ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供 作:剣の舞姫
ポケットモンスター
転生したのは初めに旅立った子供
第90話
「ライバルとの再会、待ち受ける修羅場?」
ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリはコガネジムを無事攻略、レギュラーバッジをゲットして、次のジムがあるエンジュシティを目指していた。
現在、二人はエンジュシティへの道中にある自然公園と呼ばれる場所に来ており、残念ながら虫取り大会の日ではなかったので休憩をと会場のベンチに座り、ポケモン達も出して昼食タイムに突入している。
「へぇ、虫取り大会ですか」
「そう、ここは週に一回のペースで虫ポケモンゲットの大会を開いているらしい。もっとも、今日は大会の日じゃないから、こうして普通の公園として開放しているけどな」
「でも私は虫ポケモンはヘラクロスで満足してますから、不要ですね」
「だろうな、俺もバタフリーとデンヂムシがいるし……ああ、そういえばコガネシティで“かみなりのいし”を買ったんだから、そろそろ進化させた方が良いのか」
話している内にすっかりデンヂムシを進化させる事を忘れていたのを思い出したが、残念ながら次のポケモンセンターまで少し距離がある。
「師匠でも忘れる事があるんですね」
「まぁ、最近は色々と考えなければいけないことが増えたからなぁ……正直、ワニノコゲットまでは問題無かったんだけど、ツタージャは完全に予定外だったし、育成計画の見直しをしていたらすっかり忘れていたよ」
生まれたばかりのポケモン用フーズを黙々と食べているツタージャの頭にポンと手を置いて撫でた。
ツタージャは頭に手を置かれて一瞬食事の手を止めたが直ぐに笑顔になって食事を再開、それをメリープが羨ましそうに見ていたのでククリも頭に手を置いて撫で始める。
「メェ~」
「♪……師匠、昼食が終わったらまた特訓、お願いします」
「当然だ」
次のエンジュジムはゴーストタイプのジム、今のククリでは手札が足りないと考えていたので特訓内容は既に考えてある。
食事を終えて頭に抱き着いてきたラルトスを引っ付けたままソラタも食事を終えるとギャラドスやキレイハナと共に洗い物をと立ち上がった所で見覚えのある人影が歩いているのに気が付いた。
「あれは……」
腰まで伸びる艶やかな黒髪と、10歳とは思えない程に美しく整った顔立ち、以前とは服装を変えたのかクリーム色のサマーセーターに珍しく赤いミニスカート姿の少女は……間違いない、ソラタにとって永遠のライバルとも呼べる少女、シズホだった。
「シズホ!!」
「……! ソラタさ、ん……? ……は?」
こちらの呼びかけに気付いたシズホが振り向いてソラタの姿を見た瞬間、パァッと表情が明るくなったと思いきや、ククリの姿を目にして一瞬にして表情が凍りつき、どこから出てきたのか物凄く低い声が。
「えっと、シズホ……?」
明るくなった筈の表情が無表情になり、ズンズンと足音が聞こえてきそうな勢いでソラタの下まで歩いてきたシズホのハイライトの無い瞳がソラタを見上げる。……正直、怖い。
「あの、シズホ……さん?」
「ソラタさん」
「はい!?」
「そちらの方は?」
シズホの視線が未だ食事中だったククリに向けられる。ククリは呆然とおにぎりを咥えながらシズホを見上げて、やがて口に含んだ分を飲み込むと驚愕の表情に変わった。
「ポケモンリーグ・セキエイ大会準優勝者のシズホ選手!?」
そう、シズホは今やカントー・ジョウトで有名人なのだ。ソラタもベスト4という事もあって有名ではあるが、準優勝したシズホの知名度はそれを更に上回る。
「えっとだなシズホ……彼女はククリ、最近トレーナーになったばかりの新人で、一応俺の弟子なんだ」
「お弟子さん……?」
ギロリと怖い視線が再びソラタに向けられる。その目は明らかに怒っており、ソラタには何を怒っているのか理解出来ないからこそ困惑してしまう。
「……え~、あ~」
「ソラタさん、ウチ言いましたな? ウチ以外にライバル作ったらアカンよって……せやのにお弟子さんて、ライバル作る気やったんどすか?」
「あの……え?」
突然、シズホの口調が変わった。今までの敬語口調が一変、コガネ弁……いや、コガネ弁より上品な訛り方からしてエンジュ弁の方か。
「シズホ、口調が」
「そないな些事はほっときなはれ。ウチとの約束、忘れとったんとちゃいますな?」
「わ、忘れてない! 忘れてないって! 俺のライバルはこれからもずっと、シズホだけだ」
「せやけど、お弟子さん取ったんやろ? 将来のライバルに」
「いや、それはだな……」
仕方がない。とにかく正直にククリを弟子にした経緯をシズホに説明する事にした。
ガブリアスの件もあって、間接的に世話になったウツギ博士に頼まれてククリを弟子として一緒に旅をする事になった事、ククリの才能を見て自分の手で育ててみたくなった事を。
「……勿論、シズホとの約束を破るつもりは無い。ククリはいつかは独り立ちするだろうけど、それでも弟子である事は変わらない」
「そうですね、流石に私が師匠のライバルになるなんて烏滸がましい事は望んでませんよ」
「……そう、ですか」
やっとシズホが前の敬語口調に戻ってくれた。瞳のハイライトも戻って、落ち着いた様子。
「それにしてもシズホ、実は素はエンジュ弁なのか?」
「そ、それはその……幼い頃は母の影響でエンジュ弁で喋ってました」
実はシズホの母はエンジュシティ出身らしく、今もエンジュ弁で話すそうだ。そんな母の影響でシズホも幼い頃はエンジュ弁を使っていたのだが、旅に出る数年前に敬語口調でカントー弁……所謂標準語に矯正したのだとか。
しかし、長年エンジュ弁を使っていた影響か、咄嗟の時や興奮した時、我を忘れた時などはこうしてエンジュ弁が出てしまうらしい。
「そうなのか……エンジュ弁のシズホも可愛らしかったが」
「か、わ……忘れてください! 恥ずかしいですから!!」
「あはは……そうだ、改めて紹介するよ。弟子のククリだ、元々はシンオウ地方の出身で、旅立つ前に実家がワカバタウンに引っ越したんだってさ」
ククリの肩に手を置いて改めてシズホに紹介する。ククリも立ち上がって姿勢を正すと、己が師のライバルを真っ直ぐ見つめた。
「ククリです。師匠の弟子として色々と教わってます!」
「ご丁寧にどうも、シズホと申します。ソラタさんの……ライバルです」
「知ってます! セキエイ大会での準決勝の映像も見ました!」
セキエイ大会準決勝のソラタとシズホの試合は実質決勝戦とまで呼ばれた程の激闘だった。それを映像で見てククリはソラタを尊敬していたのだが、当然ながら相手だったシズホの事も尊敬しているらしい。
「ありがとうございます……そうですか、シンオウから」
ククリがハヤシガメに目を向けると何やら頷いた。
「最初に選んだポケモンはナエトルなんですね。なるほど、良いポケモンを選びました」
「あ、師匠と同じ事を……」
「でしょうね。ソラタさんなら私と同じ事を言うのは当然です……ソラタさん、ナエトルの時から育成は」
「当然、重量級の戦い方を仕込んだ。“のろい”をベースにな」
「良いですね。“からをやぶる”という選択もありますけど、どちらかを選べと言われれば私も“のろい”を選びます」
「そっちは俺も悩んだんだけどな。でも“のろい”の方が素早さを落とす事で鈍足な状態で戦うのに慣れる事が可能だと考えたんだ」
何やらククリでは理解不能な会話を当然のように交わす二人に、戸惑いつつもやはり二人とも凄いトレーナーなのだと目を輝かせるククリだった。
「それにしても……ソラタさんの手持ち、見覚えのある子以外に増えました?」
「ああ、今も俺の背中にくっ付いてるのがラルトス、それからデルビルとワニノコ、ツタージャだ」
ギャラドスとキレイハナはシズホも戦った事があるので知っている。なので新顔を紹介すると、なんとラルトスがソラタの背中からシズホの胸元に飛び込んだではないか。
「あら?」
「ラル!」
「わ、ラルトスが師匠以外の人に自分から!?」
ククリもラルトスを抱っこ出来るようになるのに暫く掛かったというのに、シズホは初対面でいきなり、それもラルトスの方から抱き着いた事に驚いた。
だが、ソラタは特に驚いた様子は無い。恐らくシズホならと最初から予想していたのだろう。
「ラル~」
「ふふ……可愛いですね」
「だろ? 人見知りなんだが、根っこは甘えん坊でな」
「そうなんですか」
抱き着いたラルトスの頭を撫でながら笑顔を浮かべるシスホの姿に、ククリは師匠であるソラタと同じものを感じ取った。
似ているのだ。ソラタとシズホは、性別も顔も全然似ていないのに、纏っている空気が、思考が、ライバルとはここまで似るものなのかとククリはふとメグリの事を思い出す。
「そうだ、ソラタさん……せっかく再会したんですし、一戦しますか?」
「当然」
こうしてシズホと……ライバルと再会したからには、二人のやる事は決まっている。ポケモン一体のみというルールでバトルをする事になった。
「ククリ、審判出来るな?」
「一応、やりかたは頭に入ってます」
「なら頼む」
シズホからラルトスを返して貰ったソラタはククリに審判役を頼むと近くの開けた場所へシズホと向かった。
互いに距離を取って向かい合ったソラタとシズホは既に纏っている空気が一変、相対しているわけでもないククリにすら感じられるほどのプレッシャーが辺りを包み込む。
「頼むぞ、ラルトス!」
「ラル!」
「行きますよ、ニダンギル!」
ソラタが選んだポケモンはラルトス、それに対してシズホが投げたボールから出てきたポケモンは、とうけんポケモンのニダンギルだ。
「おっと、ラルトスにとって相性最悪のポケモンか……面白い」
「ニダンギル、相手はソラタさんです。相性で優っているからと油断してはいけませんよ」
セキエイ大会以来、再び相見えたライバル。強者のプレッシャーを放つ二人のバトルが、ついに始まろうとしていた。
ここでカントー時代のシズホの服装を書いてなかった事を思い出したのでここで書いときます。
カントー時代のシズホは黒のノースリーブにピンク色のロングスカートという服装でした。
それと、シズホの新たな情報として、母親がエンジュシティ出身という事、幼い頃はエンジュ弁(現実で言うところの京都弁)を使っていたため、今でも時々出てしまうそうです。
でも、基本的には敬語口調の標準語(カントー弁)で話すので、本当に時々しか出てきません。