ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第76話
「燃えろリザードン! 新たな力!」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは二つ目のジムがあるヒワダタウンを目指していた。
道中、リザードン使いのジークと出会い、野生のリザードン達が暮らすリザフィックバレーへと招かれる。
そこで、日夜バトルで腕を磨くリザードン達にソラタのリザードンがバトルに誘われて、ソラタもリザードンも腕試しの機会が訪れたと喜んで参加する事になるのだった。
「リザードン! トドメの“ドラゴンクロー”!!」
「グルァ!!」
現在、連戦中のソラタとリザードンは4体目のリザードンを“ドラゴンクロー”で下して勝利を納めた所だ。
最初はバトルをメインにして過ごす群れの中で一番弱いリザードンからバトルを行ったのだが、それでもリーグ優勝者のポケモンと同等レベルの実力があり、決して油断出来る相手ではなかった。
一瞬の油断も出来ないバトルが続く中、何とかボロボロになりながらも4体までは倒せたリザードンだったが、体力が大分キツくなったのか肩で息をしている。
「大丈夫か? リザードン」
「リザ……リザ……グルゥ」
大丈夫だと、息を整えて前を見たリザードン、その先には5体目のリザードンが立っており、既にバトルの準備は整っている様子。
「強いな……」
「グルゥ」
見ただけで判る。あれはリーグ優勝者レベルとは一線を画す実力を持っているという事が。
体格もソラタのリザードンより一回り大きく、身体の至る所に傷跡がある姿は正に猛者の貫禄を感じられる。
「気を付けなさいねソラタ君、その子は群れの中でも上位に食い込む実力を持つリザードンよ。正直、四天王クラスの実力があると見て良いと思うわ」
「四天王クラス……」
それは、挑み甲斐があるというものだ。以前、シャラジムのジムリーダー、コンコンブルのルカリオとバトルした時にソラタのリザードンはまだまだ四天王クラスには及ばないと言われたが、あれから更に修練を続けて来た。
果たしてソラタのリザードンは、今なら四天王クラスに届くのか否か、それを試すには丁度良い相手だろう。
「行くぜリザードン! “げんしのちから”!!」
ソラタのリザードンの周囲に無数の岩が浮かび上がり傷跡のリザードンへ襲い掛かった。
飛来する岩を回避しながら冷静にこちらを睨む傷跡のリザードン、すると両手の爪が鋼と化して回避しきれない岩を破壊し始めたではないか。
「“メタルクロー”か……なら、飛べ!!」
「リザァ!!」
ソラタの合図と共にリザードンが飛ぶと、岩を全て捌き切った傷跡のリザードンも追うように飛び上がった。
流石にソラタのリザードンより巨体なだけあり、飛ぶ速度では負けるようで傷跡のリザードンも追い付けない事に苛立ちを覚えているのが表情で判る。
「来るぞ!」
だからこそ、傷跡のリザードンは“かえんほうしゃ”でソラタのリザードンを後方から攻撃してきたのだが、ソラタのリザードンはそれを悠々と回避、そしてその場でバク転しながら傷跡のリザードンの背後へと移動する。
「“かみなりパンチ”!!」
これは回避出来ないだろうと渾身の“かみなりパンチ”を叩き込んだリザードン、だがそれは傷跡のリザードンの鋼と化した翼で受け止められてしまい、更に至近距離から“かえんほうしゃ”の直撃を受けて落下してしまった。
「リザードン!」
“はがねのつばさ”を防御利用する。それはソラタもピジョットでやった事のある戦法、珍しい使い方ではないのだが、まさか野生である傷跡のリザードンがその使い方を学んでいるとは。
甘く見ていたつもりは無いが、やはりどこかで油断はあったのだ。四天王クラスの実力があるとは言っても野生は野生、トレーナーに育てられたポケモンみたいに巧みな戦術は使えないだろうと。
だが、蓋を開けてみればどうだ。リザフィックバレーでも上位に位置する実力を持つ傷跡のリザードンは“はがねのつばさ”を防御に用いてソラタのリザードンの攻撃を防ぎ、そこに出来た隙を見逃さず至近距離からの“かえんほうしゃ”で大ダメージを与えてくる……これが歴戦の猛者の実力。
「大丈夫か?」
「リザッ」
ソラタの傍に着地したリザードンに声を掛けると、問題ないと頷いて返して来たので、ソラタも頷くと傷跡のリザードンを見上げた。
巨体故にソラタのリザードンより素早さでは劣っているが、パワーも頭脳も経験も、それを補って余りある実力者、実に……燃える。
「イザとなれば使う事も考えているけど……さて」
キーストーンにそっと触れつつ、どうしたものかと考えて、でも良い戦術は思い浮かばない。
なら、ここはソラタとリザードンのお得意な方法……後先考えずゴリ押すしかないだろう。
「いくぞ! “かえんほうしゃ”!!」
「グルゥ!! リザァアアアア!!!」
ソラタのリザードンの“かえんほうしゃ”が傷跡のリザードンに迫ると、傷跡のリザードンも“かえんほうしゃ”を放ち、中間で二つの“かえんほうしゃ”がぶつかった。
威力は、傷跡のリザードンの方が上なのは明白、ソラタのリザードンの“かえんほうしゃ”が掻き消されて逆に傷跡のリザードンの“かえんほうしゃ”がソラタのリザードンに襲い掛かる。
「構うな! 突っ込め!!」
そこでソラタは驚くべき指示を出した。傷跡のリザードンの“かえんほうしゃ”の中を突っ切るように指示すれば、ソラタのリザードンも迷うことなく飛び上がり迫り来る炎の中へ突っ込む。
流石に傷跡のリザードンもそれは予想外だったのか驚愕の表情を浮かべた時にはもう遅い、既に目の前までソラタのリザードンは迫っており、炎の中で握り拳に雷を纏わせていたのだろう、大きく拳を振り上げていた。
「“かみなりパンチ”!!」
「グルァ!!」
渾身の一撃が傷跡のリザードンの頬に突き刺さった。だが、流石は歴戦の猛者、直ぐに反応してカウンターのように“メタルクロー”を叩き込み、尻尾を掴んで振り回すと近くの壁に投げつけてた。
壁にめり込んだソラタのリザードンは痛みに耐えながら岩を退かして飛び上がろうとするが、ふと握った岩が砕けて手の中に違和感を感じたのか、開いて見てみれば……掌には砕けた岩に埋まっている黄色掛かったオレンジ色の丸い石があったのだ。
「リザ!」
リザードンが慌てたように岩を砕いて丸い石を取り出すと、それを掲げてソラタへと見せてきた。
ソラタも驚いた表情でそれを見つめる。石は透き通っていて、中に赤とオレンジの模様が入ているソレは……間違いない、メガストーンだ。
「っ! キーストーンが」
キーストーンが一瞬光ったのに気付いた。それと同時に感じる……あのキーストーンと、あの石を通じてリザードンとソラタの間に繋がる何かを。
「嘘……リザフィックバレーにメガストーンがあったの!?」
「……行けるな?」
「リザ」
ジークが驚く中、冷静になったソラタが問いかければリザードンも頷いてメガストーンを掲げる。
「なら行くぜリザードン! 俺達の絆、その果ての力を今ここに!! メガシンカ!!」
嘗て、シャラジムのコンコンブルとルカリオと戦った時と同じ、あの時はメガリザードンXへとメガシンカを果たしたが、今回は違う。
新たに手に入れたメガストーン、リザードナイトYが光り輝きリザードンへ取り込まれると、リザードンの姿も光に包まれて大きく変化した。
メガリザードンXの時とは違い、色の変化は起きず身体の各所が変化する。頭に大きな角が一本、翼が変形、両手首にも小さな翼が生えて、尻尾に棘が生えたその姿は……リザードンのもう一つのメガシンカを果たした姿、メガリザードンY。
「え、どうなってるんですか!? リザードンが、もう一つ進化した!? ええええ!? だって、リザードンってもう進化しないんじゃ!」
「ククリちゃん、覚えておいて。この世にはメガシンカと言って一部のポケモンにのみ見られる特別な進化が存在しているのよ……そして、あれはリザードンのメガシンカした姿、メガリザードン」
ジークもメガリザードンを見るのは初めてなのか、少し興奮している様子。それを背にソラタはメガシンカをしたメガリザードンYに目を向けると、彼も不敵な笑みを返してくれた。
「よし、行けリザードン!! “かえんほうしゃ”」
メガリザードンYが“かえんほうしゃ”を放つと、傷跡のリザードンも“かえんほうしゃ”を発射、しかし今度は先ほどとは違い押し負けることはない。
互角の炎は一進一退、どちらも譲らない状況の中でメガリザードンYが動いた。
「ぶっとばせ!!」
“かえんほうしゃ”をキャンセルして一気に傷跡のリザードンの後ろまで飛ぶと、振り返りながら尻尾を背中に叩き付けて地面へと落としてしまった。
「これが最後の一撃だ!! “ブラストバーン”!!!」
一気に急降下したメガリザードンYが地面へ拳を叩き付けると、吹き出した炎が傷跡のリザードンへと襲い掛かる。
炎タイプ最強の一撃、“ブラストバーン”が傷跡のリザードンを飲み込むと、炎が消えた後には倒れずとも膝を着いている傷跡のリザードンの姿が。
「……グル」
「リザ」
傷跡のリザードンが負けを認めたのか、着地したメガリザードンYが頷いてメガシンカを解いた。
元のリザードンに戻ると流石に体力の限界を迎えたらしい。その場に座り込んだリザードンを労うように肩に手を置いて拳を突き出すソラタに対して、リザードンも笑みを浮かべて己の拳をソラタの拳にぶつける。
「見事だったわソラタ君とリザードン……まさか、本当にあの子に勝っちゃうなんてね」
「いえ、結構ギリギリでしたよ……正直、メガシンカ無しでは勝てませんでした」
本来なら、あそこでメガリザードンXにメガシンカさせようと思っていたのだが、まさかリザードナイトYが手に入るとは思わなかった。
「あ、そういえばあのリザードナイトは……」
「勿論、持って行って良いわよ。今リザードンの腕輪に付いているのはもう一つのメガシンカ用なのでしょう? なら、必要になるでしょうし、見つけたのはソラタ君のリザードンだもの」
それは有難いと予備の腕輪をリザードンに付けて、そこにリザードナイトYを装着する。これで両腕に別々のリザードナイトを装備したリザードンの完成だ。
右腕にはリザードナイトXが、左腕にはリザードナイトYが、その時の状況によってメガシンカを使い分けられる特別なリザードンというのも乙なものだろう。
そもそも、ソラタのリザードンはメガリザードンXでもYでも、どちらにでも適応出来るように育てていたので、これはその究極系とも言える。
「ところでソラタ君、提案なのだけど」
「なんです?」
「君のリザードン、ここに預けてみない? あなたのリザードンはまだまだ強くなれる……ここでなら、沢山のリザードンが修行相手になれるから、修行環境としては最適だと思うわよ」
なるほど、そういう話か。だが、それはソラタの中ではあり得ない選択だ。
「すいません、お断りします」
「どうしてか、聞いても?」
「これは俺の持論なんですけど……自分のポケモンを自分で育てて強くしなければ、トレーナー自身も成長しない。俺はリザードンと共に最強のチャンピオンを目指しているんです……そこに、誰かに育てて貰うなんて選択は無いんです」
だから、リザードンをリザフィックバレーに預ける事はしない。これからもソラタと共に戦い、強くなっていくのだと。
そこまで言われればジークも何も言えないのか諦めたように溜息を零し、そして笑顔を浮かべるのだった。
夕方になり、ソラタとククリはリザフィックバレーの扉の前でジークと向かい合っていた。
今から出発すれば夜になる頃にはポケモンセンターに着くというので、出発する二人をジークが見送る形だ。
「それじゃあ、お世話になりました」
「またどこかで!」
「ええ、ソラタ君もククリちゃんも、元気でね」
最後にジークと握手を交わしてソラタとククリは歩き出した。
リザードンの谷で得難い経験と新たな力を得たソラタ、そして師匠の本気のバトルを目にする事が出来たククリ、それぞれ学べる事の多い一日だったと言える。
この経験が次のジムで活かせるのか、それはソラタとククリ次第だが、まずはヒワダタウンを目指し、二人の旅はまだまだ続く。
次回は新しい出会いの回