ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第24話
「主人公サトシ」
ポケモンリーグに出場する為、旅を続けるソラタは、5つ目のジムがあるヤマブキシティを目指している最中だった。
ヤマブキシティまでもう少しという所に居たソラタだが、途中でフカマルの育成をしていた為に大分遅れてしまっている。
とは言え遅れた分の収穫はあった。フカマルを進化こそしていないものの、十分ジム戦に通用する程度には育てられたのだ。
「さて、ヤマブキシティまでもう少しだな」
先ほどまでフカマルの修行をしていたソラタはフカマルとリザードン、ニンフィアの入ったボールを腰のベルトに戻しつつ、地面に置いていたリュックを背負うと、タウンマップを取り出した。
「少し修行に時間を使いすぎたな……ヤマブキシティまで今日明日中に着くのは難しいか?」
ヤマブキシティまでの距離を計算しながら森の中を歩くソラタだったが、ふと近くから良い匂いがしてきた。
そう言えばそろそろ昼時間だなと思いつつ空腹感を覚えたソラタは、自然と足が匂いのする方角へ向かっている。
すると、少し開けた場所で昼食の用意をしている3人の少年少女の姿が見えて来た。
「……あれ?」
しかも、その内の二人には見覚えがあった。特徴的なツンツン頭の少年と、細目が特徴の青年、この二人は……。
「サトシ!? タケシさん!?」
「え? ……ソラタ!?」
「おお! ホントだ、ソラタじゃないか!」
間違いない。ソラタの幼馴染にして同期、ピカチュウをモンスターボールから出して連れている彼は、マサラタウンのサトシに、ニビジムのジムリーダータケシ。
すると、もう一人の少女は……。
「誰?」
「ああカスミ! 紹介するよ、こいつはソラタ、俺の幼馴染で、同じマサラタウン出身の同期なんだ!」
「ソラタです。友人がお世話になっているようで」
「あ、えっと、ハナダジムのカスミよ。よろしくね」
ハナダジムのカスミ。そう、彼女こそハナダジムのジムリーダーの一人、水タイプのスペシャリスト、カスミだった。
「ソラタ、こんな所で何してたんだ?」
「俺はヤマブキジムに備えてポケモン達の修行です……ってかタケシさん、ジムはどうしたんです?」
「ああ、ジムは親父が帰って来たから親父と弟に任せてサトシと一緒に旅をしてるんだ」
何でも、タケシは夢だったポケモンブリーダーを目指してサトシと共に旅をする道を選んだ為、ジムリーダー資格こそ返上していないものの、ジムリーダーの座を降りたらしい。
「なぁなぁソラタ! ソラタはバッジ何個ゲットしたんだ? 俺は4つゲットしたんだぜ!」
「お! 奇遇だな、俺も4つ。ヤマブキジムで5つ目かな」
サトシも次のタマムシジムで5つ目との事なので、ペースから言えばソラタの方が少し早いと言った所か。
恐らく、スタートはソラタが一番だったが、現時点の一番はシゲルで、次点でソラタ、サトシなのだろう。
「そう言えばサトシはトワコに会ったか?」
「トワコに? 俺は会ってないけど、ソラタは会ったのか?」
「俺も会ってない。ちょっと前に会ったシゲルもトワコには会ってないそうだ」
オーキド博士に以前、それとなくソラタ以外の同期の現状を電話で聞いた事があるが、トワコはいつの間にか誰よりも遅れてしまっているらしい。
マサラタウンを出発したのは2番目だったのに、今ではサトシにも抜かれているのだとか。
「へぇ、俺っていつの間にかトワコの事、抜いてたんだ」
「らしいよ、あいつはクチバジム突破して以降はまだ4つ目で苦戦してるって聞いた」
ソラタ、シゲル、サトシの共通の幼馴染にして最後の同期、トワコと呼ばれる少女はオーキド研究所でフシギダネを貰って2番目に旅立ったのだが、今では一番遅れている。
クチバジムまでは問題なく突破出来ていたのだが、4つ目のジムにタマムシジムを選びソラタより先に挑戦したのだが敗北、今はセキチクシティ行ってセキチクジムで敗北したばかりとの事だ。
「でも意外だよな」
「何が?」
「トワコってソラタやシゲル程じゃなかったけど、俺よりスクールの成績良かっただろ? なのに俺より遅れてるってのがさ」
「あ~……もしかしてサトシ、知らないのか? あいつの成績、金で買ったものだぞ?」
「え!?」
有名な話だ。トワコという少女の実家はマサラタウンという田舎ではオーキド家に次ぐ資産家の家だ。
所謂金持ちの家のお嬢様で、スクールの成績も金で買収して得た成績だ。
とは言ってもマサラタウンではトワコの実家より格上であるオーキド家出身の2位シゲルと、一般家庭だがシゲルの上を行っていた1位ソラタという金の力で持ってしても追い越せない壁が居たので、スクールの3位という成績に納まっていたのだが。
「まぁ、ここに居ない奴の話なんてしても仕方がないだろ。お前だってアイツの話、進んでしたい訳じゃないだろうし」
「ま、まあな」
兎も角、サトシとタケシの好意でソラタも一緒に昼食をという話になった。
ポケモン達は既に食事を済ませてあるからソラタの分だけ頼んで用意してもらい、サトシの隣に腰かけて4人で食事を摂る。
「それにしても、あなたがサクラ姉さんの言ってたギャラドス使いなのね」
「ああ、サクラさんね。ハナダジムで俺が戦ったジムリーダーだ」
「サクラ姉さん、アタシ達姉妹の中で一番強いのに、そんな姉さんを倒したって事はソラタ、凄く強いんだ」
「……それは、どうだろう? 確かに今のところジム戦では負け無しだけど、これまでの旅で勝てなかったことが無いわけじゃないし」
実際、当たり前の話だがシロナに負けているし、同い年のシズホとは引き分けだった。これまでの旅のバトルでソラタは決して負け無しだった訳ではない。
「少なくとも俺より強い人なんて大勢いるし、同年代だと俺と同等の奴もいる。自分が強いなんて自惚れるつもりは無いよ」
トレーナーとして自惚れてしまったが最後、それ以降の成長はあり得ない。ソラタ自身はそう思っているし、実際そういったトレーナーを父の仕事の関係で何人も見てきた。
自惚れは人もポケモンも弱くする。チャンピオンを目指しているからこそ、絶対に自惚れてはならないと、戒めているのだ。
「へぇ~……サトシ、アンタに足りないのはこういう所なんじゃないの?」
「な、なんだよ?」
「アンタには謙虚さってものが無いって言ってんのよ。少しはソラタを見習った方が良いんじゃない?」
カスミの言葉にサトシが反論しているが、正直サトシに勝ち目は無い。この頃のサトシは、どちらかと言うと生意気というか、何というか、年上に対しても敬語を使わない、謙虚さが無いなど色々と性格的に問題があったのだ。
後々に改善されるとは言え、今はまだ旅立ったばかりの頃のサトシだ。礼儀が身につくのだって暫く先になるだろう。
「そうだ! ソラタ、バトルしようぜ!」
「……突然だな」
「昔からさ、俺はソラタにもシゲルにもトワコにも、勉強で勝てなかったけど、ポケモンバトルなら負けないって思ってたんだ」
「ふむ」
「だから俺とバトルだ」
「いや、説明になってないんだが……まぁ、一匹だけのバトルならな。俺もそろそろ先に進まないとだから、時間が無い」
「ああ!」
ソラタがバトルを了承すると、サトシはさっさと食事を平らげて席を立った。呆れたバトル脳だなと思いつつ、ソラタも食事を終えると、タケシに礼を言って立ち上がり、サトシの所へ向かう。
サトシとソラタが少し開けた場所で向かい合うと、中央の審判となる位置にタケシとカスミが立ち、タケシが審判を務める事になった。
「よしピカチュウ、君に決めた!」
「ピカッ!」
案の定、サトシは一番の相棒であるピカチュウで来た。これに対してソラタが選んだのは……。
「行け、ピカチュウ!」
「ピカッ!」
ソラタが投げたモンスターボールから出てきたのは、サトシの♂のピカチュウとは違う、♀のピカチュウだ。
「ピカチュウ!? ソラタもピカチュウをゲットしてたのか!」
「ああ、トキワの森でな。しかも、お前のピカチュウとは違って♀のピカチュウだ」
「え? 俺のピカチュウって♂なのか?」
「お前……オーキド博士から教わっただろ、ポケモンの性別について。ピカチュウの性別は尻尾で判別するって教科書に書いてなかったか?」
「え、え~っと……」
覚えて無いらしい。
「タケシさん、とりあえずお願いします」
「わかった。これより、ソラタ対サトシのバトルを始める! 使用ポケモンは互いに1体のみ! どちらかのピカチュウが戦闘不能になった時点でバトルは終了だ! 良いな?」
「ああ!」
「ええ」
サトシとソラタが頷いて、両者のピカチュウも戦意を高めたのを確認したタケシは腕を頭上へと上げて……。
「それじゃあ……バトル、開始!!」
振り下ろした。
「先手必勝だピカチュウ! “10まんボルト”!!」
「迎え撃て! “10まんボルト”!!」
「「ピ~カッチュウウウウウ!!!」」
ピカチュウ同士の“10まんボルト”がぶつかり、中央で爆発。煙が2匹を包むものの、直ぐに煙は晴れた。
「やるなソラタ、ピカチュウ! “でんこうせっか”だ!」
「ピカッ!」
サトシのピカチュウが“でんこうせっか”の素早い動きでソラタのピカチュウへ突撃して来るが、ソラタもソラタのピカチュウも冷静にサトシのピカチュウの動きを見ている。
はっきり言って、サトシのピカチュウの動きはソラタの手持ち最速を誇るニンフィアには及ばない。
「“アイアンテール”」
「チュ~アピカッ!!」
「ピカアア!?」
「ピカチュウ!?」
“でんこうせっか”で突っ込んできたピカチュウに、鋼鉄と化したソラタのピカチュウの尻尾が叩きこまれ、逆に吹き飛ばされてしまう。
「“アイアンテール”!? カントーの新人トレーナーが鋼タイプの技を知ってるなんて!!」
「ソラタは最初から知ってたようだな、俺とのジム戦でも鋼タイプの技をポケモンに仕込んでいた」
ソラタのピカチュウが“アイアンテール”を使った事にギャラリーであるカスミが驚愕している。
しかし、サトシは“アイアンテール”が何なのか理解出来ていないようで、疑問符を浮かべていた。
「あ、あいあんてーる? ってなんだ?」
「サトシ、ポケモンのタイプは初等スクールで習ったよな?」
「ああ、炎、草、水、電気、岩、地面、毒、飛行、ゴースト、ノーマル、ドラゴン、氷、虫、格闘、エスパーだよな? 基本だぜ」
「そうだな、カントーのスクールだとそれしか教えてないんだよな。ポケモンのタイプは昔ならソレが正解だったが、今は更に発見されているんだ。今の“アイアンテール”って技は鋼タイプの技だ」
「鋼タイプ!? そんなタイプが居るのか!?」
「お前にわかるポケモンだと……コイルとかレアコイルが電気と鋼の複合タイプだな」
鋼タイプについての講座はとりあえず今後タケシに任せるとして、今はバトル中だ。
“アイアンテール”で吹き飛ばされたサトシのピカチュウが既に立ち上がって構えているので、バトルを再開する。
「ピカチュウ! “こうそくいどう”だ!」
「ピィカ!」
「ほう?」
サトシのピカチュウが先ほどの“でんこうせっか”以上の速度で走り出した。流石にこれは速いなと評価しながらソラタは自身のピカチュウへ目を向ける。
すると、ピカチュウもソラタの方へ振り返り、目を合わせて小さく頷いて返した。
「よし、連続で“エレキネット”だ!!」
「ピ~カチュウピカ!!」
「な、なんだ!?」
ソラタのピカチュウが放った無数のエレキネットがフィールドに撒かれ、“こうそくいどう”で走り回るピカチュウがその内の一つに捕らえられてしまった。
「ピカチュウ!?」
「ピ、ピカピ~」
「トドメだ、“あなをほる”!」
最後に、ソラタのピカチュウが“あなをほる”で地中に潜り、“エレキネット”に囚われて動けないサトシのピカチュウを真下から突き上げた。
「チャア~」
「サトシのピカチュウ、戦闘不能! ソラタのピカチュウの勝ち!」
サトシのピカチュウが目を回して倒れたのを確認したタケシが、ソラタのピカチュウの勝利を宣言。
サトシは慌てて倒れたピカチュウの所へ走り寄り、優しく抱き上げていた。
「大丈夫か? ピカチュウ」
「ピ、ピカ」
「よかったぁ」
「大丈夫そうか?」
「あ、ソラタ……」
自身のピカチュウをモンスターボールに戻したソラタがサトシとピカチュウの所へ歩み寄ると、サトシのピカチュウは特に問題無さそうに手を挙げてくれた。
「大丈夫みたいだな」
「ああ、サンキューなソラタ。今回は俺の負けだ」
「まぁ、今回は俺が勝ったけど……サトシのピカチュウはまだまだ伸びしろが大きいな」
「そうかな?」
「ああ、速度は鍛えればまだまだ速くなるだろうし、技の威力だってもっと強化する余地が残っている」
それと、今後はサトシのピカチュウも“アイアンテール”や“ボルテッカー”、“エレキボール”に“エレキネット”を覚える事になるだろうから、本当に先が楽しみだ。
「今のバトルで俺のピカチュウが使った“アイアンテール”はお前のピカチュウにも覚えさせて損は無いと思うぞ? 苦手な地面タイプ相手でも、岩タイプを複合してる相手であれば“アイアンテール”が十分な武器になるからな」
「そっか! ならピカチュウ、早速今度から“アイアンテール”の練習だな!」
「ピッカ!」
地面タイプと岩タイプの複合は割とよくある。イワーク、イシツブテ、ゴローン、ゴローニャ、カントーだとこの辺りが代表各だが、いずれも岩と地面の複合だ。
ニドキングやニドクインといった地面タイプと毒タイプの複合には意味が無いが、“アイアンテール”自体はピカチュウに覚えさせる価値が十分ある。
それに、今は話さなかったが対フェアリータイプにも“アイアンテール”は有効だ。だから、本当にピカチュウには覚えさせるべき技だとソラタ自身が思っているのだ。
「さて、そろそろ俺は行くよ」
「そっか……頑張れよソラタ、俺も頑張るからさ」
「ああ、お互いに頑張ろうぜ……次はポケモンリーグで戦おう」
「ああ!」
サトシと握手をして、それからサトシのピカチュウとも笑顔で握手を交わしたソラタはタケシ、カスミにも会釈をして旅立つ。
5つ目のジムがあるヤマブキシティが目前に迫り、ソラタもポケモン達も気合は十分。この日の夜、ついにソラタはヤマブキシティに到着したのだった。
今回登場したサトシは「バイバイバタフリー」の直前、まだバタフリーと別れる前のサトシです。
訂正、サトシはナツメとのジム戦を終えているので、バイバイバタフリーは過ぎてます。
失礼しました。