ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第103話
「兄妹のトラウマ・前編」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは、次のジムがあるアサギシティを目指していた。
道中、修行しながらの旅の中でククリは先日、新しい仲間としてエアームドをゲットしたのだが、その際に進化の兆しを見せたデルビルが進化を拒絶するという場面があったため、二人はアサギシティに向かう途中にあるモーモー牧場に立ち寄り、モーモーミルクやモーモーミルクを使って作ったソフトクリームを味わいつつ、デルビル兄妹について話し合うことに。
「師匠、デルビル達の事ですが……」
「ああ、進化しないのと進化したくない、では事情が異なりすぎるから、正直困ってるところなんだよなぁ」
デルビル兄妹が抱えているのが亡き母ヘルガーの事だというのは明白だが、彼らの気持ちは何となくでしか判らない。
ポケモンの気持ちを明確に知る方法というものが無い以上、トレーナーが一番頭を悩ませるのがこの部分なのだけど、今回の場合はその中でも特殊なケースだ。
「デルビル達の言葉が判れば、そう思わずにはいられないです」
「そうだな……」
ふと、ソラタはククリの言った言葉に引っかかるものを感じた。デルビル達の言葉が判れば……それが、可能な方法があったのではないか。
「……あ!?」
思い出した。
あるのだ、伝説のポケモンなどの話せるポケモン以外に、数少ない例外で、デルビル兄妹の気持ちを知る方法、言葉を理解する方法が。
「そうか! あいつなら!!」
「師匠?」
「ククリ、悪いがここでデルビル達と待っててくれるか?」
そう言ってソラタはデルビルの入ったモンスターボールをククリに預けると、返事も聞かずに牧場の売店を出てすぐにリザードンをモンスターボールから出した。
「リザードン、悪いが俺を乗せて飛んでくれるか?」
「グルゥ?」
「ロケット団のニャースが必要なんだ」
そう、ソラタが思い出したのはロケット団……ムサシとコジロウと共にいるニャースの存在だった。
この世には人間の言葉を話せたりテレパシーで言葉を伝えるポケモンが存在しているが、その大半が伝説のポケモンだったり、幻のポケモンだったりするのだが、ごく一部だがそれ以外にも人間の言葉を話せるポケモンが存在している。
一匹はオレンジ諸島にあるアーシア島に住むヤドキング、そしてもう一匹がロケット団のムサシとコジロウと共にいるニャースだ。
流石にここからオレンジ諸島のアーシア島まで飛ぶのは無理があるが、ロケット団なら恐らくいつもの如くサトシのピカチュウを狙っているはずだから、ソラタが来た道を戻れば見つかる可能性が高い。
「行くぞリザードン!」
「グルァアア!!」
リザードンの背中に乗ると、一気に飛び上がったリザードンはこれまで来た道を戻るように進路をとった。
サトシはまだ現時点でソラタより遅れているのは何度かオーキド博士から聞いているので、戻っている最中であればどこかにロケット団がいる筈なのだ。
「よし、ファイアロー! サーナイト! 出てこい!!」
「ファロー!」
「サナ!」
「って、こらサーナイト、今抱き着くと危ないっての!」
リザードンの背中の上でサーナイトが抱き着いてきて危ないのを注意しつつ、ファイアローには人間の言葉を喋るニャースを連れた男女を探して欲しいと頼み、サーナイトにもリザードンの背中から超能力で探って欲しいと頼んだ。
ファイアローがリザードンから離れて別の方角へ飛び去ると、サーナイトは後ろからソラタに抱き着いたまま目を閉じて超能力による遠視を開始、ムサシとコジロウ、ニャースを探し始める。
「サナ?」
「どうした?」
しばらく探していると、サーナイトが何かを見つけたようでソラタの服を引っ張ってきた。それと同時にファイアローが戻ってきてリザードンに何かを伝えている。
「グルゥ!」
「ファロ!!」
「サーナイト、ファイアローが見つけたものは、お前が見つけたものと同じか?」
「サナァ!」
「ならファイアロー、道案内頼む!」
ファイアローが再び飛び出したのをリザードンが追う、その間にサーナイトがリザードンにテレパシーで何かイメージを送ったらしく、リザードンがサーナイトに向かって頷いていた。
やがて、高度を下げ始めたことで地上が見えやすくなったためか、森の中にソラタの目でも見覚えのあるものが見えてくる。
「ニャース気球、間違いない!」
アニメで何度も見た気球、それがあるということは、そこにムサシ、コジロウ、ニャースがいるということだ。
ファイアローに礼を言ってボールに戻すと、リザードンに指示して気球の下へ着陸するように指示する。
リザードンが降下していくと、やはり気球の籠近くにムサシ、コジロウ、ニャースがいて今は昼食の最中なのか缶詰オンリーという侘しい食事をしているのが見えた。
「リザードン、降りろ」
「リザァ!」
リザードンが翼を羽ばたかせながら着地すると、強烈な突風が発生してムサシ達が吹き飛ばされたのが見えたものの、気にせずリザードンから降りればサーナイトも降りてソラタを後ろから羽交い絞めにするように抱き着きなおす。
「な、ななななな何なのよ!?」
「食事中にすまんな」
文句を言ってくるのを無視してソラタはコジロウの隣にいるニャースに目を向けた。
「ニャ、ニャーにニャんか用かニャ?」
「ああ、人間の言葉が喋れるお前に頼みがあってな」
「ふ、ふざけんじゃないわよいきなりやってきて!」
「そうだそうだ! 僕たちのご飯が台無しになったじゃないか!!」
「飯くらいなら奢ってやるから、少し頼まれてくれ……まず、お前たちはポケモンハンターのグスタフって男を知ってるか?」
「グスタフ? そんな男、アタシが知ってるわけないでしょ」
「いやムサシ待て! 確か、ロケット団の取引相手にそんな名前の男がいなかったか?」
どうやらムサシは覚えが無かったようだが、コジロウがグスタフの名に覚えがあったようだ。
そこで、グスタフによって野生のヘルガーが殺され、その子供であるデルビル兄妹を保護したこと、そのデルビル兄妹が進化を拒絶していて、もしかしたらヘルガーの、母を目の前で殺されたことがトラウマになっている可能性があることを説明した。
「それで、ニャースにデルビル達の言葉を翻訳してもらいたい」
「ニャるほどニャ……」
「母親を殺された、ねぇ……胸糞悪い話じゃない」
「ああ、ポケモンを殺すってだけでムカつく話だ」
やはりこの二人はロケット団でありながら、ポケモンへの愛情は普通のトレーナーと何一つ変わらないのだと再認識できた。
「悪には悪の美学ってのがあるのよ。悪党にだって超えちゃならない一線ってのがね」
「それを超えたらもう悪党じゃない、外道って言うんだ。俺たちは悪党ではあっても外道じゃない、外道は悪の名折れってな」
信頼するには十分な信念だ。
「デルビルが何を恐れて進化を拒んでいるのか、理由を知りたい。翻訳、頼めるか? 無論、報酬は支払う」
「あら、良いのかしら? ポケモンリーグ・セキエイ大会ベスト4様がロケット団に依頼して報酬なんて」
「……今回の依頼は、ロケット団であるお前たちにするんじゃない。同じ、ポケモンを愛するトレーナーであるお前たちに依頼するんだ。正義とか悪とか、犯罪者だとか関係無い、ポケモントレーナーのムサシ、コジロウと、そして一匹のポケモンであるニャースにな」
ロケット団である前に、悪党である前に、ムサシもコジロウも同じポケモントレーナーだ。だから、同じトレーナーとしての二人を尊重する。
その言葉を聞いて、ムサシとコジロウは少しだけ感慨深いといった顔をした。
「久しぶりじゃない? アタシらをロケット団としてじゃなく、一人のトレーナー扱いする奴」
「だな、俺も最後にトレーナーとして扱われたのがいつだったか覚えてないや」
二人とニャースは依頼を受けてくれることに。さっそくモーモー牧場に移動しようとなり、ムサシ達は気球に乗り込んで、その籠をリザードンが引っ張ることになった。
「少しだけ飛ばすから、振り落とされるなよ?」
「誰にもの言ってんのよ! これでもジャリボーイに何度も吹き飛ばされて慣れっ子よ!」
「嫌な慣れがあったものだなぁ……ああ、こっちは気にせず飛ばしてくれて良い」
「わかった……リザードン、頼む」
「リザァ!!」
リザードンに取り付けた鞍にフックをかけ、そのフックに繋がったロープを気球の籠に取り付けて準備完了だ。
気球のバルーン部分は仕舞って籠にはアニメでも何度か見たことのあるプロペラ二つが取り付けられている。
「じゃあ出発だ!」
次回、後編