ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第86話
「孵化」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは次のジムがあるコガネシティを目指している所だった。
今は途中の町で前回ウツギ博士から貰ったタマゴを孵す為にオーキド研究所からファイアローとメラルバを呼び寄せて二つのタマゴをそれぞれ温めて貰っている所だ。
“ほのおのからだ”という特性を持つこの2匹がタマゴを温めると通常より早くタマゴが孵るので、先を急ぎたいソラタとしても早々に孵化させる為の措置としてオーキド研究所から呼んだのである。
「ん、そろそろ孵化寸前か」
「そうなんですか?」
「ああ、音が大きくなって動きも最初の頃より激しくなった……戻れ、ファイアロー、メラルバ」
もう大丈夫だろうと判断してファイアローとメラルバをボールに戻したソラタはタマゴをククリに任せて宿泊していたポケモンセンターの転送装置へ向かい、オーキド研究所に連絡して2匹を送る代わりに送っていたワニノコとリザードンを送り返して貰った。
無事にリザードンが入ったモンスターボールとワニノコが入ったルアーボールを確認して博士に礼を言ってから電話を切り、ククリが待つ部屋へ戻るとククリは自分が貰ったタマゴを抱えて鼻歌を歌っているではないか。
「そんなに楽しみか?」
「はい! メリープの赤ちゃん、楽しみだなぁ」
抱えたタマゴを撫でながら笑顔を浮かべるククリが微笑ましい。ソラタも貰ったタマゴを抱えると、掌に感じられる温もりや胎動が間も無く孵化する事を示しているのだと笑みが零れた。
「生まれたてのポケモンは暫く食事にも気を付けなければいけない。一応、専用フーズは購入してあるから、お前にも後で分ける」
「ありがとうございます! ……師匠のタマゴは、どんなポケモンが生まれるんですかね?」
「さあな……タマゴの色から草タイプか虫タイプじゃないかと予想してるけど」
タマゴの色は生まれて来るポケモンのタイプを特定する一つの材料となり得る。時々違う場合もあるので一概には言えないのだが。
タマゴの色がポケモンのタイプを示しているという研究報告もあれば生まれるポケモンの体色を示しているという報告もあり、ウツギ博士はその中間の意見であるポケモンのタイプで色を示すパターンと体色で色を示すパターン、どちらもあり得るとしている。
「トゲピーなんかは良い例だな、あのポケモンは身体の殻が生まれる前のタマゴの模様そのままだ」
「ふむふむ、因みに師匠のガブリアスはどんなタマゴだったんですか?」
「白地に薄い青の丸い模様が入ったタマゴだった……薄い青がフカマルと同じ色だったな」
それがあったからソラタもタマゴの色だけで生まれて来るポケモンのタイプが決まるとは言い切れないというウツギ博士の意見を支持しているのだ。
「ポケモンのタマゴはまだまだ研究途上にある。未だ知られていない謎が沢山あるんだ……これからのウツギ博士の研究結果が楽しみで仕方ないよ」
「そうなんですねぇ……ん?」
そんな話をしているとククリが抱えているタマゴに違和感を覚えたのか言葉が途切れてタマゴに目を向ける。
すると、タマゴは一度だけ先ほどまでより激しく動いた後、頂点に罅が入って脈動を始めたのだ。
「師匠!」
「ああ、生まれるな」
罅が次第に大きくなりタマゴが白い光に包まれると、パリンッというタマゴの割れる音と共に白い光が収まった。
ククリの膝の上には先ほどまで抱えていたタマゴの姿は無く、代わりにモコモコの毛が特徴の愛らしいポケモンがつぶらな瞳でククリを見上げているではないか。
「メェ~」
「~~~~~~っ!! 可愛い!!」
わたげポケモンのメリープ、ククリが欲しがっていた電気タイプのポケモンであり、将来はデンリュウという強いポケモンになる。
デンリュウについてはソラタもよく知っているポケモンだ。何故なら母であるアオノの手持ちポケモンにもデンリュウがいるので、ソラタとニンフィアが幼い頃から遊び相手になってくれていたのだから。
「おめでとう、メリープか……良いポケモンだな」
「はい! それに凄く可愛いです!!」
生まれたてのポケモンは孵化して直ぐに見た存在を親だと思う習性がある種類が多い。メリープもその例に漏れずククリを母親だと認識しているのか抱っこされて嬉しそうにククリに甘えている。
「それにしても、メリープが生まれたならこっちもそろそろだよな」
ソラタは自分が抱えているタマゴに視線を落とす。メリープが生まれたのであれば間違いなく、ソラタの持つタマゴもそろそろ生まれてもおかしくないのだ。
「さて、何が生まれるのやら」
メリープの時とは違い捨てられていたタマゴなので何のポケモンのタマゴなのか不明ときた。
どんなポケモンが生まれて来るのか不安もあるが、楽しみでもあるのでソラタも流石にワクワクが止まらない。
「お?」
そうこうしていると、ソラタの持つタマゴも一瞬大きく動いた後、頂点に罅が入って脈動を開始、白く光り出した。
「師匠の方もですか!」
「ああ」
白い光の中で罅が大きくなる音が聞こえて、やがてパリンッという音と共に光が止んだ。そして、ソラタの膝の上にはタマゴの姿は無く、緑色のヘビの様なフォルムに小さな手足が生えたポケモンの姿があった。
「タジャ!」
「えっと……このポケモンは?」
「おいおいおいおい……ツタージャかよ!?」
イッシュ地方の御三家の一角、くさへびポケモンのツタージャとは驚いた。しかも図鑑で調べてみれば♀のツタージャ、御三家で♀というのは中々珍しいのだ。
「タジャ?」
「ツタージャ……そうか、お前か」
中々難しいポケモンが生まれたと思う。ツタージャの最終進化系であるジャローダは物理攻撃も特殊攻撃も然程高いポケモンではなく、物理防御と特殊防御が少し高くて素早さが圧倒的に高い耐久型のポケモンだ。
素早さが高い点はソラタの戦術に合っているが、素早い耐久型というのは今まで戦術として考えた事が無い。
「でも、それを上手く使って活かすのもトレーナーの腕の見せ所か」
これは腕が鳴る。リザードン、ワニノコ、ツタージャと、地方別ではあるが御三家3タイプが揃ったのはどんな運命なのかと思うが、是非とも育ててジョウトリーグに挑戦してみたいものだ。
「メェ~」
「タジャ?」
「メェメェ」
「タジャ!」
生まれたばかりのメリープとツタージャが早速じゃれ合っているのを横目に、いつの間にか勝手にボールから出てソラタの頭の上に昇ったラルトスをそのままにしてツタージャとメリープ用の食事の用意を始めた。
生まれたばかりなので空腹だろうから直ぐにでも何か食べさせてあげなければならない。ククリもそれに気付いて手伝ってくれたので、用意自体は直ぐに終わった為、2匹を呼んでポケモン用ミルクで柔らかくしたベビーポケモン用フーズを入れた皿を差し出す。
「メェ!」
「タージャ!」
フーズを食べ始めた2匹をククリが笑顔で撫でているのを眺めつつ、ソラタはウツギ博士と話していたレポートを書きながらこれからの育成計画について修正しなければと考えていた。
いくつか育てる予定だった候補のポケモンをキャンセルしてツタージャやワニノコも加えるとして、この先のジムに挑戦させるポケモンの事も考えて、ある程度の計画修正をする。
それから、そろそろリザードンとニンフィアは常駐を解除してギャラドス、キレイハナ、ライチュウ、ガブリアスを順番に手持ちに入れ替えて更なる強さへと修行させる必要があった。
現状、リザードンとニンフィアは互いに修行相手になっていた事もあって既に四天王クラスと言って良い実力まで伸ばせたと思う。ならば次は他の4体を修行させる方が良いと考えたのだ。
「キレイハナはこの前少しだけ入れてたから……いや、ツタージャとワニノコの事も考えてキレイハナとギャラドスを手持ちに入れてリザードンとニンフィアを預けるか」
早速ツタージャとメリープの事をククリに任せた後、ソラタは再び転送装置の所へ行ってオーキド研究所に連絡、博士に話をしてリザードンとニンフィアを送るとギャラドスとキレイハナをこちらへ送って貰った。
これでソラタの手持ちはギャラドス、キレイハナ、ルカリオ、ラルトス、ワニノコ、ツタージャの6匹、手持ちの確認を終えたソラタは先ほどからずっと頭の上にいるラルトスの頭を撫でると部屋に戻る。
「ラルトス、お前もそろそろ進化しても良い頃だよな」
「ラル?」
「少なくとも最後のフスベジムまでにはサーナイトに進化させないとな」
なんにしても、これからの育成次第だ。そしてソラタの育成の腕次第でもある。
新たに生まれたばかりの仲間も加え、育てるのが大変にはなったもののトレーナーとして中堅クラスにはなったと自負する以上、泣き言など言ってられない。
目的地であるコガネシティまで残り僅か、この間にどれだけ育てられるのか、次回に続く。
次回はいよいよコガネシティに到着、コガネジムに挑戦です
活動報告の方にアンケートを載せましたので、よろしければ回答お願い致します。