ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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ジム戦終わりです


第73話 「師匠の務め」

ポケットモンスター

転生したのは初めに旅立った子供

 

第73話

「師匠の務め」

 

 ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタは最初のジムがあるキキョウシティでキキョウジムに挑戦、見事ジムリーダーのハヤトに勝利して一つ目のバッジであるウイングバッジをゲットした。

 ソラタのジム戦の翌日は弟子であるククリのジム戦が行われた。ハヤトの一体目であるポッポにククリのホーホーが辛うじて勝利を納めるも、二体目のピジョンを相手に残り体力の少ない状態で戦うのは不可能と判断、ククリの二体目にはジム対策でゲットしたチョンチーが選ばれ、ピジョンVSチョンチーのバトルが始まろうとしている。

 

「チョンチー! “アクアリング”!」

「行くぞピジョン! “つばさでうつ”!」

 

 チョンチーは物理耐性の高いポケモンではない。それを知っているハヤトはピジョンに物理攻撃技である“つばさでうつ”を指示、いくら“アクアリング”で常時回復状態にあろうとも、回復量を上回るダメージを与え続ければジリ貧になるのはチョンチーとククリの方だ。

 

「いいよ、引き付けて!」

「何を狙っている……? 気を付けろピジョン! 一撃入れて即離脱だ!」

 

 ソラタにはククリの狙いが判っている。そもそも、今回の戦術を教えたのはソラタで、練習に付き合ったのもソラタとファイアローなのだ。

 

「今! “あやしいひかり”!!」

 

 翼を光らせて降下しながらチョンチーに迫るピジョンにタイミングを合わせ、一撃入れる為に翼を大きく振り上げながら丁度チョンチーの目の前にピジョンが来たタインミングでチョンチーの目が光った。

 

「ピジョ!?」

 

 一瞬だった。その光を至近距離から見てしまったピジョンは即座にバランスを崩して頭から地面に墜落、ゴロゴロと転がりながらも起き上がろうとして失敗するのを繰り返す。

 

「そういう事か! 最初の“アクアリング”は耐久型だと錯覚させる為にワザと!」

「……タイミングを掴むのはバッチリだな。これでピジョンは地に落ちただけでなく混乱して飛ぶことも儘ならない。今が攻め時だ!」

「はい! チョンチー、“ほうでん”!!」

 

 元々、ククリはこの戦術に使うのは“あやしいひかり”より“でんじは”の方が良いのではないかとソラタに意見した事があった。

 だが、ソラタにはこの場合はむしろ“あやしいひかり”の方が効果的で、そして間違いなくチョンチーが一方的に殴れる展開を作れると言われたのだが……確かにソラタの言う通りの展開になって、ククリとしては驚けば良いのか、この展開を完全に読み切ったソラタを尊敬すれば良いのか。

 一先ず、全部すれば良いと納得してチョンチーに“ほうでん”を指示すると、チョンチーの全身から電撃が放たれてピジョンに直撃する。

 

「ピジョジョジョジョ!?!?」

「師匠は言っていた。チョンチーは物理攻撃より特殊攻撃の方が強い個体が多いポケモンで、事実私のチョンチーもその例に漏れない特殊攻撃型だって……」

 

 だから“スパーク”ではなく“ほうでん”を選んだ。まだ“10まんボルト”を覚えられる程には育てられていないので特殊攻撃の電気技の中から選択した結果がこれ。

 

「駄目押しの一撃行くよ! “みずのはどう”!!」

 

 電撃を受けて混乱が解けそうになった所に“みずのはどう”が直撃、治りかけとはいえ混乱している頭に“みずのはどう”は効く。

 全身水濡れで再び混乱してしまったピジョンはもう、飛び上がる事は出来ない。そうなれば最早チョンチーの独壇場だ。

 

「トドメの“ほうでん”!!」

 

 全身水に濡れた状態のピジョンに再び襲い掛かった電撃は、先ほど以上のダメージとなってピジョンの体力を削り切る。

 電撃が止んだ頃には目を回して倒れるピジョンの姿がそこにあった。

 

「ピジョン、戦闘不能! チョンチーの勝ち!! よって勝者、ワカバタウンのククリ!!」

「や、やったぁ!!」

 

 見事、作戦が刺さってククリは勝利を納める事が出来た。ハヤトもピジョンをボールに戻しながら笑みを浮かべウイングバッジを懐から取り出しながらククリの前まで来る。

 

「見事だったよククリさん、作戦自体はソラタ君なのだろうけど、それを実行出来るだけの実力が確かにあるというのを見せて貰った……受け取ると良い、キキョウジム制覇の証、ウイングバッジだ」

「ありがとうございます!」

 

 ハヤトからウイングバッジを受け取ってチョンチーに見せながら喜ぶククリの様子を微笑ましそうに見ているソラタは隣にハヤトが歩いてきた事に気付いた。

 先ほどまでククリに笑顔を見せていたハヤトだが、ソラタの隣に来る頃には随分と神妙そうな表情を浮かべている。

 

「彼女、ジムに来るまでトレーナー戦の経験は?」

「2~3回だったか、実力的に同等程度の相手に」

「そうか、結果は……恐らく全戦全勝といった所かな?」

 

 正解だ。キキョウシティに来るまでククリは野生ポケモンにこそ負ける事はあってもトレーナーとのバトルでは負けていない。

 勿論、戦ったトレーナーがククリより弱かったとは言わないが、正直勝てて当たり前の相手であったのは否めない状況だった。

 

「こうしてキキョウジムも制覇して、そろそろ心配だな」

「……本当は、キキョウシティに着く前には一度経験させたかったんですけどね」

「というと?」

「……アイツ、飲み込みが早いんですよ」

 

 一緒に旅をして、師匠として色々と教えているからこそ判った。ククリの飲み込みは悪くないどころか、物凄く早いのだ。

 

「本来はキキョウシティ前に経験するのがベストでした。でもアイツの飲み込み、吸収の早さが成長を早めてしまって、結果として今に至るまで、アイツに敗北を経験させてやれなかった」

 

 そう、ハヤトとソラタが危惧しているのはククリがトレーナー相手に未だ敗北を知らない事なのだ。

 普通は、最初のジムに来るまでに何度か負けを経験しておくのが当たり前、敗北の経験が成長の助けとなるのに、それを経験していない危険性を話している。

 

「俺の予想では、そろそろ調子に乗り始めると思うんですよ」

「だろうな。ここまで負け知らずで、ジムリーダーにも勝てた……正直、一番調子に乗る時期だ」

「でも、次のヒワダシティへ向かう途中なら間違いなく経験出来ると思ってますよ。キキョウシティを出ればトレーナーのレベルも今までとは段違いに上がる。そこで敗北を経験するのがベターかなと」

 

 キキョウシティを出れば、トレーナーは大半がキキョウジムを突破した実力がある人間か、突破出来ずとも修行をして実力を伸ばしているトレーナーばかり、必ずククリより上の実力を持つ者がいる筈だ。

 

「調子に乗る時期に、実力の近いトレーナーに敗北する、か……下手をすると折れるぞ? 師として、その辺はどう考える?」

「……折れたのなら、残念ですがそこまでです。俺もジョウトリーグを目指す以上、弟子が心折れたからと一緒に立ち止まる事は出来ないですし、する気もありません」

「厳しいな」

「優しくして欲しいなら、そもそも他を当たれって話です」

 

 少なくとも、ソラタは自他共に厳しい。自分も、自分のポケモンも強くなる為に妥協は許さないし、弟子なら余計にだ。

 優しい師匠が欲しいなら他を当たればいい。心折れたのなら見捨てる。ソラタもチャンピオンを目指している立場上、立ち止まる事は許されないのだから。

 

「でも、期待しているところはあるんです」

「ほう?」

「さっきも言いましたが、アイツの呑み込みの早さは本当に凄い、成長速度の早さは見ていて面白いんですよ……いつか、アイツが俺の下から独り立ちして一端のトレーナーとなった時、どれだけ強くなれるのか、見てみたいっていう気持ちはあるんです」

「成程な……ソラタ君、君は厳しいけど、良い師匠だな」

 

 話はそこまでだ。ククリがチョンチーをボールに戻してこちらに来た。

 

「師匠!」

「ククリ、よくやった」

「はい! 師匠のおかげです! 私、本当に強くなれてるんですね!」

「ああ、間違いなくな」

 

 そう、間違いなく強くなれている。

 だからこそ願うのだ。今後敗北した時に心折れない事を。挫折しても直ぐに乗り越えてくれる事を。

 

「さあ、ポケモンセンターへ行こう。ポケモン達を休ませて、俺達も明日には出発するから、準備をしないとな」

「了解です!」

 

 ハヤトに挨拶をしてキキョウジムを後にすると、早速ポケモンセンターに向かってククリのホーホーとチョンチーを預けて買い物に出た。

 

「師匠、次のジムはヒワダタウンですか?」

「そうだ、ヒワダジム……虫タイプのジムだな」

「虫タイプ……イトマルとかキャタピー、ビードルは来るまでに見ましたけど」

「弱そう、か?」

「えっと、はい……」

 

 そう思ってしまうのも無理は無い。だが、虫タイプは決して弱いタイプではないのだ。

 

「ストライク、カイロス、ヘラクロスなんかは代表的な強い虫ポケモンだが、バタフリー、スピアー、アリアドスも十分強いポケモンだぞ」

「全部進化したポケモンですよね?」

「そうだ。虫ポケモンの特徴は進化するのが早い事にある」

 

 最終進化までが早いのが虫ポケモンの特徴、その分育てるのが楽で初心者向けと言われているが、だから弱いという訳ではない。

 

「虫タイプの強みは状態異常にしてくる技が豊富な所にある」

「状態異常ですか」

「混乱だけじゃない、毒、麻痺、眠り、厄介な状態異常を簡単に引き出してくるから長期戦に持ち込まれれば負けるのはこちらだ」

 

 この辺は今後教えていく事になるだろう。それに、今はソラタとしては考えなければならない重要な事が2つあるのだ。

 一つはハヤトとも話したククリの今後について、そしてもう一つはキキョウシティとヒワダタウンの間にあるリザフィックバレーについて。

 

「お前の実力が通用するか、楽しみだな」

 

 ソラタはリザードンの入ったボールを手に取り、そう呟く。サトシのリザードンではバレーで一番弱いリザードンにすら負けてしまったが、果たして己のリザードンはどこまで通用するのだろうか。

 サトシのようにリザードンを預けるつもりは欠片も無い。ただ、上を目指す身として現在の実力を知る良い機会が訪れたのだから、楽しみで仕方がないのだ。




次回は懸念していたククリの話。折れるか、乗り越えるか。

現在のソラタとククリの手持ち

ソラタ
・リザードン
・ニンフィア
・デンヂムシ
・ゾロア
・リオル


ククリ
・ナエトル
・ホーホー
・チョンチー



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