ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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今回は原作でもドロップアウトしていたトレーナーです。


第29話 「最後の同期」

ポケットモンスター

転生したのは始めに旅立った子供

 

第29話

「最後の同期」

 

 ポケモンリーグに出場する為、旅をするソラタは次のジムがあるセキチクシティを目指していた。

 道中、フカマルの特訓を挟みつつ順調に旅を続けているソラタは、セキチクシティまで残り僅かという所にある小さな町、タバタタウンのポケモンセンターに訓練を終えたポケモン達の回復へ立ち寄っている。

 

「はい、お預かりしていたポケモン達は皆、元気になりましたよ」

「ありがとうございます、ジョーイさん」

 

 預けていたポケモン達のボールをジョーイさんから受け取ったソラタはボールを腰ベルトのホルダーへ戻し、今日はポケモンセンターに泊まるかと図鑑をジョーイさんに預けて宿泊手続きをする事にした。

 

「一泊で、明日には出発します」

「はい、一泊ですね。夕飯はどうしますか?」

「う~ん……そうですね、センターで食べます。それまではまたポケモン達の特訓でもしてますよ」

「わかりました。では夕食の用意もしておきますので、時間になったら食堂に来てください」

 

 その後、ジョーイさんから宿泊部屋の鍵と図鑑を受け取り、部屋に荷物を置いたソラタはセンター敷地内にあるバトルフィールドに向かった。

 フィールドには他の利用者も特に居ないようで、貸し切り状態なのは好都合だ。

 

「最近はフカマルの育成に力を注いでいたから、ピカチュウの方は疎かになっていたよな」

 

 という訳で早速ボールからピカチュウを出す。

 ソラタのピカチュウは素早さならソラタの手持ちで2番目の速度を誇り、野生の時から既に“アイアンテール”と“あなをほる”を自力で覚えていた程のバトルの天才的才能を持つポケモンだ。

 だが、その才能も確り育成しなければ無駄に終わる。そうならない為に、何よりセキチクジムで出番があるからこそ最近疎かになっていたピカチュウの育成も良い機会だからやろうと考えたのだ。

 

「とは言ってもなぁ、覚えさせるべき技はもう殆ど覚えさせたし……」

「ピィカ?」

「う~ん……あ!」

 

 思い出した。まだピカチュウに覚えさせていない技があったではないか。覚えさせるつもりではいたものの、流石にまだ早いと思って後回しにしていた電気タイプ最強の技が。

 

「ピカチュウ、今日から“ボルテッカー”の練習だ!」

「ピカピッカ?」

「そう、お前が覚える事の出来る電気タイプの技の中でも最強の大技だ」

 

 反動も大きいが、技の威力は申し分ない。暫くライチュウに進化させてやれないピカチュウの切り札として、“ボルテッカー”は十分役に立つ筈だ。

 

「一先ず“ボルテッカー”の習得をするには、感覚を掴む必要があるだろうから……ピカチュウ、“10万ボルト”の電気を纏いながら“でんこうせっか”出来るか?」

「ピ……ピカッチュ!」

 

 実際にやってもらったら、流石は自力で“アイアンテール”と“あなをほる”を習得した天才と言うべきか、完璧とは言えないまでも“ボルテッカー”に近いものは出来ていた。

 

「これならセキチクジムまでに仕上がりそうだな」

「あら、セキチクジムに挑むんですの?」

「っ!?」

 

 後ろから急に声を掛けられ、驚きながら振り返ると、そこには10歳でありながらド派手な金髪ドリルの少女が立っていた。

 一目でブランド物だと判る花柄ワンピースと高級品と思しき腰ベルトには、これまた成金と言うべきか、6個のゴージャスボールが。

 

「お久しぶりですわ、ソラタ」

「お前、トワコか」

 

 少女の名はトワコ、マサラタウンでオーキド家に次ぐ資産家の家の御令嬢で、ソラタにとってはサトシとシゲル同様に幼馴染の一人。

 

「こんな所でポケモンの修行ですの? しかも、ピカチュウとか……フッ」

「次のセキチクジムに備えてな」

 

 明らかにソラタと、ピカチュウを見下した態度、彼女のこの態度は相変わらずらしい。

 昔から、家柄が格上のシゲル以外を見下していたトワコはソラタとサトシを下に見ていた。スクールの成績はソラタの方が上であっても、家柄は格下だと舐めた態度を取っていたのを覚えている。

 

「セキチクジムですか、ソラタ程度が挑むには時期尚早だと思いますがね。因みにソラタはバッジいくつですの? 私は既に3個ものバッジをゲットしておりますのよ」

「5個だ」

「……はい?」

「だから、5個だよ。セキチクジムを攻略したら6個目だな」

 

 トワコが見せてきたグレーバッジ、ブルーバッジ、オレンジバッジに対して、ソラタはゴールドバッジとレインボーバッジを含む5つのバッジを見せた。

 格下だと思っていた相手が自分よりも先に進んでいる。その事実を受け入れがたいのか、ワナワナと震えてソラタを睨みつけてくる。

 

「あ、ありえませんわ!! ソラタ如きが私よりもバッジをゲットしているだなんて!! し、しかもレインボーバッジって、私が負けたタマムシジムの……っ!」

 

 どうやらトワコ、クチバジムを攻略して以降は成績が振るわず、タマムシジムだけでなく先日セキチクジムでも敗北した事まで口を滑らせた。

 つまり、トワコが此処にいるのは次にヤマブキジムへ行く為らしい。

 

「あ、ありえません……いったいどんな卑怯な手を使ったんですの!?」

「卑怯な手って、普通そんな手段でジムバッジがゲット出来るわけ無いだろ……ポケモンリーグ公認委員会のお膝元であるジムで、そんな真似したらリーグ関係施設出禁になるわ」

 

 そもそもの話、リーグ公認委員会の大本組織であるポケモン協会役員の息子に対して、何たる言い草か。

 

「ぐっ! うぅぅぅ!! こ、こうなったら勝負ですわ!! 今この場でフルバトルですわ! 私が勝ったら、ゴールドバッジとレインボーバッジを、私に寄こしなさい!!」

「はぁ? 何でそんな事をする必要があるんだか」

「あら逃げるんですの? スクール成績トップ様は、3位の私との勝負から逃げるような腰抜けだったという事ですわね」

 

 因みに2位はシゲルだ。

 

「……はぁ、わかったよ」

 

 ここらで、格の違いを見せつけるのも一つの手だろう。そう思ってピカチュウをモンスターボールに戻したソラタはフィールドのトレーナースペースに立つと、反対側にトワコが立つ。

 

「フルバトルですから、当然使用ポケモンは6体、先に全ての手持ちポケモンが戦闘不能になった者の負けですわ」

「ああ」

「では……」

 

 ソラタがモンスターボールを、トワコがゴージャスボールを構え、同時に投げる。

 

「お行きなさい! スピアー!」

「頼むぞ、ギャラドス」

「スピ!!」

「ギュアアオオオアアア!!!」

 

 トワコのゴージャスボールからはスピアーが、対するソラタはギャラドスを出す。相性の面で見れば飛行タイプを持つギャラドスが有利だ。

 

「スピアー! “ダブルニードル”!」

「スピスピスピ!!」

 

 スピアーが両手の針を構えて高速で飛びながらギャラドスに迫った。

 “ダブルニードル”は虫タイプの技だが、時々相手を毒状態にする事が可能な攻撃なので、ギャラドスにとってダメージは大きくはなくとも、多少厄介な効果があると言える技だ。

 

「まあ、当たればの話だがな。ギャラドス、自分の周りに“ぼうふう”だ」

「ギャオアアアア!!」

 

 暴風がギャラドスを中心に吹き荒れ、そこに突っ込んだスピアーは“ぼうふう”に捕らわれた。

 強力な風に煽られ上空へと吹き飛ばされたスピアーは自分では姿勢を制御出来なくなったのか、風に煽られるがままだ。

 

「スピアー! 何とかなさい!!」

「“こおりのキバ”」

 

 天高く吹き飛ばされたスピアー目掛けて飛び上がったギャラドスは氷のエネルギーを纏った牙でスピアーに噛み付く。

 上空で全身氷漬けになったスピアーはそのまま地面に叩き付けられ、氷が割れると目を回したスピアーが地面に転がった。

 

「ス、スピアー……」

「スピアー戦闘不能、だな」

「くっ……! 戻りなさいスピアー!」

 

 スピアーをボールに戻して腰ベルトのホルダーへゴージャスボールを納めると、次のボールを手に取るトワコ。

 対するソラタもギャラドスを戻して別のボールを手に取った。

 

「行きなさいゴローン!!」

「出番だ、ピカチュウ」

 

 トワコの2番手はゴローン、ソラタはピカチュウ。相性の面では先ほどと違いトワコが有利な場面だが……。

 

「ふん、ゴローン相手にピカチュウですの? ソラタは相性というものを理解してないのかしら! ピカチュウ如き、ゴローンの相手にもなりませんわ! ゴローン! “いわおとし”!!」

「“でんこうせっか”」

 

 ゴローンの“いわおとし”がピカチュウに迫るも、飛来する岩を高速で走るピカチュウが全て回避、ゴローンの懐へと一気に飛び込んだ。

 

「“アイアンテール”」

「チュ~ア! ピカ!!」

「ゴ、ゴロォオオオ!?」

 

 “アイアンテール”の一撃がゴローンに入り、ゴローンはその一撃で戦闘不能となったのか、目を回して転がった。

 

「そ、そんな……」

「確かにゴローンはピカチュウにとって相性最悪の相手だが、苦手なタイプが相手だからって戦えないままにする訳がないだろう?」

「くぅっ! ソ、ソラタの分際で生意気な!! 戻りなさいゴローン!!」

 

 顔を真っ赤にしながらゴローンをボールに戻したのを見て、ソラタもピカチュウをボールに戻す。

 そしてお互いに次のボールを手に取って同時に投げると、トワコ側にはスリーパーが、ソラタ側にはキレイハナが現れた。

 

「な、何ですの!? そのポケモンは!!」

「何って、キレイハナだよ、クサイハナの進化系の」

「クサイハナの!? クサイハナの進化系は、ラフレシアの筈ですわ!」

「リーフのいしを使ったらな。たいようのいしを使えばキレイハナに進化するんだよ」

 

 しかもキレイハナはクサイハナの時とは違い毒タイプを持っていないので、スリーパー……つまりエスパータイプは弱点ではなくなった。

 

「キレイハナ、“ちょうのまい”だ」

「ハナッ!」

「スリーパー! “ねんりき”ですわ!」

 

 キレイハナが踊り始めると、スリーパーが“ねんりき”を発動。キレイハナを捕らえたのだが、力の差が大きいのかスリーパーではキレイハナの動きを止める事すら出来ないようだ。

 

「そんな! “ねんりき”をもう一度ですわ!」

「甘いよ、“リーフストーム”!」

「ハァナァアアア!!!」

 

 踊りながら、手を突き出したキレイハナは“リーフストーム”を発動、そのままスリーパーを飲み込み、トワコの足元まで吹き飛ばした。

 

「リ、パ~」

「す、スリーパーまで……」

 

 トワコがスリーパーをボールに戻す。同じくソラタもキレイハナをボールに戻すと、今度はトワコがニョロゾを、ソラタはフカマルを出した。

 

「ま、また知らないポケモンを……!」

「シンオウ地方に生息するフカマルだ、ドラゴン・地面タイプのな」

 

 地面タイプだが、ドラゴンタイプもあるので、水タイプの技は効果抜群にはならない。だが、氷タイプの技なら弱点足りえる。

 流石に成績を金で買っていたという噂があったとは言え、それでも地頭が悪くはないトワコはそれを判断出来たらしい。

 

「ニョロゾ! “れいとうビーム”ですわ!」

「“あなをほる”」

 

 “れいとうビーム”を地面に潜る事で回避したフカマルは地中を進む。

 対するニョロゾはキョロキョロとフカマルがどこから出てくるのか困っているようで、トレーナーであるトワコの指示を仰ごうとトワコの方へ振り返るが。

 

「え、あ、えっと……な、何とかなさい!」

 

 まともな指示が出てこないのでますます困ったニョロゾは完全に隙だらけになってしまった。

 

「哀れだな、ニョロゾ……同情するよ。フカマル、そのまま“ドラゴンクロー”!」

 

 ニョロゾの足元から飛び出したフカマルはドラゴンのオーラを纏った爪をニョロゾへと叩き付ける。

 焦ったニョロゾは回避が間に合わず、“ドラゴンクロー”がクリーンヒットしたのか、そのまま戦闘不能になってしまった。

 

 

「今のところ、全部一撃で終わってるんだが……トワコ、お前どんな育て方してるんだよ?」

「う、うるさいですわ! 私の育て方が悪いとでも!? 私の期待に応えないポケモンが悪いんですわ!! 行きなさいポニータ!!」

 

 ハッキリ言ってトワコはトレーナーとしては最低だ。ポケモンの育て方も甘いし、そもそも自分の育て方が悪いのを認めずポケモンが悪いとまで言い出す始末。

 

「お前の言い訳は耳障りな事この上ないな……行け、ニンフィア」

「フィア!」

 

 トワコのポニータをニンフィアの“ムーンフォース”の一撃で沈める。後が無くなったトワコはソラタがニンフィアをボールに戻す姿を睨みながら最後のゴージャスボールを投げた。

 

「行きなさい、フシギソウ!」

「ソウソウ!!」

「行け、リザードン」

「リザアアア!!!」

 

 トワコが最後に出したのはオーキド研究所で貰ったフシギダネの進化系、フシギソウだった。

 そして、ソラタが出したのもオーキド研究所で貰ったヒトカゲの最終進化系、リザードンだ。

 奇しくも同郷対決となったのだが、以前のシゲルのカメールとのバトル程の熱量が皆無なのは、トワコが相手だからなのだろう。

 

「ウ、ウソ!? リザードン!? ヒトカゲじゃなくて!? ソラタ如きが最終進化させられるなんて!!」

「お前さ、俺如きって見下した発言するけど、ハッキリ言ってやろうか? お前の実力は、俺以下だ。お前では俺にもシゲルにも、サトシにも勝てないよ」

「なっ!? さ、サトシですって!? あの底辺に、あの底辺のサトシに私が負けると!?」

 

 本当に、トワコはサトシをとことん見下しているらしい。それも昔からで、サトシもそんなトワコを苦手に思っていたのを思い出した。

 

「ゆ、許しませんわ。私をあの底辺以下だなどと口にした事、後悔させてやりますわ!! フシギソウ!! “たいあたり”!!」

「止めろ」

 

 突っ込んできたフシギソウを、リザードンは片手で頭を抑えて止めてしまった。パワーの差でいくら力んでもフシギソウは前に進む事も出来ず、踏ん張っている姿は逆に哀れに思えてきてしまう。

 

「フ、フシギソウ! もっと踏ん張りなさい!!」

「“かえんほうしゃ”」

 

 そのまま頭を鷲掴みして放り投げたリザードンは、“かえんほうしゃ”をフシギソウへ向けて発射、炎に飲まれたフシギソウは戦闘不能となって地面を転がるのだった。

 

「ま、負けた……私が、ソラタ如きに」

 

 負けた事が信じられないのか、フシギソウを戻して尚、呆然とするトワコに歩み寄ったソラタは、座り込むトワコを冷たい目で見下ろした。

 

「トワコ、お前はトレーナー失格だ。自分の育て方の悪さをポケモンの所為にするなんてトレーナーが一番やっちゃいけない事だ。お前にトレーナーの才能なんて無い、今のままじゃお前のポケモンが可哀そうだ」

「わ、私は……マサラタウンで2番目の資産家の娘、ですのよ!? その私が」

「それが? マサラタウンで2番目の資産家の娘だから、トレーナーとしての才能があるとでも? 笑わせるな」

 

 家柄と、トレーナーとしての才能は関係無い。

 

「お前、マサラタウンに帰れ。今のお前にトレーナーの資格は無い、ポケモンを大事に出来ないお前なんかが、トレーナーを名乗るな」

 

 こうして、ソラタ、シゲル、サトシと同時期にマサラタウンを旅立った一人の少女の旅は終わった。

 マサラタウンに帰ったトワコは、その後自宅の部屋に引き籠り、完全にトレーナーとしてはドロップアウトしてしまう。

 そして、いつしか自身のポケモン達からの信用さえ失ったトワコは、完全にトレーナーとしての資格を失うのであった。




次回はついにセキチクシティ到着!
相手はジムリーダーにして四天王も兼任する凄腕、どうなる事か。
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