ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
色々と忙しくて執筆時間が中々取れなくなってきたなぁ。
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第16話
「妖精の風」
「Goライチュウ! “10まんボルト”だ!!」
「イーブイ! “シャドーボール”!!」
3つ目のバッジを手に入れる為、クチバジムに挑戦していたソラタは、ジムリーダーのマチスとのバトルを行っていた。
既に2体のポケモンを倒して、残るはマチスのエースポケモン、ライチュウを倒すのみとなったのだ。
そして、現在マチスのライチュウが放った“10まんボルト”とソラタのイーブイが放った“シャドーボール”が中間でぶつかり、爆発する。
「畳み掛けろ! “スピードスター”だ!!」
「But! やらせねぇぜ!! ライチュウ! 地面に“メガトンパンチ”!!」
マチスの指示でライチュウが地面に“メガトンパンチ”を放つと、割れた地面の一部がライチュウの目の前に壁の様に立ち上がった。
その壁は見事に盾としての役割を果たし、イーブイの“スピードスター”を受け止めてライチュウには一切のダメージが入らない。
「飛び上がれライチュウ! “かみなり”だ!!」
「“でんこうせっか”!!」
壁となった地面の一部を利用して飛び上がったライチュウが“かみなり”を放つも、イーブイは持前の素早さを生かした“でんこうせっか”で回避、ライチュウが飛び上がるのに使った地面の一部を利用して自身も飛び上がる。
「What!?」
「そのまま至近距離から“シャドーボール”!!」
落下中のライチュウに飛び上がったイーブイが一気に迫り、至近距離からの“シャドーボール”が直撃、しかしライチュウもマチスも伊達でジムリーダーを、そのエースポケモンをやっていない。
「ライチュウ! “ちきゅうなげ”!!」
「ラーイ!!」
「ぶい!?」
「チュウウウウ!!!」
空中でイーブイはライチュウに掴まれ、そのまま背負い投げのような形で地面へ投げ飛ばされてしまう。
地面に着地したライチュウと地面に叩き付けられたイーブイ、互いに地面には戻ってきて、再び睨み合った。
「Heyソラタ、中々のGutsを見せてくれるじゃないか」
「どうも」
「ここからは俺もライチュウも本気で行く、覚悟は良いな?」
「望むところだ!」
マチスもライチュウも、目つきが変わった。今までは平均的なバッジ2個獲得トレーナー相手のレベルで戦っていたのだろうが、恐らく今からそれより何段か上のレベルに合わせて戦ってくる筈だ。
だが、ソラタもイーブイも臆した様子は無い。むしろ燃えてすらいた。すると、イーブイは首筋から透明の触手のようなものが再び伸びて、ソラタの手首に巻きつけて来る。
「イーブイ」
「ぶい」
「勝つぞ」
「いぶい!」
ただ一言だけの指示だったが、イーブイにとって自身のトレーナーであり兄でもあるソラタからの指示は、それだけで十分だ。
だから、イーブイは勝つという指示に確実に応えるために、その身体を光で包み込むのだった。
「What!?」
「イーブイ!?」
ソラタの手首に巻かれた触手が離れ、光に包まれたイーブイの下へ戻る。だが、その触手は消える事なくリボンのように伸び、全身が大きくしなやかなフォルムへと成長していく。
そして、光が消えた時、そこに居たのはイーブイではなく、ピンクと白のカラーが特徴の愛らしいポケモンの姿だった。
「フィア!!」
「進化した……ニンフィア」
「Unbelievable!! ニンフィアだって!? まさかカントーで!?」
マチスの驚きも無理は無い。カントーでイーブイの進化系と言えばブースター、シャワーズ、サンダースのいずれか、偶にブラッキーやエーフィに進化させる者も居るが、大半が3匹のどれかだ。
勿論マチスはジムリーダーとしてポケモンの知識は豊富だ。それ故にイーブイの進化系が先の5匹以外にも居る事は知っているが、カントーで見た事は一度だって無い。
「ニンフィア……行けるな?」
「フィイア」
「よし!」
すると、ニンフィアの周りに風が吹き出した。ピンク色に染まった空気が風となって吹き出すこれは、間違いなくニンフィアの起こしているもの。
「! ニンフィア! “ようせいのかぜ”!!」
「フィアアアアアア!!!」
ニンフィアの周囲を漂っていたピンク色の風が突風となり、ライチュウに襲い掛かる。対するマチスはイーブイがニンフィアに進化した事に驚きはしたものの、直ぐに冷静になってライチュウに指示を出した。
「構うな! そのまま突っ込んで“メガトンパンチ”!!」
「ラ~イ!!」
“ようせいのかぜ”によってダメージを負うのも構わず、風の中を突っ切ってライチュウはニンフィアに迫る。
しかし、ソラタもニンフィアもライチュウとマチスの戦法に驚きはしない。寧ろ冷静に状況を見ていた。
「“でんこうせっか”!」
「フィア!」
ライチュウの拳を回避したニンフィアは、そのまま当て身をするという愚行は犯さない。ソラタのピカチュウもそうだが、ライチュウなら特性“せいでんき”を持っている可能性があるからこそ、ニンフィアは絶対にライチュウ相手に近接戦は行わず、ライチュウの周りを走り回った。
「“シャドーボール”!!」
「“10まんボルト”!!」
ニンフィアの“シャドーボール”はライチュウの“10まんボルト”によって相殺され、爆発して煙が2匹の間に立ち込める。
これで互いに相手を見失うものと思われたが、残念ながらニンフィアはリザードがヒトカゲだった頃から“えんまく”による視界不良状況での戦闘訓練を受けているのだ。この程度の煙、ニンフィアにとって何ら障害足り得ない。
「連続で“シャドーボール”!!」
「フィイイアアア!!」
「ラ、ライイイイ!?」
「ライチュウ!?」
煙の中から飛んで来る無数の“シャドーボール”がライチュウに直撃、吹き飛ばされて倒れた所でニンフィアが煙の中から飛び出した。
「トドメだ!! “ようせいのかぜ”!!」
最後の一撃がライチュウに直撃、倒れたまま“ようせいのかぜ”を受けたライチュウはマチスの足元まで吹き飛ばされ、目を回してしまった。
「ライチュウ、戦闘不能! ニンフィアの勝ち!! よって勝者、マサラタウンのソラタ!!」
ゴングが鳴り響き、ソラタの勝利が高らかに宣言された。
見事ライチュウに勝利したニンフィアはソラタの方へ振り返り、そのまま走ってソラタの胸に飛び込む。
「おっと……勝ったな、ニンフィア」
「フィア!」
愛らしい妹分が若干大きくなって重くなったが、それでも抱き止めて頭を撫でてやれば、嬉しそうに鳴いて手に頭を摺り寄せながらリボン状の触手を手に巻き付けて来る。
「Hey boy……いや、ソラタ」
「マチスさん……」
「great なバトルだったぜ、最高に熱くなった」
「ありがとうございます」
「コイツは、great なバトルと見事なGutsを見せたソラタへ贈るクチバジム制覇の証、オレンジバッジだ、受け取ってくれ」
マチスが差し出したオレンジバッジを受け取ると、ソラタは大事そうに一度だけ握り締め、バッジケースに収めて鞄に仕舞う。
足元ではニンフィアがその作業を嬉しそうに見つめていて、マチスはニンフィアとソラタの間にある絆の強さを、その光景だけで見て取れた気がした。
「本当に熱いバトルだったぜ、新人トレーナー相手にこんな熱いバトルをしたのはソラタで二人目だ」
「二人目……?」
「ああ、2日前にジム戦をしたGirlの事なんだが、ソラタと同じイイ瞳をしていて、そして熱いバトルを見せてくれた」
「へぇ……新人だったんですよね?」
「間違いないぜ、カントーじゃなくジョウト出身だろうけどな。マグマラシを連れていた」
マグマラシ、ジョウト御三家の一匹、ヒノアラシの進化系を連れていたという事は間違いなくジョウト出身の新人トレーナーなのだろう。
今の時期だとジョウトリーグは暫く先になるから、カントーリーグ出場を目指してカントーに来たといったところか。
「このまま旅をしていれば、いつか出会う日が来るかもだぜ……何となくお前さんと、あのGirlは似ている気がするからな」
「似ている?」
「ああ、瞳といい、バトルスタイルといい、連れていたポケモンといい、色々と似ている所が多い」
少し興味が沸いた。マグマラシを連れたトレーナーで、2日前にジム戦を終えたのであれば既に次のジム目指して出発しているだろう。
ソラタは偶然知る事になったライバルになるかもしれない存在の情報に、闘争心が刺激されたのか礼を言ってニンフィアと共にジムを去る。
残されたマチスは手を振って見送ると、ふと先ほどまでのバトルと、2日前のバトルを思い返した。
「そういえば、似てると言えばバトルしたポケモンのタイプも同じだったな……マグマラシ、エレキッド、エーフィ。しかもライチュウとバトルしてる最中にイーブイからエーフィに進化させてたから、全く同じだ」
いつか、二人が出会ってバトルをする日が来るかもしれない。その時が、ポケモンリーグの舞台である事を願いたいものだ。
きっと、このまま成長していけば二人とも、凄いトレーナーになるとマチスは確信しているのだから。
次回はソラタ、幼馴染と再会。
さて、3人いる同期の内、誰と再会するのか。