ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第75話
「リザードンの谷」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは二つ目のジムがあるヒワダタウンを目指していた。
道中、ククリは後にライバルとなる少女、メグリと出会いバトルを通じて更なる成長の切っ掛けを得る事が出来て正に旅は順調、今もリザフィックバレーと呼ばれる谷を歩いて……。
「ししししし師匠ぉ!? お、おおおおちおちおち!?」
「しっかり掴まってろよ~」
「グルゥ!」
歩いてはいなかった。今はソラタのリザードンの背中に乗って谷を飛行中なのだ。
「リザードン」
「グル?」
「ここにはリザフィックバレーって所があってな……別名、リザードンの谷って呼ばれているんだ」
「リザ」
「野生のリザードンの生息地らしい」
野生の荒波の中で育ったリザードンが沢山住んでいる場所、是非ともリザードンの実力を試してみたいと思っていたのだ。
「し、師匠、よく普通に喋れますね」
「慣れかな、リザードンにはよく乗って空飛んでたし」
「リザァ!」
リザードンも昔、進化したての頃はソラタを乗せて飛ぶのもやっとだったのに、今ではククリまで乗せて二人乗りでも問題なく飛べるほどになった。
成長を感じると共に頼もしさで一杯になるなと、ソラタは空の向こうを見つめていると、何やら影のようなものが見えて来る。
「あれは……」
だんだんと近づいてくるシルエット、あれは……リザードンだ。それもリボンを付けたリザードン、その背中には人影もあって、誰かが乗っているらしい。
「君たちー! この先は保護区だから一度止まって頂戴!」
「リザードン」
「グル」
リボンを付けたメスのリザードンに乗った女性に止められたので、リザードンに指示を出して滞空すると、隣までメスのリザードンがやってきた。
「君たち、この先はリザフィックバレーって言ってポケモン保護区になっているの。通るには許可がいるわ」
「別名、リザードンの谷ですよね?」
「知ってるの?」
「ええ、実は目的地がそこなので」
一応、自己紹介をした。それでリボンのリザードン……リサのトレーナーである女性、リザードン使いのジークにリザフィックバレーへの来訪目的を伝える。
ジョウトリーグ出場を目指して、ソラタのリザードンの実力を測っておきたい。その為にリザフィックバレーの、野生の荒波に揉まれたリザードンと勝負をしたいのだ。
「なるほどね……ふむふむ」
すると、話を聞いてジークはソラタのリザードンに目を向けると何やら頷いて再びソラタと目を合わせた。
「事情は理解した。良いわ、リザフィックバレーに案内してあげる」
「良いんですか!?」
「ええ、同じリザードン使いのよしみよ」
付いてきてと言ってリサと共に飛び立ったジークに続くようにソラタとククリもリザードンと共に飛ぶ。
ジークとリサに追い付くとジークは意外だという表情と感心といった表情が入り混じった顔をしていた。
「凄いわねあなたのリザードン、二人も人を乗せて飛んでるのにリサちゃんに追い付くなんて」
「まぁ、それなりに鍛えてますから」
「へぇ、流石はセキエイ大会ベスト4……君の名前を聞いて思い出したわ。準決勝で凄いバトルをしてた子よね?」
「見てたんですね」
「ええ、リザードンとバクフーンの最終決戦は手に汗握る良いバトルだったわ」
当然、今のリザードンはあの頃より更に強くなっている。
「それにしても意外だったわ」
「何がです?」
「あなたがポケモンにアクセサリーをするタイプだったなんてね。セキエイ大会の時は付けてなかったでしょ?」
ジークが指さした先、それはソラタのリザードンの右腕にある腕輪だった。
「ああ、これですか」
「そ、そういえば師匠、この腕輪ってどうしたんですか? ジークさんの言うようにセキエイ大会の映像では付けてませんでしたよね?」
「ああ、セキエイ大会の後に付けた物だからな……これはリザードナイトを取り付けた腕輪なんですよ」
「リザードナイト……もしかしてカロス地方で普及しているっていうメガシンカの!? 初めて見たわ……」
後ろでククリが首を傾げているので後で説明すると言い、ジークが降りたらよく見せて欲しいと言うので了承していると進行方向の先にリザードンの石造と大きな石扉が見えてきた。
「あれがリザフィックバレーよ」
「あそこが……よし、リザードン!」
「グルゥ!」
「え、ちょっ師匠!? まっキャアアアアアアアアア!?」
ソラタが指示すると、リザードンが加速。それに続くようにリサも加速して、ソラタの後ろから悲鳴が聞こえた気がするものの無視、見事扉の前に着地したのだが……。
「し、師匠……か、加速するときは……い、言ってくださオロロロロロロロロロ!」
「すまん」
「リザン」
扉の前の湖の畔で蹲り、虹色を吐くククリの背中を擦って謝罪、リザードンも申し訳なさそうにククリの肩に手を置くのだった。
ククリが落ち着いたので気を取り直し、ソラタとリザードンは目の前の大きな扉を見上げた。
この扉の向こうに野生のリザードンが暮らすリザフィックバレーがあり、日夜最強のリザードンの座を賭けた戦いが繰り広げられているのだと思うと武者震いがしてくる。
「じゃあ、開けるわね」
ジークの言葉と共にゆっくりと扉が開かれる。その向こうには沢山のリザードンが各々の生活をしている光景があった。
寝ているリザードン、食事をしているリザードン、バトルをしているリザードン達や観戦しているリザードン達、見渡す限りどこもリザードンだらけのリザードンの楽園。
「すごい……リザードンがこんなに」
あまりの光景にククリも感嘆の声を漏らし、呆然と見える範囲にいるリザードン達の姿に感動していた。
「ようこそソラタ君、ククリちゃん……ここがリザフィックバレー、リザードン達の聖地よ」
なるほど、ここがリザードンの聖地なのは間違いないだろう。安息の地と言っても言い。何故ならチラリと目線を岩場の窪みに向けてみればヒトカゲの世話をするリザードとリザードンの姿があって、そのリザードンの所に別のリザードンが食事を持って来る様子が伺えた。
「そうか、ここでタマゴが生まれてヒトカゲが孵り、そして進化してリザードンとなって別のリザードンと番いになるのか……良い環境ですね」
「ええ、あのヒトカゲも先月生まれたばかりで、リザードはお兄ちゃんに当たるのよ」
そして、あの2匹のリザードンは夫婦らしい。
「勿論、あのヒトカゲもリザードも、あのリザードン夫婦だけが育ててる訳じゃないわ。このリザフィックバレーでは子供達は皆で育てるのが掟なの」
最強を競い合うリザードン達がいる一方で、あのように幸せな暮らしをするリザードン達もいる。
本当に良い環境、良い光景だと和んでいると一匹のリザードンがソラタのリザードンに気が付いて近づいてきた。
「グル?」
「……リザァ」
ソラタのリザードンより少し体格が大きい、感じられる圧も相当なもの。だがソラタのリザードンも歴戦の猛者、その程度で屈したり怯んだりするような軟な鍛え方をしていない。
野生のリザードンがソラタのリザードンをジロジロと値踏みするように見つめると、やがて満足したのか来いよと言わんばかりに手招きして先ほどまで戦っていたリザードン達の群れに連れて行こうとする。
「あら、珍しいわね」
「珍しい?」
「あの子たちは普段からバトルをして己を鍛え高めている子たちでね。ここを訪れるリザードンのトレーナーは何人もいるけど、あの子たちがバトルに誘うようなリザードンは中々居ないのよ」
トレーナーに連れられたリザードンがバトルに誘われるのは稀なのだと、そう言うジークは珍しいものを見たとばかりに驚いているが、ソラタとリザードンにとっては大変ありがたい事だ。
どうやってリザードン達とバトルをしようかと考えていただけに、向こうから誘ってくれるなら渡りに船、是非とも誘いに乗ろうではないか。
「行くぞリザードン」
「リザ!」
気合を入れてリザードンの群れに向かうソラタとリザードンにククリも慌てて追いかけ、ジークも興味があるのかリサと共についていく。
滅多に外のリザードンを認めない彼等がバトルに誘う程のリザードン、それがどれほどのものなのか、同じリザードン使いとして興味があったのだ。
「ああ、因みにソラタ君、言っておくけどここに訪れた事のあるリザードンのトレーナーで唯一、あの子たちに認められて勝った事もあるトレーナーがいるから、教えてあげる……チャンピオンのワタルよ」
「……ジョウトチャンピオンのワタルさん」
「そう、チャンピオンを目指しているのなら、あなたとリザードンにとってこの情報は必要でしょ?」
「ええ、確かに」
そう、チャンピオンが嘗てここで認められて、そしてリザードン達に勝利したというのだ。なら、同じチャンピオンを目指しているソラタも負けてられない。
ジークから齎された情報に更なる闘志を燃やすソラタとリザードンは早速リザードンの群れに行き、待ち受けていたリザードン達を前に気合を入れた。
次回は野生のリザードン達とのバトル! ソラタのリザードンは日夜最強を目指してバトルをしているリザードン達にどこまで戦えるのか。