ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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本編の前に番外編を一つ


番外編1 「ワカバタウンのシズホ」

ポケットモンスター

転生したのは始めに旅立った子供

 

番外編1

「ワカバタウンのシズホ」

 

 ポケモンリーグ・セキエイ大会が終わり、故郷であるジョウト地方のワカバタウンへ向かって歩いていた少女、シズホは道中でリーグの全試合中、最も熱くなったバトルである準決勝について思いを馳せていた。

 生まれて初めてのライバル、同年代の子供達と比べても知識やセンスなどずば抜けていた為に孤独だった己と初めて対等のバトルをしてくれた唯一人の少年、ソラタの姿を思い浮かべて少し頬を赤らめながら嬉しそうにバトルの時の事を思い出す。

 

「楽しかったですね……本当に、今までで一番楽しいバトルでした」

 

 思えば、ソラタだけだった。ウツギ博士からヒノアラシを貰って家族だったイーブイと共に旅に出てから、シズホを本当の意味で熱くしてくれたバトルの相手は。

 ソラタと初めて出会った時はまだクチバジムを攻略したばかりの頃で、バクフーンもまだマグマラシの頃だった。

 偶々休んでいたポケモンセンターでトレーナーの少年に絡まれてバトルをしていたら、それを見学していた彼に気付いて声を掛けたのが始まり。

 話をしてみれば何かと気が合う事に気付いて、あれよあれよという間にバトルをする事になっていた。

 マグマラシとリザードの1体のみでのバトルだったが、あのバトルで初めてシズホは己の中の何かが燃え上がるのを感じていたのだ。

 これまでジムリーダー相手ですら感じなかった絶対に負けたくない、絶対に勝つんだという激しい感情の高まり。同時にもっともっと長く、それこそ永遠に彼とバトルをしていたいという願望。

 何もかも初めて感じる熱に、いつしかシズホはソラタと、ソラタとのバトルに夢中になっていた。

 

「再会は、確かストンタウンの手前でしたね」

 

 ジムバッジを順調にゲットしてストンタウンの手前でポケモン達のおやつの材料として木の実を探していた時だったか。

 久しぶりに再会したソラタは以前と変わらず話が合い、ストンタウンでパーティーに参加した時も、その後のバトルも、何もかも変わらなかった。

 

「そういえば、あの時のバトルがキングドラが進化して最初のバトルでしたねぇ」

 

 2回目のソラタとのバトルは当時まだ進化していなかったストライクと、進化したてのキングドラを出した。

 ソラタが出したポケモンはキレイハナとギャラドス、1勝1敗の引き分けに終わったが、やはりソラタとのバトルはシズホの中にある感情を熱く激しく燃え上がらせてくれたものだ。

 

「でも、何よりも」

 

 そう、何よりも熱いバトルをしたのは、今までの人生で一番激しく感情が燃え上がったのはポケモンリーグ・セキエイ大会準決勝、ソラタとの初めてのフルバトルは互いに一進一退の激闘だった。

 互いにベストメンバー、ベストコンディションで挑んだ試合は互角、最後の切り札対決となったバクフーンとリザードンのバトルは恐らくこの先永遠に忘れられないだろう。

 

「はぁ……人がせっかく良い思い出に浸っていたというのに」

 

 ソラタとの準決勝戦を思い出していたというのに、無粋な輩が居たものだ。

 

「ポケモンリーグ・セキエイ大会準優勝者のシズホ選手だな」

 

 胸にRのマークが描かれた黒服の男、シズホもよく知っている。カントーとジョウトで暗躍する犯罪組織ロケット団だ。

 

「何か御用でも?」

「光栄に思うが良い! 貴様は我がロケット団から見染められた! 貴様には我らが栄光あるロケット団の一員に加わる権利を与える!! 是非ともその力を我らの為に振るうが良い!!」

 

 ふざけた事を言うものだ。折角ソラタとの思い出を振り返って幸せな気持ちになっていたというのに、一気に最悪な気分にさせられてしまった。

 

「お断りします。犯罪者如きが、折角の幸せな気分を害して……ただで済むと思わないでください」

「何だと!? ロケット団へ勧誘される栄誉を断るなど愚か者め! ならば貴様など必要無い! 貴様のポケモンだけ頂いていく!! ゆけ、ベトベトン!!」

 

 男がモンスターボールを投げるとベトベトンが出て来た。それを見て不機嫌そうな表情を浮かべたシズホは静かに腰ベルトのホルダーからヘビーボールを取り出して投げると、バンギラスが姿を現す。

 

「バッギャアアア!!!」

「丁度良いです。つい先ほど手に入れたばかりのアレを試すとしましょうか」

 

 シズホはポーチに入れていた手に入れたばかりのアイテムを取り出してバンギラスに投げる。

 バンギラスがキャッチしたのを確認したシズホは首から下げて服の下に隠していたネックレスを取り出して掲げた。

 シズホが掲げたネックレスには虹色に輝く石が取り付けてあり、バンギラスがキャッチしたアイテムは透明が掛かった薄緑色の石で、中に濃い緑と赤の模様が入っている。

 

「な、何だそれは……?」

「行きますよバンギラス! 絆よ、高まれ! 最果ての力を此処に!! メガシンカ!!!」

「バギャアアアア!!!!」

 

 シズホのバンギラスが光に包まれ姿を変えた。メガバンギラスへとメガシンカを果たして咆哮すると、その威圧感に怯むベトベトンと男を睨んだ。

 

「な、なんなんだよ一体!?」

「バンギラス、“ストーンエッジ”です」

「バギャ、バッギャアアア!!」

 

 突如、ベトベトンの真下から岩の刃が突き出してベトベトンは上空へと打ち上げられてしまった。

 

「ベトベトン!?」

「べ、ベ~ト~……」

「“ぶんまわす”」

 

 メガバンギラスが巨体に似合わぬ速度でジャンプすると、空中で自由落下していたベトベトンをキャッチ、そのまま振り回して地面へと勢いよく叩き落とす。

 

「トドメです! “ギガインパクト”!!」

 

 ワザと男の目の前にベトベトンを落として、そのままメガバンギラスは落下の勢いを利用した“ギガインパクト”を叩き込んだ。

 男も巻き込んで大爆発を起こし、煙が晴れると目を回す男とベトベトンの姿と、無傷のメガバンギラスの姿が。

 

「お疲れ様でしたバンギラス」

 

 シズホが声を掛けるとメガシンカが解けて通常のバンギラスに戻ったのでヘビーボールに戻すと、気を失っている男に欠片も興味を示す事も無く歩き出した。

 

「ソラタさん、私は新たな力を得ました……きっと貴方も同じなのでしょうね」

 

 胸元で輝くキーストーンを掲げながら、そう呟くと再び服の中へ仕舞い込んでワカバタウンを目指す。

 ジョウトリーグで、再びソラタとバトルする時は互いにメガシンカが使えるようになっていれば良いなと、そんな事を考えながら。

 

 そんな風に、ソラタとの再会を楽しみにしていたからこそだろうか。後にジョウト地方を旅している時にソラタと再会したシズホの第一声が……。

 

「……は?」

 

 生まれて初めて絶対零度の冷たい声になってしまったのは。目の前にいるソラタと、ソラタの横に立つ少女(・・)の姿に、冷たい激情がシズホの中で燃え上がってしまったのは。




要望がありましたので、シズホの話です。
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