ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第50話
「予選リーグ最後の試合」
ついに始まったポケモンリーグ・セキエイ大会も既に4回戦を迎えていた。
ソラタ、シズホ、サトシ、シゲルも順調に勝ち上がっており、ソラタは氷のフィールドで、サトシは草のフィールドで4回戦を戦う事になっている中、何と岩のフィールドではまさかのシゲルとシズホが対戦する事になっていたのだ。
ソラタがそれに気付いたのはシズホの試合を観に岩のフィールドに来て、シズホの前の試合にヨシキというトレーナーが出ていたのが切っ掛けだった。
ヨシキと言えばアニメでシゲルが4回戦で戦い、敗北したゴローニャのトレーナーだったのを思い出し、つまりこの世界でのシゲルの相手はヨシキではないという事、なら誰がと次のシズホの試合の組み合わせを見て驚いた。フィールドにシズホとシゲルが出て来たのだから。
正直、まだ今のシゲルのレベルでシズホと互角の戦いが出来るかと問われれば、難しい。事実、シゲルは1体目、2体目と、全てシズホのゴルダック1体によって敗北し、残るニドキングすらも追い詰められているのだ。
『さあシゲル選手、残るポケモンは1体! シズホ選手はまだ1体目のゴルダックが健在! シゲル選手、絶体絶命です!! ここから挽回なるのか!!』
「ニドキング! “メガトンパンチ”だ!!」
「ニィドォオオ!!」
ニドキングの残り体力が少ない状況で、シゲルが勝負に出た。ニドキングが巨体に似合わぬ動きで拳を振り上げながら走り出し、ゴルダックに迫る中、シズホは冷静にその動きを見つめている。
「ゴルダック」
「ゴパッ」
「“サイコキネシス”です」
ニドキングの“メガトンパンチ”がゴルダックに命中する直前、その拳が止まった。ゴルダックの“サイコキネシス”によってニドキングの動きが止められ、身体の自由を奪われたのだ。
「ニドキング!!」
「トドメの“ハイドロポンプ”です」
「ゴォッパアアア!!」
動きを止められた状態から至近距離の“ハイドロポンプ”は強烈だ。流石のシゲルが育てたニドキングでも2つの効果抜群の技に耐えられず、吹き飛ばされて倒れたまま目を回してしまった。
「ニドキング、戦闘不能! よってこの試合、シズホ選手の勝ち!!」
『やりました! シズホ選手、見事ゴルダック1体で4回戦を勝ち抜きましたぁ!!』
4回戦敗退が決まり、シゲルが悔しそうに崩れる中、シズホはゴルダックをモンスターボールに戻すと、シゲルを見る事も無く振り返りフィールドを後にしようとする。
だが、途中でその歩みが止まり、観客席を見上げて、真っ直ぐソラタの姿を確認して見つめて来た。
「ああ、待ってろ……俺も直ぐに5回戦に行く」
シズホの、先に決勝リーグで待っていると言わんばかりの視線を受けたソラタも、頷き返して呟いた。
シズホも、ソラタが頷いた事に満足したのか、笑みを浮かべて今度こそフィールドを後にする。
シズホが立ち去った後、シゲルもニドキングをボールに戻してフィールドを後にしたので、念のためソラタは席を立ってスタジアムの外に向かった。シゲルの事だ、気丈にふるまうかもしいれないが、相当悔しいと感じている筈だから。
「お、シゲルと……サトシも居たか」
スタジアムの外に出てみれば、シゲルがいつも移動に使っている車の前で、サトシとシゲルが話をしているのが見えた。
ソラタも近づいてみれば、二人がソラタに気付いたのか手を挙げて挨拶をしてきたので、ソラタも手を挙げて返すと、二人に歩み寄る。
「ソラタ、あのシズホって選手がキミのライバルかい?」
「……サトシから?」
「ああ、君の知り合いだって聞いてね……成程、キミがライバル視している程の選手なら、僕が負けるのも納得だ」
「シゲル……」
シゲルは自分の敗北に納得したようだが、サトシは何処か納得出来ていないのか、シゲルを心配そうに見つめていた。
「正直、シズホ選手は強かったよ……この僕がゴルダック一体に完敗するなんて、思いもしなかった。まだまだ世界は広いんだなって実感したね、まさか同年代でソラタ以外に負けるなんて思いもしなかった」
「確かに、シズホは強いよ。俺もこれまで2回、シズホとはバトルしてきたけど、2回とも引き分けてる」
「ハハハ、納得だよ……それじゃ、僕はそろそろ失礼するね」
シゲルが泣き続ける取り巻きと共に去って行った。それを見送っているサトシを尻目に、ソラタも試合時間が迫っているからと氷のフィールドスタジアムに向かう。
シズホが5回戦、決勝リーグへ進出した以上、ソラタも遊んでいる暇は無い。4回戦、必ず勝ってシズホの待つ決勝リーグへ進むのだ。
予選リーグ最後の試合、ソラタが戦う舞台は氷のフィールド。この試合に勝てばシズホの待つ決勝リーグに進出する事になる。
決勝リーグに進めるのは16名のトレーナー、3回戦終了時点で32名のトレーナーが残っていて、今日の4回戦で決勝トーナメントに進んだのは既に9名、残り7試合が終われば予選リーグ終了となるのだ。
『さあ、いよいよこの氷のフィールドで行われる4回戦第3試合、予選リーグも残り僅か! この試合で熱いバトルをするのは、この2名のトレーナーだ! 赤サイド、ハナダシティのセンジュ選手! 緑サイド、マサラタウンのソラタ選手!』
氷のフィールドにある選手台にソラタと、対戦相手の青年、センジュが立つ。どちらも決勝リーグ進出が掛かったこの試合、負ける訳にはいかないと気合は十分だ。
『この試合、見事勝利して決勝リーグへと駒を進めるのはどちらの選手なのか!! 氷のフィールド4回戦第3試合開始!!』
「頼むぞ“パルシェン”!」
「行け、“ゲンガー”!」
センジュのポケモンはパルシェン、ソラタはゲンガーでのバトルだ。
「パルシェン! “つららばり”!!」
「回避して“おにび”!」
先手でパルシェンが放った氷柱が飛んできたが、ゲンガーは余裕で回避しつつ周囲に展開した炎を一つに纏め、パルシェンに放った。
炎を受けたパルシェンはダメージを受けなかったが、これで状態異常の一つ“やけど”状態になる。
「構うなパルシェン! “オーロラビーム”!」
流石にここまで勝ち進んで来たトレーナーというだけあってセンジュは“おにび”の効果を知っているらしい。
更に、火傷を負ったポケモンに物理技ではなく特殊技を指示するのも上手い。火傷状態では物理攻撃力が低下するので、即座に切り替えてきた。
「“シャドーボール”!!」
しかし、火傷状態では常にダメージが蓄積していくので、長期戦は不可能。速めにゲンガーを倒さねばパルシェンは不利になる。
ゲンガーの“シャドーボール”が“オーロラビーム”を相殺したのを見て、センジュは別の一手を考えたらしい。
「“アクアリング”だ!」
『これは上手い! 火傷状態のパルシェンに“アクアリング”で常時回復をさせる事で長期戦を可能にした!』
確かに上手い手だが、流石にソラタも長期戦をするつもりは無い。ゲンガーに目を向けると、彼も頷いて返して拳を握った。
「“10まんボルト”!」
「っ! 避けろパルシェン!!」
パルシェンは物理耐性が非常に高いポケモンだが、その半面特殊耐性が低い。効果抜群の電気技、それも特殊攻撃に分類される“10まんボルト”は今のパルシェンには非常に危険だ。
回避を指示したセンジュだが、パルシェンは然程素早いポケモンとは言えない。避け切れずに“10まんボルト”が直撃する。
「パルシェン! 一か八かの“ふぶき”だ!!」
電撃を受けている中、パルシェンがゲンガーに向けて“ふぶき”を放った。氷タイプの大技、直撃を受ければ大ダメージは必死だが……。
「“ゴーストダイブ”!!」
ゲンガーの姿が消えて“ふぶき”は外れた。それどころか、パルシェンの目の前に現れたゲンガーからの拳を受けてパルシェンは回復が追い付かず目を回して倒れてしまった。
「パルシェン、戦闘不能!」
『惜しかったぁ! センジュ選手のパルシェン、相打ち覚悟の“ふぶき”を放つもソラタ選手とゲンガーが一枚上手だった!!』
パルシェンをボールに戻したセンジュは次のボールを構えると、次のポケモンには自信があるのか、不敵な笑みを浮かべた。
「行け! ペルシアン!!」
センジュの2番手はノーマルタイプのペルシアンだった。これは不味い、この時点でゲンガーは“シャドーボール”と“ゴーストダイブ”を封じられたも同然、“おにび”と“10まんボルト”しか使えなくなった。
「ゲンガー! “おにび”!」
「ペルシアン! “でんじは”!」
これで両者状態異常になった。ペルシアンは火傷、ゲンガーは麻痺、勝負は互角の状況か。
「ゲンガー! “10まんボルト”!」
「ゲンゲロゲーン!!」
「ペルシアン! 回避して“バークアウト”だ!!」
「ニャォオオ!!」
ゲンガーの放った“10まんボルト”はペルシアンの素早い動きに回避され、逆に反撃で放たれた悪タイプの技、“バークアウト”がゲンガーに直撃、効果は抜群だ。
「チッ……どうする? 技2つを封じられて、攻撃技は“10まんボルト”のみ、そのうえ麻痺状態か」
明らかに状況は悪い。なら、ソラタが使用するべきはフィールドを利用した戦術のみ。
「よし! ゲンガー! 連続で“シャドーボール”!!」
『おおっとソラタ選手、ノーマルタイプのペルシアンに対してゴーストタイプの技を指示したぞ!? 効果が無いのに、これは指示ミスか!?』
「何を考えているのかは知らないが、自棄になったかな? ペルシアン、避ける必要は無い! そのまま“わるだくみ”だ!」
そう、それで良い。油断してくれている方がソラタの狙いを悟られる心配は無いのだから。
ゲンガーが放った無数の“シャドーボール”が動く気配の無いペルシアンに向かい、そのまますり抜けてしまう。
「まだまだ! もう一度連続で“シャドーボール”!!」
「いったい何をしたいのかな君は? ペルシアン、もう終わらせよう、“バークアウト”!!」
再度放たれた連続の“シャドーボール”がペルシアンをすり抜けていく。そして、それが終わって直ぐに勝負を決めようとペルシアンが動こうとした時だった。
「ニャァア!?」
足元の氷が割れて分厚い氷の下のプールにペルシアンが落ちてしまった。
「ペルシアン!?」
「今だ!! “10まんボルト”!!」
水に落ちたペルシアンは周囲の氷が邪魔で身動きが出来ない。その中で“10まんボルト”の直撃を受けてしまい、電撃が止んだ後には目を回して水に浮かぶペルシアンの姿が。
「ペルシアン、戦闘不能!!」
『お見事! ソラタ選手、“シャドーボール”をわざとペルシアンにすり抜けさせて足元の氷を削り、ペルシアンが動いた事で脆くなった氷が割れて水に落とすというフィールドを利用した戦術でペルシアンを撃破!!』
だが、ゲンガーもそろそろ限界だ。麻痺状態に加え、“バークアウト”のダメージが残っているので、次のバトルに耐えられるかどうか。
「もう後がない。頼むぞドククラゲ!」
センジュ、最後のポケモンはメノクラゲの進化系、ドククラゲだった。
『センジュ選手、残るポケモンはドククラゲ! もう後がない! ソラタ選手のゲンガーを相手に、どう戦うのか!!』
「ドククラゲ! “みずのはどう”!!」
「ゲンガー! 回避して“10まんボルト”だ!」
ドククラゲが放った“みずのはどう”を回避したゲンガーはお返しにと“10まんボルト”を放った。
だが、それがセンジュの狙い通りだったと気付くことは、出来なかった。
「“ミラーコート”!!」
「っ! しまった!?」
ドククラゲの身体が虹色の光に包まれると、“10まんボルト”が直撃した瞬間軌道を捻じ曲げてゲンガーへと跳ね返した。
「ゲェエエエン!?」
“10まんボルト”自体は電気タイプの技だが、“ミラーコート”はエスパータイプの技だ。
毒タイプを持つゲンガーには効果抜群、ダメージの蓄積もあったゲンガーは耐えられず目を回して倒れてしまう。
「ゲンガー、戦闘不能!」
油断した。まさかの“ミラーコート”でゲンガーが戦闘不能になり、ボールに戻したソラタは、次のボールをホルダーから取り出して、己が油断を戒める。
「頼むぞ、ウインディ!」
「ウォン!!」
『ソラタ選手、2番手は炎タイプのウインディ! ドククラゲとは相性が悪いが、どう戦うつもりなのか!』
「出すポケモンを間違えたな! ドククラゲ! “みずのはどう”!」
「“りゅうのはどう”だ!」
ドククラゲの“みずのはどう”を、“りゅうのはどう”で相殺したウインディはその場から走り出した。
「“しんそく”!」
「っ! は、速い!」
『これは速い! ソラタ選手のウインディ、目にも止まらぬ速さだ!!』
「ドククラゲ! 相手が素早くともフィールド全体に攻撃が及べば意味が無い!! “ヘドロウェーブ”だ!!」
ドククラゲの“ヘドロウェーブ”によって、大量のヘドロがフィールド全体に津波のように襲い掛かる。
流石にウインディもこれは避けられないだろうと思われたのだが、氷のフィールドは氷の山があるのに救われた。
氷の山を利用して飛び上がったウインディはヘドロの波を飛び越え、ドククラゲに迫る。
「馬鹿め! 空中では身動きを取れまい! “みずのはどう”!!」
「ウインディ! “ワイルドボルト”!!」
自身に迫る“みずのはどう”に対し、ウインディは全身に電気を纏う事で防御、そのままドククラゲに向けて急降下、突撃して2匹は煙の中へと消えた。
「ドククラゲ!!」
『ウインディの“ワイルドボルト”炸裂!! 効果は抜群だ!! ドククラゲ、耐えられるか!?』
「ド、ク~」
煙が晴れると、威風堂々と立つウインディの足元で目を回したドククラゲが倒れていた。
「ドククラゲ、戦闘不能! よってこの試合、ソラタ選手の勝ち!!」
『決まったぁあああ!! ソラタ選手、見事4回戦を勝ち抜き、決勝リーグへと進出を決めました!!!』
決まった。見事ソラタは4回戦に勝利、5回戦からはメインスタジアムであるセキエイスタジアムでの試合となる。
長かった予選リーグを終えて、フィールドを立ち去ろうとしたソラタは、観客席にいるシズホの姿に気付き、足を止めた。
「勝ったぜ」
ソラタとシズホ、互いに見つめ合って闘志を燃やす。二人が戦うのは決勝リーグ、セキエイスタジアムでだ。
ソラタもシズホも、もはやお互いの事しか眼中に無い。このポケモンリーグで、決着をつける事をずっと願っていた。
それがもうすぐ実現するのだと、決勝リーグを楽しみにしながらソラタはスタジアムを立ち去るのだった。
次回は決勝リーグ前のお休み。