ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第102話
「鋼の翼」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは4つ目のジムであるエンジュジムのジムリーダー、マツバに勝利し見事ファントムバッジをゲットした。
そして、現在は次のジムがあるアサギシティを目指している最中、二人は修行をしながらアサギシティまでの道程を歩んでいる。
「次のアサギジムは鋼タイプのジムだ。ククリ、鋼タイプの特徴と弱点は?」
「圧倒的な防御力と耐久力、物理攻撃力の高さ、そして毒タイプの攻撃が一切効かないのが特徴で、弱点としては重量級ポケモンが多く素早いポケモンが少ない事と炎、格闘、地面タイプに弱い事です!」
「理解出来ているな。勿論、鋼タイプでも高速戦闘が可能なポケモンや特殊攻撃力の高いポケモンもいるから、一概には言えないけど、おおよその概要が理解出来ているなら問題ない」
例えばソラタのルカリオが鋼タイプで高速戦闘が可能で特殊攻撃力の方が高いポケモンに該当する。
「アサギジムは数年前までは元々、岩タイプのジムだった」
「岩タイプですか?」
「ああ、まだ鋼タイプが発見される前だな。ジムリーダーのミカンはイワークを主力にした岩タイプの使い手だったし、先代も岩タイプの使い手だったらしい」
だが、数年前に鋼タイプと悪タイプが発見されてからミカンは自身のイワークをハガネールに進化させて鋼タイプを極めるに至った。
それからはアサギジムは鋼タイプ専門のジムとなり、鋼タイプがまだ広く浸透していなかった時代は多くのトレーナーが苦しんだという話だ。
「お前の手持ちだとデルビルやハヤシガメ、ヘラクロスが有効だろう」
「はい! 私もアサギジムはこの子達で行こうかと考えてました」
「無難だな」
因みにソラタはデルビル、ルカリオ、ファイアロー、そして念のためリザードンを選出した。
なお、エンジュシティを出てからここまでで、修行をしながら進んでいたので、実はソラタ達の手持ちでも進化したポケモンが増えている。
ククリはマリルがマリルリに、メリープがモココに進化しており、ソラタの方もワニノコがアリゲイツに、ツタージャがジャノビーに、イワンコがルガルガン(まひるのすがた)に、アマルスがアマルルガに進化していた。
だが、次のジムで主力にしたいデルビル兄妹が未だ進化していないのがどうしても気になってしまう。
「師匠、やっぱりデルビル達は母親のことが……」
「だろうな……目の前で死んだ母親と同じヘルガーになることを拒んでるんだろう。自分たちがヘルガーに進化したら、母を思い出してしまうからなのか、それともいつまでも母の子供で……デルビルでいたいからなのかは、判断できないがな」
無理に進化させるつもりは無いが、それでも今後の事を考えれば、そして本人たちの事を考えれば、いつかは進化して過去を乗り越えて欲しいと思う。
そんな事を考えていた時だった。ソラタは上空から風切り音が聞こえ、顔を上げて空を見上げれば一匹のポケモンがこちらに向かって急降下している姿が見えた。
「エアァアア!!」
「エアームドか」
鋼と飛行の複合タイプを持つエアームド、おそらく野生の個体だろう。明らかに敵意を持ってこちらに襲い掛かろうとしていたので、ソラタとククリは同時にデルビルを出してそれぞれ指示をする。
「デルビル、“かえんほうしゃ”!」
「デルビル! “ほのおのうず”!」
ククリのデルビルが“ほのおのうず”でエアームドを炎に閉じ込めると、その炎にソラタのデルビルが放った“かえんほうしゃ”が混ざって巨大な“ほのおのうず”になりエアームドはそのまま力なく落下した。
ククリがすかさずモンスターボールを投げれば、エアームドがボールに入って少し揺れると、軽快な音とともにボールが開いてエアームドが出てくる。
「うそ!? 失敗!?」
「根性があるやつだな」
すると、エアームドの両翼が光り、鋼のエネルギーを纏った。エアームドお得意の“はがねのつばさ”だ。
「来るぞ!! デルビル、“かげぶんしん”!!」
「こ、こっちも“かげぶんしん”だよ!!」
エアームドの“はがねのつばさ”がデルビルの分身を攻撃している間に、ソラタのデルビルがその牙に炎を纏う。
「“ほのおのきば”!!」
デルビルの“ほのおのきば”が直撃したエアームドは苦しそうにしながらもデルビルを振り切り再び上昇、その速度は先ほどの比ではない。
「さっきより速い!?」
「おいおい……」
“ほのおのきば”を受けた後は速度が上昇している。その時点でソラタはエアームドの特性が夢特性の“くだけるよろい”であることを察した。
エアームドといえばソラタの知識では“がんじょう”の特性で耐えつつステルスロックを巻く受けポケモンという認識だが、夢特性である“くだけるよろい”のエアームドは受けポケモンではなく一転して奇襲・アタッカー要員になる。
「面白いエアームドだな」
個人的に欲しいとは思うが、現状エアームドまでゲットする余裕が無いソラタとしては不要ではあるものの、ククリがゲットする分には中々どうして、面白いポケモンではあった。
「デルビル! あのエアームド、ゲットするよ! “かえんほうしゃ”!!」
「ガゥ!!」
ククリのデルビルが“かえんほうしゃ”を放つと、エアームドは飛びながら回避、そしてそのまま舞うように飛び回った。
「“つるぎのまい”だ! より厄介になったぞ!」
「デルビル! もう一度“かえんほうしゃ”!!」
エアームドは物理防御力が飛びぬけて高い反面、特殊防御は然程高いポケモンではない。
だから“かえんほうしゃ”で攻めるのは間違いではないのだが、闇雲に放ったところで空を自在に飛び回るエアームドに当たるはずがなかった。
“かえんほうしゃ”を回避したエアームドはその鋼の嘴にエネルギーをドリルのように回転させながら纏って突撃してきた。
「“ドリルくちばし”か」
「デルビル! こうなったら引き付けて!」
どうするつもりかとソラタはククリとデルビルの様子を見守ることにした。この状況で、どんな戦い方をするのか興味があったからだ。
「今! “みがわり”!!」
「ほう?」
デルビルがその場でジャンプすると、身代わり人形がエネルギーで形成され、エアームドはそこに突っ込んでいく。
そして飛び上がったデルビルはエアームドの頭上、既に口には炎をチャージしており、いつでも放てる状態だ。
「“かえんほうしゃ”!!」
渾身の“かえんほうしゃ”がエアームドを頭上から襲う。真上からの“かえんほうしゃ”直撃によってそのまま地面に叩きつけられたエアームドが立ち上がるよりも先に、デルビルが着地した瞬間、ククリは更なる追撃指示が飛ぶ。
「“ほのおのうず”!」
「バウゥウウウ!!」
再び、エアームドが炎の渦の中に閉じ込められ、そして炎が消えたあとには目を回して倒れている姿が。
それを見たククリは再びモンスターボールを構えると、エアームド目掛けて投げた。
「お願い、モンスターボール!!」
ククリの投げたモンスターボールがエアームドに当たると、ボールが開いてエアームドが赤い光に包まれながらボールの中に入り、ボールが閉じる。
地面に落ちたモンスターボールの開閉ボタンが赤く光りながら何度か揺れているのを、固唾を飲んで見守っていると、「ポンッ!」という音と共に揺れが無くなり、開閉ボタンの赤い光も消えた。
「やったぁ!! エアームド、ゲット!!」
最初はソラタのデルビルも参戦していたとはいえ、途中からは完全にククリとククリのデルビルだけで戦い、そしてエアームドを見事ゲットした。
ソラタはククリの成長に満足そうに頷くと、ふとククリの足ともにいたデルビルが何かに耐えるような仕草をしている事に気づく。
「デルビル?」
「クゥゥッ」
時折、身体が光っては消えてを繰り返しながら、まるで何かを拒むような仕草、これは……デルビルが自身で進化を拒んでいるようだ。
「デルビル、そんなに進化したくないのか? 母親と同じ姿になるのが、そんなに不安か?」
「ガゥ」
ソラタは自分のデルビルの方にも目を向ければ、彼女も同意するように頷いていた。やはり、ヘルガーに進化しないのではなく、したくないという事だった。
「困ったな……」
ククリのエアームドゲットを素直に喜べる状況ではなくなった。
デルビル兄妹の進化への拒絶、ただデルビルのまま強くなりたい、というのではない。亡き母と同じ姿になることへの不安から来る拒絶で間違いないという現状、アサギジムまでに解決しなければならない問題が、はっきりと浮き彫りになった瞬間であった。
デルビル兄妹、不安を取り除かなければヘルガーに進化することは無さそう……どうするのでしょうねぇ。