ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第70話
「ヒスイ」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタは弟子のククリと共に修行をしながら最初のジムがあるキキョウシティを目指していた。
その途中、メジカタウンという町に立ち寄って食料や“きずぐすり”などの補給、ポケモンセンターでのポケモン達の回復など、色々と予定があるので一泊する事となったのだ。
「師匠! このメジカタウンは近くにオドシシが生息しているらしいですよ」
「オドシシか……特に欲しいわけじゃないが、ククリは欲しいのか?」
「いえ、特には……ただ、昔ヒスイ地方の話を読んだ時に出てきたポケモンの名前でアヤシシっていうのがあって、もしかしてオドシシの進化系なのかなって」
「ああ、そういう……確かにアヤシシはオドシシの進化系だって言われている。ただ、現代のオドシシはアヤシシに進化しないぞ」
「そうなんですか?」
そう、昔のシンオウ地方、ヒスイ地方と呼ばれていた時代のオドシシはアヤシシというポケモンに進化したらしい。
だが、現代のオドシシがアヤシシに進化した事例は無い。現在残っている資料によると“バリアーラッシュ”という技が進化の鍵になっているらしいのだが、長い歴史の中で“バリアーラッシュ”という技がどんな技なのかという情報が失われてしまったので、オドシシに“バリアーラッシュ”を覚えさせられないのだ。
「一応、現代でも何とか“バリアーラッシュ”の情報を手に入れようと色々試しているらしいけどな」
「試すって何をです?」
「あるだろ、ランダムだけど様々な技が使える技ってのが」
「えっと……あ! “ゆびをふる”!!」
「正解だ」
そう、現代でも何とか“バリアーラッシュ”を復元する方法が模索されていて、その一つとして挙げられているのが“ゆびをふる”という技だ。
“ゆびをふる”が使えるポケモンに“ゆびをふる”を使わせて無数にある技の中からランダムで何とか“バリアーラッシュ”を引き当てようという実験が行われているらしいのだが、現在でも成功したという報告は無い。
「他にも幻のポケモン、ミュウを見つけて“バリアーラッシュ”を使わせようって話もある」
「確か、ミュウって全ての技が使えるポケモンです?」
「そうそう、ただミュウは目撃例こそ現代でもあるにはあるが……まぁお察しの通りだ」
「滅多に見つからないから幻なんですもんね」
一時は絶滅したとも言われていたミュウだが、現代でも数年に一度目撃したという報告があるので今でも生息しているだろうとは言われている。
「あ、因みに“ゆびをふる”って完全にランダムですけど、仮に“バリアーラッシュ”を引く確率ってどれだけなんですか?」
「およそ1/1470」
「せっ!? ……うわぁ」
絶対に無理じゃん。そんな事を思ったククリは話題を変えようとヒスイ地方についての知識を引っ張り出す事にした。
「そうだ、ストライク!」
「ん?」
「ストライクの進化系ってハッサムですよね? 師匠のセキエイ大会準決勝の対戦相手、シズホ選手も使っていた」
「そうだな」
確かにシズホの手持ちにはハッサムが居たが、それがどうしたのだろうか。
「あのですね。ヒスイ地方だった時代、ストライクはハッサム以外にも進化したらしいっていう情報があるんです」
「……バサギリの事か?」
「ですです! よく御存知でしたね!」
これでも前世の記憶があるし、そもそもソラタ自身がポケモンの研究資料や歴史的資料を読み漁るのが趣味なのもあって、実はバサギリの資料も読んだことがあるのだ。
「現代でストライクがバサギリに進化した事例が無いのってどうしてなんですか?」
「進化に必要なアイテムが何なのかが現代に伝わってない。失伝したからだって話だな」
そうなのだ。バサギリへ進化させるのに必要なアイテムが何なのか、それが現代に伝わっていない。
一応、ソラタは必要なアイテムを知っているが、実はそれ自体が現代では失われた物なのだ。
「そうなんですねぇ」
「ただ、イッシュ地方でバサギリを見たって報告があるらしいぞ」
「イッシュ地方……?」
「そう、そこでバサギリを見たっていう噂があるんだ」
もっとも、現時点ではまだ噂の域を出ない話ではある。それでも火の無い所に煙は出ないと調査員がイッシュに派遣された事もあるのだとか。
「結果としてバサギリのものではないかと思われる足跡は発見された。イッシュには現代でもストライクをバサギリに進化させるアイテムが残っているのではないかと言われている」
ただ、バサギリ自体は警戒心が強いのか調査で姿を確認出来た試しが無い。
因みにだが、バサギリだけでなくヒスイ時代に存在したポケモンで、リングマの進化系であるガチグマへの進化に必要なアイテムも現代に残っているのではないかと言われている。
「ガチグマ?」
「リングマの進化系だ。こっちは現代でも必要なアイテムの名前が残っていてな。しかもガチグマにもカントーとシンオウの間、キタカミの里にあるとこしえの森で目撃情報が残っている」
「そうなんですか!?」
「ただ、なぁ……」
実はガチグマの目撃情報と実際に見たという人間が残した絵を見た者がこれはガチグマじゃないだろうとバッサリ切り捨てたのだ。
「ガチグマは現代にも姿絵が残っている。でもその姿絵と目撃されたというガチグマの絵は似てはいるが別物だろうっていう話だ」
だから現代にガチグマが生息しているという話と、リングマを進化させるアイテムが残っているという話は出鱈目だと結論付けられている。
「師匠はどう思うんですか?」
「……俺個人の意見を言うなら、キタカミの里で目撃されたのはガチグマで間違いないだろうって事だな」
「でも、それは見た目が似てても別物って言われているんですよね?」
「可能性が無いわけじゃない。実際、この世には同じ名前のポケモンでも姿かたち、タイプまで異なるリージョンフォームや何々の姿っていう進化を遂げるポケモンも存在する。俺のイワンコも進化したらルガルガンだが、“まひるのすがた”と“まよなかのすがた”と言って、見た目が違う進化をする。それと同じじゃないかと思うんだ」
実を言うとソラタ自身、キタカミの里についてはそこまで詳しいわけではない。
前世、ソラタがゲームとしてプレイしていたポケモンのゲームは最新作がパルデアを舞台にしたものだったが、その後に出るであろうと言われていたDLCが出る前に死んでしまったので、他のシリーズほどやり込んでいないのだ。
「それにしても、ククリのヒスイ時代の知識は中々だな。もしかしてシンオウって結構、ヒスイ時代の資料が残っているのか?」
「残ってますよ。時々シンオウフェスって言ってヒスイ時代の街並みとかを再現したフェスをやってまして、その時にはヒスイ時代に関する資料や絵だったりを展示しますし、最近だと当時使われていたモンスターボールの設計図が発見されたとか」
「シンオウフェスか、存在自体は知ってたが……是非とも見てみたいな」
ポケモン研究の資料や歴史資料を見るのが趣味のソラタにはとって実に興味を惹かれるフェスだ。
実際、幼い頃にフェスの存在を知った時は行ってみたいと両親に言った事もあったのだが、ポケモン協会の理事とポケモンリーグ公認委員会の役員をしている父の仕事が忙しい事もあって、中々フェスの時期に休みを取る事が出来なくて今までフェスに参加する事は出来なかった。
「いつかフェスの時期目掛けて行ってみたいけど、暫くは無理だろうなぁ」
「師匠、チャンピオンになれば行けますよ!」
「なるほど、チャンピオンになれば旅をする事も無くなってフェスの時期にシンオウへ行く事も……って、チャンピオンもチャンピオンで滅茶苦茶忙しいんじゃなかったか?」
「でも、シンオウチャンピオンのシロナさんは何回かフェスに参加してますよ。開催側で、ですけど」
噂によると既に次回のフェスにも開催側として参加する事を決めているのだとか。
「アクティブだなぁ」
「元々考古学者でもありますから」
「でもシロナさんが考古学者になったのってチャンピオンになった後だろ? ああでも、そっかチャンピオンって大抵の人が兼業してるよな」
ポケモンGメンを兼業しているワタル、デボンコーポレーション次期社長にして役員のダイゴ、考古学者のシロナ、教員資格を持つアデク、女優のカルネ、兼業をしていないチャンピオンはガラルチャンピオンのダンデぐらいだろう。
「あれ? チャンピオンって何か兼業しないといけないルールとか無いよな?」
「無いと思いますが……」
どうなのだろうか。むしろチャンピオンは兼業しなければ食っていけないとかではなかろうか。
ダンデはガラル地方ポケモンリーグのローズ会長がスポンサーになっているので問題無いのだろうが、他の人はどうなのだろう。
「……趣味のポケモン研究の資料とか歴史資料とか読むのを仕事に出来るようにするべきか?」
そうなると将来はチャンピオン兼ポケモン研究者か。でも何を研究テーマにするべきなのか、正直ソラタは研究資料を読むのは本当に趣味の域で無差別に読んでいるだけだから特別何かを研究したいという考えは無いのだ。
「し、師匠! 今は余計な事を考えずに純粋にチャンピオンを目指すだけにしましょう! 後の事は後で、チャンピオンになってから考えれば良い事ですよ!」
「……それもそうだな」
まずはチャンピオンになれるかどうかなのだ。チャンピオンになった後の事を今から考えても仕方がない。
「じゃあククリ、明日メジカタウンを出たら早速ナエトルの新ワザの練習とホーホーの飛行速度上昇の為の訓練とチョンチーの育成をするぞ。俺のイワンコとアマルスも育てなきゃいけないから忙しくなる」
「了解でっす!」
キキョウシティまで残り僅か、ソラタの新しいポケモン達は問題無いとは言わないが、それでも十分ジム戦に通用するレベルまで育てている。しかしククリはまだまだポケモンもトレーナー本人も不安が残るレベル、これから更に厳しく指導しなければククリはキキョウジムを突破出来ない。
「鍵はチョンチーだな」
流石にランターンに進化するのは間に合わないだろうと思いつつ、実はそろそろ進化しそうなヒノヤコマを思い出して悩み始めるソラタであった。
次回はキキョウジムです