ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

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第92話 「違法オークション」

ポケットモンスター

転生したのは初めに旅立った子供

 

第92話

「違法オークション」

 

 ジョウトリーグに出場する為、旅を続けるソラタとククリは次のジムがあるエンジュシティを目指していた。

 道中で再会したソラタの永遠のライバル、シズホを一時的に旅の仲間に加えて歩みを進める3人は旅の途中で立ち寄った街のポケモンセンターで一泊した翌朝、ジョーイさんとジュンサーさんが険しい表情で話をしているのに気が付いた。

 

「何があったんでしょうね?」

「……事件でしょうか?」

「さて、厄介ごとの気配がするなぁ」

 

 ジョーイさんとジュンサーさんの険しい表情から確実に厄介事だと予想しているソラタだったが、二人がこちらを向いた事で嫌な予感がした。

 この場にはポケモンリーグ・セキエイ大会準優勝者のシズホとベスト4のソラタがいる。当然、ジョウトでも二人は有名人なのでジョーイさんとジュンサーさんが知らない筈も無く。

 

「丁度良かったわソラタ君、シズホさん、少し良いかしら?」

 

 ジョーイさんにはどの街に行ってもお世話になっている以上、無視するわけにはいかなかった。

 あまり人の多い所では話せない内容なのだと言うので、三人は案内された個室に移動、ジョーイさんとジュンサーさんの座る椅子の向かいの席に座る。

 

「実は、この街でポケモンの違法売買……というか、違法オークションを開いているという噂があるのよ」

 

 ジュンサーさんの話によると、最近この街のどこかでポケモンの違法売買をしている闇オークションが開かれているという情報が入って来たのだという。

 しかも、そのオークションを取り仕切っているのがロケット団だという話で、オークションに掛けるポケモンの調達にはポケモンハンターが関わっているらしい。

 

「ポケモンハンター……」

「師匠……あの、もしかして」

「何か知っているの?」

 

 ポケモンハンターという言葉を聞いて、ソラタとククリの脳裏に過ぎったのは己がポケモンであるデルビル兄妹だった。

 現在、ジョウトにいる可能性の高いポケモンハンターで、その中でも取り分けロケット団と関わりがある可能性の高い実力と知名度を持つポケモンハンターなど限られている。

 

「グスタフというポケモンハンターの名、ジュンサーさんなら御存知かと思うんですけど」

「ええ、当然知っているわ。国際指名手配されている男で、何なら現在ジョウトに潜伏している可能性があるっていう話よね? それもあって数カ月前からジョウトに国際警察も入ってきているのよ」

「実は……」

 

 ソラタとククリは自分達のデルビル兄妹の事を詳細に説明した。その話を聞いている内にシズホとジョーイさんは悲痛そうな表情で涙を浮かべ、ジュンサーさんも込み上げて来る怒りに震える拳をもう片方の手で抑えている。

 

「そして、ヘルガーを殺した男として可能性が高いのが……グスタフです」

「ヘルガーの遺体から回収された弾丸は、師匠曰くポケモンにとって猛毒となる特殊鉱石を弾頭に用いた銃弾で、グスタフ程の実力のハンターでなければ入手不可能な物だとか」

「そうね、確かにあの弾丸はそこらのポケモンハンターでは入手不可能なほど高額で取引されている……そう、ロケット団と関わりがあると噂されているグスタフなら確かに持っていても不思議じゃないわね」

 

 グスタフはカントー・ジョウトではロケット団と、ホウエンではマグマ団やアクア団、シンオウではギンガ団と関りがあると言われていて、捕らえたポケモンを売買しているらしい。

 他にも犯罪組織の大小を問わず取引をしているらしく、個人のハンターしては世界最大規模の取引数を誇る。

 

「本当なら成人しているといっても10歳の貴方たちにお願いするのは気が引けるのだけど、セキエイ大会準優勝とベスト4という実力を加味して協力願いを出したいの。この街の違法オークション摘発、出来ればグスタフ逮捕も、協力願えないかしら」

 

 グスタフの逮捕は正直難しいかもしれないが、オークション摘発であれば願っても無い。ソラタとシズホは頷いて返したのだが、問題はククリだ。

 ククリはまだトレーナーとしては新米で実力も初心者からようやく脱却した程度でしかない。違法オークションの摘発に協力というのも流石に難しいのではと思われたが、本人がノリ気だった。

 

「そりゃ、師匠やシズホさんみたいな実力は無いですが、サポートくらいは出来ます!」

 

 どうしたものかとジュンサーさんとシズホはソラタの顔を伺って来た。確かにククリの実力を知らない人間から見れば不安なのだろうが、ソラタとしては本人にやる気があるのなら大丈夫だと判断していたのだ。

 確かにククリはまだまだ初心者から少し成長した程度の実力ではあるが、サポートに徹するのなら問題無い。

 

「ククリも死んだヘルガーの子供を手持ちに入れている。他人事ではないからな」

 

 そういう訳でソラタ、シズホ、ククリはこの街で違法オークション摘発の為に動き出す事となった。

 まずは万が一に備えて手持ちのポケモンをポケモンセンターで入れ替える。特にソラタとシズホはエースであるリザードンとバクフーンを手持ちに入れておけば何があっても対応出来ると考えたのだ。

 

「よし、これで手持ちはリザードン、ニンフィア、ゲンガー、ルカリオ、デルビル、キルリア……十分か」

「私もバクフーン、エーフィ、バンギラス、ハッサム、アブソル、クロバットです」

 

 ククリの手持ちに変更は無い。これで準備は整ったと三人は早速ポケモンセンターを出て街に繰り出した。

 ポケモンセンターを出てすぐにククリがまず何処に行くのかと訪ねてきたので、三人で街をぶらぶら歩くのだと伝えると怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「良いから行くぞ、それで会話でもしながら基本的に周囲の人間の服装だったり装飾品だったりをチェックするんだ」

「服装や装飾品ですか?」

「そうだ」

 

 何故そんな事をと思いつつも街を散策しながらソラタとシズホ、ククリの三人は適当な話をしつつ街を歩く人を観察する。

 ククリは言われた通り服装や装飾品などをチェックしつつ歩いていたのだが、結局何が目的なのだろうかと疑問を浮かべながら、随分と上質な服や高価な装飾品だなぁなどと考えながら一度三人でカフェに入った。

 

「さて、と……シズホ、気付いたか?」

「ええ、恐らくオークションが近日中にあると見て間違い無さそうですね」

「ええ!? な、なんでそんな事わかるんですか!?」

 

 シズホの近日中にオークションがあるという言葉にククリが驚いていた。しかも、ソラタもそれに同意していて、いったい何をもってそう判断したのか。

 

「街を歩いていて何か気付いた事は無かったか?」

「えっと……」

「例えば、随分とお金がありそうな人がいるなぁって思いませんでしたか? 服だったり、アクセサリーだったり」

「あ……」

 

 確かに、歩いていて随分と良い服……ブランド物の服やアクセサリー、カバンなどを持つ人が多かった気がする。

 今、三人が滞在しているこの街は田舎ではないが、それでも大都会というレベルの街ではなく、そんなお金を持っていそうな人が多く居るような街ではない。

 にも関わらず明らかに金持ちだと判る人間がこの街に多くいる理由は唯一つ、オークション参加客だからだ。

 

「オークションは落札するにも大金が動く催しだ。特に違法オークションともなれば後ろ暗い事をしている金持ちの道楽としては定番だな」

 

 いずれにせよ、この街で違法オークションが開かれる事、それが近日中だという事までは判明した。

 後は会場がどこになるのかだ。然程大きな街ではないこの街で違法オークションを開くとなると、考えられるのは地下か。

 

「よし、出て来いゲンガー」

「ゲンゲロゲーン!」

 

 オークション会場の場所を探る為にソラタがモンスターボールから出したのはゲンガーだった。

 ゴーストタイプのゲンガーは壁や床などすり抜ける事ができる上に、自在に姿を消したりも出来るので隠密調査には持ってこいのポケモンなのだ。

 

「頼むぞゲンガー」

「ゲンガッ!」

 

 ゲンガーが半透明になって床に沈んでいくのを見届けた三人は話し合いを終えて店を出る。

 更に店を出て直ぐにシズホがクロバットをボールから出して上空から超音波を使った街全体のチェックをさせた。

 ゲンガーには地下から、クロバットには上空から、それぞれ調査して貰いながらソラタ達も自分達の足で街を周って候補になり得る建物を外側からではあるが調べるのだ。

 

「なんていうか、師匠とシズホさんって……」

「ん?」

「どうしました?」

「いえ……凄いなぁって」

 

 調査の為に手持ちを入れ替える際に調査方法を打ち合わせるでもなく地中と上空に別れるようにしていた二人に、改めてククリは二人が似た者同士なのだという事と、何も言わずとも通じ合っているのだと認識するのだった。




次回は違法オークションに乗り込みます。
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