ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第88話
「師匠のバトル」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは3つ目のジムであるコガネジムにチャレンジしていた。
初日の挑戦は今までとは違いククリから行われ、ククリは一番手のヨルノズクでニドリーナ、ピッピを撃破するもジムリーダー・アカネの切り札、ミルタンクを前にヨルノズク、ナエトルが戦闘不能になり、最後のヘラクロスも善戦したものの敗北、ジム戦初の敗北を味わう事となってしまった。
そして、翌日になりポケモンセンターで手持ちを入れ替えたソラタが次のチャレンジャーとなる番。ククリにはソラタのバトルを見てヒントを得るようにと言ってあるので、師匠として手本となるバトルをしなければならない。
「こんにちはー、マサラタウンのソラタです」
早速、コガネジムに訪れて受付を済ませた二人はフィールドにやって来る。既にアカネもスタンバイしており、ソラタを待っていたのが伺えた。
「昨日ぶりやな。今日はソラタ君がチャレンジャーやろ?」
「ええ」
「セキエイ大会ベスト4、実質決勝戦とまで言われたバトルをした腕前、見せて貰うで」
ククリが観戦席に座り、ソラタもトレーナーゾーンに立ってモンスターボールを構える。アカネも同じくモンスターボールを構えたので互いに準備が整った。
中央に立つ審判の女性もそれを確認して手に持つ旗を上へと掲げると、己の職務を遂行する。
「これよりジム戦を開始します! 使用ポケモンは互いに3体、先に相手のポケモンを3体倒した方の勝利となります! 尚、ポケモンの交代はチャレンジャーにのみ認められます!」
「ウチの最初の子はこの子や! 行くでピクシー!!」
「頼むぞ、ルカリオ!!」
アカネの一番手はピッピの進化系、ピクシーだった。対するソラタの一番手はルカリオ、鋼タイプを持つルカリオはフェアリータイプのピクシーに対して十分なアドバンテージを取れる相性抜群のポケモンだ。
「ピクシーVSルカリオ、バトル開始!」
「ピクシー! “かえんほうしゃ”や!」
「“かげぶんしん”!!」
やはり、鋼タイプの対策はしているようだ。ピクシーが炎タイプの“かえんほうしゃ”を放ったのを見て素早くルカリオに指示、“かげぶんしん”で分身を作ったルカリオは見事分身を犠牲に“かえんほうしゃ”を回避するとフィールドを駆け回った。
「ルカリオ! 走りながら“はどうだん”!」
「バオゥ!」
「“ひかりのかべ”や!」
ルカリオの放った“はどうだん”が“ひかりのかべ”に阻まれた。元々、フェアリータイプのピクシーに格闘タイプの“はどうだん”はダメージが小さい、そこに“ひかりのかべ”によって阻まれた事でピクシーはノーダメージ、しかしそれで良いのだ……ソラタの狙いはピクシーの技を制限する事にあるのだから。
「“かわらわり”!!」
「迎え撃つんや! “かえんほうしゃ”!!」
ルカリオの“かわらわり”で“ひかりのかべ”が叩き割られたが、そこを狙って再び“かえんほうしゃ”が放たれた。
「“かげぶんしん”だ!」
だが、ギリギリで“かげぶんしん”を発動、分身が炎に飲み込まれた隙にルカリオはピクシーの背後を取っていた。
「今だ! “ラスターカノン”!!」
「しまった!?」
元々特殊攻撃力が高い上にタイプ一致の“ラスターカノン”は見事ピクシーの背後から襲い掛かって大ダメージを与える。
背中への一撃で前のめりに倒れたピクシーは耐え切れず目を回してしまい、戦闘不能となってしまった。
「ピクシー、戦闘不能! ルカリオの勝ち!」
先ずは一勝、メロメロボディを持つ可能性が高いピクシーを遠距離技で倒した事でルカリオはメロメロ状態にならずに済んだ。
「やるなぁ、流石にセキエイ大会ベスト4の実力は今までのチャレンジャーとは桁違いや……ほな、次はこの子でどうや? 頼むでリングマ!!」
「グマァ!!」
アカネの二番手はノーマルタイプのリングマだった。中々手強い相手を出してきたものだと思いつつ、ソラタはルカリオを続投、リングマ相手ならルカリオで十分戦えると判断したのだ。
「リングマVSルカリオ、バトル開始!」
「ルカリオ! “はどうだん”!!」
「リングマ! “きあいだま”や!!」
ルカリオの“はどうだん”とリングマの“きあいだま”が中央でぶつかるが、元々リングマの特殊攻撃力は高くはない。しかもタイプ不一致の技のため、威力で“はどうだん”に負けたのか“きあいだま”は掻き消されてリングマに“はどうだん”が迫る。
「構うな! “すてみタックル”や!」
「グマァアアア!!」
リングマが“はどうだん”の直撃を物ともせず一直線にルカリオに迫った。迫り来る巨体に流石のルカリオも跳び上がって回避したのだが、それが悪かった。
「今や! “アームハンマー”!!」
「“かわらわり”で迎え撃て!」
空中にいるルカリオにリングマの拳が迫るのに対し、ルカリオは手刀で“かわらわり”を使うも、空中では踏ん張りが利かない為に威力が出せずリングマの“アームハンマー”に押し負けてしまった。
「大丈夫か? ルカリオ」
「バウ」
拳を叩き込まれ吹き飛ばされたルカリオだったが、バク転しながら着地して見せたので、まだまだ戦える様子。
「よし、走れルカリオ! “かげぶんしん”!!」
再びルカリオが走り出して分身をいくつも作り出した。そして全ての分身が走りながらリングマを包囲して一斉に“はどうだん”を放つ。
「慌てんなやリングマ! “ハイパーボイス”や!」
「グゥオオオオアアアアア!!!!」
リングマの“ハイパーボイス”が全方位に広がり、衝撃波が“はどうだん”と分身を掻き消して本体にまでダメージを与えた。
勿論、ノーマルタイプの技が鋼タイプのルカリオに対して大ダメージを与える事は出来ないが、“ハイパーボイス”はノーマルタイプの中でも大技の一つ、効果いまひとつでもそれなりのダメージは出してきたようだ。
「だけど、これで終わりだ! “ラスターカノン”!!」
ルカリオが鋼タイプの“ラスターカノン”を発射、“ハイパーボイス”を使ったばかりのリングマに直撃して見事、リングマを戦闘不能にしたのだった。
「リングマ、戦闘不能! ルカリオの勝ち!!」
ここまでは順調、ルカリオ1体でピクシーとリングマを2体抜き、残るはあのポケモンだろうとアカネがリングマをボールに戻すのを見て自分もルカリオをボールに戻した。
「ほな、ウチの最後のポケモンはこの子や! 頼むでミルタンク!!」
「頼むぞ、ニドクイン!」
アカネの最後のポケモンは勿論ミルタンクだった。そしてソラタの二番手はセキエイ大会でも大活躍したニドクイン、ソラタのサブメンバーの一体だ。
「ミルタンクVSニドクイン、バトル開始!!」
「ミルタンク! “まるくなる”からの“ころがる”や!」
「やっぱりそう来るよな……ニドクイン! “のろい”だ!!」
ミルタンクが最強コンボ、“まるくなる”から“ころがる”に繋げる事で初手から物凄い速度で転がり始めたのに対して、ソラタはニドクインに“のろい”を指示して真正面から転がってくるミルタンクにニドクインを立たせる。
「来た! “かいりき”だ!!」
「ニィドォ!!」
転がって来たミルタンクを、なんとニドクインは真正面から“かいりき”で受け止めて見せた。
「……うそやん」
「“ばかぢから”!!」
セキエイ大会で活躍したニドクインはソラタの持つポケモンの中でも主力メンバーを除けばトップクラスの実力を持つ。
“かいりき”で受け止められたミルタンクは転がるのを止められた上に“ばかぢから”による強烈な一撃によって吹き飛ばされ、何とか立ち上がったものの苦しそうに顔を歪め、更に顔色も悪くなってしまった。
「しまった! ソラタ君のニドクインは“どくのトゲ”の特性持ちや!!」
「正解です」
毒状態になったミルタンクはこれで長期戦が望めなくなってしまった。頼みの綱だった“ころがる”は使っても受け止められるのが目に見えているので使用しても意味が無い。
「“のろい”」
更に再び“のろい”によって“ばかぢから”で下がった物理攻撃力を上昇されてしまったのでミルタンクはピンチと言って良い。
勿論、ニドクインも二度の“のろい”で素早さが相当下がってしまったが、元々ニドクインは素早さで勝負するポケモンではなく耐久力とパワーで勝負するポケモン、素早さが下がった程度で弱体化したとは言えないポケモンだ。
「ほな、これならどうや! “れいとうビーム”!!」
素早い動きが出来ない以上、回避は難しい筈だと判断してニドクインに有効な氷タイプの技を使用、ミルタンクが放った“れいとうビーム”は鈍足になったニドクインに回避する事も許さず直撃して全身を氷漬けにしてしまった。
「これならもう身動きできへんやろ? ミルタンク! “ギガインパクト”や!!」
ノーマルタイプ最強の一撃“ギガインパクト”、タイプ一致の状態で放たれるそれは間違いなく脅威だろう。
氷状態で身動き出来ないニドクインに回避する術は無い。このまま終わるのかと思われたが、残念な事にニドクインは氷状態から攻撃する手段があるのだ。
「“ねっさのだいち”」
一瞬にしてニドクインの足元が高温となって氷を溶かしただけでなく、その熱が衝撃とともにフィールド全体を襲う。
拳にエネルギーを溜めて迫って来ていたミルタンクはその一撃を受けて吹き飛ばされ決定的な隙を作ってしまった。
「今だ! “ばかぢから”!!」
ニドクインが走り出してミルタンクに迫り、起き上がろうとしていたミルタンクは反応が遅れてしまった。
目の前に迫ったニドクインがミルタンクの腕を掴んで持ち上げると、そのまま振り回してスタジアムの壁目掛けて投げ飛ばしてしまう。
「ミルタンク!」
「ミ、ミルゥ」
毒状態で体力が減っている上にタイプ一致の“ねっさのだいち”に効果抜群の“ばかぢから”は流石のミルタンクが耐えられるものではない。
スタジアムの壁に叩き付けられたミルタンクはそのまま目を回して倒れてしまい、戦闘不能となってしまった。
「ミルタンク、戦闘不能! ニドクインの勝ち! よって勝者、マサラタウンのソラタ!!」
アカネの得意なミルタンクの“まるくなる”と“ころがる”のコンボを真正面から受け止めて攻略した上に“れいとうビーム”で凍らされても“ねっさのだいち”によって簡単に抜け出してしまってはアカネに勝ち目は無かった。
仕方がないとアカネは素直にミルタンクをボールに戻してポケットから目的の物を取り出すとソラタの下に歩み寄る。
「あかん、完敗や! まさか真正面から受け止められるやなんてなぁ……これがウチに勝った証、レギュラーバッジや!」
アカネが差し出して来たレギュラーバッジを受け取ると、早速バッジケースに納めて握手をする。
ゲームでは負けたアカネは大泣きするのだが、流石にアニメの世界のアカネはそこまで子供ではないらしい。
「どやった? 弟子には見本となるバトル、出来たん?」
「さて、どうでしょうね? 今のバトルを見てククリが何か掴んでくれると良いんですけど」
「再挑戦は明後日やったな……楽しみにしとくわ」
アカネと二人で観戦席に座るククリに目を向ける。
当人は見られている事に気付かず何やら思案している様子で、恐らくミルタンクとバトルする時の戦術を頭の中で構築しているのだろう事は容易に想像出来た。
「ほな、明日はジム休みやから、ゆっくり休ませて貰うわ~」
「ええ、ありがとうございました」
ジム戦が終わってソラタとククリはジムを出てポケモンセンターに戻った。考え事があると言って部屋に引っ込んだククリを余所に、ソラタはオーキド研究所へ連絡してニドクインとルカリオを送り、預けていたワニノコを引き取ると、次のジムの為に育てようとデルビルも送って貰う。
『そうじゃソラタ、ウツギ君から聞いたぞ? レポートを書いておるそうじゃな』
「あ~……ええ、ウツギ博士に是非書いて学会に出してみないかと提案されまして」
『うむ、ワシの他にプラターヌ君もその話を聞いての、二人でソラタの書くレポートが楽しみだと盛り上がっておったのじゃよ』
「うわ~、プレッシャー……」
これは生半可なレポートは書けないなと思いながら報告を終えて部屋に戻るとククリとすれ違った。
どうやらポケモンセンターのバトルフィールドに向かったようで、再挑戦に向けてトレーニングをするつもりらしい。
「頑張れよククリ、俺のバトルを見て何を得たのか、楽しみにしているからな」
いつの間にかボールから出てソラタの頭に抱き着いてご満悦のラルトスをそのままに、ソラタはそう呟くと部屋へと戻っていった。
次回はククリの再挑戦、ソラタのバトルを見て何を学んだのか、ククリの成長が見られるのか、そんな回です。