ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
2回目は……どうなんでしょ?
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第13話
「ロケット団幹部・アテナ」
ナゾノクサの草原でナゾノクサを襲っていたロケット団幹部のアテナ、彼女の操るラフレシアを前にピカチュウが戦闘不能となり、ヒトカゲも戦闘不能となるかと思われた。
しかし、まだ負けていないと不屈の闘志を燃やすヒトカゲにソラタが応えた時、ソラタとヒトカゲの絆がヒトカゲをリザードへと進化させたのだ。
「リザァアアア!!!」
「進化ですって!? この土壇場で……っ! ラフレシア! “はなふぶき”!!」
進化したリザードに対して、アテナはラフレシアに“はなふぶき”を指示。戦闘不能直前で進化したのなら、体力はそこまで残っていない筈だと、力技でリザードにトドメを刺そうとしたのだろう。
だが、不屈の意思で進化を果たしたリザードは簡単に倒れるような相手ではない。尻尾の炎が一際大きくなりソラタを、ラフレシアを、アテナを強い熱気が包み込み、更には“はなふぶき”の刃を焼き尽した。
「これは……“もうか”が発動したのか!?」
リザードの特性“もうか”、それは体力が残り少なくなった時に発動する特性であり、炎タイプの技の威力が発動前よりも各段に大きくなるという諸刃の剣だ。
「リザード! “かえんほうしゃ”!!」
ヒトカゲの時とは比べ物にならない威力の“かえんほうしゃ”を放ったリザード。“もうか”の効果も加わって、その威力は絶大だった。
「“ベノムショック”!!!」
アテナはラフレシアに“ベノムショック”を指示、ラフレシアの“ベノムショック”が“かえんほうしゃ”とぶつかるが、拮抗する事も無く炎に飲み込まれて消滅、威力を落とす事無く“かえんほうしゃ”がラフレシアを飲み込んだ。
「ラフレシア!?」
「そのまま一気に決めるぞ! リザード!!」
「リィッ……ザァアアア!!!!」
すると、リザードが放った炎は大の字になってラフレシアに直撃、倒れ掛かっていたラフレシアを吹き飛ばしてしまう。
「“だいもんじ”ですって!?」
「“だいもんじ”……リザード、覚えたのか!」
「リザッ! リザリザッ! ッザード!!」
ヒトカゲからリザードへの進化、更に“だいもんじ”という高火力技の習得で一気に状況が好転した。
“だいもんじ”に吹き飛ばされたラフレシアは“ひんし”寸前の状態でフラフラしており、一気に決めるチャンスだ。
「ラフレシア! 確りしなさい!!」
「リザード! 決めるぞ!! “だいもんじ”!!」
再度放たれた“だいもんじ”がフラフラしているラフレシアに直撃、そのまま倒れたラフレシアは目を回してしまった。
「くっ……戻りなさい、ラフレシア」
最後の手持ちを倒されたアテナに残された手段は無い。こちらを睨みつけつつラフレシアを戻したボールを腰のホルダーへ収め、逃げの姿勢を取る。
「逃げられると思うなよ」
だが、逃げようとしているのなんて直ぐに分かったソラタが腰から取り出したプレミアボールを投げると、アテナの目の前にギャラドスが現れた。
「ヒッ!?」
「お前はこのままジュンサーさんに突き出す。もう終わりだ」
「こ、の……クソ餓鬼が!」
すると、アテナは懐から取り出した煙幕玉を地面に叩きつけると、黒い煙に包まれた。だが、その程度で逃げられると思われては仕方がない。
「ギャラドス、“ぼうふう”」
「ギャオァアアアアア!!!」
煙幕など、ギャラドスの“ぼうふう”で簡単に掻き消してしまった。残されたのは“ぼうふう”によって地面に叩きつけられ、立てずに腰を抜かしているアテナの姿。
「クソッ」
「往生際の悪い奴だ……逃げられると思うな」
その後、アテナは駆け付けたジュンサーさんによって手錠を掛けられ、パトカーに乗せられて連行されて行った。
ロケット団の一人、それも幹部として指名手配されていたアテナを逮捕出来た事は相当に大きく、ソラタは表彰されると言われたのだが、その場で辞退した。
「テツ、悪いな騒がしくしてしまって」
「いや、いいよ……まさかウチの町出身のアテナさんがあんな」
「……」
その辺りの事はソラタが口を出す事ではない。一先ず同じ町の出身だった人間が悪の道に堕ち、そして逮捕されてしまった事に落ち込んでいるテツを他所にソラタはずっと抱きかかえていたナゾノクサを地面に下ろした。
「ナゾ……?」
「大丈夫だったか?」
隣に並ぶリザードと一緒にナゾノクサを見下ろし、怪我が無いかを確認すると、ナゾノクサは何故か頬を赤くしてリザードを見上げていた。
「リザ?」
「ナゾ~」
すると、ナゾノクサがリザードの足元まで寄ってきてスリスリと顔を摺り寄せる。
「おお、リザードってばモテモテだなぁ」
「リ、ザ?」
「可愛い女の子に懐かれて男冥利に尽きるだろ」
メスのナゾノクサにオスのリザードが懐かれた。種族違いの恋にソラタがニヤニヤとリザードを見れば、リザードは戸惑った様にソラタを見上げて来る。
「きっと、お前の強さに惚れたんだろ」
「ザード?」
「ナゾ!」
リザードから離れたがらないナゾノクサを見て、ソラタは一つ考えていた事を実行する為、テツ少年の方を向く。
「テツ、このナゾノクサだけど」
「ん? このナゾノクサって、さっき話してた捨てられたナゾノクサだよな」
「ウチのリザードに懐いたみたいでさ……連れて行ったら駄目か?」
「ん~……」
元々ソラタがナゾノクサをゲットするのは問題無かった。ただ、問題は今回ゲットすると言っているのが捨てられたばかりのナゾノクサだという点だろう。
捨てられて間もないナゾノクサは、心のケアがまだまだ不十分な事が多い。このナゾノクサも弱いからという理由で前のトレーナーに捨てられて、少し前までずっと落ち込んでいた子だ。
だが、ソラタという少年の人となりは信用に値するものだと判断している。ナゾノクサもソラタのリザードに懐いているようなので、悪い様にはされないだろうという確信はあった。
「わかった。じゃあそのナゾノクサで良いなら、連れて行ってやってくれ」
「ああ、ありがとう」
こうして、ソラタの手持ちにナゾノクサが加えられ、これでソラタのリーグ出場の為のベストパーティーメンバーは残り1匹になった。
これまで手持ちに居たピジョンはオーキド研究所へ送られ、リザード、イーブイ、ギャラドス、ピカチュウ、ナゾノクサの5匹が手持ちとして残った事になる。
残る1匹をどうやってゲットするか、それを考えながらも、次のジムがあるクチバシティへ向けて、ソラタの旅はまだまだ続くのだった。
ハナダシティの警察署の監獄、そこに収監されたロケット団幹部のアテナはモンスターボールも没収されて何も出来ずに座り込んでいた。
「随分と情けない姿ですね」
「っ!?」
ずっとこのままなのかと途方に暮れていたアテナだったが、檻の外から知った声を聞いて顔を上げる。
すると、そこに立っていたのは水色の髪を短髪にした青年、胸元のRマークは同じロケット団の証であり、アテナ自身が青年の事をよく知っていた。
「アポロ……何でここに?」
「何でとは心外ですね、助ける為に忍び込んだと言うのに」
そう、青年はアテナと同じロケット団幹部の一人、ボスの側近中の側近、幹部の中で最もボスに近い権限を持つ存在、名をアポロと言う。
アポロはどこで手に入れたのか檻の鍵を開けてアテナのポケモン達が入っているモンスターボールを投げて寄越した。
「貴女ともあろう人が逮捕されるとは、随分と大きなミスですね」
「ふん……ボスの指示かい?」
「ええ、幹部である貴女が捕まるのは不味いとの事で」
檻から出てアテナはアポロと共に彼が侵入に使ったルートから警察署の外に出ると、用意されていた車に乗り込んだ。
アポロも一緒に乗り込むと、外で待機していた下っ端構成員がドアを閉めて運転席に座り、ゆっくり走り出す。
「それで、貴女が捕まるなんて、何があったんですか?」
「チッ……忌々しい餓鬼に負けたのよ」
「ほう? 我がロケット団の幹部であるアテナさんが負けたと、それも子供に?」
「ふん、餓鬼の癖に少しはやるようだけど、あたくしが本当の本気なら負ける訳が無いわ」
「まぁ、普段はフルメンバーを連れていないので、確かに本気ではないでしょうけど……それでも気になりますね、その子供」
ロケット団の幹部であるアテナを倒す程の実力なら、是非ともロケット団に勧誘したいものだと、アポロは零すが、アテナはそれを嘲笑うように否定した。
「あの餓鬼、あたくし達の理念を鼻で哂ったわ。絶対に勧誘してもYESとは言わないでしょうね」
「ほう」
ならば、組織の邪魔でしかないと判断して、早急に摘み取るのが一番だろうか。そう考えたアポロは車内にある電話機から何処かに電話を掛け始めた。
「アポロです。ええ、アテナさんを回収して……ええ、ご報告したい事もあるので、一度トキワシティに戻ります……ええ、ではそのように」
アポロの電話を聞き流しながら、アテナは車窓から見える景色の流れを眺めつつアポロに見えない所で拳を握り締めていた。
その拳は屈辱と怒りに震え、自分を一度はどん底に叩き落としたソラタに対する憎悪が膨れ上がっている。
「覚えてなさい……今度会った時は、絶対に容赦しないわ」
次回はクチバシティ入りです。ですがジム戦の前に思わぬ出会いと再会が。