ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
第1話 「新人トレーナーソラタ! ヒトカゲ、君に決めた!!」
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第1話
「新人トレーナーソラタ! ヒトカゲ、君に決めた!!」
ソラタ旅立ちの日の朝、昨夜は早めに寝たお陰か時間的にも余裕を持って起きる事が出来た。
何日も前から今日という日の為に旅の荷造りはしていたので、部屋の片隅に置かれたリュックには旅に必要な物を全て入れてある。後はパジャマから着替えるだけだ。
今日の為に母が買ってくれたジーパンとベルト、白のTシャツと紺色のパーカー、黒の指ぬきグローブ、これらに着替えて足元にすり寄ってきたイーブイをモンスターボールに入れると、そのボールを腰のベルトに備え付けられたホルダーにはめ込んだ。
「よし」
この部屋とも暫くお別れかと思い部屋を見渡した時、起きた時には気付かなかったが、枕元に箱が置いてあるのに気付いた。
寝る前には無かったソレの蓋を開けてみると、中には真新しいスニーカーが入っていた。白地に赤と青のラインが入った赤い紐のスニーカー、前にテレビでやっていたCMで新商品として紹介されていた、内心欲しいと思っていた物。
「これ……そっか、母さんが」
きっと、母が買ってくれたのだろう。旅立つ息子にせめてもの贈り物として。
新品のスニーカーを持って玄関に行くと、まだ履いた事の無い真新しさを感じる固さが若干履き心地が悪く感じるものの、それも直ぐに気にならなくなるだろうと無視してリュックを背負う。
「ソラタ」
「母さん……」
スニーカーの紐を調整していると、後ろから声が掛けられ、振り返れば母が立っていた。まだパジャマ姿だという事は、起きたばかりなのだろう。
「オーキド研究所にお見送り、行く?」
「いや……ここで十分だよ」
ソラタを17歳で出産した母はまだ27歳と若い。更に童顔な為、見た目は10代後半でも通用するような若々しい母が、心配そうな表情を浮かべてソラタを見つめる。
若干涙が浮かんでいるのを見ると、息子としては逆に心配になってしまうので勘弁して欲しいが、靴紐の調整を終えて立ち上がったソラタは、頭一つ分背が高い母の頭に手を置いた。
「スニーカー、ありがとう母さん」
「ソラタ……」
「きっと……母さんが夢見たチャンピオンに、なって見せるから」
「うん……ソラタなら、きっと立派なチャンピオンになれるって信じてるね」
母は現役トレーナー時代、カントーポケモンリーグとジョウトリーグの出場経験があったが、いずれも決勝トーナメントで敗退してチャンピオンズリーグに出場出来ずに引退してしまった。
子供の頃から夢見ていたチャンピオンになるという目標、それを叶えられなかった母の為に、ソラタは息子である自分がチャンピオンになると、この旅に出るにあたって両親の目の前で誓ったのだ。
「じゃあ母さん……いってきます」
「うん、いってらっしゃい……頑張ってね、ソラタ」
最後まで涙目だった母の頬にキスをして家を出たソラタは気障だったかなと反省しつつ、オーキド研究所へ向かって歩き出した。
まだ早朝の道は、ポッポが飛び回り、コラッタが走り回るくらい静かで、澄んだ空気を肺一杯に吸い込んでみれば、マサラタウンという田舎だからこその美味しい空気を感じられる。
「お、流石に近所ってだけあって本当に近いな」
オーキド研究所は自宅から割とご近所にある。もう小高い立地に立つオーキド研究所が見えて来た。
門を通って石階段を上った先にある建物、その玄関前に立ったソラタはインターフォンを押す。朝早い時間ではあるが、オーキド博士は起きているだろうか。
「ほいほいっと、おぉ! ソラタ君かね!」
玄関を開けて出て来た白衣を着た初老の男性、彼こそがカントー地方最大どころか世界的な知名度を誇るポケモン研究者、ポケモン研究の第一人者にして世界初のポケモン図鑑という道具を作成したオーキド・ユキナリ博士だった。
「早いのうソラタ、君が一番乗りじゃよ」
どうやら他に来た者は居ないらしく、一番乗りのソラタは好きにポケモンを選べる立場を得た。
早速中に案内してもらい、オーキド博士の研究室に入ると、中央の台に3つのモンスターボールが置かれていた。
それぞれボールに炎、草、水のマークが入っている事から、どれがどのポケモンの入ったボールが判りやすい。
「さあ、この三匹の中から好きなポケモンを選ぶと良い。炎タイプのヒトカゲ、草タイプのフシギダネ、水タイプのゼニガメ、ソラタが選ぶのはどのポケモンかな?」
「……決まってます。ずっと前から、最初に貰うポケモンは決めてました」
迷わずソラタが手に取ったのは炎のマークが入ったモンスターボール、ボールを開ければ中から光と共に現れるのはオレンジ色の体躯にトカゲのようなフォルム、尻尾の先に炎が燃え上がるカントー地方御三家の一角、ヒトカゲだった。
「ヒトカゲ、俺のパートナーになってくれ」
「カゲ!」
小さな手を上げて笑顔を見せたヒトカゲに満足そうに頷いたソラタは、そっとヒトカゲを抱き上げた。
炎タイプ特有の高い体温を感じながらヒトカゲの頭を撫でてやれば、彼は笑顔で抱きついてくる。
「うむ、ヒトカゲもソラタに懐いたようだの」
「それなら良かったです」
「ではワシからもう二つ、ソラタに渡すものがある」
そう言ってオーキド博士が取り出したのはモンスターボールが6個とポケモン図鑑だった。
転生者であるソラタにとっては、本当に懐かしいデザインのポケモン図鑑に少々感動しつつ受け取ると、トレーナーカード代わりにもなるという図鑑にソラタを所有トレーナーとして登録する。
「これでこの図鑑はソラタの物じゃ、今後はポケモンセンターで宿泊する際などにはジョーイさんに図鑑を渡して、登録情報をスキャンして貰えば無料で宿泊可能となるから、有効に活用してくれ」
他にもフレンドリィショップで買い物する際にも図鑑をスキャンして貰えば一般人……つまり非トレーナー価格ではなく、トレーナー価格で道具を買う事が出来るなど、トレーナーカードで出来る事の殆どをポケモン図鑑が担ってくれるという。
そして、何より大事なのは、図鑑の登録情報を使ってポケモンセンターからポケモンリーグへの出場エントリーも出来るとの事だ。
勿論、エントリーした場合はジムバッチをリーグ大会開催までに集めなければ、エントリー無効となるので注意が必要なのだが。
「さあ、これで渡すべきものは全て渡した。ソラタよ、いよいよ旅立ちの時じゃ」
「はい!」
ヒトカゲをモンスターボールに戻して腰ベルトのホルダーに取り付けると、図鑑をリュックのポケットに入れる。
空のモンスターボールを4つ腰に取り付け、残る2個はリュックの中へ。これで全ての準備が完了だ。
「じゃあ、オーキド博士……行ってきます」
「うむ、頑張るんじゃぞ」
オーキド博士に見送られ、研究所を出たソラタは最初の目的地、トキワシティを目指して歩き出した。
トキワシティにはトキワジムがあるが、前世の記憶だと一番最後のジムがトキワジムだった筈だから、トキワシティは最初の宿泊地として立ち寄るだけになるだろう。
だから、目指すはカントー地方最初のジム、ニビシティにあるニビジムだ。岩タイプのジムだと記憶しているので、ヒトカゲとイーブイだけでは突破は難しいと考えているものの、対策は既に考えている。
だから、ジム対策をしながら、最終的なリーグ出場の為のパーティーメンバーを集める事に、集中するべきだと判断した。
「とは言え、アイツはカントーに生息してないからなぁ……クチバシティとかタマムシシティ辺りで持ってるトレーナーが居れば交換とか出来れば良いんだけど……シンオウ地方から来たトレーナーで、アイツを持っていて交換してくれるトレーナーが居るかどうか」
割と珍しい部類に入るポケモンなので、持っているかどうか。シンオウじゃなくとも、欲しているポケモンの生息地で考えるのならカロス地方やアローラ地方から来たトレーナーでも良いのだが。
「交換用に、ポケモンは多めに捕獲しておくか」
道中で図鑑埋めがてらポケモンを捕まえる事も忘れず、将来的なベストパーティーの完成という目標と、リーグ出場、その先に待つチャンピオンズリーグへの出場を目指し、新人トレーナー・ソラタの旅が今、始まるのだった。
絶望の言葉……皆さん、明日は月曜日ですよ!
死ぬわ。