ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第19話
「互角」
ポケモンリーグに参加する為、次のジムがあるタマムシシティを目指して旅をしていたソラタは、立ち寄った町のポケモンセンターで出会った少女、シズホとのバトルをしていた。
リザードとマグマラシ、同じ炎タイプであり、カントーとジョウト、それぞれの地方における初心者用ポケモンの進化系同士の戦いは一進一退、互角の戦いをしている。
「マグマラシ、“かえんほうしゃ”です!!」
「“りゅうのはどう”だ!!」
現在も、ボロボロになったリザードとマグマラシの“りゅうのはどう”と“かえんほうしゃ”がフィールド中央でぶつかり、爆発する。
技の威力は互角、実力も互角の2匹を指示するトレーナー二人の実力も互角、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況だ。
「“スピードスター”!!」
「“かみなりパンチ”!!」
マグマラシの“スピードスター”をリザードが“かみなりパンチ”で迎撃しながら走る。マグマラシとの距離を詰めて一撃入れる為、その腕の電流がより強くなった所で、マグマラシの目が光った。
「ジャンプです!」
「マァグッ!!」
シズホの指示と共に飛び上がったマグマラシはギリギリでリザードの“かみなりパンチ”を回避、だが同時に空中ではマグマラシに回避する術は無い。
「リザード! 新技いくぞ!! 全力で“フレアドライブ”だ!!」
「リ、ザァアア!!」
「マグマラシ!! こちらも全力の“フレアドライブ”です!!」
「マァグゥウウウ!!」
リザードとマグマラシ、お互い同時に放った全力の“フレアドライブ”がぶつかり合う。互いの体力は残り少なくなった。
空中でぶつかったまま“フレアドライブ”を維持する2匹は、“もうか”が発動して青白い炎と共に更に強く激しく燃え上がり、最後に爆発と共に煙の中へ消える。
「リザード!!」
「マグマラシ!!」
煙が晴れて、フィールドに立つリザードとマグマラシ、一歩も動かず、肩で息をしながらも互いを睨み合う2匹、しかし体力の限界なのか同時に倒れてしまった。
「……引き、分けか」
「みたい、ですね」
目を回して倒れるリザードとマグマラシをモンスターボールに戻したソラタとシズホは互いに見合うと、苦笑しつつ握手をした。
ソラタもシズホも、同年代のトレーナーと戦って負けた事も引き分けた事も無かった。ジム戦も順調に勝利を重ねてきたからこそ、こうして同年代とのバトルで引き分けたのは初めての経験だ。
「なんだろう……凄い、悔しいな」
「はい、私もです」
「次は、絶対に勝つ」
「負けませんよ、絶対に」
シロナに負けた時は、相手が現役のチャンピオンだという事もあって遥かな格上、負けて当然だったから悔しいという感情は湧いて来なかった。
だが、このバトルで引き分けた時に感じた悔しいという気持ち、それで確信した。互いに、最高のライバルとなり得る存在だと。これから先、長い付き合いになると。
「俺は、次はタマムシシティを目指す」
「私はヤマブキシティです」
4つ目のバッジはソラタはレインボーバッジを、シズホはゴールドバッジを目指しているようで、明日には別れる事になる。
同じ実力のライバルとなった二人は、まだまだ話したい事が沢山あった。
「腹減ったな、リザードとマグマラシをジョーイさんに預けて飯にしようぜ」
「ご一緒しても?」
「勿論」
その晩、ソラタとシズホは様々な話をした。最初のポケモンを貰った時の事、お互いのイーブイについて、これまでの旅の話、そして何より己の夢について。
特に、お互いの夢については盛り上がった。何せソラタもシズホも、チャンピオンになる事が夢であり、その為にセキエイ大会を目指しているのだから。
「ソラタさんは何故チャンピオンを目指しているんですか?」
「俺の母さんが、昔チャンピオンを目指してたんだけど、夢半ばで挫折してな……だから息子の俺が母さんの夢だったチャンピオンになるんだって、ずっと思ってた。そういうシズホは?」
「私も同じようなものですね。私の場合は祖父ですが、祖父が叶えられなかった夢を叶える為に」
つまり、お互いにチャンピオンになるという夢に対して、誰にも譲れない想いが込められているという事だ。
ならばこそ、ソラタとシズホはいつかリーグで再び戦う事になるだろう。そしてその舞台は、ポケモンリーグ・セキエイ大会の場。
「そういえば、俺ってジョウトには行った事無いんだよな……ジョウトってどんな所?」
「カントーとそこまで違いはありませんよ。少々言葉が訛っている地域はありますが、基本的に中央ほど都会で、それ以外は割と田舎ですし」
「へぇ……ジョウトならエンジュシティには行ってみたいんだよなぁ、焼けた塔を見てみたい」
「あそこですか……」
どうやらシズホはソラタが口にした焼けた塔について実際に見たことがあるらしい。ワカバタウン出身と言っても、一度もワカバタウンから出た事が無い訳ではないようだ。
当然か。ソラタとて幼い頃は家族旅行で同じカントーのグレンタウンの温泉やセキチクシティのサファリゾーン、更にはアローラやイッシュなどにも行った事があるのだから。
「焼けた塔は確かに歴史を感じる建物でしたが、あそこで死んだポケモンが3匹もいるという話がある所為か、少し空気が重く感じるんです」
「それって確かジョウトの伝説の三聖獣、スイクン、エンテイ、ライコウの?」
「ええ、そうです。あの3匹は焼けた塔で死んだポケモンにホウオウが命を与えて復活したポケモンだと伝えられていますね」
そういえば、原作ゲームで焼けた塔はカネの塔と呼ばれる塔で、ホウオウが降り立つスズの塔とは別のルギアが降り立っていた場所だった筈だが、この世界の元となったアニメでは焼けた塔は元々スズの塔で、今のスズの塔は復元した物という設定だ。
「それにしてもソラタさん、ジョウトに来た事がないのに、随分お詳しいですね?」
「ああ、実は両親が現役トレーナーだった時代に、ジョウトも旅してた事があってね」
父も母も現役時代にジョウトも旅していて、エンジュシティにも当然だが行っている。その時に焼けた塔も見ているのだ。
それから、母はカントーとジョウトだけだったが、父は少なくともカントー、ジョウト、シンオウ、カロスを旅したことがあると聞いた。
「そうですか、他の地方のお話を……カロスのお話は羨ましいですね。私の両親はカロスには流石に行ったことが無いとの事で、聞けてもイッシュ地方やオーレ地方のお話くらいでした」
「オーレ地方!? それはまた珍しい……一度話を聞いてみたいなぁ」
ソラタも噂程度でしか知らないが、オーレ地方は野生のポケモンが殆ど居ない場所で、生息地が限られている砂漠に覆われた地だという話だ。
「私の母が若い頃……現役のトレーナーだった頃に行ったことがあるのだそうですよ」
「あんな砂漠しか無い地方に?」
「ええ、好奇心……らしいです」
「へ、へぇ~」
好奇心で行く所でもないような気がしないでもないが、そもそもシズホ達が生まれるよりも前の話なので、特に何も言う気は無かった。
ただ、随分とアクティブな母親だったのだな、と内心思っただけだ。
「こういうの、良いですね」
「?」
「いえ……ソラタさんは、凄く話しやすいと言いますか、同じ目線で何でも言えると言いますか」
「そっか……いや、それは俺も同じだな」
同い年の、同じ実力同士、シズホがソラタに対する感情はソラタがシズホに感じる感情と全く同じだろう。
互いに絶対負けたくない相手、対等の相手、人はそれをライバルと呼ぶのだ。
今日この日、互いを最大のライバルと認識した二人の出会いは、これが運命の出会いとなるのだった。
翌朝、既にヤマブキシティに向けて旅立ったシズホを見送ったソラタは自分もタマムシシティへ向かって歩き出した。
昨日、シズホとの会話は本当に有意義な時間だったし、同い年のライバルが出来たのは何よりの収穫だったと思う。
「さて……出てこいニンフィア」
「フィア!」
モンスターボールからニンフィアを出して一緒に歩き出した。
タマムシシティまでもう少し、タマムシジムを突破すれば残るジムは半分、ポケモンリーグの舞台でシズホと再会する日が、ポケモンリーグの舞台で昨日の決着を着ける時が待ち遠しい。
「強くなろうぜニンフィア、シズホに勝てなければ、チャンピオンになる事は出来ないんだから」
「フィ~ア」
そして決めた。強くなる為にも、次のタマムシジムで出すポケモンをどうするのか。その3匹のメンバーを。
「よ~し! 走るか!」
「フィア!」
ソラタとニンフィアは走り出した。気合を入れて、タマムシシティ目指して旅は続く。
ただ、走った事で気付かなかった。ソラタのリュックに入っているフカマルのタマゴが、震え、少しだけ光っていた事に。
次回はタマムシシティ到着、タマムシジムでの戦いになります。