いろんなウマ娘の短編   作:かんごりん

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ライスシャワーのストーリーの第一話にオリジナルの展開が半分くらい混ざっております


ライスシャワー①

彼女との出会いは本当にただの偶然だった。

まだ俺はトレセン学園の専属トレーナーになって日も浅く、担当ウマ娘も決まっていなかった。

気分転換に少し離れた駅前まで出かけた、ある日のこと。

学園まで戻る道の途中で、とあるウマ娘を見かけたーーー

 

「ふぅ……うん、休憩おしまいっ。 早く戻って……そしたら、次のメニューやらなくっちゃ」

 

(ん?)

 

聞き覚えのある声が耳に届き、思わずそちらを向く。

すると、そこには日本ウマ娘トレーニングセンター学園(通称トレセン学園)のジャージに身を包んだ小柄なウマ娘がいた。

 

(彼女は確か……)

 

「がんばれライス、がんばれー……おー!」

 

彼女の名前はライスシャワー、トレセン学園高等部のウマ娘だ。

 

(キレイなフォームだな……)

 

強いバネを感じさせる走りで、ライスシャワーが駆けていく。

小柄な体躯ながら、纏う覇気にはどこか目を惹かれるものがあった。

 

(なんだか期待を寄せたくなる子だ)

 

そう感じつつ、彼女と同じく学園方面へと続く道を辿っていると、

 

「…………」

 

(あらま、赤信号に捕まっちゃったか)

 

駆け出してすぐ、横断歩道の赤信号に彼女は捕まってしまった。

思わず苦笑しつつ、追いついた俺は彼女と並び信号が変わるのを待つ。

信号が変わってすぐに再び彼女は駆け出した。

ウマ娘である彼女に自分が追いつける訳もないので今度姿を見るのは学校だろうと思い、ゆっくりと歩きながら彼女の背を見送っていると、

 

「…………はぅ」

 

次の信号がまた赤信号に変わっており、立ち止まったライスシャワーの姿が見えてしまった。

若干悲壮な空気が漂い始めているのが遠目越しにも分かる。

駆け寄って慰めの言葉でもかけるべきか、と考えるが気合いを入れ直す様に自分の頬をパシパシと叩いた彼女の姿を見てその考えを捨てた。

俺が再び彼女の隣に立つと同時に信号は青へと変わり、再び彼女は駆け出していく。

 

(がんば……あっ)

 

健気な彼女の姿を応援したくなり、心の中でエールを送ろうした瞬間、見てはいけないものを見てしまった。

突然だがここら辺の道は人も車も多く通るため、安全を考慮して信号が多く設置されている。

大体長くて100メートルくらいの間隔で設置されているものもあれば、短いと20メートルくらいの間隔で設置されている信号もあるのだ。

 

つまり今俺が何が言いたいかと言うと、

 

「あぅぅぅ……!!」

 

今度は先程の信号より距離にして20メートルもないくらいの次の信号でライスシャワーが捕まってしまった。

気合いを入れたところに三度目のストップをかけられ、彼女の落ち込み様も先程より大きかった。

ウマ娘の自慢とも言えるであろうウマ耳がどちらもペタリと折れ曲がっているのがその証拠だろう。

 

(ふ、不憫だっ……!)

 

明らかに落ち込んでいる彼女の姿を見て、隣に立つ俺がオロオロとしていると、俯いていた彼女がちらりとこちらを見た。

 

「…………っ」

 

俺の姿を見た彼女は何かを小声で何かを言った後に若干涙目になりかけていた目元を拭い、再び走り去っていく。

今度はすぐ先が角だった為、彼女の姿はすぐに見えなくなった。

だが、俺には何故か予感があった。

 

次の彼女と会うのはすぐな気がする、と

 

結論から言うと、無事トレセン学園に俺は戻ることは出来た。

 

隣にはすっかり落ち込んでしまった()()()()()()()()()()

 

あの後も信号という信号に捕まり続け、やっとトレセン学園へ戻れた頃には、どっぷりと日が暮れていた。

通り道全ての信号に捕まるという珍しい体験ができて、途中からもはや俺は楽しかったまである。

 

「あのっ……す、すいません……!」

 

そんなことを考えて歩いていると、突然ライスシャワーに呼び止められた。

 

「ん? 俺?」

 

「は、はい。 あの……ご、ご……ごめんなさいっ!!」

 

何用かと思い、呑気に後ろを振り向くと、いきなり彼女は思い切り頭を下げて謝罪してきた。

 

「えっ!?」

 

「だって……ライスがそばを走ったばっかりに、学園まで戻るのこんなに遅くなっちゃって……」

 

そこで彼女は言葉を切り、

 

「ほんとにほんとに、ごめんなさいっ……!!」

 

また思い切り頭を下げた。

 

「いや、君のせいじゃーーー「ううん、ライスのせいなんです。 ライスはみんなを不幸にしちゃう、だめな子だから……」ーーー不幸?」

 

俺の言葉を遮りながら彼女はそう言ってきた彼女の目はとても悲しそうだった。

違う、そう言い切る前に彼女はまた駆け去ってしまった……。

今度は信号のない学園内なので彼女に俺が追いつくのは困難だろう。

だが、あれほど気にさせたまま放っておくのは俺の気が済まない。

 

(学園内を探してみるか)

 

そう考えて、ライスシャワーを追いかけることにした。

すると、彼女は案外すぐに見つかった。

帰ってきたばかりなのに彼女はトレーニングをしていたのだ。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……はぁ」

 

確か彼女は長距離型のウマ娘、あの疲れ様はもしかしたらもう3000は走っているのかもしれない。

 

「……うぅ。 さっきの人、こんなに遅くなっちゃって、大丈夫だったなかなぁ」

 

さっきの人というのは俺のことだろう、気にしなくてもいいのに。

 

「お腹ぺこぺこになっちゃってたり……見たいテレビ終わっちゃってたりしたら、どうしよう……」

 

(腹は……まあ空いたかな、テレビは……はっ!今日は過去の秋華賞の録画を見ようと思ってたんだった!)

 

まあ、割と俺の事情の方はどうでもいい。

いい機会なのでこのまま隠れて彼女のトレーニングを見学しようと考えていたが、次の彼女の言葉を聞いた俺は思わず飛び出していた。

 

「はぁ……ほんとにだめな子だなぁ、私……」

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

「え!?」

 

突然現れた俺に彼女は思い切り動揺しているようだ。

しかし、彼女の動揺を他所に俺はさらに詰め寄る。

 

「どうもさっきぶりだね、まずは挨拶を。 はじめまして、俺はトレーナー、君の名前は?」

 

「は、はじめまして。 ライスはライスシャワー……ですっ」

 

挨拶は終えたがどうやら彼女はまだ緊張している様だ、ここは少し話題を変えるとしよう。

 

「うん、よろしくライスシャワー。 ところで、何か俺に聞きたいことがあったんじゃないかい?」

 

「えっ!?」

 

俺のその問いを聞いた彼女は目に見えてあたふたしている。

良くない流れだと思った俺は助け舟を出すことにした。

 

「ふーむ、どうやら食堂の限定メニューはなくなってそうだなぁ。 俺のハマっている昼ドラも終わっているだろうし……」

 

全部嘘である。

食堂に限定メニューなんてあるか知らないし、俺は昼ドラには全く興味がない。

これはあくまで助け舟なのだ、俺が今口にした言葉は先程彼女が気にしていた内容を暗示させるようなものばかり。

彼女が先程自分が言った内容を思い出して俺にそれを尋ね、俺が全然気にしていないことを伝えれば彼女の不安も解消できるだろうし、俺も質問がしやすくなる。

 

(まさに一石二鳥だな)

 

そう思いつつ、ちらりとライスシャワーの方を見ると、

 

「…………あぅぅ」

 

彼女は何故か泣き出しそうになっていた。

 

「ど、どうしたの!?」

 

それを見た慌ててポケットからハンカチを取り出し、その場に屈んで彼女目元に浮かんでいた涙を拭ってやる。

だが、何か俺の対応が悪かったのか彼女は遂に泣き出してしまった。

 

「ひぐっ……ごめんなさいごめんなさいっ! ライスが、ライスがだめな子なせいでトレーナーさんがっ……」

 

「えっ、俺!? 俺がどうしたの!?」

 

「食堂のご飯、食べれなくて残念だって……」

 

その言葉を聞いた俺は彼女の誤解を解くように右手をブンブンと横に振って否定する。

 

「いやないない! 限定メニューなんてないから大丈夫!!」

 

「ぐすん……ほんとに?」

 

俺の言葉を聞いて少し泣き止んだ彼女は上目遣いでこちらを不安そうに見つめてくる。

 

「ほんとほんと!」

 

俺のその言葉を聞いて「よかったぁ」と安堵した彼女だが、また不安そうな顔付きになり、

 

「でも、お昼のテレビ。 ライスのせいでーーー「いや、俺昼ドラなんて見たことないから! 更に言えばテレビなんてほとんど見ないから!!」ーーーよかったぁ」

 

彼女が何か言い切るより先に食い気味に否定し、何とか安心させることに成功した。

ここまで無呼吸に近い状態で喋ったためゼーハーゼーハーと息を乱しながらも、一先ず誤解が解けたことに俺も安堵する。

目の前にはこちらの様子を心配そうに見てくるライスシャワーの姿があるが、何とかジェスチャーで大丈夫だと伝え、しばらく呼吸を整える。

 

「はー、ふー。 よし、もう大丈夫だ」

 

ようやく息が整った俺は再びライスシャワーへと向き直り、彼女へと問う。

 

「さて、これで一応君の俺への誤解は解けたかな?」

 

「え?」

 

「ほら、俺はお腹は空いてないし、見たかったテレビもなかった。 今日君のせいで俺が困ったことなんて一つもなかったよ?」

 

「あっ……!」

 

俺のその言葉を聞いた彼女は驚いた様に口元を抑え、こちらを見つめてくる。

 

「さあ、ここで改めて俺から君、ライスシャワーに質問だ。 どうして君みたいないい子が自分をだめな子だなんて言うんだい?」

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