ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第101話
「これからの成長のために」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは見事4つ目のジムであるエンジュジムのジムリーダー、マツバに勝利し、ファントムバッジをゲットした。
残るジムバッジは4つ、半分を制覇してククリも半人前を卒業した今、ソラタはククリに選択を迫ることとなる。
ククリがジム戦をしている間、ソラタはシズホの祖父母の家に案内されており、祖父母への紹介の後は縁側に座って見事な庭園を眺めていた。
庭園の片隅にはブラッキーが身体を丸めて寝ており、実に微笑ましい光景が広がっている。
「あの子、祖父のブラッキーなんですよ」
すると、後ろからシズホが近づいてきて、ちょうど庭園で寝ているブラッキーを指さした。
「チャンピオンを目指していたっていうシズホのお爺さん?」
「ええ、祖父の相棒でして、私のエーフィのお婆ちゃんに当たる子なんです」
なんでも、シズホの祖父は第二回ポケモンリーグ・セキエイ大会にも出場、決勝トーナメントに勝ち上がり、決勝まで進んだほどの実力者らしい。
ただ、その決勝戦で現カントー四天王の一人、キクコに敗れてチャンピオンズリーグへの出場を逃したのだとか。
ちなみに、第一回ポケモンリーグ・セキエイ大会の優勝者はオーキド・ユキナリ、つまりオーキド博士だ。
キクコは第一回大会でオーキド博士に敗北したものの、第二回大会で優勝してチャンピオンズリーグに出場してそこでも優勝、初代カントーチャンピオンだったオーキド博士に再び敗北して当時発足されたばかりのカントー四天王に就任したという経緯がある。
「お爺様にも四天王就任の話はあったのですが、お断りしたそうです。四天王になるほどの実力は無いとかで」
「自分に厳しいお方だったんだな」
「今もですよ。今も自分に厳しくて、そして人にも厳しい、厳格なお爺様です」
その後、シズホの祖父はカントーからジョウトに移住して今の奥さん、つまりシズホの祖母と出会って結婚したという。
「お爺様の娘、つまり私のお母様はお爺様の才能を受け継がなかったようで、色々な地方を旅していましたがジムバッジはどこに行っても最大で5個までしか集められずリーグには出たことが無いんですけど、私はどうやら祖父の才能を受け継いだみたいで」
「ああ、なるほど……幼少時からお爺さんの英才教育を受けたんだな?」
「ええ、早くから私の才能を見抜いたみたいで、自分の持ちうる全てを叩きこむと幼い頃から勉強させられました」
その結果が、今のシズホなのだと思うと納得できる話だ。
「お嬢様」
その時だった。この家の使用人が声を掛けて来て来客だと、どうやらククリがジム戦を終えてこっちに来たらしい。
「お通ししてください」
「かしこまりました」
使用人がその場を去って少しすると、ククリがやってきた。そしてファントムバッジを見せてくれたので、見事ジム戦に勝利したのだと安心した。
「お疲れ、ククリ」
「頑張りましたね」
「えへへ、ありがとうございます! 師匠! シズホさん!」
これでククリもジムバッジ4つ、トレーナーとしては新米を卒業したと言っても良い頃合いだろう。
勿論、まだまだ一人前というには未熟ではあるが、半人前は過ぎ去った段階だ。だからこそ、師匠としてソラタはククリに真剣な眼差しを向ける。
「ククリ、今から言うのはお前のこれからについて、とても大切な選択となるものだ」
「……?」
「お前は既に半人前を脱して一人前のトレーナーに近づいた。それはつまり、いつでも師から巣立って独り立ちしても良い時期だということだ」
「……っ!?」
独り立ち、そう言われてククリは目を見開いた。
「勿論、これまで通り俺と一緒に旅をしたいってのならそれでも良い。だけど、もしお前が独り立ちしてこれからは自分一人で、自分とポケモン達だけで腕を磨いて一人前を目指したいというのなら、そうすると良い。どうするか、お前が決めろ」
当然、一緒に行きたいというのならこれからは今まで以上に厳しくするつもりだ。甘えなど許さない厳しい修行を施すことになる。そのことも伝えてよく考えるように言って、答えは翌朝に聞くと言って今晩はッシズホの祖父母の家に泊ることになった。
一晩じっくり考えて、その末に出した答えならソラタは何も言わない。
そうして翌朝になり、ソラタは朝からシズホの祖父母の家にあったポケモンの転送装置と電話を使ってオーキド研究所に預けているポケモンと手持ちの入れ替えを行っていた。
次に目指すジムはアサギシティのアサギジム、鋼タイプのジムなので入れ替えは必要だ。それと、サーナイトが最終進化を果たしたことでようやくオーキド研究所に預けても問題無くなったため、手持ちを大幅に入れ替えることにしたのだ。
「ではオーキド博士、今回の手持ちはデルビルとワニノコ、ツタージャ、イワンコ、アマルス、リザードンにします」
『うむ、では転送するので待っておれ』
こうして手持ちの入れ替えを終えた頃には朝食の時間になり、シズホに呼ばれて居間で朝食を食べ終えた頃に、真剣な顔をしたククリが入って来た。
どうやら一晩じっくり考えたようで、少しだけ寝不足のようだが朝食をしっかりと食べ終えると、シズホの隣で茶を啜っていたソラタに真っ直ぐ向き直る。
「師匠、一晩考えました」
「で、どうする?」
「はい……私はまだまだ師匠に教わりたいことが山ほどあります。半人前を脱したと仰ってくれますけど、私自身がまだまだ自分は半人前だと思ってて……」
ククリはそう言って謙遜するが、少なくともソラタとシズホはククリはファントムバッジをゲットした時点で既に半人前は脱していると判断している。
そもそも初心者トレーナーの大半はコガネジムかエンジュジムで脱落したり、足止めを食らってジムバッジを集め終えるのに数年を要することも多いくらいなのだ。
その中にあってトレーナーになって一年も経たずにバッジ4つは十分過ぎるくらいの成長と言えるだろう。
でも、弟子は師匠に似るというのか、ククリはいつの間にか自分にとても厳しくなっていたようだ。
「これからさらに厳しく教えて下さるというなら、望むところです。御迷惑でなければ、一緒に旅をさせてください」
ソラタが今まで以上に厳しい指導をするという事を、寧ろ嬉々として受け入れて自分の糧にしたいと言った。
もしかしたら、いつまでも師匠に甘えてないで独り立ちするべきだとか、普通は新人トレーナーは一人で苦労するべきだ、なんて意見もあるかもしれないが、それでもククリはソラタの下での更なる成長の為の修行を求めたのだ。
「……良いだろう」
ククリも覚悟を決めているのは目を見ればわかる。だからこそ、ソラタも受け入れて、これから先の修行についても今まで以上の厳しいメニューを組むことにした。
ソラタとしても先ほどオーキド研究所から送って貰ったメンバーの内、リザードン以外のメンバーを急遽成長させるためにも相手は欲しいと思っていたので、正直言ってククリが一緒に来てくれるのは助かる。
「今までは基礎から簡単な応用、お前の手持ちのポケモン達で出来る戦術を教えてきたが、次の修練からは更に発展させていくぞ。ひとまずジョウトとカントー地方に生息しているポケモン全ての知識を叩きこむ」
ミュウやミュウツー、セレビィを除き248種類、その全てを叩きこむつもりだ。
ファイヤー、フリーザー、サンダー、スイクン、エンテイ、ライコウ、ホウオウ、ルギアといった伝説のポケモンについても、出会うことは稀であってもあり得ないことではないので当然含める。
そして、全てのポケモンの特性、夢特性も叩き込み覚えさせて、どんなポケモンが相手でも即座に対策を練られるようにしていくつもりだった。
「それから、今までは手持ちを育てることに集中してあまり多くをゲットして来なかったが、今後は積極的にポケモンをゲットしていけ」
「ポケモンをですか?」
「ああ、ジョウトリーグに今の手持ちと、それからウツギ博士に預けているランターンだけで挑むのは無謀というものだ。入れ替え用にある程度の数は必要になる」
そしてゲットしたポケモンの中からジョウトリーグに備えて育てるポケモンをある程度選別して、段階的に入れ替えながら育てさせる。
新人から脱却したばかりとはいえ、ジョウトリーグを目指すのなら、もうある程度リーグを見据えて用意しておかなければ不味いタイミングなのだ。
「持っていないタイプをゲットするのも勿論、タイプが被っていてもゲットしておけ。同じタイプでもポケモンによって戦術が変わるのなんてザラだからな」
「わかりました!」
ククリのこれからの方針は決まった。後はソラタとシズホのこれからについて、マツバから伝えられたこれから先のジムは全てリーグ本戦クラスのレベルとなるという点だ。
「正直、リーグ本戦レベルなら俺もシズホも主力メンバーで十分クリア出来るだろうな」
「ですね、既に四天王リーグクラスまで育てられたという自負があります」
「同じくだ。だから基本的にはサブメンバーや、新しくゲットしたメンバーを育てるのに活用するって形になりそうだ」
サブメンバーについても、セキエイ大会でサブメンバーとして採用していたメンバーも順調に育っており、恐らくチャンピオンズリーグクラスにはなっている。
だからソラタとシズホがこれから集中的に育てるべきなのはセキエイ大会以降にゲットしたメンバーで、彼等の育成にリーグ本戦レベルで相手をするというジムリーダーの存在は有難い。
「俺達はそろそろ出発するが、シズホは?」
「私は一日遅れて出発することになりそうです」
「そうか……」
なら、シズホとはここでお別れだ。
次に会うのは、ジョウトリーグの会場であるシロガネスタジアムになるだろう。だから、ソラタとシズホは静かに互いを見つめ合い、その瞳に闘志を燃やす。
ジョウトリーグ・シロガネ大会で、そのフィールドで向かい合ったその時は、絶対に負けないと、勝利してジョウトリーグを制覇するのは自分だと、ライバル二人の覇気が放たれた瞬間、庭の木にとまっていたポッポやホーホー、オニスズメが一斉に逃げ出した。
「っ!」
そんな二人の覇気を間近で受けたククリは、思わず手に汗握り、だけど自分だって負けるものかと気合で何とか踏み止まる。
気を抜けば腰を抜かしそうな二人の覇気を耐え抜いたククリではあるが、それでも全身から冷や汗を流し、踏み止まっている足がガクガク震えてしまうのは仕方ない。
「じゃあ、リーグで」
「ええ、リーグでお会いしましょう」
こうして、シズホと別れソラタとククリはエンジュシティを後にした。目指すは次のジムがあるアサギシティ、そこではいったいどんなバトルが待ち受けているのか……次回に続く。
次回からまたしばらくシズホは出ません。ソラシズのターンはいったんお預けです。