エレベーターを降りたヘルヴォルの五人は遂に目的の場所、研究所の最深部へと辿り着く。
警備兵の言った通り地下は工場のようになっていてベルトコンベヤーや鋳造機など機械のジャングルともいうべき光景が目の前に広がっていた。
地下にこれほどまでに大規模な施設を作り出すとは、ゲヘナの技術力には下を巻くばかりだ。
「不気味なくらい静かね。研究員が隠れていたっておかしくないのに」
「まさかもう逃げてしまったんじゃ……」
「歩きましょう、道を進んで行けば何か手掛かりがあるかもしれません」
敵が隠れていないか警戒を怠らずに狭い道を通って鉄の森を進んでいく。
視界に映る機械が少しずつ減っていき気付いたら工場とは違う別のフロアに入っていた。
そこはまるで巨大な正方形の中を彷彿させる広々とした空間だった。
ギガント級のヒュージを5体くらい入れてもまだ余裕がありそうなほど『大きな何かを閉じ込める』にはうってつけの場所だった。
そしてその大きい何者かが、一葉達の視界に入ってきた。
大きさは40m、銀色の体に赤いラインが走っている、胸には水色の水晶を飾り、どことなく仏像を思わせる顔をした巨人が部屋の真ん中に直立していた。
それを見てヘルヴォルは一瞬、エースが縛り付けられていると思い解放しようと駆け出したが、近くまで来たことで巨人の違和感を見抜く。
一か月間エースと共闘してきたヘルヴォルじゃなくとも分かっただろう、この巨人の見た目が明らかにおかしいことに。
生物であるエースの体に金属を繋ぎ止めるようなビスは撃ち込まれていない。
エースの銀色はこんなに鉛のような光沢を放っていない。
エースの首や腹に金色の輪っかなんて巻かれていない。
エースの目はこんなに鋭く尖っていない。
エースの肩にゲヘナのロゴマークなんて刻まれていない。
そして誰がどう見てもおかしい部分。
エースの肘から下と膝から下が、ギャラクトロンの手足にすり替わっている。
「なに……これ……?」
その巨人はエースのようでエースでない。
あるいは
「誰がこんな悪趣味なものを……」
「決まっているじゃないか、我々ゲヘナの発明品だよ
いや最高傑作というべきかな」
「!?」
突然、巨人の下から声が聞こえたかと思うと、足の影から3,4人ほどの白衣を着た男達が現れる。彼らが何者かなど問う必要はない。
彼らはゲヘナの科学者、この研究所を支配する上位者達、クエレブレにウルトラマンを拉致するよう指示してきた元凶、そして目の前の機械巨人を作り上げた張本人達。
集団の中でも一際偉そうな男、主任が口を開く。
誰に頼まれたわけでもないのに、男は頭上の巨人について語り始める
「素晴らしいだろう、ゲヘナの科学力を持ってすればウルトラマンの一人や二人造り出すなど造作も無い。
科学に限界はない、研究を突き詰めていけばいずれは神に等しい力を手に入れられる。そんな人類の希望を象徴する存在だとは思わないかこの巨人は」
「……私には傲慢の視覚化としか思え――」
「我々がいかにしてこの究極の兵器を造り上げたか冥土の土産に教えてあげようじゃないか!!」
事前に考えて来た言葉を何があっても吐き出し続ける主任の異様さに一葉の口が思わず閉じる。
主任は完全に一葉達を見ていない、一葉達の言葉を聞いていない。
自惚れるあまり周りを無視して語り続ける姿はまるでゲームのNPCのような人間性の薄さを感じさせる。
「巨人に寄生された少年の体を調べた結果、この地球にはない未知の因子が体の中に僅かに混ざっていることを我々は発見した」
「『ウルトラマンの因子』というべきか、巨人を巨人たらしめる最大要素を掴んだ我々は少年から微量の因子を摘出、疑似培養、研究を行ったのだよ」
「そして見つけた! いかにして巨人が光線を放っているか、どうやって空を飛んでいるか、巨人の戦闘力の秘訣を我々は手にしたのだ!
そして私は気付いた! 『ゲヘナの技術の粋を集めればウルトラマンを複製できるのではないか』と!」
「これはその実験第一号! 一週間前防衛軍から横流しさせた怪獣の残骸を再利用して限りなく巨人に近い姿へと作り直した!」
怪獣の残骸、それを聞いてヘルヴォルの鳥肌は逆立った。
エースが倒した怪獣は全て爆散して塵一つ残っていない、だが例外が一つだけある。
ギャラクトロンだ。
エースではなく、ヘルヴォルの手によって倒されたギャラクトロンだけが爆発することなく大きく原型を残している。
あの後防衛軍が回収して処分してくれると思っていたものだがそれが巡り巡って再び自分達の前に相まみえるとは。
この巨人は
「因子から得た情報を元に巨人の光線を完全再現! 例の怪獣の一部をそのままにしておくことで怪獣の武器を使えるようにしておいた! これぞ正に巨人と怪獣の
「ゲヘナの偉大なる発明に私は名前を付けた!
『ウルトラマン複製計画』の第一号に相応しくアルファベットで一番最初に来る
「心して聞け! この巨人の名は! 『エーストロン』だ!!」
よほど自分のネーミングセンスに自信があるのか、巨人の名前を叫ぶ主任は顔は歓喜に満ちていた。
そしてそのまま口を滑らせる。
「この巨人が完成した暁には、デモンストレーションに百合ヶ丘女学院に襲撃をかけるつもりだよ」
「百合ヶ丘女学院を……襲撃!?」
かつて共に戦った戦友、一柳隊の母校を襲撃すると宣言されヘルヴォルの目が見開く。
ウルトラマンの複製体という人類には早すぎる力を手に入れて何を為そうとしているのかを、そのおぞましい計画の全貌を曝け出す。
「あの学院には恨みがある。我々の組織が手塩にかけて作った強化リリィを何人も奪われているからな。
強奪癖の悪徳学校には巨人による正義の鉄槌を食らわせてやるぞ」
「悪徳はどっちよ! 強化リリィの命を弄んだのはあんた達でしょうが!」
自分達のことを棚に上げて被害者ぶるゲヘナの白々しさを恋花がきっぱりと否定する。
百合ヶ丘が強化リリィを匿うのは何も彼女達の並外れた戦闘力が欲しいからではない。
組織に自由を縛られ、度重なる改造手術で体が壊れていく運命の少女達を救うため。
心ある人間として当然の義憤からゲヘナに真っ向から立ち向かっているのだ。
「強化リリィはあなた達の所有物なんかじゃない……
それぞれの心を持ったかけがえのない一人の人間です!」
「らんは難しいことわかんないけどこれは難しくない気がする。
人を勝手に閉じ込めたり変なお薬飲ませたりするのは悪いことだよ!
現に強化リリィを仲間としている瑶は藍と同じ境遇の少女を増やすゲヘナが許せない。
藍はというとあまり理解してないようだが、結果的にド直球の正論を投げつける。
百合ヶ丘に限らず、御台場女学校や聖メルクリウスインターナショナルスクールなど、ゲヘナの非人道的な研究に反発する反ゲヘナ主義のガーデンはいくらでもいる。誰もがゲヘナのいいなりなわけではないのだ。
なのに主任はそれが気に食わなかった。
「どうしてそんな酷い使い方が思いつくのですか、もし本当にウルトラマンと同じ力を持っているのなら、その使い方次第で多くの人々を幸せにできるのに!」
「計画を中止してください! いくら自分達とは違う考えを持っているからといって排除しようとするなんて間違ってます!
ヒュージによって脅かされるこの世界、人間同士で争い合っている場合ではありません! それはあなた達ゲヘナが一番よく分かっているはずです!!」
世界を掌握しているゲヘナだからこそ、世界を守るためにはリリィの力が必要不可欠なのを理解しているはずなのにどうして減らそうとするのか一葉は理解に苦しんだ。
「黙れ! そうやってお前達リリィは狭い視点でしか物事を見ていない!
お前らの青臭い正義にはいい加減うんざりしているんだよ!」
一葉には分からないだろう。一葉に限らず、この場にいるヘルヴォル全員が分からなかった。
純粋な心を持った彼女らには分からない。
『人を救うことが正義』であると思っているリリィには分からない。
『正しくあることが正義』であると信じているヘルヴォルには分からない。
正義の反対は悪ではなくまた別の正義。
リリィが掲げる純粋な思いやりから来る正義とは対照的な、『思いやりのない正義』をゲヘナは持っていた。
「反ゲヘナ主義の連中はどいつもこいつも同じことを言う……
『リリィは命ある人間だ』『一つしかない命を使い捨てるな』『尊き命を犠牲にしてまで得るべきものなど何一つない』……命、命、命、命、命……
命命うるさいんだよ!」
「なんでそんなもの尊重しなければならないのだ! たかが他人の命だぞ! お前らが死ぬわけでもなかろうに!」
「命がそんなに大事ならなんで我々の邪魔をするんだ! 強化リリィ数名の命を使い潰すだけで有意義なデータが湯水のように得られるのだ! そうして手に入れたデータを活用すればより高性能の強化リリィが生まれてそいつが尊い命とやらを救う、こんなに効率的な方法は他にはない!」
「我々が殺したリリィの数よりも我々が救った人間の数の方が圧倒的に多い!! 統計で考えれば分かることだぞ!
ゲヘナ以上に人類に貢献し人類を守ってきた組織などどこにもない! そんな我々に
ヘルヴォルは唖然とした。
目の前の男の言っている言葉が分からない。
ちゃんと耳で聞こえているのに、脳が言葉を要約しているのに、心が男の言葉を受け付けない。
この時一葉は気付いた。
どうしてゲヘナは悪辣なのか、どうしてここまでおぞましいのか、世界を守っているにも関わらずなぜ反ゲヘナ主義がなくならないのか、全て分かった。
人が人に親切をするのは、その人に喜んでもらうため。
思いやりがあるからこそ、自分以外の誰かのために親切をする。
だがゲヘナにはそれがない。
どこまで行っても自分本位、人の痛みを知らないから手段を選ばない。
結果だけを求めて、その過程で多くの心を踏みにじる。
命を守る立場にいるのに、命の価値を理解していない。
故に悪辣、故におぞましい、だからこそ多く人間が反発している。
ゲヘナはそのことに気付いているのだろうか?
気付いていないだろうな、と一葉は思った。
思いやりのない親切では人は喜ばない。どこかやり方がズレていて、相手が求めていることを履き違えている。
良いことをしているつもりだけの独善は、大概自己満足に終わる、周りなんて見ていない。
命を何とも思わず数字だけで物事を測る主任の歪みに一葉は、エレンスゲの末路を垣間見た。
犠牲を顧みず結果だけを求め続けるエレンスゲもいずれ、この男のように傲慢な正義を振りかざすようになってしまうのだろうか。
「おっと、私としたことがつい喋りすぎてしまったようだな。
いかんいかん、エーストロンはまだ完成しきっていないというのに機密事項をうっかり明かしてしまったな、困ったものだ」
自分から話してきたのにこの言い草、この男が何をしたいかはおおよそ読めた。
「君達にはエーストロンの練習台になってもらうよ。
未完成の状態ですらヘルヴォルを蹂躙できる性能を見せつければ箔がつく。
上層部も本腰を入れて私の計画に手を貸してくれるはずだ……」
そう言って指を鳴らすと、巨人の目が光り出す。
それまで銅像となんら変わらなかった巨人が主任の指の音一つでゆっくりと動き始めた。
「やれエーストロン。リリィ共を始末しろ」
やらなければやられる、この世界に生きる全てのリリィのためにもこのデカブツは何とかしなければならない。
満場一致でチャームを構え、一斉射撃で迎え撃つ。
だが効果は薄い。
一気呵成の弾幕であっても、エーストロンに傷をつけることは叶わなかった。
「無駄だ無駄! ノインヴェルト戦術すら弾く装甲だぞ! 貴様らが何をしてもエーストロンには勝てやしないのだ!」
まるでエースを撃っているみたいだ。その中にいる始を撃っているかのようだ。
見た目の類似性も相まってヘルヴォルに心理的な負担がのしかかる。
心無い機械は負い目を感じることなく少女達を攻撃する。
「―――――」
エースが使うのと同じ威力のパンチレーザーがヘルヴォルの足元に直撃。
その爆風に飛ばされて5人は壁へと叩きつけられた。
「ぐあぁっ!?」
直撃を避けた小手調べでもこの破壊力、戦闘狂の藍でさえチャームを落としそうになるくらい指が震える。
今の攻撃だけでも充分理解できた。
この巨人は間違いなくエースと同等の戦闘力を持っている。
自分達ではエーストロンに勝ち目はない。
捕らわれている始の居所まであと少し、ここまで来て救出のチャンスを逃すわけにはいかない。
それなのに、立ちはだかる最後の壁があまりにも大きすぎて途方に暮れる。
巨人に勝てない。このままでは負けてしまう。一人残らず全滅してしまう。
エーストロンの圧倒的な強さはヘルヴォルに絶望を、ゲヘナには歓喜を与える。
「いいぞいいぞ、ちゃんと私の指示通りに動いている。計算通りだ。エーストロンは現段階においても全てのリリィを凌駕している!」
予め声紋認証で覚えさせたおかげで、巨人は主任の声に沿う形で行動する。
史上最強の存在をラジコンみたいに操れている現状に男は酔いしれる。
全能感に溺れる男はもっと巨人の力を試してみたいと細かい指示を繰り出した。
「青髪のガキの頭だけを踏み潰せ! 赤い奴の両腕を光線であぶり焼きにしろ! 黒髪の女を14.6秒かけて握り潰せ! ヒャハハハハハハ! 皆殺しだー!!」
「よしあいつを袋叩きにしよう!
いくらリリィの掟でもあんな外道までは守らなくていいわよね!」
「気持ちは分からなくないけど落ち着いてください!
好き嫌いで守るものを決めたらそれこそ外道ですよ!」
安全地帯から見下ろす阿鼻叫喚は主任にとって最高の快楽。
下種な本性を剥き出しに残りの二人にはどんな苦痛を与えてやろうかと心を躍らせながらエースが動くのを眺めようとした。
しかしなぜか動かない。
さっきまでは命令したら即座に実行していたのに、今出した命令を実行する気配は全くない。
それどころか命令にない攻撃で勝手に戦う始末。
「おいどうしたエーストロン? 命令と違うぞ! どうして私の思い通りに動かないのだ!」
試験運用では順調に動かせたのに、まさかこのタイミングで動作不良か。
主任の額に汗が流れる。
上層部に大口を叩いた以上失敗は許されない。
結果を出さない無能を許すほど上層部はあまくない、大言壮語のビックマウスにはなおさらだ。
そういう口だけ達者な無能の末路は必然的に……
恐怖のあまり体の一部が異変をきたす、具体的には胸から下の……
「ど、どうしましょうか……もしここでヘルヴォルを仕留め損なったら私達は……」
「このフロアの映像はリアルタイムで上層部に送られています。今さら言い訳のしようがありません!」
「だだだだだだだだ黙れ! いっ、い、一度に命令を出し過ぎてエラーしてるだけだ! むしろ改善すべき点が見つかって良かったじゃないか! 巻き返して見せるぞ! 私は天才だ私は秀才だ私は大天才だ、あいつらとは違う! 役立たずと見なされて切り捨てられた無能共とは違うのだァぁぁぁぁぁぁ!」
予想外に事態に動揺する中でも必死に頭を動かして打開策を講じる。
もしエラーを起こしているのなら対処は簡単、一旦機能を止めて再起動すればいい。
目の前にリリィがいるのに止めるのは危険だが、上層部に見放されるのはもっと恐ろしい。
巨人の手綱をしっかり握っていることを示すためにも今一度だけ動きを止める指示を出す。
「エーストロン、止まれ!」
切実な叫びを聞いたからか、エーストロンは攻撃を止め肩を落とした。
しっかりと命令通り停止した巨人を見て主任はほっと一息。
エーストロンはちゃんと制御下にある。ウルトラマンは依然自分の道具だ。
今度は慎重に操縦せねばと改めて指示を出す。
「エーストロン、メタリウム光線で薙ぎ払え」
またエラーが起きる前に一瞬で終わらせようとメタリウム光線を繰り出される。
両腕を反らす動作を見て蜘蛛の子散らすように逃げ惑うリリィの姿を見て嘲笑う。
少しでも全滅を避けようとしているのだろうが無駄だ。
機械の精密動作で一人残らず撃ち抜くだろう。
「撃てぇ!」
反らした両腕を胸の前に、L字に組んだ腕から光線がヘルヴォル向けて放たれる。
腕から発せられる七色の光を見て、主任は勝利を確信した。
その時、突然エーストロンが振り返った。
光線を放ったまま。
「……は?」
命令とは違う動きに、明らかにヘルヴォルがいない方向にメタリウム光線を撃ってきたエーストロンに主任は呆ける。
ヘルヴォルとは真逆の方向、即ち自分達のいる方向に向けて光線を放ってきたこと、その光線が自分の真後ろにいた部下達を一瞬で蒸発させたこと、エーストロンが殺意を持って自分を見つめていること。
それらに気付いたのは、突然聞こえてきた謎の声を耳にした瞬間からであった。
「感謝するぞ人間ども」
部下達でも、ましてやリリィでもない野太い声がエーストロンから聞こえてくる。
主任は混乱した。エーストロンが突然喋り出したことに。
「そんな馬鹿な……こんな機能つけた憶えはない。
受けた命令を実行させるために簡素なAIを搭載していたがそれだけだ。
自我なんて芽生えようがないしまして言葉を発することなんてあり得ない。
それにセーフティもつけていたはずだ、過って研究員を攻撃しないよう強制的にシャットダウンされる仕組みが何よりも優先してプログラムされていたはず……」
開発の1から10まで関わってきた主任だからこそ今起きていることが受け止めきれない。
そんな彼を見てエーストロンは笑い出す。
「愚かな奴だ、自分だけの手でエーストロンを造り上げたのだと思い込みよって
貴様に憑りついた私が手を貸してやったのも知らずに、滑稽よのう……」
「憑りつく? 手を貸した? 何のことだ? お、お前は何を言っているんだエーストロン?」
「この期に及んで私のことをエーストロンなどと呼んでいる矮小な頭脳の事を愚かだと言っているのだ」
主任には全く分からなかった。
なぜエーストロンが突然喋り出して自分を罵倒しているのか、一体何が起こっているのか何も分からなくて頭がどうにかなりそうだった。
一方、ヘルヴォルはというとそうでもなかった。
もちろん、主任と同じくらい驚愕していたが、状況はおおよそ掴めていた。掴めていたからこそ、あまりの急展開に一同は固まっていた。
主任とヘルヴォルの理解の差を隔てるのはただ一つ、『声』だ。
エーストロンから聞こえてくる声に一葉達は聞き覚えがあった。
「ねえみんな、この声って……」
「うん、間違いない……忘れるはずがない……」
「エースの記憶にこびりついて離れない、邪悪が音を為したようなこの声はまさか……!?」
それは最初の戦いで聞いた声。
ウルトラマンエースが現れた瞬間、超獣ルナチクスから聞こえてきたおぞましい怨嗟の声そのものだった。
「ほう、貴様らは知ってるようだな。ウルトラマンエースと共に戦ってきた貴様達なら私を知って当然ではあるな」
エーストロンは両腕を天に広げ名乗りを上げる。
自分の事を知らない主任にも、既に知っているヘルヴォルにも、自身の名前を高らかに誇示する。
これからこの世界を滅ぼす絶望の名を悪魔は告げる。
「私の名は異次元人ヤプール。
これまでの戦いは全て私の手の上にあったのだ」
かつてこの平行宇宙でエースに倒された時、ヤプールは最後の手段として怪獣墓場を直結させた。
エースの視点からはそう見えた。だがヤプールの視点では違う。
エースに倒されたのも、エースを満身創痍の状態まで追い込んだのも、死に際の悪足掻きに見えた空間操作も、全てヤプール人の計画通りだったのだ。
衝撃の事実に驚愕する人間達を尻目に、ヤプールは勝ち誇りながらネタ晴らしを始める。
この計画を実行する前、ヤプールの精神は長い戦いの果てに消滅しかかっていた。
消えかける思念を超獣と同化することで繋ぎ止めていく内に一つの次元に辿り着いた。
そこの次元もまた、自分達を滅ぼした仇敵、ウルトラマンが守っている地球だった。
その地球でヤプールは、『おもしろい物』を見た。
かつて様々な次元でウルトラマンと戦っていた時、そのに住まう人間達もまた巨人と力を合わせていた。
そのほとんどが戦闘機や戦車で戦っていたが、その次元にはそういうものが無く、別の兵器を用いていた。
それはロボット、ウルトラマンにも匹敵する大きさのロボットに人間が乗って戦っていた。
超獣の暴走に振り回されながらも今自分が戦っているロボットがどういう存在であるかを探り出す。
そして気付く、このロボット達は地球人だけの手で作れる代物じゃない、他所の星から来た怪獣のデータを部分的に活用していると僅かな時間で見抜いた。
ロボットの出自を見抜くと同時にもう一つ、そのロボット達を地球人達に造らせるよう仕向けた『黒幕』の影をヤプールは垣間見た。
宇宙で最も邪悪で悪辣なヤプールだからこそ、同じく邪悪なる者の思考が手に取るように理解できたのだ。
黒幕はゲームをしていたようだ。
そのゲームには定められたプロセスがある。
step1
高い技術力を持った平和な文明に怪獣という存在を知らしめることで恐怖を植え付ける。
step2
恐怖に囚われた者達はそれを拭うための兵器を作り始める。
step3
定期的に強敵を差し向け、今までよりももっと強い兵器が必要なのだと軍部を焦らせる。
step4
やがてタガが外れた者達が自らの手に負えない程の超兵器を作り出す。
そして最後のステップ。
超兵器を奪ってその星の文明を滅ぼし尽くす。
なんという手の込んだ遊びだろうか、ヤプールは黒幕の凝り性ぶりに舌を巻く。
その遊びに自分までもが組み込まれているのは不快極まりないが、ゲーム自体は気に入った。
平和のため人類のためにと言い訳を重ねながら本来の目的から離れた兵器を生産していく様は実に滑稽。
そうやって作った兵器で滅ぼされる者の断末魔を想像すると心が躍る。
ヤプールは思った、『こいつは使えるぞ』
長年ウルトラマンを苦しめることだけを考えてきたヤプールにとってそれは天啓だった。
それまでウルトラマンが必死に守ってきた地球を地球人の手で壊させる、何もできず人間が自滅する様を呆然と見ているエースを見て行ってやるのだ、『お前が価値を感じていた人間共はこんなにも愚かな生き物だったぞ』
絶望の淵に落ちるだろう、これほど痛快な復讐は他にない。
ウルトラマンによって超獣が倒されその体から解放された瞬間ヤプールは早速行動に出た。
異次元や怪獣墓場、あらゆる場所に霧散していた自分の残骸を必死に吸い上げ行動ができるようになるまで回復させる。
回復したら超獣製造機で乗り移る用の超獣を数体こしらえておく。
超獣達を作っている間にゲームの舞台にする平行宇宙を吟味。
光の国の連中に大勢で来られたら厄介だ、なるべくウルトラマンのいない、来たことの無い宇宙がいい。
ウルトラマンが存在せず、ゲームの前提となる高い技術力を持った、扇動しやすい愚かな人間が多くいる宇宙……吟味に吟味を重ねてついに見つけ出した。
それがこの地球、一葉達リリィが戦う『アサルトリリィの平行宇宙』であった。
舞台を定めると単独任務で光の国を離れていたエースを挑発、目的の宇宙まで到達するように誘導して今に至る。
「貴様らゲヘナは本当に良い駒になってくれた。
自分達の技術への自惚れ、世界を支えているだと思い込む傲慢さ、危うい実験にも平気で手を染める愚かさ……どれも『文明自滅ゲーム』を進めるには都合の良い要素だからな」
「ほんの少し、末端である貴様の思想を誘導するだけで面白いくらいゲームの進行速度が速まった。本来なら数年かかるstep4を僅か一か月で達したのだから貴様らの愚かさには恐れ入る」
「そうやって造り上げたゲヘナの最高傑作に私の怨念を憑りつかせて新しい体にさせてもらったのだ、お前の体から乗り換えてな
エーストロン……いい仕上がりだ。性能もだが何よりも見た目が良い。乗り移った途端に醜い超獣に変えてやるつもりだったが予定変更だ。この姿のまま人類を滅ぼしてやる、守護者だと信じてやまないウルトラマンに蹂躙される人間共の悲鳴が楽しみだ……」
そういってヤプールはゲヘナのロゴが刻まれた右肩を撫でる。
エーストロンのまま世界を蹂躙すればゲヘナの評価はひっくり返る。冷酷でも世界のために貢献する偉大な研究機関から、人類滅亡の引き金を引いた最低最悪の集団だと誰もがゲヘナを罵る時代がやってくる。そんなことになったらこの地球上に自分達の居場所が消えてなくなると、ようやく事の重さを理解した主任は震え上がる。
気付かぬ内に開けていたパンドラの箱に体温が下がるくらい肝を冷やす愚かな男を侮蔑しながらエーストロンは顔を上げる。
ヤプールの操り人形が見ている先は監視カメラ、この映像をリアルタイムで見ている世界中のゲヘナ達。
「どんな気分だ? 自分達のおもちゃによって積み上げてきたものすべてを崩される気分は?
お前達が長年かけて構築してきた世界を牛耳る支配網を世界の外側からやってきた私に破られる気持ちはどんなものだ?」
「きっとお前達は自分達のことを世界で一番賢い存在だと思っていただろう?
優れたものは劣っているものに何をしても許されると思っていただろう?
教えてやろう、全ての次元において共通する不変の真理を」
「最も利用しやすい存在とは、貴様達のような賢き愚者なのだ
難しいことではない、自分が騙されないと思っている人間が他人に欺かれる可能性を考えているはずがない。だからそいつは隙だらけで騙しやすいのだ」
「貴様達がリリィとやらを利用していたように私も貴様達を利用していたのだ
私の思い通りに踊ってくれる貴様らは実に愉快なおもちゃだったぞ、フハハハハハハハハ!!」
露悪的に挑発的に、ヤプールは笑いが溢れながらも、ゲヘナの尊厳を侮辱することを止めない。
見えなくともヤプールは感じていた。
カメラの向こう側の者達から今沸き上がっていく感情を。
怒り、憎悪、驚愕、怨嗟、不安、恐怖、後悔、懺悔、絶望……
そういった負の感情がもたらす力、マイナスエネルギーこそ怨念の集合体であるヤプールに大いなる力を与えてくれる。
「そんなばかな……私の研究が……私の最高傑作が……全て仕組まれたもの……」
主任に至ってはそんな感情すら出す余裕がないほど呆然としていた。
「いよいよゲームは最終段階に達する。
ゲームのクライマックスを飾るラストステージ、お前達にも踊ってもらうぞリリィ共!」
ヤプールは超能力を発し空間を割ってそこを全世界を映すモニターに変える。
そのモニターが映すのはまだヒュージに侵食されていない世界の各主要都市。
エリアディフェンスで守られている平和な都市にヤプールの超獣が現れ破壊の限りを尽くしだす。
「ベロクロン、ブロッケン、ユニタング、キングクラブにブラックピジョン……全てエースが倒してきたはずの超獣達!?」
「その通り、この瞬間のために怪獣墓場から引っ張り出してきた超獣軍団だ! 私と怨念で深くリンクしているため私が死なない限り絶対に倒れん!
不死身の超獣共を相手にお前らの同族はいつまで持ちこたえられるかな!
このエーストロンと超獣軍団がこの星の守護者たるリリィを根絶やしにして人間共を恐怖のどん底に叩き落してやるのだ!
止めたいのならこの私を倒してみろ! できるものならな!!」
エーストロンは高く飛び上がり地上へ向かう。研究所の上にある崩落地を最終決戦の場をするつもりだろう。
「どうする一葉! このままだと冗談抜きに世界が滅びるよ!」
「早くプルプルを倒しに行かなきゃ」
「ヤプールね。でも私達に何ができるんだろう……」
「ただのエーストロンにも歯が立たなかったのに、さらにヤプールが上乗せされるなんて……」
「確かに解決すべき問題は多すぎますね。焦らず、一つ一つを片付けましょう。
まずは、私達が最初に終わらせるべき問題は……」
ここへ来た当初の目的、『始の救出』あるのみ。
失意のあまり体育座りのまま呆けている主任を叩き起こして問いただす。
「始さんはどこにいますか?」
「は……え?」
「ウルトラマンと融合した少年と言えば伝わりますか?」
「そ、それを聞いてどうするつもりだ? せっかく手に入れたサンプルだぞ、そう簡単に手放すわけが――」
「まだ分からないのですか! 今の状況を!」
一葉を指を刺したのは穴の空いた天井、エーストロンが飛んでいった跡を指さすことで主任がしでかしたことの重さをはっきりと知らしめる。
「このままではウルトラマンの力を持った悪魔が世界中を蹂躙し始めるんですよ!
その悪魔に巨人の力を与えたのはどこの誰ですか!
あなた達ですよね! どう責任を取るおつもりですか!」
「うっ……それは……」
責任なんて取れやしない。
やらかしたことが大きすぎて、個人のケジメでどうこうできる状況ではなくなってしまっている。
だがそれでも、ふんぞり返って何もしないよりは遥かにマシなはずだ。
「悔しいですけど事態はもうリリィだけで収拾できる範囲を超えてしまっている。
だから必要なんですよ、彼の力が! あなた達が造ったウルトラマンもどきを倒せるのは本物のウルトラマンだけなんですよ!」
「わ、分かった……協力しよう……彼を収容している特別収容室に連れて行ってやろう。
だから、その……見逃して欲しいのだが……」
「この期に及んで保身? 図太い奴だねあんた」
「ひぃ!? ゆ、許してくださいぃ……言う事何でも聞きますから命だけは勘弁してくださいぃ……」
エーストロンを操っていた時とは別人のような卑屈さで跪く主任の無様を見て、怒るのすら煩わしく感じてきた。こんな奴、殴る価値もない。
突然心変わりする可能性も考慮して一葉と同じく恋花も主任についていく。
「変なことしたら……分かってんでしょうね」
「は、はいぃ……私は飯島様の忠実なしもべです、逆らうなんて滅相も無い……」
(恋花様、ちょっと楽しんでませんか……?)
瑶、千香瑠、藍の3人はエーストロンの足止めに向かう。
5人でも勝てなかった相手にたった3人で、決死の覚悟で戦いに臨む。
「皆様、くれぐれもお気をつけて」
「大丈夫、無理は絶対にしないよ」
「瑶さんと藍ちゃんは絶対に守って見せます」
「じゃあらんはちかるを守るね!」
地上へと跳躍していく3人の背中が最後に見る姿じゃないことを祈り、一葉は主任に特別収容室を案内させる。
「あ、開けますね……」
一見何もない所にカードキーをかざすと隠し扉が現れ、特別収容室への道が開かれる。
収容室に入ると、件の相手は目の前にいた。
始がいたのは部屋の中央にある大きな培養槽、そこに閉じ込められたままぐったりしている。
「始さん! 私の声が聞こえますか!? 聞こえているなら動いてください!」
異様な光景に動揺して一葉はカプセルを何度も叩くも始は返事をしない。
奇妙な液体に全身を浸かり呼吸器を括りつけられたままぴくりとも動かない始を見て、思わず恋花は主任の胸倉を掴み上げる。
「あれはどういうことよ!? あんたらまさか始の命を……」
「し、死んでません、恒常的に薬を投与して眠らせているだけです。世界で一つしかない大事なサンプルをみすみす消費するわけないじゃないで……ひえぇ!? なんでチャームを向けるんですか、やめて撃たないで!」
身の危険を感じた主任は慌てて近くの機械を操作してカプセルの封を解除する。
流れる液体の濁流に負けず、一葉は倒れ込む始を抱きかかえゆっくりと降ろす。
「始さんはどうしたら起きますか?」
「薬の供給が急に途絶えた反動ですぐに起きる可能性が高いです。ですが薬の効果が効きすぎたばあい、起きるのは数時間後になるでしょう、もしかしたら数日間は寝続けるかも……」
つまり何も分かっていないということか、知りのもしない薬物をよく人に投与したものだ、この男の腐れ具合にはほとほと愛想が尽きる。
「あの、もう逃げていいですか? 約束通りウルトラマンを解放したんだしいいですよね……」
空気を読まずに逃げるタイミングばかりを伺う主任。
彼の問いに答えるように一葉と恋花は全く同じタイミングでチャームを撃った。
撃ったのは主任の体のどこにもかすらない天井へだが、彼をビビらせるのには充分すぎる脅しだった。
「どこへなりとも行ってください」
「もう二度とヘルヴォルと始の前に姿を見せるな」
涙汗鼻水……体中から水分を垂れ流しながら主任は逃げ出した。
施設から抜け出した後の彼の今後は、考えないことにした。
この場に残っているのは一葉と恋花と、未だ起きる気配のない始の三人。
「恋花様、始さんは目を覚ましてくれるでしょうか……」
「さあね、あんたが信じなかったら一生起きないかもよ」
「まるで童話ですね……色々逆ですけど……」
「ま、それでいいんじゃないの、ヒロインの祈りで立ち会がるヒーローなんて王道中の王道じゃないのよ」
あんたの場合ヒロインってガラじゃないけどね、と恋花は茶化す。
一見ふざけて見える言葉には『何事も信じてみなければ始まらないという』恋花なりの激励が込められていた。
「私は信じていますよ。あなたは必ず目覚めます。
歪な薬の力になんて負けず立ち上がる勇姿を見ることを、私は諦めません……!」
リングをはめた左腕を握りながら、少女は少年の再起を祈り続けた。
◆◆◆
外では大変なことが立て続けに起こっていたが、インナースペースではゆっくりと時間が進んでいく。
焼き上がったパンをかじる余裕があるくらいには。
精神の世界で食事をするとは奇妙だが、パンの焼き上がる音や匂いを感じれるのと同じく感覚としてパンの旨味を味わうことができるようだ。
小学校の頃に給食で出てきたような素朴な味わいに始は懐かしい気持ちになり、あっという間に食べ終える。
「…………」
始は困惑していた。
再びエースと話せる機会がこんなタイミングでやってくるとは思わなくて何を喋ればいいかまとまらない。
黙っていても申し訳ないので他愛のない話題から持ちかけることにした。
「知らなかった、なんというか、結構年寄りなんだな……」
「これでも一族では若い方なんだ。16万歳の父さんが一線を引かない限りは私もまだまだ現役さ」
16万年前というと、地球では原始人がマンモスを狩っていた時代。そんな大昔からずっと生きているウルトラマンがいる。
なんかもうスケールが人間の基準では測りきれなくて驚くこともできない。
巨人の壮大な寿命の話から少しずつ始は自分の話したいことへと話題を寄せていく。
「悪かったな、せっかく治りかけだったあんたの体、またダメにしちまって」
「問題ないさ、生きていれば傷は癒える。
命を守れるのならどんな傷を受けようとも後悔はしない、俺
北斗星司の一人称は所々で変わっている。『俺』だったり『私』だったり、あるいは複数形。
エースと長い間融合してきた結果二人の人格が混ざり合っていると、始は前に一葉から聞いた情報を思い出した。
目の前にいるのは人間、北斗星司でもあり、巨人、ウルトラマンエースの仮の姿でもあるのだ。
どっちに話しているのかこんがらがりそうになる始だが、悩んでも仕方ないので両方に通じる形で話すことにした。
「あんた達は怒っていないのか、俺がしようとしたことを?」
始はリリィを救おうと一人でウルトマンに変身した。
そして怪獣以外の脅威とも勝手に戦おうとしてしまった。
『同じ星に生きる文明同士の諍いには不干渉』というウルトラマンの掟に破る行いに、彼らが憤っていないか心配であった。
咎められる覚悟はしていたが、そんな気配もなく親しげに接してくる星司達の真意が分からなくて不安を感じていた。
そんな不安を感じ取って星司はゆっくりと優しく語りかける。
「君は既に顧みているじゃないか。怪獣の暴虐に昔の自分を重ね、己の間違いに自力で気付けた。
だから今君は『怒ってないのか』と私に尋ねている。罪悪感を持っている。
既に反省しているのならきっと踏み止まれるはずだろう、私から言うことは何もない」
一か月間エースは始と融合してきた。
回復に専念して深い眠りについていたがエースには分かった。
少年の荒んだ心が少女達との交流を通して安らいでいくのを。
誰よりも近くで、始の成長を見守っていたのは他でもないエースであった。
「かつて私は君にこう言った、『君には闇の巨人の気質がある』と。
何事も力だけで解決しようとする強引さに闇に堕ちたウルトラマン、ベリアルに近いものを感じていたがそれも杞憂だったようだ」
一葉達と共に行動していくことで彼女達から少しずつ優しさをもらい、刺々しい性格を軟化させていった。
そうすることで母を失った悲しみから生まれた暴力性を取り払っていき、自分だけじゃない人の痛みも理解していく、だから最も憎む霧崎アリエを許せた、だから高出力砲の嵐にあっても身を挺して一葉達を庇った。
どれも自警団竜駆を引きていた頃の始にはできなかったことで、母を失う前の始の人格ならできたかもしれないことでもあった。
「一葉くんと出会い、ウルトラマンとなり、憎い相手を許し、君は心の奥底に眠っていた優しさを思い出したのだな……」
「優しさを……思い出す?」
そう言えば初めて会った時もエースはそういう言い回しをしていた。
妙に引っかかる言葉だと記憶の片隅に留めていた。
古い記憶じゃあるまいし、どういうことなのだろうか。
「君は人間という生き物の本質が光か闇かどっちか考えた事はあるかな?」
「な、なんだよ急に……光か闇、ようはいい奴か悪い奴かってことだよな?
最近俺が会ったリリィは皆いい奴らだったよ、だけど……」
そんな彼女らの優しさを踏みにじる連中が世界には多すぎる。
自警団時代も相まって始が見てきた人間はいい奴より悪い奴の方が多かった。
そういう悪い奴らを見逃すことが、始にはどうしてもできなかった。
「あんたはどう思うんだウルトラマン?
守ってきた人間達に怪獣と一緒くたに攻撃されて辛くないのか?」
「心の弱い人間は時として他者を虐げたりする、だが仕方のないことなんだ。
弱さももまた人間の個性、否定することなんてできない」
だが、とエースは持論を切り替える。
「弱さだけが人間の個性じゃない、己の弱さや間違いを顧みる者だっている。
そういう少女を最近君は知ったんじゃないか」
誰のことを指しているのかは考えずとも分かった。
霧崎アリエだ。思えば彼女も心の弱い人間に部類する。
エレンスゲに騙されて間違った信念を抱き助けられたはずの命を見殺しにした、後になってその罪に重さに耐え切れず自分を貶し続けた。
「そんな彼女を君は許すことだできた。
憎い相手を許すことができのは、相手が悩みながら生きてきた等身大の人間ということに気付いたから、彼女の悪い部分以外の側面を見たからではないのか」
「そうか、そういうことなのか……」
段々と言いたいことが分かってきた。
完全な悪人など存在しなくて、何かしらの理由を抱えている。
大切な人を失った悲しみを周りにぶつけてしまったり、間違った正義を信じてしまったことで自分に自信が持てなくなったり、努力や忍耐が無駄になる恐怖に耐え切れず卑怯なことをしてでも結果を求めようとしたり……
過去の重さに押し潰されそうになりながらも必死に生きている内に周りを顧みる余裕をなくしていく。
そうして優しさを忘れていく内に、人は悪い方向へと墜ちて行ってしまうのだ。
「俺が憎んでいる連中も、俺達みたいに色んなもんを抱え過ぎておかしくなっちまったのかな……?」
「そうかもしれないな、普通の人間が正気に居続けるにはこの世界は厳しすぎる。
しかし、君は彼らとは違う点がある」
それは踏み止まれたこと。
世界の残酷さに嘆いても、隣にいる者達の声を聴いて決定的な過ちを犯す前に元の居場所に引き返すことができた。母を失う前の、思いやりを持った自分へと戻れるきっかけを手に入れた。
『優しさを思い出す』とはそういうことだったのだ。
「世界は過酷で、残酷で……生きていく内に多くの試練が待っているだろう。
誰もが生まれた時に持っている素直な気持ち、純粋な心を保ってまま成長していくのは難しい」
「優しさや思いやりは時として裏切られる。利用し踏みつける者達が後を絶たない。
彼らに騙されない賢い生き方をしていくためには、生まれ持った純粋さを捨てた方が楽なのかもしれない……」
「しかし、あえて私達は子供達にこう願う」
「優しさを忘れないでくれ。
弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。
たとえその気持ちが、何百回裏切られようとも……」
世界を変えていくのはウルトラマンや怪獣の力なんかじゃない、どんな苦境に立たされても信念を曲げず、優しさを忘れない心こそが、人から人へと伝わってやがて世界中を覆い尽くすのだ。
一葉の優しさが始の優しさを取り戻させたときのように……ならば今度は自分が誰か救う番だ。
弱者を虐げるヒュージがいて、優しさを裏切るゲヘナがいて、それでも優しさを忘れずに人々を救おうと互いに手を取り合えるリリィがいて……そんな世界に生きる少年の心に、エースの願いがしみじみと胸に突き刺さった。
「伝わったぜ、あんたの想い、あんたの願い……!
皆が思い出させてくれこの優しさはもう絶対に忘れない
これから先どんなことが起きようとも、俺は人の光を諦めたりはしない!」
長き旅の果て。
少女と出会ったことから始まった優しさを取り戻す心の旅はここで終着点を迎える。
少女達から優しさを貰い、許した仇から助言を受け、最後の最後、人が抱える光と闇の狭間に悩んでいた少年の精神は、共に戦ってきた巨人の願いを受けて今完成した。
「ありがとう、星司さん、エースさん。あんた達が託してくれた願いは俺が継ぐ。
俺と同じく間違いそうな奴らにこの願いを伝えていくよ、ウルトラマンが去った後でも、ウルトラマンが世界を守れるように!」
もう少年は迷わない、確固とした信念を持ち世界の残酷さに毅然として立ち向かう、体だけじゃなく心もウルトラマンのように大きく強いものに変”心”した。
「ありがとう、これで安心してこの星を去ることができる」
少年の成長を見て、ウルトラマンは満足し、頬を緩めた。
話が終わったちょうどその時、始の左手に違和感が表れた。
何も触っていないのに、何かに掴まれている感触がある。自分の体とは別の温もりを感じる。
奇妙な現象に困惑するが耳をすませるという星司のアドバイスを受けるとどこからか声が聞こえてきた。
『始さん! 起きてください!』
一葉の必死に呼びかける声を聞き、始はやるべきことを理解する。
「ここにはもう長居していられないみたいだ。
一葉にはもう、迷惑も心配もかけさせたくないからな」
始の決意を見て、星司も応える。
星司のウルトラリングが光ると院なスペース内に扉が現れる。
扉の先は何もない真っ白な空間であったが、そこを通れば現実に戻れるのが容易に分かった。
始は迷わず扉へと走り出す。
ドアノブに手をかけ外へ出る直前、急に振り返った。
目を向けるのは後ろで見守る北斗星司。
「こうやって話せてるってことは、体はともかく意識は完全に回復してるってことだよな?」
星司は肯定した。
巨人の意識が目覚めた以上、始は戦う必要はない、変身するだけでいい。
巨人自身に戦闘を任せた方が能力を完全に引き出せて始が戦うよりも強い力を発揮できる。これから相まみえる強敵と戦うならなおさらエースに任せるのが賢い判断だ。
それを自覚した上で始は無理を言う。
「次の戦い……これから始まる戦いだけは、俺にやらせてくれないか。
俺にはまだやり残したことがあるんだ、謝らなきゃいけないことがあるんだ」
始が謝らなきゃいけないのは、一葉を置いてたった一人で戦おうとしてしまったこと。
リリィの力を侮ったことへの贖罪は口だけで済ませるわけにはいかないと始は思っていた。
詫びの意思は口ではなく行動で示すべきだと始は強く思っている。
「もう一度だけ、あいつらと一緒に戦いたい。
一方的に守るんじゃなくて、守られるだけじゃなくて。
それぞれのできることを活かしきって助け合う。
そうすることで手放してしまったものをまた掴めると思うんだ」
一葉達との関係を共に戦う仲間という形に戻したい始の切実さと、絆を決して諦めない覚悟が星司の心を動かした。
少年の願いが叶うようウルトラマンは少しだけ彼に力を授ける。
星司が両腕を交差させたと思えば、腕から流れた光が真っすぐ始の体の中へ入り込んでいった。
「今のは一体……?」
「”ウルトラ念力”だ。光の国の戦士ならば誰でも使えるこの力を少しの間だけ君に貸そう」
「……!」
「ウルトラ念力は物を浮かすだけの念力ではない。
使い方次第ではどんなこともできる無限の可能性を秘めた超能力だ」
例えばウルトラセブン。
強力な宇宙ブーメランを頭に固定することで手が塞がることなく武器を持ち歩ける。
例えばウルトラマンレオ。
バラバラの煙突を繋ぎ止めることでヌンチャクのような武器に作り替えることができる。
例えばウルトラマンエース。
念力を圧縮し実物化させ、鋭い刃物をいつでも召喚できる。
他にも怪獣の動きを止めたり爆砕させたりと、使い方は千差万別。
各々の戦闘スタイルにあった形に練り上げていく様はまるでレアスキルのようだと、リリィの世界に生きる始は何となく類似性を感じた。
「君だけの、君にしかできない使い方があるはずだ。
それに気付いた時、私にはない強みを君は勝ち取るだろう」
「つくづく、あんたには貰ってばっかだな……」
「恥じることは無いさ、私も若い頃は兄さん達によく助けられていてね、そのおかげで今がある」
兄弟達に命を救われ未熟だったエースはベテラン戦士へと成長した。
その成長した力を持ってメビウスやゼットといったルーキー達を助けたこともあった。
ウルトラマンの絆の歴史とは、先達から若者達への助け合いの連鎖でもあるのだ。
「だったら俺も、あげるとするか!
俺を待ってくれている人達に安心を、さ。
リリィがくれた優しさを、まだ見ぬ他の誰かに繋いで見せる!」
いっぱい貰っているならいっぱい誰かにあげられるはずだ。
貰ってばかりなことを前向きに考え、それを実行するためにも始はドアの中へと飛び込んで行った。
始は外へ向かった。星司は中に残り続けている。
「私はここで見守っている、君達の戦いを。
私は信じている、君達が宇宙最悪の悪魔に打ち勝ち、世界をよりよい未来へ繋いでいくことを」
この世界を守る若き光の戦士達の絆を信じて、ウルトラマンは行く末を見守ることにした。
◆◆◆
扉の中へ飛び込んだ直後は真っ白な景色しか見えなかった。
やがて白以外の色が見えるようになってくる。
最初はモザイクのようにぼやけていたが、少しずつ視界の解像度が上がっていき青色と茶色がまず最初にはっきり見えた。
目の前でしきりに動くその色が自分の事を介抱していた一葉と恋花だということに気付くのは、意識がはっきりと現実に戻ってきてからだった。
「始さん、怪我はありませんか! 具合は大丈夫ですか! 意識はちゃんとありますか! 私が指している指が何本か分かりますか!!」
「(寝起きに大声出されて)頭が痛え……」
「頭が痛い……や、やっぱり薬の影響が色濃く出て……どうしましょうか恋花様!
なにか原因があるなら早く取り除かないと!」
「いや原因はあんただよ!?
そんな大声で一気に聞かれても困るだけでしょうが。
こういう時はシンプルでいんだよシンプルで」
そう言って恋花は慌てる一葉の耳に言ううべき一言を囁く。
『それだけで良いんですか』と不安だったが、『恋花様がそうおっしゃるのなら』と信頼し、一葉は目覚めた始に向けて一言。
「お帰りなさい」
「ただいま」
今はこのやり取りだけで、互いの想いが充分に伝わった。
「起きて早々ですが、世界が滅亡の危機です」
「それじゃあ寝起きの運動に世界を救うとするか」
この地球上でこんな珍妙な会話をしたのはこいつらが最初で最後だろうな……ツッコミを心の中に留めつつ、恋花はこれまでの状況を要約して始に伝えた。
ヤプールという黒幕が世界を滅ぼそうと正体を現した。
ならば親玉を倒せば一件落着じゃないかというヤンキー特有の単純な、それ故に最適解を実行するために始は両手を握りしめる。
あとは指輪を重ねて変身するだけ、なのだが異変に気付く。
左指にはめてたはずのリングがなくなっているのだ。
(あれ、どこいった?)
研究所に運ばれる途中で外れてしまったんじゃと、慌てて体をまさぐってみたら割とすぐに見つかった。
左のポケットに普通に入っていた。入っていること自体は普通ではないのだが。
なぜ外した覚えのないリングがポケットに入っていたのかは分からない。
研究員が体を調べて回していた時に外れたというのが妥当な推察だろうが、始は別の理由を見出していた。
「ふふっ、お茶目なじいさんだ……」
「何か言いましたか?」
「なんでもない、それよりも一葉、頼みがある」
何を頼もうというのか話が読めず首を傾げる一葉に始はポケットのリングを見せて。
「もう一回だけ、ウルトラリングをはめてくれないか」
「え……それは……」
始にエースが集中している以上ウルトラタッチする意味はない。
片方外れていても指輪を合わせれば変身はできるだろうが、変わるのは始だけだ。
それを知っていても始はあえて一葉に頼んでいた。
効率とは合理とか、そんなちゃちなものではなく、もっと深い意味で頼み込んでいた。
「もう一度、俺と一緒に戦ってくれるか?」
始は真っすぐと一葉を見つめる。
その力強い眼差しを見れば一葉は気付く。いい目をしている、自分の過去や悩みを克服できたものがする真っすぐな瞳だ、これまで様々なリリィ達と共闘してきた一葉には分かる。
何か大きな出来事が彼の心に変化をもたらしたようだ、もう暴走の心配はない。
始めて出会った時の暴力的な雰囲気が消え、元来持ってたであろう純粋さが前面に出ている気がする。
(あなたを更生させるという約束、いつの間にか終わってたみたいですね)
更生の瞬間に立ち会えなかったのは名残惜しいが、代わりにその成長を盛大に祝福しよう。
そのためにも一葉は、始の提案を受け入れた。
「どうぞ、よろしくお願いします」
差し出される少女の左手。その指に少年は指輪を添える。
無敵のコンビ再結成の瞬間である。
「行きましょう始さん、世界を滅ぼそうとする悪魔に私達の力を見せつけてやりましょう!」
「もちろんだ!」
互いの心が同じ目的に向いた瞬間、二つのリングが光り輝く。
始の心の中でエースが叫ぶ。不思議なことにその声は既に分離したはずの一葉の心にも響いていた。
『今だ! 変身!』
始と一葉。
二人の手のひらが勢いよく重なり合う。
もう二度と、”君の手は離さない”とばかりに握る強さに光が宿る。
「ウルトラァァァァァァァ!!」
「タァァァァァァッチ!!」
手と手の間に勇気の光が迸る。
百万ワットの輝きがその場にいる三人の体を包み込んでそして……
◆◆◆
一葉が始と再会した頃、地上では瑶達が絶体絶命の危機に陥っていた。
「フハハハハ! この程度リリィの力は!
いや違う、エーストロンが強すぎるのだなぁ! 貴様らが守ってきた者達の愚かさによって滅びるがよい!」
「くっ……」
ヤプールの悪辣さが加わったエーストロンは無敵そのもの。
相手がなるべく苦しむようへと悪意を込めた陰湿な攻めに、心と体がじわじわと追い詰められていく。
頑丈なはずのレギオン服も光線の前では意味をなさず所々破れ始めている。
エーストロンの装甲に負けたチャームの刃がボロボロと刃こぼれを始める。特に最前線で打ち合っていた藍のモンドラゴンに至っては火花が漏れ出し大破寸前まで追い込まれている。
肩を大きく揺らし体力ももう限界、あと数秒しない内に誰かが倒れてしまうだろう。
だがリリィは諦めない。仲間が必ず戻ってくると信じているからどんなにボロボロになっても戦える。だからリリィは絶対に負けない。
「貴様らの足掻きもこれで終わり――グブゥァッ!?」
「勝手に終わらせんじゃねぇ!」
地面から這い上がってきたエースが光線を撃つ直前のエーストロンの無防備なアゴにアッパーカット。
ヤプールは地面に沈み、光線は虚空だけを貫いた。
「始君、戻ってきてくれたのね」
「ああ、大分待たせちまったな」
始はアッパーをしていない方の手を足元に下げて、掴んでいた一葉と恋花を地面へと降ろす。
「ふええええ、これじゃ逆ジェットコースターだよ、めっちゃキツかった……」
「ジェットコースター!? 地下に遊園地があったの、らんも行きたい行きたーい!」
「そうだね、終わったら皆で遊園地に行こうか。そのためにもまずはあの怪獣を倒さないとね」
アトラクションが苦手な恋花には急上昇が大変だったようで少し目を回している。そんな恋花が言ったジェットコースターというワードに食いつき、消耗しかけていた藍は元気を取り戻した。
何はともあれヘルヴォル再集結、はなればなれになっていた始も加わって彼らに怖いものなどなにもない。
例えそれが世界を滅ぼす異次元の悪魔だとしても。
「おのれぇ……あと一歩のところを。やはり貴様から黙らせないといけないようだなウルトラマンエース!」
「おうよ、テメェが選べる道は二つ、大人しく超獣達を連れて墓場に帰るか、この俺達とやりやって怪獣墓場の地の果てまでぶっ飛ばされるかだ!!」
「いい気になるなよウルトラマンの力を手にしただけの人間!
貴様如きの思いなど数千年もの間恨みに恨みを重ね続けたヤプールの怨念の敵ではないわ!」
「そうか、だったらお前は俺達の相手じゃねえな」
「なんだと!?」
ヤプールは驚愕する。相手が自分より強いと認めたうえでなぜこんなに余裕を持っていられるのか理解に苦しんだ。
自分の力だけを妄信し対等の仲間を作らず周りの足元をすくうことだけを考えて戦ってきたヤプールには絶対手に入らないものを目の前の6人は既に持っている。
「
少なくとも5人はいる。俺に勝ったくらいでいきがっているテメェに見せつけてやるよ!
この星はリリィが守っている! リリィを支える者達が大勢いる! 精一杯助け合って生きている! そうやって繋いできたバトンを、今日を生きている俺達は明日へと届けて見せる! お前なんかには邪魔させてたまるか!!」
「ほざけぇ!!」
少年は絆の力を、悪魔は自分の力こそ最強だと信じて光線をぶつけ合う。
崩落地を丸裸にせんとばかりの光線に応酬にヘルヴォル達も介入する準備を整え始めた。
「これから始まる戦いは、恐らくヘルヴォル史上の最大の大決戦となる。
地球の命運を決める権利が私達に握られている。
皆様、準備はよろしいですね」
答えなんて聞くまでも無いが、あえて一葉は問いかける。
実際に口に出すことで湧いてくる勇気もあることを知っているから。
「準備なんてとっくの昔にできてるって。リリィになった瞬間からね」
「恋花がいる、皆がいる。だから怖いものなんて何もない」
「課せられた重圧はとても重いけど、だからこそそこから逃げずに皆で分かち合いたいです」
「らん達は強いもん、プルプルなんかすぐにやっつちゃうから!」
部隊の皆の覚悟は決まっている。
後は隊長である一葉が号令を出すだけだ。
「私達は決して負けない! 誰も死なせない! 絶対に挫けない!
なぜなら私達はヘルヴォル、人々を守る楯の乙女だから!
この世界で初めて、ウルトラマンと心を通わせたリリィだから!」
振り上げるはチャーム。狙うのはヤプール、共に戦う仲間はウルトラマン。
「リリィとしての誇りを胸に!
ヘルヴォル! 出撃っ!!
オペレーションウルトラマンさん、始動!!」
始めて聞くオペレーション名、だが何をすればいいかなど名前だけで分かった。
一葉は叫ぶ。
それはどこ世界でも変わることの無い信念。
ウルトラマンとの共闘を決めた防衛チームの隊長が必ず叫ぶ決まり文句を。
「ウルトラマンを援護する!!」
地球を揺るがす大決戦の火ぶたが切って落とされる。
勝つのはウルトラマンとリリィの
果たして……?
怪獣コンピューターチェック!
名前:エーストロン
種別:対リリィロボット
身長:40メートル
体重:7万5千500トン
能力:ウルトラマンエースの光線に加えギャラクトロンの武器を持っている