ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第59話
「閉会と別れ」
多くのトレーナーが熱いバトルを繰り広げたポケモンリーグ・セキエイ大会も遂に終わりの時を迎えていた。
現在、決勝戦が行われているセキエイスタジアムには2体のポケモンが睨み合っており、観客たちも固唾を飲んで行く末を見守っている。
『さあ、長きに渡るポケモンリーグ・セキエイ大会もいよいよ大詰め! 勝つのはどちらのトレーナーなのか!!』
「プテラ! “ほのおのキバ”!!」
「ハッサム! “バレットパンチ”!!」
フィールドで激闘を繰り広げる2体のポケモン、ジュンイチ選手のプテラとシズホのハッサムが激突、最後に立っていたのは……。
「ハッサム、戦闘不能! よってこの試合、ジュンイチ選手の勝ち!!」
『試合終了!! 見事、決勝戦を制し、ポケモンリーグ・セキエイ大会優勝を決めたのは、タマムシシティのジュンイチ選手だ!!』
決勝戦、ジュンイチ選手はプテラともう一体を残した状態で勝利、シズホはプテラという壁を超える事は出来なかった。
『しかし、シズホ選手の健闘も称えたいところ! 準決勝の激闘によりドクターストップの掛かったバクフーンとエーフィが不在の状況で良く戦いました!』
そう、シズホは決勝戦を万全の状態で戦えなかったのは敗因として考えられるだろう。ソラタとの試合でバクフーンとエーフィがドクターストップ、決勝には出せない状態になってしまった為に、シズホは万全な状態での決勝に挑めなかったのだ。
試合が終わり、フィールドを去ったシズホは選手控室に戻る。震えそうになる手を抑えながらも控室のドアノブを掴んで何とか扉を開くと。
「おかえり……お疲れ様、シズホ」
ソラタが出迎えてくれた。その姿を見て色々限界だったのか、シズホは何も言わずソラタの胸に飛び込んで声を押し殺しながら涙を流す。
「よく頑張った」
「でも、私……ソラタさんの分もって」
「気にしなくて良い……シズホとポケモン達が頑張ったのは理解してるし、ジュンイチ選手が強かった、それだけの事だ」
シズホの頭に手を置いて泣き続ける彼女の背中をポンポンと叩いて慰める。
正直、準決勝でソラタが勝っていた場合、ソラタだとリザードンとガブリアス、ピカチュウにドクターストップが掛かってしまっていたので、どの道ジュンイチ選手には勝てなかった。
同じ状況のシズホがジュンイチ選手を残り2体まで追い詰めたのは、ソラタから見れば見事と言う他に無い。
「お互い、チャンピオンへの夢がまだ途絶えた訳じゃない……今夜は思いっきり食べて寝て、明日の閉会式で気持ちを切り替えよう」
「……はい」
だけど今は、静かに泣き続けるシズホを抱き締め、泣き止むまで頭を撫で続けるのだった。
閉会式が始まった。大会に出場した選手の殆どがセキエイスタジアムに入場し、タマランゼ会長から選手全員に大会出場の証であるメモリアルプレートが渡され、最後に表彰台には優勝者のジュンイチ選手、準優勝のシズホ、ベスト4のソラタとサユリ選手が並んだ。
『さあ、表彰台にはポケモンリーグ上位入賞者が立っております! 本当に嬉しそうです!』
拍手で称えられ、手を振って応える4人、優勝の喜び、優勝出来なかった悔しさ、色々な思いはあれど、こうして表彰台に立てた事が何よりの名誉だと全員笑顔で手を振っている。
最後にスタジアムの電気が消え、花火が打ち上がってポケモンリーグ・セキエイ大会閉会式は終わった。
「終わったな」
閉会式が終わった後、全員が立ち去って無人になったスタジアムでソラタは炎の消えた聖火台を見つめながらポツリと呟いた。
長いようで短いリーグが終わり、ソラタの中で何かが燃え尽きたのと、同時に新しい何かが燃え上がるのを感じている。
「ソラタさん」
「シズホ……」
ふと、後ろから声を掛けられ振り返ればシズホが微笑みながら立っていた。
「終わっちゃいましたね」
「ああ」
リーグ優勝出来なかった二人に、チャンピオンリーグへの出場資格は無い。チャンピオンになるという夢は、今回は果たされなかったが……。
「俺は、もう次の目標を決めてる」
「奇遇ですね、私もですよ」
シズホがソラタの隣まで来たのでお互いに向き合う。シズホの瞳にもソラタの瞳にも、諦めの色は無かった。
「「次は、ジョウトリーグで」」
そう、カントーでのポケモンリーグで負けたからと、チャンピオンになる夢は終わらない。
次のリーグが行われる地方で直近にあるのはジョウトリーグだ。今から少しの間修行をして、ジョウト地方を旅してバッジを集めて、今度はジョウトリーグでの優勝を狙えば良いのだ。
「次に会う時は、お互いにジョウトを旅しているときになるのかな」
「そうですね、でも本当の決着はジョウトリーグで、です」
「……」
「あの時、ソラタさんはガバイトを完全に育て切れていなかった。ピカチュウも、進化の予定があるのでしょう? 私も、エレブーを完全に育てられてませんでしたし、バンギラスも最近進化したばかりでしたから」
お互い、準備が完璧だったとは言えなかった。だからジョウトリーグの舞台で、今度こそ互いに完璧な状態で戦って決着を付けようと、シズホは言っている。
「そうだな……ああそうだ、俺だってまだまだ今のパーティーが完璧だなんて思ってない。ジョウトリーグまでに完璧なパーティーに仕上げて、今度こそお互い納得の行くバトルをしよう」
それまでは、暫しの別れだ。
ソラタはシズホに向けて右手を差し出した。別れる前に、握手をしようと。
「……」
だけどシズホはその手を取る事無く、むしろ全身でソラタに突っ込み思いっきり抱き着いてきた。
「し、シズホ……?」
「暫く、会えませんから……約束してください、私以外にライバルを作っちゃ、駄目ですからね?」
「……ああ、当然だ。俺にとって永遠のライバルは、シズホ以外にあり得ない」
その言葉に満足したのか、スッと離れたシズホは若干頬が赤いのを誤魔化しながら踵を返して歩き始めた。
ソラタはそんなシズホを見送るでもなく、互いに背を向けたままジョウトでの再会を信じて別れる。
次に会った時は、今よりももっと成長して、強くなっていると胸の内で誓いながら。
翌朝、ソラタは大会期間中世話になったコテージの掃除を終えて荷物を纏め外に出るとマサラタウン目指して歩き始めた。
足元にはボールから出ていたニンフィアが歩きながらソラタの顔を見上げ嬉しそうに笑顔を見せている。
「フィア!」
「ああ、帰ろうニンフィア……マサラタウンに!」
そう言って走り出したソラタを、ニンフィアも走って追いかける。そんな一人と一匹の様子を上空から眺める存在が居る事にソラタは気付かなかった。
その存在はソラタの姿を見て満足そうに頷くと、白銀の大きな翼を羽ばたいて銀色の粒子をまき散らしながらジョウト地方目掛けて飛び立つのだった。
これにてカントー編終了となります。
次回から修行編を挟んで、ジョウト編は修行編が終わってからになります。