ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第82話
「弟子の成長」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは二つ目のジムであるヒワダジムに挑戦していた。
一日目はソラタが挑戦する事となっており、主力メンバー以外で挑戦したソラタは多少危なかったものの無事に勝利を納めてインセクトバッジをゲット、二日目にはククリが挑戦する事になる。
そしてポケモンセンターで一夜を明かした次の日、早速ヒワダジムに訪れてジムリーダーのツクシと向かい合う形でフィールドに立つククリは多少の緊張はあるものの落ち着いた表情で挑んでいた。
「これよりジム戦を行います。使用ポケモンは互いに3体、どちらかのポケモンを先に3体倒した方の勝利となります。尚、ポケモンの交代はチャレンジャーにのみ認められます」
今回のジム戦、ソラタは観戦こそするもののアドバイスは送らない事になっていた。更には事前に対策や戦術を教えたりもしていない。
最初から最後までククリに全てを任せて勝利してみせろと言ってあるので、ククリの腕の見せ所だ。
「そういえば、ナエトルと一緒にイワンコに何か教わってたけど……どうなるかな?」
弟子が何を考えているのか楽しみだと用意されたベンチに座ったソラタはボールから出したラルトスを抱っこしながら観戦する事に。
「まずは君からだ! 行け、イトマル!」
「お願いね、ナエトル!」
ツクシの一番手は虫タイプと毒タイプの複合タイプであるイトマル、それに対してククリはタイプ相性最悪のナエトルを出した。
あきらかに選択ミスだと思われるポケモンを出した事にツクシの表情が少しだけ苛立ちを孕んだものになったが、それはバトルで思い知らせてやるのがジムリーダーの仕事だと意識を切り替えたようだ。
「イトマルVSナエトル、バトル開始!」
「イトマル、“ミサイルばり”!!」
「ナエトル、“のろい”!!」
イトマルがお尻から無数の針をミサイルのように放つと、ナエトルは“のろい”によって防御力を上昇させて真っ向から受け止めた。
効果抜群とは言っても元々物理防御が高い上に“のろい”で更に高めた防御力を前に“ミサイルばり”はダメージとしては小さい。
「ならイトマル! “いとをはく”だ!!」
イトマルが糸を吐いてフィールドの上に蜘蛛の巣を張り巡らした。その糸の上に乗ったイトマルが身軽に動き回るとナエトルは成す術も無いのか目で追うのがやっとになってしまう。
「ナエトルを出したのは間違いだったね! “どくづき”!」
ナエトルの背後からイトマルが毒エネルギーを纏った足を構えて迫ってきた。効果抜群の技、これを受ければダメージは小さくとも毒状態になってしまう可能性が高い。
だが、機を窺っていたククリにとってこれはチャンスでもあったのだ。
「今! “うちおとす”!!」
「っ!?」
ナエトスの背後に現れた一個の岩、それを後ろ蹴りで蹴り飛ばすと、丁度背後から迫っていたイトマルに回避する間もなく直撃してしまった。
イトマルにとって効果抜群の技、それも“のろい”によって威力が上昇したそれを受けて地面に力無く落とされたイトマルは目を回して倒れてしまう。
「イトマル、戦闘不能! ナエトルの勝ち!」
「なるほど、俺の教えた戦術を応用したのか」
最初にソラタが教えたナエトルの基本戦術、それを応用した今回のナエトルの戦術、見事にそれはイトマルに刺さったようだ。
「まさか、新米の君がタイプ相性をひっくり返すなんて思わなかったなぁ……でも、そうか、師匠の腕が良いと見るべきなのか君の才能なのか、それはこれで判断しようかな! 行け、バタフリー!!」
「フリー!」
ツクシの二番手、それはソラタの予想を外れた。トランセルが来ると思っていたのだが、まさかのバタフリー、新米相手にそれはどうなのかと思ったが、弟子の成長が著しい証でもあるのかもしれない。
「バタフリーVSナエトル、バトル開始!!」
「バタフリー! “エアスラッシュ”だ!」
「ナエトル! “うちおとす”!!」
これは悪くない。ナエトルの“うちおとす”が空気の刃の間を縫ってバタフリーに直撃して地面へと叩き落とした。
勿論、“エアスラッシュ”は全弾命中してしまい、“のろい”で耐久力を上げているナエトルであっても特殊攻撃である“エアスラッシュ”を受けては流石に大ダメージは免れなかったが。
「やってくれるね! バタフリー、“むしのさざめき”!!」
地面に落ちて飛べなくなったバタフリーが羽を細かく振動させた。虫タイプの技の中でも強力な技である“むしのさざめき”はソラタのバタフリーも覚えているが、これはナエトルも耐えるのは難しい筈だ。
「ナエトル、羽を押さえつけるよ! “くさむすび”!!」
「へぇ」
ククリの成長を明確に感じた瞬間だった。ソラタはまだククリに“くさむすび”を使った戦術は教えていない。精々が重量級ポケモンに大ダメージを与えられる技だという事しか教えていなかった。
だが、ククリは“くさむすび”という技をダメージを与える為に使うのではなく、バタフリーを更に地面に縫い付け羽に絡み付かせる事で“むしのさざめき”を封じ込めたのだ。
「バタフリー!?」
「フ、フリ~」
「今だよナエトル! “うちおとす”!!」
羽を使えなくされて攻撃手段が無くなったと判断したククリがトドメの一撃とばかりに“うちおとす”を指示、しかし残念ながらバタフリーは羽が使えないからと攻撃手段が無くなるポケモンではない。
「バタフリー、“サイケこうせん”!!」
バタフリーの目からサイコパワーの光線が放たれ、“うちおとす”の岩を破壊しながら真っ直ぐナエトルに向かって直撃、吹き飛ばされたナエトルは目を回して倒れてしまった。
「ナエトル、戦闘不能! バタフリーの勝ち!!」
チャンスだと思ったらまさかの逆転されてしまった事に驚きながらナエトルをボールに戻したククリは次のボールを取り出す。
ナエトルが倒れた事で絡まっていた草が力無く落ちた為、羽が自由になりつつも相変わらず飛べないままのバタフリーなら十分このポケモンで勝てると判断してボールを投げた。
「お願い、デルビル!!」
ソラタのデルビルの兄である♂のデルビル、炎タイプを持つデルビルならバタフリーに十分通用するだろう。
「バタフリーVSデルビル、バトル開始!!」
「デルビル! 先手必勝!! “かえんほうしゃ”!!」
「バタフリー! “サイケこうせん”!!」
“かえんほうしゃ”と“サイケこうせん”、技の威力では“かえんほうしゃ”の方が上だが、特殊攻撃力はデルビルよりもバタフリーの方が上だ。ゆえに両者の技はフィールドの中央で拮抗して掻き消されてしまった。
「悪タイプを持つデルビル相手にエスパータイプの“サイケこうせん”は効果が無い。ならばと効果の無い攻撃技を防御として使うか……流石にジムリーダーだ」
攻撃技を防御に使うというとソラタや将来のサトシが使うカウンターシールドを思い浮かべるが、今回ツクシが使ったのはカウンターシールドではない。その一歩手前の上級者トレーナーなら当たり前に使える技術だ。
「デルビル! “ふいうち”!!」
「バタフリー! “エアスラッシュ”!!」
“かえんほうしゃ”と“サイケこうせん”が相殺された瞬間、デルビルが既に動いていた。
悪タイプの“ふいうち”という技は必ず先制攻撃が可能となる技で、バタフリーに確かなダメージを真っ先に与えたものの、近づきすぎた所為で至近距離からの“エアスラッシュ”を受けてしまって逆に吹き飛ばされてしまう。
「追い打ちを掛けようか! もう一度“エアスラッシュ”!!」
「“ほのおのうず”を壁にして!!」
咄嗟に“ほのおのうず”を指示したククリ、デルビルもそれに従って“ほのおのうず”で壁を作ったものの“エアスラッシュ”は炎の壁をものともせず突き抜けてデルビルに襲い掛かった。
「これで終わりかな」
「いいえ! まだです!! デルビル、“かえんほうしゃ”!!」
炎の壁の向こうで空気の刃に襲われながらもデルビルが“かえんほうしゃ”を放った。残念ながらバタフリーにはデルビルの位置が炎の壁によって見えていないが、飛べないバタフリーは場所を移動していない事からデルビルには攻撃する方角が判る。
壁の所為で攻撃のタイミングが測れないバタフリーに炎の壁の向こうから“かえんほうしゃ”が炎の壁すら取り込んで襲い掛かった。
「フリィ~」
「バタフリー、戦闘不能! デルビルの勝ち!!」
感心した。デルビルは“ほのおのうず”で作った炎の壁に向けて“かえんほうしゃ”を放つ事で炎の壁を“かえんほうしゃ”に取り込み威力を底上げしたのだ。
ククリの独自の戦術が確かな戦果を挙げているのを見て、ソラタも満足そうに頷いている。
「まさか、ここまでとは思わなかったよ……さぁ、最後のポケモンだ、思いっきり楽しもうか! ストライク!!」
「ストーライックー!!」
ツクシ最後のポケモンは当然、エースのストライクだ。バタフリー戦のダメージが残るデルビルではあるが相性では十分有利、果たして通用するのか。
「ストライクVSデルビル、バトル開始!!」
「ストライク、まずは翻弄するぞ! “かげぶんしん”!!」
開幕からストライクの素早さを利用した戦術で来た。分身を作り出してデルビルを取り囲み素早く動き出す。
「ストライク! そのまま“れんぞくぎり”だ!」
「デルビル! 向かってきたの全部に“かえんほうしゃ”!!」
全方位から本体含めた分身が襲い掛かる中、デルビルの“かえんほうしゃ”が放たれた。
ヒワダジム戦、最後の一体たるストライクを相手に、ククリはどのような戦いを見せるのか、次回に続く。
次回はヒワダジム決着です