からかい上手のあさおん君   作:ゆにエックス

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「あいつ」は「そいつ」で。

「あいつが3日連続で来ないなんて、珍しいこともあったもんだな…」

 

そう言った俺は、朝特有の涼しい空気が染み込む教室で、ぼーっと周囲を眺めた後、件の男について考える。

「あいつ」とは、俺が高校に入ってから出来た親友のことで、名前を『旭 直人』と言う。俺からの人物像は、かなりのサブカル好きというもので固まっている。ちなみに、俺もそうであり、よくよく振り返ってみれば、俺達が意気投合し、親友となったのは必然だったのかもしれない。

「あいつ」はよくしゃべるから会話してると面白いし、楽しいことに目がない奴で二人でいろんな馬鹿なことをやって遊んだ。とにかく、無駄にタフというか、元気が有り余ってるようなやつだったんだが…

 

「しかも、『3日も休んでるけどどうした?』って送っても『大丈夫!』しか返ってこないし…はぁ…」

 

やはり親友の安否が気になり、そわそわとしてしまう。

それもそうなのだ、3日連続で休んでいるにも関わらず親友である俺にはそれといった連絡が全く来ていないのである。

一応担任の先生に聞いてみたところ「旭君は体調不良でお休みですよ。」と返された。

休む理由を伏せる理由が分からない。

それほどの重症なのかとも一瞬考えたが、「大丈夫」との返信もあったし、おちゃらけたあいつのことだ、本当に重症だったら「○○になったんだけど草」とか送りそうである。

一種の信頼で大丈夫だと思う反面、案外真面目なところがあるあいつのことである。「心配をかけたくない」とか言った理由で伏せている可能性もあるため、やはり心配だ。

 

そういう訳で複雑な心境の中、考え事に没頭してたためか無意識に顔を伏せて、朝のHRを待っていたその時、ふっと影が落ちた。机の前に目を向けると見慣れた男子制服が見える。この登場の仕方は「あいつ」だ。いつも俺より少し遅れて登校する「あいつ」とは朝のHR前に俺の席に来て話すのが日課になっていた。

「3日も休みやがって、やっと来たかこのやろう!待ってたぞ!」と言いたくなるのを抑え、「あいつ」の出方を伺う。

しかし、いつものように聞き慣れた声で降ってくると思っていた挨拶は予想外のものだった。

 

「よっ!」

 

「よっ!…??」

 

え?誰?

つい反射的にいつもの挨拶を返してしまったが、聞き取った声は、女性にしては少し低く、それでいて澄んだ声だった。俗に「ハスキーボイス」と称される声だ。しかし、断じて男の声ではない。

 

反射的に顔をあげると、そこにいたのは、さらさらの黒髪を後ろに腰まで流し、ぱちくりとした大きな目で見下ろしている美少女だった。

 

思わず挙動不審に陥りながらもなんとか疑問を口にする。

 

「え、え、誰?ですか…?」

 

「分からない?」

 

本当に誰なんだ君は。

しかし、この口振りから察するにどうにも初対面ではないらしい。こんな美少女と知り合いなら絶対覚えているけどなぁと考えながら、該当する人を脳内検索する。が、やはり見覚えはない。

しかし、さっきから一つ引っ掛かっていることがある。それは、「なぜ、この美少女は、「あいつ」と同じ話しかけ方をして、「あいつ」と同じ挨拶の仕方をしたのか。」ということだ。

この疑問を解決するには、一つは簡単な理由が思い浮かぶ。しかし、ファンタジーでもないし、そんなことは有り得ないだろうと頭の中で一蹴しようとした。

でも、もしかしたらと思いながら「そいつ」に話しかける。

 

「えーと…もしかして、直人?」

 

「…」

 

「そいつ」は一瞬黙った後、まるで何か名案が思いついたかのようにハッとなった。そして、あくどい笑みを浮かべ、スッと俺に近付いた。同時に鼻腔を擽る心地の良い香り。

 

 

「ナオって呼んで♪」

 

耳元まで近付いた「そいつ」は、さっきも聞いたあのハスキーボイスで、艶かしく囁いた。まるで、人に甘えるときに出すような声だ。

 

「え…え…」

 

脳が揺さぶられる。その情報を処理しきれない俺は、うわ言のように同じ言葉を繰り返す。あまりの衝撃に耳まで真っ赤になっていることだろう。

 

俺の動揺を確信したのか「そいつ」は、俺から離れ、いまだ固まっている俺の様子を見て笑い声をあげる。

 

「あっはは!冗談、冗談だって!」

 

「そいつ」は俺の肩を叩きながらそう言う。してやられたという羞恥から更に顔が真っ赤になるが、この感じからなんとなく思い出せることがある。この無駄に冗談好きな感じは「あいつ」にそっくりだ。今までの行動、言葉もそっくりである。今度は1つの確信を持って「そいつ」に話しかけた。

 

「ええと…やっぱり、君は直人なのか?」

 

「そのとーり、オレは直人だよ」

 

 

俺の親友は美少女になっていた。

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