ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
第67話 「旅立ちの前の幼馴染」
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第67話
「旅立ちの前の幼馴染」
ジョウトリーグに出場する為、カロス地方とアローラ地方へ修行の旅に出ていたソラタは、修行期間を終えてカントー地方へと帰って来ていた。
クチバ空港に降り立ちクチバシティからマサラタウンへ向けて移動している最中のソラタはトキワシティを出た辺りで懐かしい顔に出会った。
「シゲル!」
「おや? ソラタじゃないか」
茶色のローブ姿のシゲルは以前みたいに女の子を連れていない。それにセキエイ大会の時より顔つきが大人びて見えるのは彼の成長の証か。
「シゲルも修行に?」
「ああ、改めてカントーを旅して回っていたんだけど、ジョウトリーグに出る為に一度マサラタウンに帰ろうと思ってね」
なるほど、シゲルも既にジョウトリーグを視野に入れていたらしい。しかも応援団の女の子達を連れていない所に本気度の高さが伺えた。
「ソラタもジョウトリーグ目指して修行していたんだろう?」
「ああ、俺はカロス地方とアローラ地方へ行って修行していた」
「それは……随分と遠くへ行っていたんだね」
わざわざ別地方に、それも飛行機でなければ行けないような遠い地方へ修行に行っていた事に、シゲルは悔しさにも似た表情を浮かべている。
おそらくシゲルの中には別地方での修行という考えが浮かばなかったのだろう。決して彼自身生半可な修行をしていたつもりはないにしても、別地方での修行という時点でソラタの本気度を感じ取ったらしい。
「シゲル、サトシについては聞いてるか?」
「ああ、お爺様のお使いでオレンジ諸島に行って、そのままオレンジリーグに出場したって聞いているよ」
「なるほど、あいつやっぱり出場したのか」
「ウイナーズカップに出場して勝ったらしい」
それは会うのが楽しみだと二人で笑っていると、やっとマサラタウンが見えてきた。そのまま家に向かおうかとも思ったのだが、シゲルが先にオーキド研究所へ行くというのでソラタも付き合う事になり、研究所へ向かう。
するとオーキド研究所が大きなテントに覆われているのが見えて、その上空にはニャースを模した気球が、あれはソラタの記憶違いでなければロケット団の気球だ。
「シゲル、あれはロケット団の」
「ああ、また研究所を狙って悪さをするつもりみたいだね」
シゲルとソラタは互いに頷き合うとモンスターボールを取り出してポケモンを出した。シゲルはニドクインを、ソラタはガブリアスを、それぞれ出してテントを破るために指示を出す。
「ニドクイン! “メタルクロー”!!」
「ガブリアス! “ドラゴンクロー”!!」
2体の爪によってテントが破られ飛んでいく、すると何故か上にあった気球が落ちて大量のモンスターボールが散らばった。
そして、研究所の庭にはサトシ達と、それからロケット団のムサシとコジロウ、ニャース、ベロリンガ、ウツボットの姿が。
「シゲル! ソラタ!」
「行け! ニドクイン!!」
「続け! ガブリアス!!」
サトシがソラタとシゲルの名前を叫ぶ中、二人はそれぞれのポケモンに指示を出した。
「ベロリンガ! “したでなめる”よ!!」
「ウツボット! “はっぱカッター”だ!!」
「ニドクイン! 舌を受け止めろ!」
「ガブリアス! “はっぱカッター”を受け止めろ! “ストーンエッジ”!!」
ニドクインがベロリンガの舌を受け止め、ガブリアスの岩の刃がウツボットの“はっぱカッター”を防ぎ切る。
その隙にニドクインがベロリンガの舌を掴んだまま振り回してムサシ達にぶつけた。
「今だガブリアス! ウツボットに“ドラゴンクロー”!!」
がら空きになったウツボットに素早く接近したガブリアスがドラゴンのオーラを纏った爪を叩き込み、ウツボットもムサシ達の所へ吹き飛ばされた。
「今だ!!」
「トドメだ!!」
「「“はかいこうせん”!!」」
ガブリアスとニドクインの“はかいこうせん”が直撃、爆発してロケット団が吹き飛ばされた。
恒例の「やなかんじ~」を見届けつつシゲルとソラタはそれぞれのポケモンを労うと、縛られているらしいオーキド博士達のロープを切るように指示する。
「おお、助かったぞい」
「大丈夫でしたか? お爺様」
「ああ、感謝するぞ」
全員のロープを切り終えると、ソラタにとっては初顔となる青年、ケンジが目を輝かせてガブリアスを見つめ、どこからともなくスケッチブックを取り出した。
「初めて見るポケモンだ! 観察させて頂きます!!」
確かにガブリアスはカントーやジョウト、オレンジ諸島では見かけないポケモンだから珍しいのだろう。
「あのニドクインもガブリアスも、強いわね」
「ああ、ソラタのガブリアスはセキエイ大会にも出ていたが……あの頃より更に強くなっている」
「シゲルもソラタも、今まで修行の旅に出ていたんじゃよ。ニドクインとガブリアスの扱い方も大したものじゃ」
オーキド博士が手放しで二人を褒めるものだから、サトシのプライドに火が点いたらしい。
「俺だってオレンジリーグのウイナーズカップで勝ったんだぜ!」
「それであの程度か? ロケット団なんかにいいようにされて」
「あ……」
シゲルの言葉にサトシが言葉を失った。事実、自分もピカチュウも拘束され、ベトベトンまで眠らされてしまっていた。
「セキエイ大会で俺はシゲルよりも上だったの、忘れたのか!?」
「それは過去だよ、サトシ……それに、それを言ってしまえば君よりもソラタの方が上だ。そして僕も、あの頃とは違う」
「へぇ……だったら」
サトシはシゲルとソラタ、二人に目を向けると闘志を燃やしてきた。
「バトルしようぜ! バトルロワイヤルって奴だ!」
「……面白い、良いだろう」
「なるほど、俺もやるか」
こうして、オーキド研究所の庭を使ってソラタとシゲルとサトシ、三人によるバトルロワイヤル方式でのバトルが行われることとなった。
使用ポケモンはそれぞれ1体のみ、育てたポケモンの中で一番自信のある1体を選出して戦う。
当然、サトシが選んだのは相棒であるピカチュウ、シゲルはなんとイーブイだった。
「へぇ、ピカチュウとイーブイか……なら俺はコイツだ!」
ソラタが選んだのはニンフィアだった。ニンフィアの姿を見たケンジが再び興奮したようにスケッチブックに鉛筆を走らせているが、それを無視して早速バトルが始まった。
「ピカチュウ! イーブイに“でんこうせっか”だ!!」
「イーブイ! “リフレクター”!! それからニンフィアに対して“スピードスター”だ!」
「ニンフィア! 回避してピカチュウに“シャドーボール”!!」
イーブイが“リフレクター”でピカチュウの“でんこうせっか”を防御、その隙に“スピードスター”をニンフィアに放ったが、ニンフィアは難なく回避して“シャドーボール”をピカチュウに放った。
「ピカチュウ! 避けて“10まんボルト”だ!!」
「イーブイ、“かげぶんしん”!」
「ニンフィア、“でんこうせっか”!」
ピカチュウが“シャドーボール”を回避して十八番の“10まんボルト”を放つが、イーブイもニンフィアもそれぞれが回避してしまう。
「こうなったらピカチュウ! “こうそくいどう”だ!」
「ピカ!」
「イーブイ、ピカチュウとニンフィアに“スピードスター”!」
ピカチュウが“こうそくいどう”で動き回る中、イーブイが“スピードスター”を全方位に発射、しかし高速で動くピカチュウに当たる事は無く、ニンフィアも持前の素早さで簡単に回避して見せた。
「今だピカチュウ! “かみなり”だ!!」
甘い、ここで溜めの大きい“かみなり”は良い選択とは言えなかった。当然、その隙にシゲルはイーブイに“ロケットずつき”を指示、ピカチュウは顎下にイーブイの“ロケットずつき”を受けて戦闘不能に。
「ニンフィア、“ムーンフォース”」
そしてイーブイもまた、ニンフィアの“ムーンフォース”に飲み込まれて戦闘不能となってしまった。
「……やっぱり、まだイーブイじゃソラタのニンフィアには敵わないか」
「伊達にセキエイ大会での主力メンバーじゃないさ」
だが、シゲルのイーブイも良く育てられていた。
「3人とも中々良い勝負じゃったぞ。特にシゲルは、あれから随分と力を付けたようじゃな」
「前進あるのみだものね、お爺様……いつか、ソラタにも勝てるくらいに成長して見せるよ」
「うむうむ」
「サトシ、君も頑張るんだね」
シゲルがイーブイをモンスターボールに戻すのを見てソラタもニンフィアを戻すと一旦家に帰るというシゲルに続き、ソラタも家に帰るため博士達に挨拶をすると立ち去ろうとした。
「シゲル! ソラタ! 次は俺が勝つからな!!」
そんなサトシの言葉を背に、オーキド研究所を去ったソラタとシゲルは途中で別れて己の家へと帰って行った。
オーキド研究所を後にしたソラタは母の待つ家へ帰ると洗濯物を干していた母アオノが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、ソラタ」
「ただいま、母さん」
荷物を部屋に置いてリビングに戻ると先に渡しておいたアローラ土産のマラサダドーナツを出してお茶を飲む母の姿があった。
自分の分のお茶を冷蔵庫から出して向かいの椅子に座るとドーナツを食べながら母に旅の話をする。
「というわけで、カロスでメガシンカを、アローラでZワザを、それぞれ使うのに必要なアイテムをゲット出来たんだ」
「あらまぁ、じゃあジョウトリーグで使う予定なの?」
「シズホと戦う時は遠慮なく使うつもりだけど、他だとどうかな? それにジョウトリーグってその辺のルールはどうなってる?」
「えっと確か……」
アオノは嘗て自分も出場したジョウトリーグについて思い返してみたが、10年も前の話なので流石にルールが変わっている筈だ。
「そもそも私が現役の頃はまだメガシンカもZワザも、そこまで普及してなかったから」
「ああ、それもそうか」
「ただ覚えているのは、私が戦ったワタルさんはキーストーンを持っていた事くらいかなぁ」
そうだ、母が出場したジョウトリーグで母を負かしたのは現チャンピオンのワタルだった。
「ワタルさん、10年前から強かったんだ」
「強かったわよぉ、セキエイ大会で戦ったカンナさんもそうだったけど、あの頃で既に四天王クラスの実力はあったんじゃないかしら?」
今のソラタはコンコンブル曰くチャンピオンリーグクラス、その先の四天王やチャンピオンには勝てないと言われた。
ジョウトを旅している中で更なるレベルアップが必要そうだ。少なくともジョウトリーグ時点で四天王クラスの実力まで伸ばさないといけない。
「明日にはジョウトへ出発するよ」
「帰って来たばかりなのに、もう行くのね」
「まあね、リフレッシュはアローラで十分してきた。もう気持ちはジョウトリーグに向いているんだ」
ならば今夜の夕食は豪勢にしようと母が張り切ってくれた。丁度、今晩は父も帰ってくるという事なので、ジョウトへ旅立つ前に家族揃っての食事を楽しむ事が出来る。
そして、翌朝になり旅支度を終えたソラタは、父がオーキド博士から受け取って来たという新しいポケモン図鑑を確認してから靴を履いて玄関に立った。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「頑張ってねソラタ」
「応援してるよ」
父と母に見送られながら、今度こそチャンピオンになる夢を叶えて見せると決意新たに、ソラタはマサラタウンを旅立った。
目指すはジョウト地方の始まりの町、ワカバタウン。そこでジョウトリーグ出場エントリーをしてジムバッジ集めをする事となる。
新たな地方、新たな挑戦、そして新たな出会い、何が待ち受けているのか楽しみにしながら、ソラタの新しい旅がついに始まるのだった。
次回は早速ジョウト入り、そこで早速新しい出会いが。