ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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エンジュジム、ソラタ戦は終わりです。


第98話 「甘えん坊の底力」

ポケットモンスター

転生したのは初めに旅立った子供

 

第98話

「甘えん坊の底力」

 

 ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは、途中で一緒になったシズホと共に次のジムがあるエンジュシティにやって来ていた。

 エンジュジムのジムリーダー、マツバはゴーストタイプの使い手、一人ジム戦に挑戦していたソラタはその変幻自在のトリッキーな戦術を得意とするポケモン達を相手に残り1体同士にまで追い詰め、追い詰められている。

 そして、デルビルとソウブレイズが倒れてモンスターボールに戻し、互いに最後のポケモンが入ったボールを手に取って、向き直った。

 

「さあソラタ君、泣いても笑ってもこれが最後だ」

「負けるつもりはありませんよ」

「君の記録は知っているよ、これまでカントー含めてジム戦無敗記録を保持しているということはね……その実力、コイツで見せて貰う! ゲンガー!!」

「頼むぞキルリア!!」

 

 マツバの最後のポケモンは予想していた通りのゲンガーだった。対するソラタのポケモンはキルリア、ゲンガー相手にエスパータイプは効果抜群だが、逆にキルリアもゴーストタイプと毒タイプに弱いので相性の上では若干不利だ。

 

「キル! キルア!!」

「あ~、はいはい、抱き着くのは良いけど、まずはバトルな」

 

 ボールから出て直ぐにソラタに抱き着くキルリアの背中を苦笑しながらポンポンと叩いてフィールドを指さすと、笑顔で飛び降りてフィールドに出る。

 そんな仲睦まじい様子に微笑まし気にしていたマツバだが、キルリアがフィールドに立つと真剣な表情に戻った。

 

「キルリアか……相性ではこちらが若干上だが、どうする?」

「相性が悪いからと諦めるようなトレーナーに、マツバさんはファントムバッジを渡します?」

「……成程、確かにな」

 

 渡すはずがない。ジムリーダーである以上、そういったところも見るのが仕事だ。相性が悪いからと諦める、逃げ出すようなトレーナーに、ジムバッジを渡すわけにはいかない。

 少なくとも、ソラタはそんなトレーナーではないのは一目瞭然、キルリアを出したのも考えあってのことだと悟った。

 

「ゲンガーVSキルリア、バトル開始!」

「ゲンガー! 初手から決めに行くぞ! “シャドーボール”!!」

「こっちも“シャドーボール”だ!」

 

 初手は互いに“シャドーボール”のぶつかり合い。同じ技ではあるがタイプ一致のゲンガーの方が威力は上なのでキルリアの“シャドーボール”が押し負けるのは目に見えている。

 その隙を突いて一気に接近して決めるつもりでゲンガーへ次の指示を出そうとしたマツバだが、それより早くソラタが動いていた。

 

「“サイコキネシス”で“シャドーボール”を操作するんだ!」

「……へぇ」

 

 ゲンガーの“シャドーボール”ごと2つの“シャドーボール”を操ったキルリアは動き出そうとしていたゲンガー目掛けて左右から挟み込むように操作、そのままゲンガー目掛けて“シャドーボール”を直撃させようとしたのだが……。

 

「甘いな、自分の周りに“ヘドロウェーブ”だ!」

 

 まるでゲンガーを守るようにヘドロの波が壁となって現れ、“シャドーボール”を阻んでしまった。

 

「“ゴーストダイブ”!!」

 

 更にゲンガーがその場で影に潜るように沈み込んで消えると、キルリアの後ろに現れて“シャドーボール”を放ってきた。

 効果抜群の一撃を背後から受けたキルリアは振り返りつつ“シャドーボール”を放ったが、再び“ゴーストダイブ”で消えたゲンガーには当たらず空を切り、天井に当たって消える。

 次はどこからゲンガーが現れるか判らない状況に、ソラタは次のゲンガーの取るであろう行動の予測を立てて頭に思い描くと、キルリアはそれに気付いたのか振り返ること無く頷いた。

 

「キルリア、短期決戦だ」

「キル!」

「ゲンガー! “どくどく”!!」

「ゲンゲロゲーン!!」

 

 キルリアの背後から現れたゲンガーが“どくどく”を放った。恐らくシャドーボールだけではなく猛毒状態にすることでこちらの焦りを引き出そうとしたのだろう。

 当然、回避出来ずに“どくどく”の直撃を受けたキルリアは猛毒状態となり、時間経過と共に体力を削られてしまう事に。

 だが、逆に今がゲンガーを倒すための布石を打つチャンスだ。

 

「今だ! “アンコール”!!」

「なんだって!?」

 

 ゲンガーがキルリアの“アンコール”を受けて“どくどく”以外の技が使えなくなってしまった。

 相手の補助技を利用した補助技返し、高度な先読み技術を要求する戦術を披露したソラタにマツバは唖然とする。

 まさか、先読みをして猛毒状態になるのを覚悟で“アンコール”を指示したのかと、残り使用ポケモン1匹という状況でそれはあまりに危険な賭けだ。

 だが、ソラタはその危険な賭けを実行した。全てはキルリアを信じて、甘えん坊でソラタに依存気味の彼女だが、それでも底力で負ける訳がないと。

 

「畳み掛けろ! “おにび”からの“サイコキネシス”!!」

 

 “おにび”による蒼い炎が“サイコキネシス”に操作されてゲンガーに直撃、火傷状態になった上に効果抜群の一撃を受けてしまっては流石のゲンガーも不味い状況だ。

 “アンコール”の効果が続いているうちは“どくどく”以外に使えない。キルリアの猛毒状態とゲンガーの火傷状態、互いに継続ダメージを受けるが追撃が出来る分キルリアが有利だった。

 

「ゲンガー、何とか“アンコール”が切れるまで回避だ!」

「させない! 連続で“シャドーボール”を放って“サイコキネシス”だ!」

 

 キルリアが放った無数の“シャドーボール”が“サイコキネシス”によって操作され、ゲンガーに襲い掛かる。

 回避を続けるゲンガーだが、流石に数が多すぎて全てを回避するのは不可能、一つ二つ三つと直撃を受けたところに畳み掛けるようにゲンガー自身の身体が“サイコキネシス”に捕らわれた。

 

「全力の“サイコキネシス”でぶっ飛ばせ!!」

「キル! キィィィルゥゥゥゥ!!!」

 

 全力のサイコパワーがキルリアの全身から放たれ、ゲンガーを捕らえる“サイコキネシス”が強化された。

 しかし、猛毒状態のキルリアは流石に体力が限界なのか、ふっと足から力が抜けて片膝を付きそうになるも、ソラタが慌てた表情を浮かべたことで踏み止まり、最後の気力を振り絞ってサイコパワーをフルパワーで発揮した。

 その時だった。フルパワーの“サイコキネシス”がゲンガーを壁に激突させながら押さえつける力が段々と強くなるのと同時にキルリアの姿が光に包まれたのは。

 

「これは……!」

「キルリア!?」

 

 先日、ラルトスから進化したばかりで、まだまだ先だと、依存状況を何とかしなければ進化することは無いだろうと、そう思っていたのに……甘えん坊の底力とでも言うのか、キルリアは、その姿を大きく変えて誰もが見惚れる美貌を持ったポケモンへと進化を果たした。

 

「サナ!!」

「……っ! やれ、サーナイト!!」

「サナァアアアア!!!」

 

 進化したことで特殊攻撃力が約2倍にまで膨れ上がったサーナイトの“サイコキネシス”がゲンガーを更に強くジムの壁に押し付け、やがてサイコパワーが途切れるとそのまま床に目を回しながら転がってしまう。

 同時に、サーナイトも膝を付いてしまうが、倒れるものかと気力を振り絞って耐えながら倒れ伏すゲンガーを見つめていた。

 

「ゲンガー戦闘不能! サーナイトの勝ち! よって勝者、マサラタウンのソラタ!!」

 

 審判のフラッグがソラタの方を掲げた瞬間、ソラタは走り出してサーナイトへと駆け寄った。

 その姿を見たサーナイトは安心したように倒れそうになったが、ギリギリ間に合ったソラタに抱き留められ、その温もりに甘えるように胸へと頭を擦り付ける。

 

「サナァ」

「よくやった、よくやったよサーナイト! ありがとう、頑張ったな」

 

 直ぐにモモンの実を食べさせれば、猛毒が綺麗さっぱり消えたサーナイトが元気よく立ち上がると、笑顔でソラタを抱擁するように抱き着いてきた。

 進化してもこの辺は変わらないなと、抱き着くサーナイトの笑顔に苦笑しながら頭を撫でていると、ゲンガーを伴ってマツバが近づいてくる。

 

「見事だったよ、ソラタ君もソラタ君のポケモン達も……実に見事なバトルだった」

「ありがとうございます」

「サナ!」

「さあ、受け取ると良い、エンジュジム攻略の証、ファントムバッジだ」

 

 マツバからファントムバッジを受け取り、バッジケースに納めると、ようやく半分が埋まったことに自然と笑みが零れた。

 残るジムは4つ、その全てを攻略したらジョウトリーグへの出場権が得られるのだと、一層身が引き締まる。

 

「明日は君の弟子が相手だったか……もし君の弟子がファントムバッジをゲットしたら、次はどこを目指すつもりだい?」

「アサギシティのアサギジム、そしてタンバシティの順に攻略して、チョウジタウン、フスベシティというルートを目指す予定です」

 

 実に堅実なルートだと感心したように笑うマツバは、直ぐに真剣な表情を浮かべる。

 

「ソラタ君と、それから昨日一緒にいたシズホさん、二人についてはジョウト地方の全ジムリーダーが情報を共有していてね、これから先のジムは普通のチャレンジャーより更にレベルが上がると思ってくれ。正直、君達二人については普通のジムチャレンジャーレベルで相手をするには不足している」

 

 ジムリーダーの本気ポケモンはジム戦で使用を禁止されているので使用しないが、それでもこれから先のジムリーダーは全員、リーグ本戦クラスのポケモンで来ると言う。

 因みに、今回のマツバの使用ポケモンも既に通常のチャレンジャーレベルを越えて、リーグ予選レベルのポケモン達だというのだ。

 

「つまり、遠慮なく全力を出してくれってことですよね?」

「……は、ははははっ!」

 

 ソラタの思わぬ言葉に、マツバが目を丸くして驚き、そして腹を抱えて笑い出した。

 

「そうだね、是非全力で相手してやってくれ。君と、シズホさんの全力を、これから先のジムリーダーたちに」

 

 望むところだった。温いジム戦などするつもりは元々無かったが、ジムリーダーたちが最初から高レベルのポケモン達で試合をしてくれるなら願っても無い機会だろう。

 まだ見ぬ残り4人のジムリーダーが、どれだけの力を見せてくれるのかを楽しみにしながら、ソラタはエンジュジムを後にした。

 ポケモンセンターで待つククリとシズホが出迎えてくれるまで、ソラタは無意識に闘志を剥き出しにしていたのか、そのオーラを感じ取った道行く人のポケモン達を怯えさせてしまったのは反省するべきところである。




次回、ククリ戦が無事に終われば次に進めますね。
そして、それはシズホに一時的に同行して貰っていた旅も終わりを意味します。
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