ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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大変お待たせしました。


第61話 「傷ついたラルトス」

ポケットモンスター

転生したのは始めに旅立った子供

 

第61話

「傷ついたラルトス」

 

 ジョウトリーグ出場に向けて修行の旅をしているソラタは、カロス地方のミアレシティを出発してシャラシティに向けて歩いていた。

 道中、ミアレシティを出て直ぐにゲットしたヤヤコマを育成しつつ順調に歩みを進め、今は丁度中間地点辺りまで来たところだ。

 

「よし、ヤヤコマ! そのまま急降下しながら“はがねのつばさ”だ」

「ヤコ!」

 

 ソラタの視線の先でヤヤコマが翼に鋼のエネルギーを纏いながら急降下してきて、そのまま標的役のリザードン目掛けて“はがねのつばさ”を放った。

 リザードンは冷静にヤヤコマの“はがねのつばさ”の出来を確認しながら片手で受け止めるとヤヤコマに対して頷いてみせる。

 

「ヤコ?」

「リザァ」

「ヤッコー!」

 

 どうやらリザードンに褒められたらしく、ヤヤコマは嬉しそうに飛び回った。実はリザードン、ヤヤコマをゲットしてからずっとヤヤコマの指導役をしてくれていて、ヤヤコマもリザードンを師匠として慕っているのだ。

 

「リザードン、そろそろヤヤコマは実戦に出しても問題無さそうか?」

「リザ? ……グルゥ!」

 

 グッドサインを見せたリザードン、彼の目から見てもヤヤコマは十分実戦に耐えうるレベルに到達したらしい。

 

「ならシャラシティに着いたらシャラジムで少しだけ調整させて貰うか」

 

 ジム戦ではないが、少しだけ挑戦させて貰ってヤヤコマの調整を行うのもアリかもしれない。

 そんな事を考えながらソラタは旅を再開する為、ヤヤコマとリザードンをモンスターボールに戻そうとしたのだが、ヤヤコマがふと何かに気付いたように飛び出してしまった。

 

「ヤヤコマ!?」

「ヤッコー!」

 

 何を見つけたというのか、慌てて追いかけてヤヤコマが急降下した場所まで来ると、そこにはヤヤコマと、それから傷ついて気を失っているポケモンを発見した。

 

「ヤコ!」

「おいおい……!」

 

 ぐったりと倒れ伏すそのポケモン、前後に伸びた赤い三角形の角とおかっぱの髪を思わせる緑色の被り物のポケモンは、きもちポケモンのラルトスだ。

 全身傷だらけで、意識は無く、呼吸も浅い……非常に危険な状況なのは一目瞭然、慌ててバッグから“すごいキズぐすり”を取り出すと全身の傷に吹きかけてやる。

 

「ラ……ル……」

「大丈夫だ、絶対に助けてやるからな!」

 

 応急処置を終えてラルトスを抱き上げると、ヤヤコマをモンスターボールに戻してリザードンに目を向ける。

 するとリザードンもソラタの言いたいことを理解してか乗りやすいように屈んでくれたので、遠慮無く背中に跨ると近くのポケモンセンター目指して飛び立った。

 

「ラ……?」

「っ! 目を覚ましたか? もう少しだけ我慢してくれ、もう少しでお前を治療出来る所へ連れて行くからな」

 

 ソラタの言葉を理解しているのかしていないのか、そのまま再び意識を失ったラルトスをもう一度しっかり抱え直して、ソラタはポケモンセンターの看板が見えてきたのでリザードンへスピードアップするよう指示する。

 ポケモンセンター入口前に着陸したリザードンをモンスターボールに戻すと、直ぐにセンター内へ入って受付に立つジョーイさんの下へ急いだ。

 

「ジョーイさん!」

「あら、いらっしゃい……その子は?」

 

 ジョーイさんが穏やかな笑みから一転、ソラタの抱える傷だらけのラルトスを見て直ぐに真剣な眼差しに変わる。

 

「多分、野生のラルトスだと思うんですが、見つけた時にはこんな状況で……一応、“すごいキズぐすり”で応急処置はしましたが、回復する様子も無く」

「わかったわ! プクリン、ストレッチャーを!!」

「プク!」

 

 ジョーイさんの指示でポケモンセンターのアシストポケモンであるプクリンが急ぎストレッチャーを持って来たので、その上にラルトスを寝かせると直ぐに処置室へと運ばれた。

 

「ラルトス……頑張れよ」

 

 後はジョーイさんを信じて待つしか無い。だが大丈夫だ、ジョーイさんはポケモン治療のスペシャリスト、ポケモンドクターなのだから。

 

 

 ジョーイさんとプクリンが処置室に入って暫く経ってようやく、扉が開いてジョーイさんが出て来た。

 

「ジョーイさん! ラルトスは!?」

「……もう大丈夫よ、ダメージ自体は大きかったけど応急処置してくれた事もあって峠は越えたわ。一晩眠れば歩ける程度には回復する筈よ」

「……はぁ~、よかったぁ」

 

 安心したように身体から力が抜け、廊下にあった椅子に座り込んだソラタ、それを見て笑みを浮かべたジョーイさんが隣に腰かける。

 

「あ、えっと俺はカントーから来たマサラタウンのソラタって言います」

「ソラタ君ね。それで、あのラルトスの事だけど、詳しい事を聞かせて貰える?」

「はい」

 

 ジョーイさんに尋ねられたので、ソラタはラルトスを見つけた経緯から話し出し、応急処置をして直ぐにポケモンセンターを目指した旨を伝えた。

 

「なるほど……実はあのラルトスなんだけど、一度誰かにゲットされた形跡があるのよ」

「……それって」

「ええ、一度トレーナーにゲットされて、そして逃がされたポケモンね。しかも、状況や傷の具合から見て、傷ついた状態のまま逃がされて放置されたと見て間違い無さそうよ」

「……っ! なんて、酷い事を!!」

 

 もし、あのままヤヤコマが見つけてソラタが駆けつけなければ、ラルトスは死んでいたかもしれないのだ。

 そんな無責任な事を仕出かしたトレーナーが居るなど、胸糞悪くなるどころではない。

 

「確か、法律ではポケモンを逃がす時の条件ってありましたよね?」

「ええそうよ、よく勉強しているのね」

「父がカントーポケモン協会の理事をしているもので」

 

 この世界の法律は全ての地方共通の法律が存在している。その中にはポケモンを逃がす際の法律も存在しており、今回のラルトスの件はその法律に触れている可能性が高いのだ。

 

「ポケモンを逃がす時は、逃がすポケモンが自立行動可能な状況……つまりバトルなどで負ったダメージの回復や傷の治療などを行った上でなければならない」

「その通り、だから今回のラルトスについては、その法律に違反しているわ」

 

 ゲットしたポケモンを逃がす行為は決して法律違反にはならない。だが、逃がす為に最低限守らなければならない法律は存在するのだ。

 

「あのラルトスの件、私の方からジュンサーさんに通報しておく事にします」

「お願いします」

 

 おそらく、犯人は見つからないだろう。だが、ジョーイさんにはこういった件をジュンサーさんに通報、報告する義務がある。

 

「そういえばソラタ君はわざわざカントーからカロスへ何をしに? カロスリーグへの挑戦かしら?」

「いえ、実はジョウトリーグに出る為に一度修行をしようと思いまして、それでカロスに来ていたんです」

「まぁ、ジョウトリーグに……」

「カロスリーグにも興味ありますけど、もう既にジョウトリーグを見据えた調整に入っているものですから」

 

 ヤヤコマを育成しているのは調整の追加段階に入ったからだ。他にもゲットしておきたいポケモンはいるので、ゲット次第直ぐに育成してジョウト地方の旅に備える予定だった。

 

「あ、そうだ! 今晩はここに宿泊したいんですけど」

「あら、それじゃあ宿泊ルームの鍵を持って来るわね。ちょっと待ってて……ラルトスの様子を見たいなら処置室の横の部屋からガラス越しだけど見れるから」

「はい」

 

 ジョーイさんが鍵を取りに行くのを見送って、ソラタは処置室横の部屋に入る。

 中は大きなガラス越しではあるが処置室の中を見る事が出来、処置室の中央にあるベッドの上で包帯を巻いたラルトスが眠っている姿を確認出来た。

 

「良かったなラルトス、助かって……ごめんな、人間の勝手でお前を苦しめて」

 

 その後、ジョーイさんが宿泊ルームの鍵を持ってきてくれたので、部屋を出たソラタは気付かなかった。

 処置室で眠るラルトスが薄ら目を開いてソラタの背中を見つめていた事に。

 

 

 翌朝、宿泊ルームの鍵を受付のジョーイさんの所へ持って行ったソラタはジョーイさんからラルトスが目を覚ました事を聞かされた。

 

「本当ですか!?」

「ええ、会って行く?」

「勿論!」

 

 ジョーイさんに案内されたのは昨日の処置室ではなく、ポケモン用の病棟とも呼べる部屋だった。

 その部屋に並べられたベッドの一つに、昨日のラルトスが立っている。まだ包帯は取れそうにないが、昨日の状況から随分回復したようで、ソラタの姿を見つけたラルトスがベッドの上から飛び跳ねてソラタに飛びついた。

 

「ラル!」

「おっと! 元気になったみたいだなラルトス!」

「ラルラル!」

「でも傷はまだ完全には塞がってないんだから、飛び跳ねちゃ駄目だろ?」

「ラルラ~ル♪」

 

 ソラタの言葉を聞いてるのか聞いてないのか、気にせず頭を擦りつけて来るラルトスが可愛い。

 

「随分懐かれたみたいね」

「えっと、そうみたいです」

「ラルトスは“きもちポケモン”と呼ばれるだけあって、人の気持ちを、感情を読み取る力があるポケモンだから、きっとソラタ君のラルトスを心配する感情を感じ取ったのね」

 

 傷ついた状態で人間に捨てられたというのに、ソラタに対して一切の警戒心を見せずに抱き着いて来る辺り、確かにラルトスはソラタを信用しているのが見て取れた。

 

「ねぇソラタ君、あなたさえ良ければ、そのラルトスを連れて行ってあげてくれないかしら?」

「俺が……?」

「ラルトスも、それを望んでいるみたいよ?」

「……そうなのか? ラルトス」

「ラル!」

 

 するとラルトスが突然“ねんりき”でソラタの持つ空のモンスターボールを引っ張り出して、ソラタに差し出して来た。

 

「そっか……なら、俺と一緒に行くか! ラルトス!」

「ラル!!」

 

 モンスターボールを受け取って開閉スイッチをラルトスに向けると、ラルトスも笑顔でスイッチを押した。

 モンスターボールが開いてラルトスが中に入ると、暫しスイッチが赤く光ってボール自体が揺れる。そして直ぐにポンッ! という音と共に揺れが無くなりスイッチの赤い光も消えた。

 

「よし! ラルトス、ゲットだ!」

 

 こうしてカロス地方でヤヤコマに続く2匹目のゲットはラルトスとなった。

 一度はトレーナーに傷ついた状態で捨てられて命の危機に瀕しながらも、それでも己を心の底から心配してくれたソラタを信じてくれたラルトスを大事に育てようと誓い、ソラタは再びシャラシティに向けて旅立つのだった。




次回はシャラシティ到着です。
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