ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
久しぶりにこちらの更新です。
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第100話
「半人前卒業」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは、4つ目のジムがあるエンジュシティにやってきていた。
エンジュジムのジムリーダー、ゴーストタイプのスペシャリストであるマツバを相手に、ソラタは見事に勝利を収め、現在はククリが一人でジム戦に挑戦をしている。
1体目のゴースと、2体目のゴーストを倒したククリは3体目のゲンガーを相手に苦戦を強いられることとなり、今もまだその戦いは続いていた。
「ゲンガー、もう一度“こごえるかぜ”!」
「回避して!」
ゲンガーに対するヨルノズクは“どくどく”を受けて猛毒状態、長時間の戦闘は不可能となり、相性の良い“サイコキネシス”で攻撃しようにも、ゲンガーは幽体になって姿を消すことで回避するという戦法を取っているため、決定打を与えられずにいる。
このままではヨルノズクは猛毒により戦闘不能になってしまう。麻痺が残るデルビルではゲンガーを相手にすのは難しい、だが何も出来ず最後のポケモンへバトンを託すわけにはいかないと、ククリは必死に考えを巡らせていた。
「考えていても状況は解決しないぞ? ゲンガー、“ベノムショック”!」
「“エアスラッシュ”!!」
猛毒状態に“ベノムショック”は非常に不味い。経験を積んでそれを理解しているククリは“エアスラッシュ”を指示することで“ベノムショック”を散らしながらゲンガーへ空気の刃を直撃させた。
流石に攻撃を放った直後では幽体へ戻るのにタイムラグが存在するので、“エアスラッシュ”を数発受けたゲンガーだが、直ぐに幽体になって残りの刃は回避している。
「また……っ!」
「さあ、どうする?」
考えている時間は無い。その間にも猛毒状態のヨルノズクの体力は急激に奪われていく上に、ゲンガーから“こごえるかぜ”や“ベノムショック”を受ければ、十分致命傷となってしまうのだ。
ならば、残された手段は唯一つ、ヨルノズクに覚えさせてはいたが、今まで使い道があるのか疑問だった技を選択した。
「“みやぶる”!!」
「……ほう?」
ククリの指示でヨルノズクの目から光が放たれ、それがフィールドをサーチするように動くと、幽体になっていたゲンガーが照らされてハッキリと姿が見えるようになった。
「今! “サイコキネシス”で動きを止めて“ぼうふう”!!」
「ホォオオオ!!」
“みやぶる”によって幽体を捉えられ、その状態で“サイコキネシス”が直撃、完全に動きを封じられたままゲンガーは“ぼうふう”に閉じ込められてしまう。
「良い選択だ。実に見事だが……流石に回答を出すまでに時間を掛け過ぎたな。ゲンガー、“ゴーストダイブ”だ!」
「ゲンガッ!!」
“暴風”による風の中、ゲンガーが床へ消えた。まだククリのヨルノズクは技を二つ同時に維持するだけの技量が無いため、“ぼうふう”を使ったことで“サイコキネシス”の拘束が解かれてしまったために動けたようだ。
「で、でも“ゴーストダイブ”はノーマルタイプのヨルノズクには!」
「何も攻撃技が全て攻撃のためだけにあるんじゃない。やれ! “ベノムショック”!!」
ヨルノズクの背後の床から飛び出したゲンガーがそのまま“ベノムショック”を放ってヨルノズクに直撃、猛毒のダメージに加えて威力の上がった“ベノムショック”を受けては耐え切れなかったようで、地面に落とされてそのまま目を回してしまうのだった。
「ヨルノズク、戦闘不能! ゲンガーの勝ち!!」
「確かに“ゴーストダイブ”はゴーストタイプの攻撃技だが、その技の特性上こうして相手の攻撃の回避にも移動にも使える」
「……戻ってヨルノズク、お疲れ様、ありがとう」
マツバの言葉に、自分だって今までそういった手法を使ったことがあるのに忘れていたことを恥じた。
ヨルノズクをボールに戻して労いながら反省したククリは直ぐに頭を切り替えて最後のポケモンが入ったボールを取り出す。
「ヨルノズクが稼いでくれたダメージを、無駄にはしない! お願い、ハヤシガメ!!」
「ガメェ!!」
ククリ最後のポケモンは相棒であるハヤシガメである。
ゴース戦で麻痺状態になったデルビルではゲンガーの素早さに対抗するのは不可能と判断、ならば進化して耐久力もパワーも上がったハヤシガメであれば、ヨルノズクとのバトルのダメージが残るゲンガーにも十分対抗出来ると踏んだのだ。
「ゲンガーVSハヤシガメ、バトル開始!!」
「ハヤシガメ! 一気に決めに行くよ! “じならし”!!」
「跳んで“こごえるかぜ”だ!」
“じならし”により足元が揺れる前にゲンガーが跳び上がって回避、そのまま“こごえるかぜ”を放ってきたが、その程度は織り込み済み。
「“ひかりのかべ”!」
ハヤシガメの張った“ひかりのかべ”が“こごえるかぜ”を受け止めて防いだ。勿論、“まもる”のように完全に防ぎきることは出来ないので、すり抜けた分がハヤシガメにダメージを与えるが、大幅にダメージを軽減されただろう。
マツバはここで安易に“まもる”を選択せず“ひかりのかべ”を選択したククリの判断を評価した。
確かに“まもる”なら“こごえるかぜ”を完全に防ぎきることは出来るが、その代わり守っている間のハヤシガメは身動きが出来なくなる。
しかし、“ひかりのかべ”なら展開してしまえば完全に防ぎきれない代わりに身動きが可能なので、素早く次の動きが出来るのだ。
「“やどりぎのタネ”!」
壁の向こうからハヤシガメが飛ばした種がゲンガーに命中、頭に刺さった種が発芽して一気に蔓を全身に巻き付けるとゲンガーから体力を奪ってハヤシガメが回復していく。
「ゲンガー! 自分に“こごえるかぜ”だ!!」
「ゲンッ!」
「させない! ハヤシガメ、“しねんのずつき”!!」
マツバがゲンガーに自身へ向けて“こごえるかぜ”を放つことで絡まる蔦を凍らせて破ろうとしているのを瞬時に察したククリは、ゲンガーが身動きできない隙にエスパータイプの技“しねんのずつき”を指示。
ゲンガーが蔦を凍らせる前にハヤシガメの紫色のエネルギーを纏った頭突きが直撃、大きくゲンガーを吹き飛ばした。
「やるなぁ……ゲンガー、まだ行けるな?」
「ゲンガッ」
毒タイプを持つゲンガーにエスパータイプの“しねんのずつき”は効果抜群、タイプ一致ではなくとも物理攻撃力の高いハヤシガメが放ったのでダメージは大きい。
それでもゲンガーはマツバの最後のポケモンというだけあって耐えてバトル継続可能の意思を示した。
とはいえ、ヨルノズクとのバトルからダメージが蓄積していることもあって残り体力は少ないのか息が若干乱れている。
「ゲンガー! “ゴーストダイブ”だ!!」
「ゲン!!」
再びゲンガーが影の中に潜って姿を消した。だがハヤシガメもククリも冷静で、戸惑った様子は無い。
「“じならし”は多分影の中まで届かない……なら! ハヤシガメ、地面に“やどりぎのタネ”を沢山蒔いて!!」
「ガメェ!!」
「何をする気だ……?」
ハヤシガメがフィールド一杯に大量の種を蒔くと、瞬時に芽が出てフィールド中の地面を蔦が覆った。
「ゲン!?」
「しまった! そういうことか!!」
ゲンガーが影から飛び出そうとしたが、フィールドを覆う蔦に頭から突っ込むことになり、そのまま絡めとられてしまう。
「今! “じならし”!!」
「ガァメェエエエ!!」
「回避しろゲンガー! “ゴーストダイブ”だ!」
「ゲ、ゲンゲェエエエ!?」
回避を指示するマツバだが、ゲンガーは蔦に絡まって影に潜れず“じならし”の直撃を受けて効果抜群の大ダメージを受けてしまった。
「トドメ!! “しねんのずつき”!!」
「ガメェエエエエエ!!!」
そのまま、身動きできないゲンガーに紫色のサイコパワーを頭に纏ったハヤシガメの頭突きが直撃して蔦を引きちぎりながら壁まで吹き飛ばされた。
そして、マツバと審判は床に倒れたまま目を回すゲンガーを見て勝負が決まったことを察する。
「ゲンガー、戦闘不能! ハヤシガメの勝ち! よって勝者、ワカバタウンのククリ!!」
「~~~~っ!! やったぁ!!」
「ガメェ!」
勝利に喜びハヤシガメに抱き着きに行くククリの姿を微笑ましく思いながら、マツバはゲンガーをモンスターボールに戻すと、ポケットに入れていた物を取り出してククリの下へ歩み寄った。
「ナイスバトルだったよ、ククリさん」
「あ……ありがとうございます!」
「ソラタ君の弟子というのは伊達ではないようだ。まだトレーナーになったばかりだというのに、ここまで戦えるようになるなんて、君の才能と彼の教え、そしてそれに応えようとしたポケモン達の気持ちが見事にマッチした結果だ」
「わ、私の才能なんてそんな……ただ、師匠に教わった事を自分の中で消化して、何とか自分なりの戦術を考えるのに必死で」
「それが出来てて、そして実戦でちゃんと使えている時点で十分凄いことさ……さあ、受け取るといい、エンジュジム勝利の証、ファントムバッジだ」
こうして、見事ククリはソラタの見守り無しで、自分とポケモン達だけの力でエンジュジムのジム戦に勝利した。
これで、ククリもまたジムバッジが4つ、新人トレーナーとしては十分破格の数で、一人前と呼ぶにはまだ早いにしても、半人前は卒業したと言って良いだろう。
だから、この後ククリはソラタへ勝利の報告をしに行った時に選択を迫られることになるのだ。彼女の今後を左右する、とても大事な選択を……。
次回はククリにとってとても大事な選択をする回