ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第48話
「開幕、ポケモンリーグ!」
マサラタウンでオーキド博士にヒトカゲを貰ったあの日から始まった旅も、いよいよその集大成を見せる日が来た。
ポケモンリーグ・セキエイ大会、カントーを旅した多くのトレーナー達が集まり、リーグ優勝の名誉とチャンピオンリーグへの出場権を得る為に熱い戦いを繰り広げる一大イベント。
その開会式では多少のトラブルがあったものの、無事に聖火台へと聖火が灯され、大会責任者のタマランゼ会長の開会宣言と共に開会式が終了した。
ここでポケモンリーグ・セキエイ大会の試合について説明しておこう。ポケモンリーグ・セキエイ大会はまず1回戦から4回戦まで全てのトレーナーが4種類のバトルフィールドで行う予選リーグ、5回戦からのセキエイスタジアムで行われる決勝リーグに分かれている。
5回戦までは使用ポケモン3体での試合で、それ以降は6VS6のフルバトル、予選リーグと決勝リーグ通してバトル中のポケモンの交換は禁止だ。
ポケモンが戦闘不能になる、ポケモンをモンスターボールに戻す、ポケモンが試合放棄をする、ポケモンが眠って一定時間が経過する、これらの条件に当て嵌まった場合はそのバトルに負けたものとみなされる。
そして今、開会式を終えたトレーナー達が1回戦のバトルフィールドを決める為、抽選会場へと移動して試合会場と対戦相手を確認する時間となった。
「こんにちは、トレーナーの登録証を出して下さい」
「はい」
抽選会場の数ある受付の一つで、ソラタは受付のお姉さんに言われた通りに登録証、トレーナーカード代わりになっているポケモン図鑑を手渡した。
受付のお姉さんは図鑑を受け取って機械に差し込むと登録されているソラタの情報を読み取って手元の端末を操作、作業を終えるとソラタに図鑑を返す。
「マサラタウンのソラタ君ね?」
「はい」
「登録完了です。では1回戦のバトルフィールドを決めるので、上のパネルを見て下さい」
受付のお姉さんが受付にあるボタンを押すと、受付の上にあったパネルにそれぞれ岩、草、水、氷のエンブレムが描かれたボードで光が回る。
ソラタのタイミングでもう一度ボタンを押せば光が止まって1回戦のスタジアムが決まる仕組みになっているとの事だ。
「よし」
ボタンを押すと、高速で回っていた光がゆっくりになり、やがて岩のボードで止まった。
「岩のフィールドか」
「それではトーナメントボードに入力します」
受付のお姉さんが再び端末を操作すると、パネルの半分にソラタの写真が映し出され、続いて少し小太りの少年の姿が映し出された。
「彼が対戦相手ですか?」
「ええ、岩のフィールド、第4試合です。試合開始は3時ですね、遅れないようにお願いしますね」
「ありがとうございます」
試合時間も決まり、時間に余裕が出来たソラタは先ずポケモンの転送機能付き公衆電話へ向かうと、オーキド研究所に電話、オーキド博士に試合時間を伝えて手持ちのポケモンの入れ替えをお願いした。
「こっちはギャラドスとピカチュウを送りますので、ニドクインとスターミーをお願いします」
『うむ、少し待っておれ』
少し待って博士がポケモンの用意を終えると、電話横の転送装置にポケモンが入ったモンスターボールを置く。
光と共にボールが消えて、もう一度光ったかと思うと再びモンスターボールが現れた。これでまず1匹目の交換の終わりだ。
それをもう一個のモンスターボールでも同じ事をして予定通りギャラドスとピカチュウをオーキド研究所に送り、オーキド研究所からスターミーとニドクインを送って貰った。
「ありがとう、オーキド博士」
『構わんよ。それよりソラタ、頑張るんじゃぞ?』
「勿論!」
博士との通話を終えたソラタは時計を確認、まだ3時間も余裕があったので昼食でも食べようかと、選手村のレストランに向かう事にした。
「ソラタさん」
「っと、シズホ?」
早速レストランにでもと思って歩き出そうとした時、後ろから声を掛けられ振り返ればシズホが立っていた。
「ソラタさんもお昼ですか?」
「ああ、シズホも?」
「ええ、私も試合まで時間がありますので、ご一緒しても?」
「勿論、構わないよ」
このポケモンリーグ選手村はリーグ開催期間中、参加トレーナーは無料で飲み食い出来るようになっている。
レストランにファーストフード、カフェ、それだけでなく飲食店以外の娯楽施設に宿泊施設も全て選手とセコンド等の選手関係者であれば無料なのだ。
ソラタとシズホも選手村の中にある少し大きなレストランに入り、注文をすると料理が運ばれてくるまで雑談で時間を潰す事となった。
「シズホの試合は?」
「私は草のフィールド、第4試合で3時からです。ソラタさんは?」
「俺も同じ第4試合だ。岩のフィールドで、時間も同じ3時から」
「あら、でしたら時間が被ってしまいましたね」
お互いの試合を応援に行く事は出来無さそうだ。
「お互い、頑張ろうぜ。それで、もし俺とシズホが戦う事になったなら、その時は……」
「ええ、全力で戦いましょう。引き分け続きの私達のバトルに決着を」
出会ってから2回、シズホとはバトルをした。その2回とも、引き分けで終わった二人は、このポケモンリーグの舞台で決着を望んでいる。
だから先ずはお互い、1回戦を勝って次に進むのだ。こんな序盤で負ける訳にはいかない。
遂に、ソラタの試合時間となった。食事を終えて岩のフィールドスタジアムに来たソラタは選手用の入口から控室に通され、現在行われている第3試合をモニターで見ながら入場口に向かう時間となって直ぐに係員の案内で入場口に来た。
丁度、第3試合が終わった所で、ソラタが呼ばれたので入場口からスタジアムに出ると、ソラタの前にはトレーナー用の赤い立ち台があり、その向こうに岩のフィールドが見える。
『さあ、いよいよ岩フィールドの第4試合が始まります! 緑サイドのトレーナーはナリキタウンのカネミツ選手! 対する赤サイドはマサラタウンのソラタ選手! カネミツ選手はトレーナーズスクール上級コースを成績トップで卒業した超エリート! ソラタ選手はトレーナーになって1年未満でジムバッジを8個集めた才能溢れるトレーナーです!!』
トレーナーの立ち台に立つと、緑の立ち台の方でも小太りの少年、カネミツが同じ様に立ち台に立った。
見るからにブランド服に身を包み、まだ子供だというのにド派手な金髪が目に眩しい成金お坊ちゃまといった所か。
『使用ポケモンは各々3体! 岩のフィールド第4試合開始ぃ!!』
実況による試合開始の言葉とともにゴングが鳴らされた。
「さあ! 僕様の華麗なるチャンピオンへの道の踏み台になると良い!! 行け! 僕様のゴローニャ!!」
「先ずはお前からだ、頼むぞニドクイン!!」
両者、モンスターボールを投げてポケモンを出した。カネミツ少年はゴローニャを、ソラタはニドクイン、相性では互角の対決だ。
『カネミツ選手はゴローニャ、ソラタ選手はニドクインでの対戦です!!』
「ゴローニャ! “とっしん”攻撃!!」
「ゴロォ!!」
「ニドクイン、“かいりき”で受け止めて“みずのはどう”!!」
ゴローニャが300㎏の巨体で“とっしん”してきたが、ニドクインは大岩をも動かす“かいりき”で敢えて受け止めると、多少後ろに押されたものの踏ん張って止まり、至近距離から“みずのはどう”をゴローニャに直撃させた。
『おおっと! これは痛い! ゴローニャ、渾身の“とっしん”をするも受け止められ、弱点の水技を喰らったぁ!!』
「ゴローニャ!?」
「ゴ、ゴロォ」
「ご、ゴローニャの様子が……」
『これは……ゴローニャ、毒状態です! ニドクインの特性、“どくのトゲ”で毒状態になったぁ!』
吹き飛んだゴローニャの顔色が悪くなったのを見て、実況がゴローニャが毒状態になった事を見破った。
そう、ソラタのニドクインの特性は“どくのトゲ”、物理攻撃を受けた場合は低確率だが相手を毒状態にする事が出来るのだ。
「ニドクイン! “アイアンテール”!!」
「ニィドォオ!! ニドッ!!」
ゴローニャが毒状態になってカネミツ少年が動揺した隙に、ソラタは“アイアンテール”を指示、ニドクインは近場の岩を利用して見た目に似合わず軽快なジャンプをすると鋼鉄のエネルギーを纏った尻尾をゴローニャに叩き付けた。
「ゴローニャ!!」
「ゴ、ロォ~」
“アイアンテール”がクリーンヒット、その場に叩き付けられたゴローニャは目を回して倒れてしまう。
「ゴローニャ、戦闘不能!」
『決まったぁああ!! ニドクイン、渾身の“アイアンテール”に、ゴローニャは耐え切れませんでした!!』
カネミツ少年はゴローニャをモンスターボールに戻し、悔し気にソラタと、ソラタのニドクインを睨んだ。
まさか、ここまで一方的にやられるとは思っていなかったのだろう。いや、もしかしたら逆に一方的に自分が勝つと思っていたのかもしれない。
『さあ! カネミツ選手、残り2体! ソラタ選手のニドクインに対し、次はどんなポケモンで挑むのか!!』
「行け! 僕様のウツボット!!」
カネミツ少年の2番手は草タイプのウツボットだった。ニドクインとの相性は互角、しかも毒タイプも持つウツボットに“どくのトゲ”は効かない、まだまだ勝負は判らなくなった。
「ウツボット! “はっぱカッター”!!」
「キィーッ!」
ウツボットが両サイドの葉を振ると、無数の小さな葉がカッターとなってニドクインに飛来、襲い掛かろうとする。
「“れいとうビーム”!」
しかし、“はっぱカッター”はニドクインの“れいとうビーム”によって氷漬けになり落下、そのまま“れいとうビーム”がウツボットに向かった。
「避けるんだウツボット!」
ギリギリの所でウツボットは“れいとうビーム”を回避、両者は再び睨み合いとなる。
『これは凄い! ソラタ選手のニドクイン、対となるポケモン、ニドキング同様に技のデパートと呼ばれるだけあって、豊富なタイプの技を見せてくれる! カネミツ選手のウツボットも、華麗な身のこなしで“れいとうビーム”を回避! 両者、まだどちらも相手にダメージを与えていない!!』
「ウツボット! “ねむりごな”!!」
『おぉっと! ここでカネミツ選手、ニドクインを眠らせて勝負に出るつもりだぁ!』
「“みずのはどう”!!」
ウツボットが放った“ねむりごな”で眠ってしまうのは不味い。ポケモンが眠って一定時間が経過すると、そのポケモンは戦闘続行不能扱いで負け扱いになるのがポケモンリーグのルールだ。
なので、ソラタはニドクインに“みずのはどう”を指示して“ねむりごな”を防御、だがそれはウツボットの前では隙を作る事になってしまった。
「今だ! “くさむすび”!!」
「っ!」
ニドクインの足元から草が生えて、ニドクインの足に巻き付くと、そのまま堅結び状態になった。
流石に急に足を固定されたニドクインはバランスを崩して倒れそうになり、カネミツ少年はその大きな隙を見逃さない。
「トドメだ! “つるのムチ”!!」
ウツボットの身体にある蔓が伸ばされ、鞭となってニドクインに迫る。何とかバランスを整えたニドクインだったが、足を固定されて動けない状態では回避不能だ。
「受け止めろ!」
「ニィド!」
『何と! 回避不能かと思われた“つるのムチ”を、ニドクインは見事にキャッチ! そのまま掴んで離さない!!』
「そのまま振り回せ!!」
「あぁ! ウツボット!!」
蔓を引っ張ってウツボットを宙に浮かせると、蔓を掴んだままニドクインは頭上でウツボットを振り回す。
目が回ったウツボットから悲鳴のような鳴き声が聞こえるが、バトルは無情なものでソラタも無視、そのままニドクインに指示して近くの岩に叩き付けさせた。
「キィ~」
「ウツボット、戦闘不能!」
『見事な戦法だぁ! 相手の技とフィールドを利用して、見事ウツボットを倒したニドクイン! さあこれでカネミツ選手、残るポケモンは1体! 絶対絶命だ!!』
カネミツ少年の表情が憤怒に染まっていくのが見えた。負けている事実、追い詰められている事実を受け入れがたいという態度が分かりやすく出ている。
「こ、この僕様をここまでお、追い詰めるなんて、なるほど、さ、才能は多少あるみ、みたいだね……で、でももう君に勝ちは無い。最後のポケモンは、ぼ、僕様の最強のポケモンなんだ!! 行け! 僕様のルージュラ!!」
カネミツ少年、最後のポケモンは氷とエスパータイプを持つルージュラだった。地面と毒の複合タイプであるニドクインにとって相性最悪だからこそ、相手にとって不足無し。
「ルージュラ! “サイコキネシス”!!」
「ジュラル~!」
「“みずのはどう”!」
サイコキネシスに捕まったニドクインは、そのまま超能力で拘束されて後方へ吹き飛ばされ岩に激突、激突する前に放った“みずのはどう”がルージュラの顔面に直撃して何とか集中力を削いだ事で“サイコキネシス”も途切れたが、ニドクインのダメージが思ったより大きい。
「ニドクイン! “かいりき”で岩を投げつけろ!」
長期戦は不利だと悟ったソラタはニドクインに背後の岩を投げるよう指示、ニドクインも指示に従って背後の岩を持ち上げると、勢いよくルージュラに向けて投げつけた。
「ルージュラ! “メガトンパンチ”!!」
ルージュラが強烈なパンチで飛来する岩を破壊すると、ニドクインの姿が無い。何処に行ったのかと周囲をキョロキョロ見渡していると、大きな影が自身を覆ったのに気付いた。
「上だ!」
「ジュラ!?」
「“アイアンテール”!!」
再び、岩を利用して飛び上がったニドクインが鋼鉄のエネルギーを纏った尾をルージュラに叩き付ける。
効果抜群の一撃に、ルージュラは大ダメージを負ったが、懐にニドクインが着地したのを見て口を開く。
「“ふぶき”だ!」
「“アイアンテール”!!」
至近距離からの“ふぶき”がニドクインを襲う中、構わずニドクインは回転する事で遠心力を付けた“アイアンテール”をルージュラの横っ腹に叩き付けた。
吹き飛び、岩に激突したルージュラはそのまま目を回して倒れてしまうが、“ふぶき”の直撃を受けていたニドクインも、同時にその場に倒れて目を回してしまう。
「ニドクイン、ルージュラ、共に戦闘不能! よってこの試合、ソラタ選手の勝ち!!」
『試合終了!! マサラタウンのソラタ選手の勝利です!! 最後は相打ちに終わりましたが、ニドクイン一体で第1回戦を突破しましたぁ!!』
「……よしっ!」
呆然としているカネミツ少年を余所に、ソラタは小さくガッツポーズ。無事に1回戦を突破したソラタは2回戦進出を決めた。
ポケモンリーグ・セキエイ大会初日、幸先の良いスタートを切ったソラタに、2回戦でどんな相手が待ち受けているのか、次回に続く。
次回は2回戦、どのフィールドで、どんな相手が待っているのか、お楽しみに。