ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ヤマブキジム戦の続きです。
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第26話
「相棒」
ポケモンリーグ出場の為、旅を続けるソラタは、5つ目のジムであるヤマブキジムのジムリーダー・ナツメとのジム戦の真っ最中だった。
ナツメの一番手であるバリヤードはギャラドスで善戦するものの、途中でフカマルと交代したのだが、バリヤードの自爆とも言える巻き込み技でダブルノックダウン。
二番手のヤドランに再びギャラドスを繰り出すも、能力上昇をコピーされた上、サイコフィールドを張った上での“しねんのずつき”がクリーンヒットしてダウン。
ナツメにはまだ1体控えているポケモンが居る状況で、ソラタの出せるポケモンは1匹のみというピンチを迎えてしまったのだ。
「さあ、最後のポケモンを出しなさい」
「ええ……もう後が無い。お前に全てを託すぞ! 行け! ニンフィア!!」
「フィイア!」
ソラタの最後の1体はエースであるリザードンと並ぶパーティの2大柱、ソラタにとって一番の相棒たるニンフィアだ。
「ニンフィア……珍しい、カントーでニンフィアに進化させる人、まず居ない」
「でしょうね。でも、俺はたまたま進化させる方法を知っていたのと、最初からイーブイをニンフィアに進化させるつもりだったというだけの事です」
「そう、ならフェアリータイプの存在も確り勉強してる証拠」
ナツメの中でソラタに対する評価が上昇した。フカマルの存在から唯の新人トレーナーではないと思っていたが、イーブイをニンフィアに進化させるカントーの新人トレーナーは皆無だ。
だからこそ、ナツメの中ではソラタは新人トレーナーという括りを外す決め手となった。
「ヤドラン対ニンフィア、バトル開始!」
「ヤドラン、もう一度“ドわすれ”」
開幕早々にヤドランが再度“ドわすれ”をして特防を上げてきた。だが、特防を上げようとニンフィアの武器は上手く行けば上げた特防を下げられる。
「走れニンフィア! “でんこうせっか”!!」
「フィア!」
だが、勝負を焦れば後が無いソラタの敗北が決まる。先ずはニンフィアに走り回らせてヤドラン唯一の攻撃技となった“しねんのずつき”を警戒している事をアピールした。
更に、ヤドランが“サイコフィールド”をフィールドに張っている事も頭に入れて戦術を練りつつ次の一手に出る。
「“シャドーボール”だ!」
「回避」
素早さが上がっているだけあって、ヤドランは中々素早い動きで“シャドーボール”を回避しつつ、頭にサイコエネルギーを集中し始めた。
「来るぞ! 今度は連続で“シャドーボール”!」
「“しねんのずつき”」
ニンフィアが放った無数の“シャドーボール”はヤドランに直撃するにはしたのだが、“しねんのずつき”に掻き消されてダメージは見られない。
迫って来たヤドランを回避したニンフィアは一度ソラタに視線を向けて、ソラタが頷いたのを確認すると、自身も頷き返してヤドランから距離を取る。
「やっぱ“サイコフィールド”の存在が厄介ですね」
「……ヤドラン、“しねんのずつき”」
「なので……」
再びヤドランが“しねんのずつき”で突っ込んできた。だが、もう既にソラタとニンフィアの間で対策は練られている。
「“ミストフィールド”!!」
「っ!」
今までフィールドを覆っていた紫色のオーラが消えて、代わりに今度はピンク色のオーラが覆いつくす。
ニンフィアが使った“ミストフィールド”の効果で、先に張られていた“サイコフィールド”の効果を掻き消したのだ。
「“シャドーボール”!!」
「フィーア!」
再度、ニンフィアが放った“シャドーボール”がヤドランに襲い掛かる。そして、今度は“しねんのずつき”によって掻き消される事無く、逆にヤドランを吹き飛ばした。
「ヤ、ドラ……」
「ダメージが大きい……そうか、“シャドーボール”の効果ね」
“サイコフィールド”が消えた事で“しねんのずつき”の威力が落ちて“シャドーボール”を掻き消せなかったのはナツメも理解出来た。だが、ヤドランのダメージが想定より大きい事に思考を巡らせると、応えは先ほどの連続“シャドーボール”にあるのだと理解出来た。
「そう、いくら掻き消そうとも、間違いなくさっきの“シャドーボール”はヤドランに直撃していた。そして、“シャドーボール”には相手の特防を下げる効果がある」
「連続の“シャドーボール”で、ヤドランの上がっていた特防を下げられていたのね」
ナツメがそこまで言った所でフラフラしていたヤドランが倒れ、目を回してしまった。
「ヤドラン、戦闘不能! ニンフィアの勝ち!」
「戻って、ヤドラン」
ヤドランをモンスターボールに戻したナツメは、自身の最後のポケモンが入ったボールを取り出して、改めてチャレンジャーたるソラタに目を向けた。
ソラタの目は、まだ諦めていない。ニンフィアというソラタの最高の相棒に対する絶対の信頼が見て取れた。
「あなたとニンフィアの絆、確かに見せて貰った……だから、私も本気で行く。出でよ、フーディン!」
「フーディンッ!」
ナツメの最後のポケモンは、予想していたユンゲラーではなく、その進化系であるフーディンだった。
「ナツメ! そのポケモンは!」
「黙っててお父さん、ソラタにはこの子を使うだけの価値がある、この子で戦うべき相手だと判断した」
「だが、そのフーディンはお前の……」
「大丈夫、“アレ”は使わない」
ナツメの言う“アレ”とは何なのか、それはフーディンの右腕に付いている腕輪が答えなのだろう。
腕輪には、丸い石みたいな物が付いており、ソラタはそれが何なのか、知っている。
「まさか、メガストーン!?」
「……驚いた。カントーの新人トレーナーがメガストーンの存在を知ってるなんて」
「つまり、そのフーディンはメガ進化が出来るって事ですよね?」
「そう」
すると、ナツメは襟元に手を突っ込み、ペンダントにしたキーストーンを取り出す。
「でも、安心して。ジム戦でメガ進化は使わない」
取り出して見せただけで、直ぐにキーストーンを仕舞ったナツメは、成程確かにメガ進化を使うつもりが無いのだろう。
ソラタも相当な実力があるとは言え、まだまだ本気のジムリーダーと、そのポケモンに勝てる程ではない。
そんな相手に本気の証たるメガ進化を使うなど、ジムリーダーとしてあってはならない事だ。
「もう何も言うまい……フーディン対ニンフィア、バトル開始!」
「フーディン」
「ニンフィア!」
「「“シャドーボール”!」」
ニンフィアとフーディンの“シャドーボール”が同時に放たれ、中間でぶつかり相殺される。
だが、お互いにそんなもの想定の範囲内。既に動き出していた。
「“でんこうせっか”!」
「“テレポート”」
高速でニンフィアが突っ込むと、フーディンの姿が消えて、今度はニンフィアの真後ろに現れる。
しかし、走り続けるニンフィアの背後を取った所で、直ぐに距離を取られてしまい、次の一手を出すヒマが無かった。
「速い……普通の“でんこうせっか”じゃない」
「へぇ、やっぱ気付きます? 俺のニンフィア、素早さは確かに速い方ですが、“でんこうせっか”が普通じゃ無いって」
「……そう、“フェアリースキン”」
そうだ。ナツメの言う通りソラタのニンフィアの特性は“フェアリースキン”。
ノーマルタイプの技がフェアリータイプの技となる特性で、その効果で“でんこうせっか”がタイプ一致の技となって通常より性能が上がっているのだ。
「でも甘い“サイコキネシス”」
「フー!」
「走れ!」
フーディンの“サイコキネシス”に捕らわれる前に動き出したニンフィアだが、いくら速くともフーディンに捕らえられない程ではなかったのか、簡単に捕まってしまった。
「ニンフィア!」
「フィ、フィア……」
「やって」
“サイコキネシス”で身動き取れない状態のニンフィアがジムの天井へ、床へと叩き付けられ、ダメージを蓄積していく。
「“シャドーボール”だ!」
「ふぃ、フィア……フィイイ」
「フーディン」
「フー!」
“サイコキネシス”で操られながらも、何とか“シャドーボール”を撃とうとするニンフィアだったが、いつの間に現れたのか頭上へ“テレポート”してきたフーディンがスプーンを鋼のエネルギーで光らせながら鞭のように伸ばしているのを見て驚愕してしまった。
「“アイアンテール”」
「フーディンッ!」
「フィッアアアア!?」
「ニンフィア!」
フェアリータイプのニンフィアに鋼タイプの“アイアンテール”は効果抜群、地面へと叩き付けられたニンフィアは力無く倒れ伏してしまった。
「ニンフィア!」
「フィ、フィア……」
「トドメ、“シャドーボール”」
何とか起き上がろうとしたニンフィアに、無情にもフーディンの“シャドーボール”が襲い掛かる。
不味い、これは避けなければニンフィアは間違いなく戦闘不能になり、ソラタの敗北が決まってしまう。
だけど、今のニンフィアにそこまでの体力が残っていない。回避は……不可能。
「フィ、ア……」
「ニンフィアアア!!」
“シャドーボール”がニンフィアに直撃、吹き飛ばされたニンフィアが宙を舞っている姿を見て、ソラタの絶叫がジムに響いた。
果たして、本当にこれでニンフィアは戦闘不能になってしまったのか……次回に続く。
次回、ヤマブキジム戦完結。
果たして、ソラタは初のジム戦敗北となるのか。