ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

89 / 101
アンケートの結果、コガネジムに最初に挑戦するのはククリとなりました


第87話 「コガネジム、新米キラーの恐怖」

ポケットモンスター

転生したのは初めに旅立った子供

 

第87話

「コガネジム、新米キラーの恐怖」

 

 ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは遂に三つ目のジムがあるコガネシティに到着していた。

 カントー地方のタマムシシティやヤマブキシティと同等の大都会、ジョウト地方屈指の都会であるコガネシティはヤマブキシティとの間にリニアを敷設しており、ジョウト・カントー間の移動を容易にしている街だ。

 この街でソラタ達は二つの目的があり、それぞれを達成する必要がある。一つは言うまでもなくジム戦、もう一つはコガネデパートで売っているという進化の石を購入する事である。

 特に、今ソラタが必要としている進化の石はデンヂムシを進化させるのに必要な“かみなりのいし”で、他の石もこれから先に必要となる可能性を考えて予備を購入しておきたい。

 なのでコガネシティに到着して直ぐにポケモンセンターで宿泊手続きを終えたソラタとククリはデパートで必要な物、目的の物を購入して一泊、翌日にはコガネジムに挑戦する事となったのだ。

 

「ここがコガネジムですか」

「そうだ」

 

 コガネシティ到着翌日、早速ジムにチャレンジする為に訪れたソラタとククリはジムを見上げて武者震いしているククリの頭にソラタが手を置いて落ち着かせている所だった。

 実はポケモンセンターを出る前にククリには話していた事があるのだ。今回のジム戦、今までとは違いククリから挑戦する事を。

 

「このジムが何故新米キラーと呼ばれているのか、それを実際に体験してみろ。そして、それを自分の力で乗り越えるのが今回のお前に与える課題だ」

「新米キラー……」

 

 挑戦する新米トレーナーの8割が脱落する事で有名なコガネジム、何故新米キラーなどという異名が付けられているのか、それを体験して、尚且つ乗り越えろと簡単に言う師匠は、なるほど鬼畜なのだろうか。

 

「では行くぞ」

「はい!」

 

 ジムに入って受付にチャレンジャーだという事を伝えると、内線電話で恐らくジムリーダーのアカネに連絡を取っているのだろう、受付のお姉さんが受話器を置いて案内してくれた。

 案内されて連れて来られたのはジムにあるバトルフィールド、そこには既にトレーナーゾーンに立つ一人の女性の姿が。

 

「よく来たなぁ! ウチがこのコガネジムのジムリーダー、アカネや! チャレンジャーは二人いうんは聞いとるで、今日と明日と2回に分けるんやったか?」

「ええそうです。今日はこの子、ククリが……明日は俺、マサラタウンのソラタがチャレンジします」

「なるほどなぁ……了解や! ほなククリちゃん、トレーナーゾーンに入ってや」

 

 今回、ククリにはコガネジムは元々はノーマルタイプ専門ジムであるという事は伝えてあった。

 だが、昨今の研究や発見の結果、コガネジムで使用していたノーマルタイプだと今まで言われていたポケモンのタイプが実は違ったという事態が発生して、以来ノーマルタイプ以外のタイプも用いるようになった事までは伝えていない。

 

「これよりジム戦を開始します! 使用ポケモンは互いに3体、先にどちらかのポケモンを3体倒した方の勝利となります! 尚、ポケモンの交代はチャレンジャーにのみ認められます!」

「ほな、最初はこの子や! 頼むでニドリーナ!」

「行くよヨルノズク!」

 

 アカネの一番手はニドリーナ、ククリはヨルノズクだ。タイプ相性は然程ではないが、ヨルノズクはニドリーナの弱点を突けるポケモン、ややククリ有利といった所か。

 

「ニドリーナVSヨルノズク、バトル開始!」

「ニドリーナ! “どくばり”や!」

「ヨルノズク! “エアスラッシュ”!!」

 

 ニドリーナが放った“どくばり”をヨルノズクの“エアスラッシュ”が吹き飛ばしながら空気の刃となってニドリーナに襲い掛かった。

 

「やるなぁ! ほな“10まんボルト”や!」

 

 電気タイプの技、ヨルノズクには効果抜群の技で来た。ククリもそれを理解してかヨルノズクを更に上へと上昇させつつ放たれた電撃を冷静に見ている。

 

「“サイコキネシス”!」

 

 今までヨルノズクのエスパー技の主力は“ねんりき”だったが、ソラタから更に上の攻撃方法にして主力技となる“サイコキネシス”の存在を教わってからヨルノズクに練習させて、最近覚えたばかりの技だ。

 しかし、今まで“ねんりき”で練習していただけあって“サイコキネシス”も十分使いこなせているヨルノズクは“10まんボルト”を放つニドリーナを操り、そのままニドリーナはアリーナの壁へと叩き付けられてしまった。

 

「ニドリーナ!?」

「ニ、ニドォ」

「ニドリーナ、戦闘不能! ヨルノズクの勝ち!」

 

 効果抜群の大技を受けたニドリーナは堪らず目を回して倒れてしまい、これでククリの一勝、ニドリーナをボールに戻すアカネを尻目にククリはヨルノズクと喜び笑顔を交わしていた。

 

「やるなぁ……ほな、次はこの子や! 行くでピッピ!!」

 

 アカネの二番手はソラタの予想通りピッピだった。ククリはそのままヨルノズクを続投、どう戦うべきか考えている様子だ。

 

「ピッピ……確かノーマルタイプって言われていたポケモンだけど、何年か前にフェアリータイプが発見されてから再調査でノーマルタイプではなくフェアリータイプである事が確認されたポケモン」

 

 そう、元々ピッピはノーマルタイプであると言われていたポケモンだ。だが、その割りに効果抜群の筈の格闘タイプの攻撃を受けてもダメージが小さい事が疑問視されていて、近年フェアリータイプが発見されてから再調査された結果、実はノーマルタイプではなくフェアリータイプであるという事が判明したポケモンなのだ。

 

「ピッピVSヨルノズク、バトル開始!」

「ピッピ! “チャームボイス”や!」

「ピ! ピィ~!」

「回避!」

 

 フェアリータイプの音波技、“チャームボイス”による空気の波が衝撃波となってヨルノズクに襲い掛かった。

 しかし、ヨルノズクはその空気の波を見事に知覚して回避、一気に急降下しながらピッピに迫る。

 

「“はがねのつばさ”!!」

 

 急降下するヨルノズクの翼が鋼のエネルギーを纏って鋭い一閃がピッピに炸裂、効果抜群の一撃を受けたピッピは吹き飛ばされてしまってアカネの足元まで転がると、そのままアカネの足に抱き着いて泣きだしてしまった。

 

「あっちゃあ、こらアカン……ピッピ、戻りや」

「ピッピ、戦意喪失! ヨルノズクの勝ち!」

「え、え~?」

 

 こんな勝ち方で良いのだろうかと困惑するククリだが、そろそろ彼女の中で実は噂は噂で、コガネジムはそこまで強いジムではないのではないかと思い始めた頃だろう。

 だが、コガネジムの恐ろしさはここからだ。これまでは相手を油断させる為のアカネの戦略、奥の手の恐ろしさをより強く実感させる為のブラフに過ぎない。

 

「ほな、最後はこの子や! いっけぇミルタンク!!」

 

 やはり来た。コガネジムの切り札にして幾人もの新米トレーナーを脱落させてきた脅威のポケモン、ミルタンク。

 

「ミルタンクVSヨルノズク、バトル開始!」

「ミルタンク! “ころがる”や!」

「ヨルノズク! “サイコキネシス”!!」

 

 早速、ミルタンクはお得意の“ころがる”でフィールドを転がり回る。対するククリは“サイコキネシス”で動きを止めようとヨルノズクに指示したのだが、ヨルノズクの様子がおかしい。

 

「ホォ~」

 

 目がハートになってフラフラしている。明らかに様子のおかしいヨルノズクに、傍から見ていたソラタにはその理由が理解出来た。

 恐らくピッピの置き土産だ。アカネのピッピの特性が“メロメロボディ”だったのだろう。♂のヨルノズクがメロメロ状態という状態異常になり、♀のミルタンクに現在メロメロ状態になってしまっているのだ。

 

「よ、ヨルノズク!? どうしたの!?」

「今や!」

 

 フラフラと段々飛べなくなったのか、地面に降り立ったヨルノズクに転がり続けるミルタンクが迫る。

 

「避けて!!」

 

 ククリの指示空しくミルタンクの“ころがる”がヨルノズクに直撃、岩タイプの技である“ころがる”を受けたヨルノズクは吹き飛ばされてスタジアムの壁に激突、目を回して倒れてしまった。

 

「ヨルノズク、戦闘不能! ミルタンクの勝ち!」

 

 ヨルノズクはククリの手持ちの中でも上位に位置する実力を持つポケモン、そのヨルノズクがあっさり倒れてしまった事に動揺しながら、ククリはボールにヨルノズクを戻して次のボールを手に取って構えた。

 

「お願い、ナエトル!!」

 

 ククリの二番手はナエトル、はたしてどの様に戦うつもりなのか。

 

「ミルタンクVSナエトル、バトル開始!」

「ほなミルタンク、もう一度“ころがる”や!」

「ミルッ!」

「ナエトル! “のろい”!!」

 

 ミルタンクが再び転がり出したのに対し、ナエトルは“のろい”で物理防御を高めた。さて、何をするつもりなのかと観戦しているソラタも楽しみにしている。

 

「防御力上げても無駄や! 一気に行くでミルタンク!」

「“やどりぎのタネ”!!」

 

 成程、段々とククリの狙いが読めて来た。

 転がり続けるミルタンクにタネが植えつけられ一気に成長して蔦が絡まり体力を吸収されながら尚、転がり続けるミルタンクの一撃がナエトルに直撃する。

 だが、“のろい”で物理防御を上げたナエトルは耐えて更に“やどりぎのタネ”で少しずつ回復していく。

 

「せやけど、それやと回復量が追い付かんやろ! ミルタンク、決めたれ!」

「ごめんねナエトル……最後に“すなじごく”!!」

 

 これで準備は全て整った。ミルタンクの周囲に砂が渦巻くように吹き荒れて小さなダメージを与え続けるようになり、最後の一撃でナエトルが吹き飛ばされて戦闘不能になってもそれは続く。

 

「ナエトル、戦闘不能! ミルタンクの勝ち!」

「……こら、アカンわ。長期戦出来なくなった」

 

 そう、今のミルタンクは常に体力を奪われダメージを与えられ続ける状態にある。長期戦になれば間違いなくミルタンクは倒れてしまうだろう。

 

「最後はこの子、お願いヘラクロス!」

「ヘラクロ!」

 

 ククリの最後のポケモンはウバメの森でゲットした対コガネジム用のポケモン、ヘラクロスだ。

 ♀のヘラクロスなのでミルタンクが使えるであろう“メロメロ”は意味が無い。ノーマルタイプであるミルタンクに格闘タイプのヘラクロスは十分脅威と言えるだろう。

 

「ミルタンクVSヘラクロス、バトル開始!」

「しゃあないなぁ……ミルタンク、“まるくなる”や!」

「ヘラクロス! “つるぎのまい”!!」

 

 開始早々にミルタンクは“まるくなる”で防御力を上げて、ヘラクロスは“つるぎのまい”で攻撃力を上げた。これではプラマイゼロだと思われるが、ソラタには理解出来ていた、ミルタンクに“まるくなる”を使わせる恐ろしさを。

 

「ほな、一気に決めたるわ! ミルタンク、“ころがる”や!」

「ヘラクロス、避けて!!」

 

 ミルタンクの“ころがる”に回避を指示したククリ、だがその直ぐ後に驚愕した。何故ならミルタンクの転がる速度が先ほどの倍になっていたのだから。

 当然、先ほどまでの速度をイメージしていたククリの指示ではヘラクロスは回避不能、恐ろしい程の速度で迫るミルタンクにヘラクロスは……。

 

「ヘラクロ!」

「ウソやろ!?」

 

 真正面から角で受け止めて投げ返してしまった。

 

「へぇ……ヘラクロスの奴、“はやてがえし”を覚えていたのか」

 

 そう、今のヘラクロスの投げ技は格闘タイプの“はやてがえし”という技だ。まさかの事態にアカネが驚愕している今がチャンス。

 

「ヘラクロス! “インファイト”!!」

「あかん! ミルタンク、“しねんのずつき”や!」

 

 ヘラクロスの使う格闘タイプの大技“インファイト”にミルタンクは“しねんのずつき”で対抗したものの、タイプ一致の“インファイト”の威力に負けて吹き飛ばされてしまう。

 

「しゃあないなぁ……もう一度“ころがる”や!! フィールドを転がり回るんや!!」

 

 先ほどはまさかの“はやてがえし”に驚かされてしまったが、今度は違う。ミルタンクがフィールド中を転がり回り、その速度はどんどん速くなっていく。当然、速度が上がるという事は威力も上がるという事で……。

 

「止めなきゃ! ヘラクロス! “はやてがえし”!!」

 

 先ほどは見事に受け止めて返した“はやてがえし”でも止められず、逆にヘラクロスが吹き飛ばされる形になってしまった。

 

「選択をミスったな……そうか、あの技はまだ覚えさせてなかったか」

 

 吹き飛ばされ目を回して倒れたヘラクロスを眺めながら、ソラタは今回のククリの敗因と、本来ヘラクロスが取るべき戦術を頭に思い浮かべながら座っていたベンチから立ち上がった。

 

「ヘラクロス、戦闘不能! よって勝者、ジムリーダー・アカネ!」

 

 初のジム戦敗北、ククリは折れるのか、それとも……。




次回はソラタの挑戦です。ソラタのバトルを見て、ククリはもう一度戦術を練って貰いましょう。実際、今回は惜しかったわけですし。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。