ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第11話
「ナゾノクサの草原」
ハナダシティのハナダジムで、ジムリーダーのサクラに勝利し、見事ブルーバッジをゲットしたソラタは、次のジムがあるクチバシティを目指して旅を続けていた。
その旅の途中、立ち寄ったのがゴールデンボールブリッジを渡った先にある小さな田舎町、ソメイタウンのポケモンセンターだった。
「ナゾノクサ! “はっぱカッター”!」
「“でんこうせっか”で回避! 続けて“シャドーボール”!!」
そして現在、ポケモンセンターの敷地にあるバトルフィールドで、ソラタはテツと名乗った少年とポケモンバトルをしていた。
テツ少年のポケモンはナゾノクサ、対するソラタはイーブイで、ナゾノクサの“はっぱカッター”を回避したイーブイが“シャドーボール”で反撃している。
「ナゾノクサ!?」
「ナ、ナゾ~」
「今だ! “でんこうせっか”!!」
「ブイ! ブイブイブイブイ!! イブイ!!」
“シャドーボール”が直撃して怯んだナゾノクサを、イーブイの渾身の“でんこうせっか”が捉える。
「ナ……ゾ~」
「な、ナゾノクサ……戻れ」
目を回して倒れたナゾノクサをモンスターボールに戻したテツ少年は手持ち全てが戦闘不能となったので、これでソラタの勝利だ。
「いや~参った! 強いなぁアンタのイーブイ」
「まぁな、一番の相棒だ」
「そりゃ強ぇや」
足元に擦り寄ってきたイーブイを抱き上げて頭を撫でながら、ソラタはふとバトル中に気になっていた事があって周囲を見渡した。
ソラタとテツ少年のバトルを観戦していたトレーナー達がちらほらと見えるのだが、皆が共通してナゾノクサやクサイハナ、ラフレシアを連れているという謎の光景。
「随分とナゾノクサ系のポケモンを連れたトレーナーが多いな」
「何だ知らないのか? この町の近くにナゾノクサが多く生息する場所があってな、大昔からこの町はナゾノクサと共に生きてきたってくらいで、だからこの町の出身トレーナーなんかは初心者ポケモンとしてナゾノクサを受け取るくらいに身近なポケモンなんだよ」
「ナゾノクサを初心者用にって……随分とまぁ」
最終進化に石を必要とするポケモンを初心者用にするというのは随分と思い切った事というか、それくらいナゾノクサがこの町では当たり前のポケモンなのだろう。
何でも偶に町中を野生のナゾノクサが散歩していたりする事もあるらしく。町のルールで住民も旅人も、町中を散歩しているナゾノクサにバトルを仕掛けたりゲットしたりする事を禁止しているくらいなのだ。
「そっか……実はナゾノクサをゲットしたいと思ってたんだけど、その生息地ってどこなんだ?」
「町から少し離れた所にナゾノクサの草原って呼ばれている場所がある。そこがナゾノクサの生息地になってるぜ」
この町の住民は全員初心者ポケモンとしてナゾノクサを町長から受け取るから例外として、旅人はナゾノクサをゲットする場合はナゾノクサの草原へ行ってゲットするのがルールらしい。
しかも、その際は町の住人の誰か一人が付き添い、尚且つゲットして良いのは一人一匹までだ。
「厳格なルールが定められてるんだな」
「それだけこの町がナゾノクサを大事にしてるんだよ、ずっと一緒に過ごしてきた家族みたいなものだからな」
因みに、テツ少年はソメイタウン在住のトレーナーとの事なので、ソラタがナゾノクサの草原に行く際は同行してくれるとの事だ。
ソメイタウンのポケモンセンターで一泊したソラタは朝からテツ少年と共にソメイタウンの近くにあるというナゾノクサの草原に向かっていた。
ナゾノクサの草原がある場所は管理人の家で入園手続きを済ませなければならないとかで、今はその家に来ている。
「はい、これが入園パスね。帰りもこのパスを返してくれれば大丈夫」
「はい」
「それから、ナゾノクサの草原に入る際は空のモンスターボールの持ち込みは1個までだから、残りは預かるけど良いかな?」
「わかりました」
本当に管理が徹底しているなと思いながら、空のモンスターボールを1個だけ持ち、残りは管理人のお爺さんに渡してテツ少年とナゾノクサの草原に入った。
ナゾノクサの草原はとても広く、見渡す限り草花が綺麗に整えられた草原で、テツ少年の話によると草花を手入れしているのはナゾノクサやクサイハナ達なのだとか。
「凄いな」
「だろ? だからこの草原は町の人間にとっても散歩に来たりピクニックに来たり、子供の遊び場になったりもしているんだ」
「野生のナゾノクサやクサイハナが居るのにか?」
「ここのナゾノクサやクサイハナは町の人間か如何かって判るらしいぜ」
「へぇ」
町の人間と草原のナゾノクサの信頼関係が出来てなければあり得ない事だろう。それだけ町が草原のナゾノクサ達を大切にして、ナゾノクサ達もそれを理解しているのだ。
「ただまぁ、この草原のナゾノクサは全部が全部人間に心許してる訳じゃないけどな」
「そうなのか?」
「ああ、人間に捨てられたナゾノクサやクサイハナの保護区でもあるんだよ、此処は」
「そういう事か……」
弱いから、ラフレシアに進化させるのにリーフの石を手に入れるがダルいから、そんな身勝手な理由でナゾノクサやクサイハナを捨てるトレーナーも居る。
そんなナゾノクサやクサイハナを保護しているのも、このナゾノクサの草原なのだ。多くの仲間達と共に自然の中で暮らせば人間に捨てられた心の傷も癒してくれるだろうと。
「あ、ちょうどあの子がそうだな」
「ん?」
「あの木陰に座ってるナゾノクサ、確か数週間前に捨てられたばかりの子だ」
テツ少年が指さした先に居たのは、木陰で休んでいる一匹のナゾノクサだった。
「メスのナゾノクサなんだけど、確か弱いからって理由で捨てられたんじゃなかったかな」
「胸糞悪い話だな」
「本当にな」
何でも“すいとる”と“あまいかおり”しか使えないからという理由で捨てられたらしい。聞けば聞くほど胸糞悪い話だった。
人間の勝手な理由で捨てられて、あのナゾノクサがどれだけ悲しんだか。
「テツ、これはジョウト地方の話なんだが」
「ん?」
「ジョウト地方の四天王の言葉でな……“強いポケモン、弱いポケモン、そんなものは人間の勝手。本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるように努力するべき”って言葉がある」
「それが?」
「ナゾノクサを弱いって断じるのは人間の勝手な判断だ。本当に強いトレーナーならナゾノクサでも勝てるように一緒に努力するべきだよな」
「……だな」
とは言え、リーグ挑戦メンバーを予め決めているソラタが言えた言葉ではなかったかもしれない。ただ、ソラタがリーグ挑戦の為に想定しているメンバーは何も強いからという理由だけで選んだわけではない。
ただ単純に、好きなポケモンだから選んだのだ。それだけは胸を張って言える。
「さて、それよりソラタに着いてきてくれるナゾノクサを探そうぜ」
「ああ……」
木陰で休むナゾノクサをチラリともう一度だけ見て、テツ少年を追いかけた。
そんなソラタの後ろ姿を、木陰で休んでいたナゾノクサが薄目で見ていたのだが、それにソラタが気付く事は無かった。
半日掛けて草原を見て回ったが、中々この子は! と思えるナゾノクサと巡り合わなかった。人間であるソラタにも好意的なナゾノクサは多数居たのだが、中々フィーリングの合う子が居ない。
「今日はどうする? 諦めて町に戻るか?」
「そうだな……?」
どうするか考えた所で、空を見上げていたソラタの視界に何かが光って見えた。
「あれは?」
自然ではありえない人工物の光、ドローンと呼ばれる小型飛行機械が微かにだが見えた気がする。
「テツ、この草原はドローンで生態調査とかするのか?」
「ドローン? そんなもの今まで飛ばした事無いけど」
「調査が入るって話は?」
「いや……」
「……まさか」
嫌な予感がする。ソラタは直ぐに腰ベルトからモンスターボールを取り出して投げた。
「ピジョン! あのドローンを追ってくれ!!」
「ピジョー!!!」
ソラタが指示した方向へ飛んでいくピジョンを見て、テツ少年も何かを感じたのか、自身もモンスターボールを取り出して投げる。
「お前も行ってくれヨルノズク!」
「ホォー!」
テツ少年もヨルノズクを出してピジョンを追わせた。その時だった、草原の一角から爆発音が響いたのは。
「今のは……っ!?」
爆発音が聞こえた方角に目を向ければ、黒い煙が昇っているだけでなく、胸にRのマークが入った白い服を着た赤髪の女の姿が。
「アテナ……っ!」
再び現れたロケット団幹部、2度目の邂逅となるアテナの姿を見て、ソラタはモンスターボールを握り締めて走り出した。
その視線の先には、怯えるナゾノクサがヤミカラスに襲われている姿が。何の偶然か、そのナゾノクサはテツ少年に教えてもらった数週間前にトレーナーに捨てられたという木陰で休んでいたナゾノクサだった。
次回は再び現れたアテナ戦です。