ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは始めに旅立った子供
第6話
「決着のニビジム」
ニビジム、タケシ戦の最後のポケモン、イワークを前にしてヒトカゲは倒れた。そして、2番手としてソラタが出したイーブイ、彼女はソラタにとって一番の相棒、兄妹同然に育ったソラタにとって妹みたいに信頼を寄せているパートナーだ。
「イワーク! “すてみタックル”!!」
「“でんこうせっか”で避けろ!」
初手“つぶらなひとみ”でイワークの攻撃力は下げたものの、“すてみタックル”の直撃はなるべく回避したい。
イーブイに“でんこうせっか”を指示して素早い動きで回避させると、イーブイはそのままイワークの周りを走り回る。
「っ! 素早い!」
「ウチのイーブイは素早さで言えばパーティー最速、しかも巨体のイワークでは小さくて小回りの利くイーブイを捉えるのは至難の業だ! イーブイ、イワークの顔面に“シャドーボール”!!」
「ぶいぶいぶいぶい! いぶぅぅぅ……いっ!」
走り回りながら口元に黒いシャドーエネルギーを溜め、球体となったそれをイワークの顔面に放った。
「イワァアアア!!!」
「イワーク!」
「畳み掛けろ! 連続で“シャドーボール”!!」
イーブイの周りに複数の“シャドーボール”が生成され、イワーク目掛けて放たれた。だが、それを黙って受けるほどタケシとイワークも甘くはない。
「迎撃だ! “いわなだれ”!」
“シャドーボール”に対して“いわなだれ”で対抗してきたイワーク、イワークの顔の周りに現れた無数の岩が雪崩の如く降り注ぎ、“シャドーボール”を打ち消しただけでなく、その先に居るイーブイにも襲い掛かった。
「かわせ!」
「ぶい!」
“いわなだれ”を回避したイーブイに再び“でんこうせっか”を指示しようとしたソラタだが、イーブイの周りを見て驚いた。
「ぶ、ぶい……」
何故ならイーブイの周り……否、フィールド全体に“いわなだれ”による岩が無数に転がり、障害物となって素早い動きを阻害している。
「これで素早さを封じたぞ。イワーク! イーブイを捕まえろ!! “しめつける”攻撃!!」
障害物の所為でまともに動き回れなくなったイーブイをイワークの大きな身体が周囲を囲むように動き、尾の先を使ってイーブイを捕まえようとした。
「タケシさん、迂闊ですよ……俺がイーブイにもジム戦対策を仕込んでないとでも?」
「っ!? まさか!!」
「“にどげり”だ!」
格闘タイプの技、“にどげり”は岩タイプに“こうかばつぐん”だ。イーブイが後ろ足でイワークの尾を蹴り、大きく跳ね返す。
「“シャドーボール”!!」
間髪入れず“シャドーボール”を放ってイワークに直撃させたイーブイはフィールドの岩の上に着地、“シャドーボール”の直撃を受けて仰け反ったイワークを見上げた。
「イワーク! “あなをほる”!!」
「イワァアアア!!!」
だが、タケシは冷静だった。冷静にイワークへ“あなをほる”を指示しすると、イワークは仰け反った反動を利用して、そのまま後ろへ頭から地面に突っ込み、穴を掘って地中に潜った。
「イーブイ! 走り回れ!!」
どこから出て来るか判らないイワークを相手に、一か所に留まるのは危険だ。イーブイを走り回らせて“あなをほる”の直撃を回避しようとしたのだが……。
「甘い!」
「イワァアア!!」
「ぶいぃいいい!?」
「イーブイ!」
地面から飛び出してきたイワークに下から突き上げられて空中に投げ出されたイーブイは、完全な無防備になった。
タケシはそこを見逃すほど、甘いジムリーダーではない。
「“しめつける”攻撃!」
「イーブイ!」
今度こそイワークに捕まった。“しめつける”によって巻かれたイワークの尾の中心でイーブイが苦しそうにしているが、その様子を見ていたタケシが少々疑問符を浮かべる。
「ダメージが思ったより少ないな……?」
「っ! イーブイ! もう一度“つぶらなひとみ”!! 更に“シャドーボール”!!」
最初の“つぶらなひとみ”の効果に気付きそうだ。そう思って完全にタケシが理解する前にもう一度“つぶらなひとみ”を指示、イワークの攻撃力が下がった所で“しめつける”の力が弱まり、隙が出来る。
もう一度“シャドーボール”をイワークの顔面に放って怯んだ事により、完全に拘束が緩んだ。イワークの尾から抜け出したイーブイはイワークの身体を駆け登り、頭上で飛び上がった。
「いっけぇええ!!! “にどげり”!!」
「ぶぅぅぅぅいっ! ぶいっ!」
「イワァアアア!!?」
頭上からの“にどげり”がイワークの脳天に突き刺さり、イワークは顔面から地面に叩きつけられた。
「イワーク!!」
「トドメだ!! 連続で“シャドーボール”!!」
最後に、倒れたイワーク目掛けて無数の“シャドーボール”が襲い掛かり、イワークは土煙の中に消える。
そして、煙が晴れた時、そこには……。
「イ、ワァ~」
倒れたまま目を回すイワークの姿が。
「い、イワーク戦闘不能! イーブイの勝ち! よって勝者、マサラタウンのソラタ!!」
ジロウ少年の判定によって、イワークは戦闘不能となり、ニビジムの戦いはソラタの勝利となった。
ソラタは自分の勝利が宣言されると、直ぐにイーブイへ駆け寄り、同じくソラタ目掛けて走って来るイーブイに両手を広げる。
「イーブイ!」
「ぶい!!」
「勝った! 勝ったよ俺達!!」
「ぶいぶい!!」
ソラタの胸目掛けて飛び込んで来たイーブイをキャッチして抱き上げると、イーブイもソラタと同じように喜び、ご機嫌な様子で両手をバタバタ振っている。
「……戻れ、イワーク」
タケシはソラタとイーブイの様子を微笑まし気に眺めつつ、イワークをモンスターボールに戻すと、投げ捨てていたベストの胸ポケットから目的の物を取り出してソラタとイーブイの所へ歩いてくる。
「ソラタ」
「タケシさん……」
「見事な戦いだった……君のヒトカゲも、イーブイも、良く育てられていて、何より君の事を、君が出す指示を、心から信頼していたからこそ、君達は勝利出来た」
「……はい」
「これは、そんな君達に敬意を表し渡そう……ニビジム勝利の証、グレーバッジだ」
タケシが差し出したグレーバッジを、振るえる手で受け取り、マジマジと見つめる。
照明の明かりに照らされて、キラリと光る真新しいバッジは、ゲームやアニメで見た事のあるグレーバッジと何一つ変わらないデザインだが、今こうして見ると、何よりも美しく見えて、何よりも誇らしく見えた。
「~~~~っ!! グレーバッジ、ゲット!!」
「いっぶい!!」
全身で喜びを表すソラタを見つめるタケシの表情は優しい。ジムリーダーたる自分を負かしたトレーナーが、こんなにも喜んでくれるなら、全力でバトルをした甲斐があるというものだ。
「次はハナダシティに向かうのか?」
「ええ、おつきみやまを超えてハナダシティに、次はハナダジムに挑戦するつもりですから」
「そうか……君の今後の活躍を期待させてもらうよ」
「はい、ありがとうございます」
こうして、ポケモンの世界に転生してから10年、初のジム戦に勝利したソラタは見事にグレーバッジをゲットした。
次に目指すはハナダシティのハナダジム、ソラタの冒険はまだまだ始まったばかりだ。
次回はニビシティを出ておつきみやまを目指しますが、その前にポケモンセンターでとある出会いが。