ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第38話
「進化ポケモンと未進化ポケモン」
ポケモンリーグに出場する為、旅を続けるソラタは次のジムがあるグレンタウンを目指す途中トーグタウンで出会ったポケモンゼミナールの教師、キンジョウに頼まれて一日講師を務める事になった。
卒業と同時にポケモンリーグへの参加資格を得られる上級クラスの生徒は使用するポケモンも中々強力なポケモンばかりで、バトルを通して実力もそれなりにあると感じるソラタだったが、残念ながら彼ら彼女らがリーグで通用するかと問われれば、正直厳しいとも思っている。
「サンドパン! “みだれひっかき”!!」
「ヒトデマン、“リフレクター”からの“みずのはどう”」
現在、男子生徒のサンドパンをヒトデマンの“みずのはどう”で倒してようやく生徒も残り一人となった所だ。
「お疲れヒトデマン、戻ってくれ」
ヒトデマンをモンスターボールに戻したソラタはサンドパンをボールに戻した男子生徒に一言二言アドバイスをすると、最後の生徒に目を向けた。
ケンイチ少年、教室でソラタを品定めしていた眼鏡の男子生徒だ。先ほどキンジョウに貰った資料を読んだ限りではクラスどころかゼミナール一番の成績を残している優秀な生徒らしい。
「ソラタ先生、先ほどまでのバトル、見事でしたよ」
「そうか」
「ですが、残念ながら僕の足元にも及ばないのが判明しました。ピジョン、ヒトデマン、ニドリーナ、よく育てられていましたが、僕の自慢のパートナーには届きません」
まぁ事実だろう。何故ならその3匹はソラタのメインパーティーではなくサブパーティーの予定となっているポケモンで、時間を見つけて育成はしていたが、まだ本格的な育成が出来ていないのだ。
「さあ、これで先生に教えてあげますよ、あなたは所詮僕に何かを教えるに値しないトレーナーであるという事を……行け! ゴローニャ!!」
ケンイチが出したポケモンはイシツブテの最終進化系、ゴローニャだった。見れば判る、他の生徒達のポケモンよりも数段上の実力があるという事が。
「成程、他の子とレベルが違う……」
「当然です。僕は四天王やチャンピオンのバトルを研究して、バトルのいろはをゼミナールで学び、イシツブテをゲットしてからは常に共に上を目指して研究を重ねて来たのですから」
これは、サブメンバーでは荷が重い。だからこそ、ソラタも残していたメインパーティーの内の1匹が入ったボールを手に取った。
「良いだろう、ならコイツで相手をしてやる。行け、フカマル!!」
ソラタのポケモンはメインパーティーの一角、ドラゴンタイプとじめんタイプを持つフカマルだった。
カントーには生息していないポケモン、当然旅に出た事も無い生徒達は初めて見るポケモンに驚き、中には羨望の眼差しを向ける者もいる。
「フカマル、確かシンオウ地方に生息するポケモンで、シンオウチャンピオンのシロナさんのガブリアスに進化するポケモンですね」
「へぇ、知ってるのか」
「言ったじゃないですか、四天王やチャンピオンのバトルを研究していたと、当然ワタルさんだけでなくダイゴさん、シロナさん、アデクさん、カルネさん、マスタードさん、ピオニーさん、ダンデさん、様々なチャンピオンのバトルを研究してきたんです」
それは、他の地方のポケモンを知っていても不思議ではない。
「しかし、だからこそ許せませんね。僕のゴローニャに対して、進化もしてないフカマルで挑もうなど」
「進化してないから、弱いと?」
「当然です。進化していないポケモンでは、最終進化まで果たしたポケモンには勝てない。レベルが違うんですよ」
まだニドリーナやピジョンの方が良かったというケンイチだったが、残念ながらニドリーナやピジョンより、メインパーティーとして育てているフカマルの方がずっと強い。
勿論、進化したポケモンが強いというのも理解出来るし、間違っている訳ではない。しかし、未進化ポケモンが進化したポケモンに勝てない道理は無い。
「まぁ、やってみれば判るさ」
「ふん、負けた時の言い訳にしないで下さいね。進化してないポケモンだから負けたなどと」
「ああ、勿論だとも」
フィールドでゴローニャとフカマルが対峙する。互いにやる気は十分、特にフカマルは何故か異様に高揚しているような雰囲気があるのが少し気になる所だが、バトルに支障は無さそうだ。
「ゴローニャ対フカマル、バトル開始!」
「ゴローニャ! “ストーンエッジ”だ!」
「ゴロッ! ゴロォオオ!!」
初手でゴローニャが撃ってきた“ストーンエッジ”によって、地面から尖った岩の刃が次々突き出しながらフカマルに迫る。
しかし、ここまで来るのに、フカマルとてその技は完成させているのだ。
「こっちも“ストーンエッジ”で応戦しろ」
「カフカフカ!!」
フカマルもまた、同じ“ストーンエッジ”で応戦、中央で岩の刃がぶつかって相殺された。
「まだまだ! “すてみタックル”!!」
「ゴォロオオオ!!」
「カフゥウウウ!?」
“ストーンエッジ”同士がぶつかった瞬間にはケンイチのゴローニャは動いており、超重量の“すてみタックル”がフカマルに激突した。
しかも本来なら反動ダメージを受ける筈のゴローニャにダメージを負った様子は無い。これは特性によるものか。
「特性“いしあたま”か」
「その通り、僕のゴローニャは“すてみタックル”を使っても反動ダメージ無しで一方的にダメージを与えられるんですよ」
「特性も理解しているようだな、成程」
数々のバトルを研究してきたという成果は出ているようだ。
「ゴローニャ、“ロックカット”!!」
更には素早さまで上げてきた。補助技を利用して速度に不安があるゴローニャの素早さを補うのも見事と言う他にない。
「どうです? 僕のゴローニャは、フカマル程度が勝てる相手じゃないんですよ」
「さて、それはどうだろうな?」
「負け惜しみですか? ならもう終わらせますよ。ゴローニャ、“ボディプレス”!!」
300kgの体重をものともしない軽やかな跳躍で飛び上がったゴローニャは真っ直ぐフカマル目掛けて落下してきた。
直撃すれば間違いなくフカマルは戦闘不能になるであろう一撃に、ソラタもフカマルも、冷静だった。
「“アイアンヘッド”」
「カフカフカー!!」
落下してくるゴローニャに対して、フカマルは鋼鉄のエネルギーを纏った頭を向け、飛び上がってゴローニャの顔面に叩きこんだ。
岩タイプを持つゴローニャに鋼タイプの“アイアンヘッド”は効果抜群、しかも落下していたゴローニャは自身の全体重が乗ってしまった事で顔面が大惨事だった。
「ゴローニャ!?」
「“じしん”」
地面に落下して痛そうに顔面を両手で擦るゴローニャに容赦なく“じしん”の一撃が叩きこまれた。
立て続けに効果抜群の技を受けたゴローニャは大ダメージを負って、荒い息を吐きながらフカマルを睨む。
「ゴローニャ! もう一度“すてみタックル”だ!」
“ロックカット”で素早さを上げたゴローニャによる“すてみタックル”は凶悪だ。しかし、もうそれを黙って受けるつもりは無い。
「“りゅうのはどう”で迎え撃て!」
突っ込んできたゴローニャはフカマルが放った“りゅうのはどう”に飲み込まれ、フカマルの手前まで来てその場に倒れてしまった。
「ゴローニャ!」
「そこまで! ゴローニャ、戦闘不能!」
特性を理解した技選びや補助技を使っての素早さの補強など、今のバトルで見せたケンイチの戦術は見事だと言って良い。
だけど、ソラタとしては“ボディプレス”は選択ミスだったと思う。ゴローニャなら“まるくなる”からの“ころがる”のコンボを使っていれば負けていたのはこちらだったと思うし、そもそも“ボディプレス”を使うより、あの場面なら“ヘビーボンバー”を使われていたら負けていたのはフカマルの方だ。
「ど、どうして……僕のゴローニャが、進化もしていないフカマルなんかに」
「進化したら強いっていうのは否定しないし、事実だけど、だから必ず勝てるという訳ではない。ポケモンバトルはそんな単純じゃないって事だ」
とはいえ、ケンイチの実力はまだまだ十分伸び代があると感じた。旅にでも出て確り実戦経験を積めば本当の意味でエリートトレーナーとなれる可能性がある。
さて、フカマルをボールに戻すかとソラタは腰のホルダーからモンスターボールを取り出してフカマルに向けると、何やらフカマルの様子がおかしい。
「フカマル? どうした?」
「カ、カフ……カ!」
すると、フカマルが光に包まれ、その姿を変え始めた。
「これは……!」
「何と! 進化ですか!?」
キンジョウもカントーでは珍しいフカマルの進化に目を輝かせながら近づいてきた。
そして、光が納まると、そこにはフカマルよりもスマートになったガブリアスに近いフォルムのポケモン、ほらあなポケモンのガバイトが立っていた。
「ガッバァ!」
「やっと、進化した……」
ずっと進化を待ち望んでいたフカマルが、ようやく進化した。
「おめでとうございます。ソラタさん、まさかカントーでは珍しいフカマルの進化を目にする事が出来るとは思いませんでした」
ついに、フカマルがガバイトに進化を果たした事で、ソラタは心置きなくグレンタウンへ向かう事が出来る。
ゼミナールの講師も終わり、キンジョウから報酬にゼミナールで育成していたゲンガーを貰い受け、オーキド研究所へ送り、更にポケモンセンターで手持ちポケモンをメインパーティーに入れ替えて一泊、翌日には見送りに来たキンジョウに挨拶をしてトーグタウンを後にするのだった。
次回はいよいよグレン島に到着! 果たして……。