ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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休息回です


第51話 「休息は母と共に」

ポケットモンスター

転生したのは始めに旅立った子供

 

第51話

「休息は母と共に」

 

 ポケモンリーグも既に予選リーグが全て終了し、決勝リーグ出場選手16名が決まった。その中にはソラタを始め、サトシ、シズホも含まれており、今は決勝リーグ前の3日間の休息期間だ。

 この3日間でポケモンもトレーナーもしっかり休んで、5回戦に備えて準備を整えるのが、決勝リーグ前の恒例なのである。

 

「とは言え、対戦相手が決まるのは明日の抽選でだから、正直初日は暇なんだけどなぁ」

 

 既にポケモンセンターでポケモン達の回復も終わり、コテージに戻って来たソラタは暇を持て余していた。

 さてどうしたものかと考えていると、コテージのチャイムを鳴らす音が響いて来客を知らせる。

 誰か来る用事でも入っていただろうかと疑問に思いつつもベッドから起き上がり、玄関まで行って扉を開けると、そこにはマサラタウンで別れて以来となる母・アオノの姿があった。

 

「母さん!」

「やっほーソラタ、元気だった?」

「元気も何も、まだ1カ月経ってないよ」

 

 母が応援に来るとは聞いていたが、もしかして今日セキエイ入りしたのだろうか。

 

「実は、初日からセキエイに来てたんだ」

「初日から?」

「うん、ソラタの試合全部見てたよ」

 

 単純に、ソラタに会いに来なかったのは邪魔したくなかったからなのだとか。

 

「まぁ、入ってよ」

「うん、お邪魔します」

 

 コテージの中に案内してお茶を出すと、アオノもテーブルの前に正座して出されたお茶を飲む。

 

「1回戦と2回戦は危な気なく勝てたけど、3回戦と4回戦は少しだけ油断しちゃったかな?」

「だなぁ、少し気が緩んでたかも」

 

 1回戦から4回戦までの試合全てを見ていたアオノは、ソラタの試合の評価をしてくれた。

 アオノ曰く、1回戦と2回戦は問題無かったが、3回戦と4回戦はもう少し戦いようがあったとの事。

 確かに対戦相手も強かったが、もう少し考えていれば少なくとも全試合ポケモン1体のみで勝ち抜く事は出来たというのがアオノの評価だ。

 

「因みにお母さんがセキエイ大会に出た時はカンナさんに負けるまでフシギバナ一体だけで勝ち上がって来たよ」

「母さんって確かセキエイ大会ベスト4だっけ……マジか」

 

 準決勝までフシギバナ一体だけで勝ち進んだというアオノの恐ろしさ。それは確かにカンナが居なければ優勝していたと言われていただけの事はある。

 

「ところでソラタ、お昼ご飯まだでしょ? 道具と材料持ってきたからコテージの簡易キッチン使わせてもらうね」

「マジ? 助かる!」

 

 コテージにも簡易キッチンがあるのだが、流石に選手村で無料で食事が出来るから使っていなかったけど、母が料理してくれるのなら存分に使って欲しい。

 選手村のレストランで食べる食事も確かに美味しいが、やはりソラタとしては母の手料理が一番なのだ。

 

「ねぇ母さん」

「ん~?」

 

 料理をしているアオノの後ろ姿を見つめながら、ベッドに腰かけるソラタは次いでテーブルに並べたモンスターボールに目を向けつつ問いかけた。

 

「母さんから見て、今回のセキエイ大会の有力なトレーナーって誰?」

「そうねぇ……何人か居たけど、お母さんは特にシズホ選手に注目してるかな」

「シズホに……」

「あら、ソラタ知り合いなの?」

「まぁね」

 

 アオノが言うには、シズホはソラタと同じトレーナー歴1年未満でありながら実力は上級者レベル、使用ポケモンの選択や技の構成、どれも一級品だという。

 勿論、まだまだアオノから見れば未熟ではあるが、それも経験を積めば解消される問題、正直現段階で足りないのが経験だけというのは、凄い事なのだとか。

 

「間違いなく優勝候補の一人だと思うわ」

「そっか……」

 

 自分の母にライバルがそう評価されていると思うと、嬉しくもあり、複雑でもあった。だけど、ライバルが高評価を受けているのだと思えば悪い気はしない。

 

「シズホとはさ、旅の間に2回バトルをしたんだ」

「そうなの?」

「ああ、だけどどっちも引き分けで終わった……だから、シズホと二人で約束したんだ、ポケモンリーグの舞台で決着をつけようって」

「そっかぁ……じゃあソラタにとってのライバルなんだね」

 

 アオノには当時、ライバルと呼べる者はいなかったらしい。同じ時期にオーキド博士からポケモンを貰ってマサラタウンを旅立った同期は居たが、誰一人ポケモンリーグにアオノと一緒に参加出来た者は居なかった。

 

「はい、出来上がり。ソラタが5回戦以降も勝つようにチキンカツ! それとソラタの大好きな唐揚げもね」

「おお!」

 

 ソラタの好きな物ばかり。勿論、栄養も考えてサラダもあるが、チキンカツに唐揚げは本当に嬉しい。

 

「さあ食べて食べて! ソラタが頑張れるように、お母さん頑張って作ったから」

「いただきます!」

 

 母が作ってくれる食事はどれも美味しい。特にソラタの大好物である唐揚げは絶品だ。正直、ソラタはレストランなどで食べる唐揚げより母が作る唐揚げの方が断然上だと思っている程、アオノは料理上手なのだ。

 

「うま~」

 

 

 食後、アオノが食器を洗っているのを尻目に、ソラタはテーブルに置いたモンスターボールを見つめながら考え込んでいた。

 5回戦からメインスタジアムでの試合となる事を考えると、今までのフィールドを利用した戦術は使えない。

 ならば真正面からのバトルがメインとなるのだが、メインパーティー以外は正直言ってフィールドを利用しない戦術で戦うには少しばかり不安が残るのだ。

 

「多分、ピジョットとニドクインくらいか、自信を持って戦えるのは」

 

 次点でウインディとゲンガーで、残るスターミーと一度も使用していないフーディンはまだ少し不安だった。

 

「スターミーとフーディンの育成が少しだけ足りなかったなぁ……」

 

 反省はそれくらいにして、5回戦は兎も角、6回戦……つまり準々決勝からのフルバトルの事を考えなければならない。

 

「ソラタ、何してるの?」

「ああ、5回戦以降の試合について考えてたんだ」

 

 洗い物を終えたアオノがベッドに座るソラタの横に腰かけると、テーブルに置いてあるモンスターボールの内、リザードンが入ったボールを手に取った。

 

「今日は考えなくても良いと思うよ? 明日の抽選会で5回戦以降のトーナメント表が決まるんだから」

「う~ん、でも何もしないのも落ち着かないんだよなぁ」

 

 生憎、暇を満喫するような性格をしていない。常に何か考えていないと落ち着かないのだ。

 

「その辺は、お父さんに似たのねぇ」

「ん~、かもしれない」

 

 おっとりしているアオノとは違い、父はソラタと同じで常に働いていたいタイプだ。休日の暇な時間ですら何かしら仕事に関係する書類を読んでないと落ち着かないくらいには。

 

「でも、休むべき時にしっかり休むのもトレーナーの大事な仕事だからね? ソラタが疲れてたら、ポケモン達だって最高のパフォーマンスを発揮出来ないんだから」

「それは……理解してる」

 

 ならよろしいと、母はソラタの頭を撫でてギュッと頭を抱き寄せた。

 突然、何をするのかと離れようとするソラタの頭をがっちり固定されると、ソラタの耳が丁度アオノの胸に当たり、その奥の心臓の鼓動が聞こえて来る。

 

「……母さん、恥ずかしいんだけど」

「聞きませ~ん、ソラタはこのままゆっくり休むと良いよ」

「いや、この歳になって母親に抱かれて寝るとか……」

 

 母の心臓の鼓動が耳に心地良いのは確かで、落ち着くのも間違いない。だけど、肉体年齢は10歳位でも心は40歳近くになるソラタにとって27歳のアオノの胸が顔に当たっているという現状は、どうしても気にしてしまうのだ。

 

「ソラタは昔からそうだよねぇ……でも、こうしてると落ち着くでしょ?」

「むぅ……」

 

 転生して、アオノの子供として過ごす内に精神年齢が下がったのだろうか。アオノの言う通り落ち着いて、そして段々と眠くなってきてしまう。

 母の心臓の鼓動がどうしても、ソラタに安心感を与えてくれて、瞼が重くなってくるのを自覚した。

 

「そのまま寝て良いよ……いつも一杯頑張ってるソラタは、今日くらいお母さんに甘えて、ゆっくり休んでね」

 

 そんな母の言葉が、ボーっとする意識の中で聞こえてきて、ゆっくりとソラタの意識は睡魔に抗えず眠りに落ちてしまった。

 そんな愛する我が子の様子を微笑みながら見つめて、頭を撫で続けるアオノは、そっとソラタの頭を己の膝の上に置いて、それから再び撫で始めるのだった。

 

 

 翌日、ソラタは抽選会場に来ていた。そこには5回戦に進出したトレーナー達が集まっており、受付の前には水槽が置かれている。

 5回戦出場選手は順番に釣り竿で水槽内のコイキングを釣り、その身体に書かれた番号を受付に伝える事で決勝リーグのトーナメントが決まるのだ。

 

「では次、ワカバタウンのシズホさん」

「はい」

 

 シズホが呼ばれた。シズホは手に持った釣り竿の糸の先にあるルアーを水槽に垂らすと、直ぐにヒット、釣り上げたコイキングの身体にはB-2の文字が。

 

「シズホさんはB-2、5回戦第6試合になります」

 

 トーナメントボードにはAー1からBー4まで分けられており、先に抽選を終えたサトシもA-3に写真が載っている。

 更にB-2の所にもシズホの写真が映し出され、対戦相手が決まった。

 

「では次、マサラタウンのソラタ君、どうぞ」

「はい」

 

 ソラタの番になった。釣り糸を垂らして直ぐに手応えを感じ、引き上げてみれば、釣れたコイキングの身体にはB-4の文字が書かれている。

 

「ソラタ君はB-4、5回戦第8試合になりますね」

 

 B-4、それはつまり……トーナメント表を改めて見れば、順調に勝ち進んだ場合、シズホとの直接対決は7回戦……つまり準決勝で、という事になる。

 

「決勝の舞台じゃないみたいだ」

「ええ」

「だけど……」

「勝った方が決勝に進める……ですね」

 

 ソラタとシズホの決着には十分な舞台だろう。闘志を燃やす二人が戦う舞台は、もう間も無く始まろうとしていた。




次回は5回戦、メイン会場であるセキエイスタジアムでの試合となります。

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