ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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第8話 「おつきみやまにロケットの悪意」

ポケットモンスター

転生したのは始めに旅立った子供

 

第8話

「オツキミやまにロケットの悪意」

 

 ニビシティのポケモンセンターで一泊したソラタは、早朝から既に出発してオツキミやまに向かい、そして既に洞窟入口から内部に入って、ハナダシティ側へ向けて整備された洞窟道を歩いている。

 オツキミやまは数年前まで“つきのいし”と呼ばれる進化の石や古代のポケモンの化石が発掘されるという事で多くのコレクターやポケモントレーナーが訪れて洞窟内を好き放題荒らしてしまったという歴史があった。

 そこで、ニビシティとハナダシティが協力して遊歩道を整備、そこ以外の立ち入りは特別な許可が無い限り禁止する事で何とか洞窟内の環境を良くする事が出来たのだ。

 何より遊歩道以外の立ち入りを禁じた理由の大きな要因は、オツキミやまに生息するピッピと呼ばれるポケモンの乱獲があった事だろう。

 過去の乱獲でオツキミやまのピッピの生息数が一時期激減してしまった事もあって、遊歩道の整備はポケモン協会からの厳命でもあった。

 

「まぁ、俺はピッピが欲しいって訳じゃないし、ここまででイシツブテ、ズバット、プリンをゲット出来ただけで十分だわな……つきのいしも一個だけだけど、見つけたし」

 

 ソラタもピッピは無理に欲しいって訳ではない。図鑑完成を目指している心算は無いので、このままハナダシティ側に出てしまっても問題は無いのだ。

 更に言えば、ゲーム時代なら“かいのかせき”か“こうらのかせき”が手に入るイベントもあるが、そんなイベント、この世界に存在する筈も無く、そもそもオムナイトもカブトも欲しいとは欠片も思っていない。

 

「そういえば、今のところロケット団とかと遭遇した事が無いよな……何で?」

 

 我らが主人公サトシ君は今頃、何度もロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースと会っているのだろうが、ソラタは今まで一度だってロケット団と会っていない。

 カントーと言えばロケット団の暗躍が一番活発な地域だというのに、これほどまでに遭遇しないというのも不思議な話だ。

 

「まあ、会わないのならそれに越したことは無いよな。無理に変なのと関わり合いになりたいとも思わないし、厄介事は御免だ」

 

 別に自分がロケット団を壊滅させてやる、などという英雄願望は持ち合わせていない。

 ソラタの旅の目的はチャンピオンになる為の修行とジムバッジ集めなのであって、ロケット団壊滅の為の正義の行いは目的に含まれていないのだ。

 

「そう、だからロケット団と関わりなんて持つつもりは無かったのになぁ……」

 

 ソラタは現在、オツキミやまの洞窟内で遊歩道から少し離れた所で怪しい動きをする女性を見つけ、その顔を見て思わず隠れてしまった。

 ソラタの視線の先に居るのは、赤い髪の黒い服を着た女性。その女性の着ている黒い服の胸の部分には大きく“R”の文字が。

 

「あれって、確かゲームで出て来たロケット団の幹部、アテナだよな? アニメの世界にも居たんだ……」

 

 さてどうするか、ゲームでは雑魚と言って良いレベルでしかないロケット団幹部だが、現実はそう上手くはいかないだろう。

 ソラタの手持ちでアテナに勝てるかどうか……ゲーム時代の彼女の手持ちを考えると、勝てなくはないと思うが。

 

「アーボックとヤミカラスならピカチュウで何とかなる……クサイハナはヒトカゲかピジョンで勝てるよな」

 

 そこまで考えて、ふと思った。これは、無理に戦う必要があるのかと。そもそも思わず隠れてしまったが、このまま何事も無かったかのようにスルーして先に進んでも誰に文句を言われようか。

 ソラタの旅の目的に一切関わり合いの無い事柄、不必要に悪の組織に目を付けられてリーグ出場を妨害なんてされたら目も当てられない。

 

「うん、スルーしようと思ってるのに……アレはなぁ」

 

 スルーしてさっさと立ち去ろうと思ったソラタだったが、見てしまった。

 アテナがアーボックに指示してピッピと、その子供だろうかピィを襲わせようとしている姿、それを見て無視出来る程、ソラタはポケモントレーナーとして非情な人間ではない。

 

「ピカチュウ! “10万ボルト”! イーブイ! “シャドーボール”! ヒトカゲ! “かえんほうしゃ”!!」

 

 腰のホルダーから3個のボールを取り出して、投げながら指示を出す。

 ボールから出て来た3匹はそれぞれ指示された通りの技をアテナのアーボック目掛けて放ち、後ろから奇襲を受けたアテナとアーボックは反応が遅れて3つの技がアーボックに直撃した。

 

「シャーボ!?」

「アーボック!? クソッ、何なのアンタは! いきなり襲い掛かるなんて常識無いんじゃないかしら!?」

「ふん、常識? 悪の組織に所属する犯罪者に常識を問われる筋合いは無いよ、ロケット団」

 

 ソラタが3匹のポケモンを出して岩陰から出て来ると、アテナは先ほどまで狼狽えていたのが嘘のように冷静さを取り戻しアーボックの他にヤミカラスとクサイハナを出して対峙してきた。

 

「それで坊や、あたくしが誰か判っての狼藉かしら」

「ああ、ロケット団だろ? こそこそと悪事を働くしか脳の無い社会からの落伍者の集まり」

「……随分と言ってくれるじゃない、あたくし達の崇高な理念も知らないで」

「ハッ! 崇高? 理念? 笑わせるな、お前達みたいな悪党に崇高な理念とやらがある訳が無い……お前らにはその言葉、不相応だぜ? お前達みたいな悪党にお似合いなのはな、“負け犬”“落伍者”“ドロップアウト”って言葉だけだ」

 

 アテナの後ろで襲われそうになっていたピッピとピィが逃げ出したのを確認し、ソラタはイーブイ達と戦いやすい場所まで移動する。

 アテナもバトルする気は十分なようで、ソラタの挑発によってこめかみに青筋が浮かんでいた。

 

「あたくし達を愚弄したんだ、無事に帰れると思わない事ね」

「それはこっちのセリフだ、ぶちのめしてジュンサーさんに突き出してやるよ」

 

 お互いのポケモンが臨戦態勢を整え、いつでも戦える状態になった。一触即発、いつぶつかってもおかしくない。

 

「……」

「……」

「アーボック! イーブイに“どくばり”! ヤミカラス! ヒトカゲに“ナイトヘッド”! クサイハナ! ピカチュウに“はっぱカッター”!」

 

 先に動いたのはアテナだった。3匹のポケモンがそれぞれ指定されたポケモンへ向かって技を放つが、ソラタから言わせて貰えば、態々1対1の状況を作ろうとするなど無駄な行為でしかない。

 

「ヒトカゲ! “かえんほうしゃ”で薙ぎ払え! ピカチュウは今の内に“あなをほる”で地中に! イーブイはアーボックに“シャドーボール”!!」

 

 ヒトカゲの“かえんほうしゃ”で“どくばり”と“はっぱカッター”を燃やし尽くし、“ナイトヘッド”を相殺する。

 その隙にピカチュウは地中へと“あなをほる”で潜り、イーブイの“シャドーボール”がアーボックに直撃した。

 

「なっ!?」

「判断が遅いぜ! ヒトカゲは天井の岩へ“メタルクロー”! イーブイは“でんこうせっか”で走り回れ!」

 

 イーブイが敵3匹の周りを走り回り、3匹の狙いを惑わせて、その間にヒトカゲが“メタルクロー”で破壊した天井の岩がヤミカラスに直撃、地面に叩き落とす。

 

「くそっ! アーボック、クサイハナ! “ヘドロばくだん”! ヤミカラスは“こごえるかぜ”でイーブイの動きを止めなさい!」

「させるか! ピカチュウ!! アイアンテール!!」

「ピッカ! チュウウウピッカ!!」

 

 “ヘドロばくだん”でヘドロを吐こうとしたアーボックの真下の地面からピカチュウが飛び出て鋼鉄と化した尻尾をアーボックの顎に叩きつけた。

 その勢いでアーボックの“ヘドロばくだん”は狙いが逸れて、仲間であるはずのヤミカラスに直撃、“こごえるかぜ”を出そうとしていたヤミカラスは大ダメージを受ける。

 

「クサイハナのヘドロが来る! イーブイは“シャドーボール”で迎え撃て! ピカチュウはそのままヤミカラスに“10万ボルト”! ヒトカゲはクサイハナに“かえんほうしゃ”!」

 

 クサイハナが放った“ヘドロばくだん”は“シャドーボール”で相殺され、ヤミカラスとクサイハナはそれぞれ戦闘不能に、残るはアーボックのみだ。

 

「あ、アーボック! “どくばり”よ!」

「最大火力だ! “シャドーボール”! “10万ボルト”! “りゅうのいぶき”!」

 

 アーボックの最後の“どくばり”は3つの技に飲み込まれて消滅、そのまま技が直撃して戦闘不能となってしまった。

 

「そ、そんな……あたくしが、こんな坊やに」

「さて、どうする? このまま大人しくジュンサーさんに捕まるか?」

「くっ……舐めるんじゃないよ!」

 

 アテナは煙幕玉を地面に叩きつけると、煙に包まれてしまう。そして、煙が晴れるとアテナも、アテナのポケモン達も姿を消しており、まんまと逃げられてしまった。

 

「まぁ、捕まえるのは出来ればで良かったから、どうでも良いか」

 

 とりあえず、頑張ったから褒めてと足元にじゃれつく3匹の頭をそれぞれ撫でてやって、ソラタはイーブイ以外をモンスターボールに戻す。

 自分だけボールに戻されなかった事に首を傾げるイーブイを抱き上げたら、後はハナダシティ側へ向けて歩き出すだけだ。

 

「よく頑張ったな、イーブイ」

「ぶい?」

「たまには良いだろ? こうして抱っこして歩くのも」

「ぶいぶい!」

 

 笑顔で抱きつくイーブイを撫でながら、ソラタは歩き出す。

 だが、この時は気付かなかった……ソラタに撫でられてご満悦な表情を浮かべるイーブイの首元から、透明なリボンのような触覚らしきものが伸びて、ソラタの腕に巻きつこうとソワソワしていた事に。




次回、ポケットモンスター~転生したのは初めに旅立った子供~

「ハナダジム美人3姉妹」

お楽しみに。
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