「おい」
なんてこと言ってくれるんだと抗議しようと思ったが、クスッと笑うめぐみんに見惚れて出来なかった。
めぐみんさんの適応能力高すぎやしないか?
どうなってんだ。
この時点で俺を翻弄させるとか魔性過ぎる。
「どうかしましたか?」
「いいや、何も。それより、目的の場所に着いだぞ」
「劇場ですか」
「デートの定番だろ?」
日本だったら映画見に行くとか、一度はやってみたかったな。
めぐみんと行く映画ってアニメとかアクション系なイメージがある。
因みにここの劇場はペット可だからちょむすけも入れる。
「定番過ぎて候補に浮かばなかったです。何を見るんですか?」
「デストロイヤーを暴走させた男の話」
謳い文句が、何故男は叛逆したのか。
科学大国の闇に迫るとかあって、軽く笑ってしまった。
本当はただ暴走しただけだって教えたい。
「恋愛ものじゃないんですね」
「恋愛ものの方が良かったか?」
「いえ、デストロイヤーの方が見たいです」
めぐみんなりに気を遣ってくれてるのが、分かるが、今日はめぐみんを喜ばせる為に俺が企画してるんだから心置き無く楽しんでくれたらいいんだけど、そうはいかないものか。
「今日はめぐみんの好みに合わせてるから、デートっぽさとか気にしなくていいぞ?」
「・・・何故私の好みがわかるのか疑問ですが、分かりました」
この世で、血の繋がりがない中では誰よりもめぐみんのことを知ってると自負している。
「チケット買わないんですか?」
「俺を誰だと、思ってるんだ?チケットは買ってあるから、中入るぞ」
「・・・カズマって、案外しっかりしてるんですね」
「一言余計だ。てかさっきのレストランで予約してたんだから当然だろ」
なるほどと、手を打つめぐみん。
この頃のめぐみんは俺をどう評価してたのだろうか。
「めぐみんの中で俺ってどんな人なんだ?」
「昨日以前のことですよね?そうですね。包み隠さず言うと変な人ですかね。服装も変ですし、ちょっと常識が抜けてますし、口撃力の高い人だなあと。それでいて勤勉な一面もあるなと」
ボロカスに言われてるじゃん俺。
勤勉以外にいい所ないし、勤勉なのはお金ない間だけだと思うから直ぐに消える印象だ。
「一応言っておくけど、金を手にしたら俺は引きこもるタイプの人間だからな」
「自分から言うあたり、誠実なのか怠惰なのか分かりませんね。あっ、そろそろ始まりますよ」
照明が消え、辺りが暗くなる。
さて、どれだけ史実と乖離した物語が見れるのか楽しみだ。
次回の更新作品は未定ですが、このまま週一投稿を継続していきたいと思っています。
よろしくお願いします。